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農空間整備事業の紹介
大阪府では、農地、集落、ため池や里山の混在する地域を「農空間」と呼び、府民生活のゆとりと潤いをもたらす空間として地域づくりを進めています。
当事務所が行っている農空間整備事業を紹介します。
農業用水路改修事業
事業概要
農業用水の確保のほか、浸水被害を防止して安全な街づくりをすることを目的に水路の整備を進めるとともに、水路を活用した”ゆとりと潤い”ある快適な水辺環境としての整備も併せて行っています。
玉串川地区(平成21年度より整備中)
位置図
整備前
整備後
玉串川は、大和川より取水した柏原市、八尾市、東大阪市を南北に流れる農業用水路です。春には両岸の約1,000本の桜が延長約5kmにわたり花を咲かせ、その美しい景観は「大阪みどりの百選」に選ばれています。多くの人に親しまれている玉串川ですが、過去に行った改修から約50年が経過し、一部で護岸が崩壊するなど老朽化が著しく、災害の危険性が高くなっています。
そこで、平成21年度より、農業用水路としての機能保全と安全なまちづくりのため、八尾市内の約3.5kmの区間の護岸改修をすすめています。また、地域の安全と快適な生活環境づくりに向け、八尾市と協力した歩道の拡幅なども行っています。
水路の歴史
今からおよそ三百年前、度重なる大和川の洪水を防ぐため、今米村(現在の東大阪市)の中甚兵衛らの長い嘆願運動の末、宝永元年(1704年)に大和川付替えの大治水工事が行われました。こうして旧河川敷や遊水池などは、新開地として開拓されるとともに、東用水路(玉串川)および西用水路(久宝寺川、現在の長瀬川)の2つの幹線用水路が設けられました。これにより人々は水害から免れるとともに、河内平野の農業生産は大きく伸びることになりました。この間、玉串川および長瀬川は農業用水や物資運搬の水路として重要な役割を担うとともに、沿岸の人々には身近な水辺として親しまれており、次世代に受け継がれるべき水路として、農林水産省の「疎水百選」にも選定されています。
長瀬川地区(平成5年度着手、平成21年度完了)
位置図
整備前
整備後
柏原市、八尾市、東大阪市を流れる歴史的に由緒ある農業用水路である長瀬川では、安全な街づくりと緑あふれる水辺環境づくりをめざし、農業用水の確保のための護岸整備、浸水被害の防止のための貯留施設の整備、植栽などの環境保全整備や、遊歩道、親水施設など、住民のニーズに沿った約12kmの整備を行いました。
五個水路地区(平成7年度着手、平成26年度完了)
位置図
整備前
整備後
東大阪市の北部市街地に位置する五個水路は、かんがい期には農地への給水(徳庵ポンプ場で寝屋川から取水し農地へ給水)、降雨時には排水(取水とは逆に、ポンプを使って雨水を寝屋川へ排水)を行う用水と排水兼用の水路で、築造から36年余を経過し老朽化が著しく、水路の不等沈下やのり面の崩壊等が発生し、用水の確保が困難で、さらに、排水能力の低下が生じていたため、護岸整備延長3,695mに併せて、水路の管理に必要な周辺整備を実施しました。
水路の歴史
大和川の付け替え工事の翌年(宝永2年 1705年)、旧大和川筋の川床・池沼床が開発されて約50箇所の新田が造られました。五個・六郷水路は、新田開発とともに改修、整備され地域の農業発展に貢献してきました。上流部の古箕輪には高度な用水分岐の水門(藤五郎樋)もあり、歴史的景観が残されています。二つの水路は、地域の歴史的変遷を物語る施設であり、郷土の文化財としての価値を有しています。
ため池の防災・減災
事業概要
近年頻発する集中豪雨や大規模地震などの自然災害に対応するため、ため池の老朽対策や耐震対策、ハザードマップ作成などのハード・ソフト対策を総合的に推進する「大阪府ため池防災・減災アクションプラン」を策定しました。今後、アクションプランに基づき、管内各市とも連携し、計画的に事業を進めていきます。
- 大阪府ため池防災・減災アクションプラン(平成27年11月策定)
台風等の自然事象により府内で発生した農地・農業用施設に関する災害の記録については、こちら(農地・農業用施設災害に関する記録室)からご覧いただけます。
ため池整備事業
星田新池(交野市星田)(平成18年度着手、平成22年度完了)
整備前
整備後
ため池諸元 |
― |
---|---|
堤高 |
14.5m |
堤長 |
100m |
貯水量 |
71,800立方メートル |
交野市南西部に位置する星田新池は、地域の農業経営上欠くことの出来ない貴重な水源です。また、下流域には公的な施設や住宅等が多数存在し、堤防決壊による被害は甚大なものと予想されます。本事業により堤体の改修を実施し、ため池の機能回復及び農業経営の安定並びに防災機能の向上を図ります。
中ノ池(大東市大字寺川)(平成22年度着手、平成24年度完了)
整備前
整備後
ため池諸元 |
― |
---|---|
堤高 |
8.6m |
堤長 |
46.9m |
貯水量 |
14,280立方メートル |
大東市に位置する中ノ池は、星田新池と同様に、農業用の貴重な水源です。本事業により、堤防決壊に伴う災害を未然に防止し、ため池の機能回復及び農業経営の安定並びに防災機能の向上を図ります。
ため池耐震性調査診断事業
東日本大震災でのため池の決壊による甚大な被害を教訓に、大規模地震により堤体が被災した場合に下流の人家や公共施設などに影響が大きいため池について、耐震性能の診断を実施しています。
診断内容
地震直後の池の堤の沈下により貯水された水があふれないかどうかを確認します。
対象とする地震動
- (1)直下型地震動
上町断層帯、生駒断層帯、有馬高槻断層帯、中央構造線断層帯、六甲淡路断層帯、大阪湾断層帯の6つの断層帯のうち、堤体に与える影響が最も大きい断層帯による地震動 - (2)海溝型地震動
南海トラフ巨大地震動
診断結果
当事務所管内では、これまでに診断した26箇所について、いずれも安全性を確認しました。
(内訳:八尾市3、柏原市1、東大阪市4、枚方市7、四条畷市8、大東市1、交野市2)
- 大阪府内のため池耐震性能診断結果の公表について(平成28年3月25日報道発表資料)
農林漁業用揮発油税財源身替農道(農免農道)整備事業
事業概要
農林漁業用に使われたガソリンなどに課せられる揮発油税の減免に替わる各種身替措置の一つとして事業実施される、農業の近代化、農産物流通の合理化と農村環境の改善を目的とした農道です。
八尾地区(八尾市神立・大窪・山畑・服部川)(平成10年度着手、平成21年度完了)
位置図
整備前
整備後
八尾市北東部の山麓に位置する農業振興地域では、古くから花卉・花木等の産地として府下屈指の農業を展開してきました。しかし、地形が急峻なことや道路の幅が狭いことなどから、生産及び生活環境等基盤整備が平野部に較べて遅れており、地域農業を取り巻く環境は厳しさを増しています。
そこで、、農産物流通の効率化、営農の機械化、さらには農村の生活環境の改善を図り、地域農業の振興に資することを目的として、本事業により、農業振興地域を南北に貫く延長1,890m、幅員5.5mの基幹農道を整備しました。
農村振興総合整備事業(ビオトープ型)
事業概要
「ビオトープ」とは、「多種多様な野生生物が生息可能な空間」のことです。この事業は、農村地域の豊かな自然環境を保ち、守っていきながら、同時に地域の皆さんに、精神的なゆとりややすらぎを提供し、その自然環境が教育・文化の場としても活用されるように、それぞれのビオトープ間のつながりを確保しネットワークを形成することを目的として、平成6年に創設しました。
下田原地区(四条畷市)(平成8年度着手、平成14年度完了)
薬尾寺池整備前
薬尾寺池整備後
計画地である堂尾池と薬尾寺池の周辺地域は、昭和40年頃から無秩序な土砂採取で、それまでの豊かな自然環境に、大きな痛手を受けました。このため、大阪府では平成元年より「緑の文化園整備事業」に着手し、土砂採取跡地の緑化回復と府民の野外レクリエーション拠点整備を実施しました。
下田原地区では上記事業と関連づけ、堂尾池と薬尾寺池と下流水路・管理用道路について、農業施設の機能を確保しつつ、生物生息環境の保全と回復を図り、身近な自然とふれあえるレクリエーション空間として利用することにより、地域全体の緑環境の向上を図ることを目的として整備を行いました。