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ヘルシーおおさか21(点字広報)第62号 音声読上げ用
テーマ あなたも「人生会議」はじめてみませんか?
はじめに
あなたは「もしものとき」について考えたことはありますか?
思いがけない事故や病気の進行によって、どなたにもでも「もしものとき」が突然訪れる可能性があります。命の危険が迫った状態になると、約70%の方が、これからの医療やケアなどを自分で決めたり、希望を人に伝えたりすることができなくなると言われています。
「もしものとき」に備えて、私たちは今どのようなことができるか考えてみましょう。
はじめてみよう人生会議
あなたは「人生会議」という言葉を知っていますか?
人生会議とは、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の愛称で、自らが希望する医療やケアを受けるために、大切にしていることや望んでいること、どこでどのような医療やケアを望むかを自分自身で前もって考え、家族や医師など周囲の信頼できる人たちと話し合い、共有しておくことをいいます。
もしも、あなたに命の危険が迫り、医療やケアについて自分で決めたり、人に伝えたりすることができないような状況になった時、家族など信頼できる人が、あなたの気持ちを想像しながら医療・ケアチームと話し合いをすることになります。人生会議を通じて、あなたの気持ちを周りの信頼できる方々に知っていてもらうことは、あなた自身のためであり、またあなたの信頼する大切な人の大きな助けにもなります。
人生会議に「いつから」ということはありません。年齢や健康状態を問わず、まずはご家族やご友人などと話し合ってみましょう。今決められないことや考えたくないこともあると思いますが、無理せず、あせらず、自分のペースで考えてみてください。そして、気持ちに変化があれば、その都度話し合ってみましょう。
日ごろから考えたり、話し合ったりしておくことで、「もしものとき」にあなたの希望が尊重される決定につながります。「今回で全部決めてしまおう」と意気込まず、気楽に人生会議をはじめてみましょう。
なお、このような取り組みは、個人が主体的に動くことによって考え、進めるものです。知りたくない、考えたくない人への十分な配慮が必要です。
それでは、人生会議の進め方を5つのステップで、ご説明します。
【ステップ1】
治療のとき、あなたが大切にしたいことを考えてみましょう。
あなたが大切にしていることは何ですか?
例えば、「家族や友人のそばにいること」、「好きなことができること」、
「ひとりの時間が保てること」、「家族の負担にならないこと」、「痛みや苦しみがないこと」、「家族が経済的に困らないこと」、「身の周りのことが自分でできること」、「仕事や社会的な役割が続けられること」など、治療する際に大切にしたいことは、人によってそれぞれあります。その理由も考えながら大切にしたいことを考えてみましょう。
【ステップ2】
もしものとき、あなたの思いを伝えてくれる人を選びましょう。
選ぶ人は、一人である必要はありません。複数人となることもあるでしょう。もしも、病状などにより自分の考えや気持ちが伝えられなくなったとき、ステップ1で決めた「大切にしたいこと」を尊重してくれる人を選びましょう。
【ステップ3】
かかりつけ医に相談しましょう。
具体的に、「これから予想される経過」や、「受けるであろう治療やケア」、「ご自分の病名や病状」などについて、知りたいか知りたくないかも含めて一度考えてみましょう。
【ステップ4】
希望する医療やケアについて話し合いましょう。
もしものときの医療やケアについて、あなたの希望を共有しておくために、ご家族やご友人、身近な専門家と話し合ってみましょう。話し合いを続けることにより、孤独死や孤立死を防ぐことにもつながります。
また、病状などにより自分の考えや気持ちを伝えられなくなったときに、ご家族やご友人があなたの代わりに医療やケアについて難しい判断をする重要な助けとなります。
話し合う内容の例を2つご紹介します。
一つ目は、「どんな治療・ケアを受けたいか」です。
例えば、「病気と闘って少しでも長く生きたい」や、「延命につながるだけの処置は避けたい」、「痛みや苦しみがなく、自分らしさを保つことに焦点をあてた治療を受けたい」などが挙げられます。
二つ目は、「どんな場所で療養したいか」です。
例えば、「できるだけ住み慣れた自宅で生活したい」や、「病院や施設で療養したい」などが挙げられます。
次に、「もしものとき」の医療の例を3つご紹介します。
一つ目は、口から十分な栄養が取れなくなったときは、けいび栄養、胃ろう、中心静脈カテーテルから栄養補給するなどの医療があります。けいび栄養とは、鼻からチューブを通し、栄養剤を胃に送る方法です。胃ろうとは、お腹に小さな穴を開け、そこから胃に直接チューブを通して栄養剤を送る方法です。中心静脈カテーテルからの栄養補給とは、心臓付近の大きな血管に点滴で栄養補給をする方法をいいます。
二つ目は、自分で呼吸が難しくなったときは、人工呼吸器という機械を使用することがあります。自力での呼吸が弱いときに、人工呼吸器を使い気管にチューブを入れて肺に酸素を送ったり出したりすることで、呼吸を助ける医療です。
三つ目は、心臓や肺が停止したときの救命処置として、心臓マッサージなどを行い機能を回復させる心肺蘇生処置があります。
【ステップ5】
ステップ1からステップ4まで話し合った内容について記録しておきましょう。書き留めたものをみんなで共有しましょう。
「エンディングノート」と「人生会議」について
エンディングノートは、自分に万が一のことが起こった時に備え、あらかじめ家族や周りの人に伝えたいことを書き留めておくノートです。もしものときの医療・ケアの希望のほか、お葬式の方法などさまざまなことを書き留めておきます。
一方で人生会議は、ご自身がもしものときに備え「書いておく」という点は同じですが、その内容を「話し合い・共有する」という点が違います。
もし、エンディングノートを書いたら、ぜひその内容を信頼できるご家族やご友人、そして身近な医療・ケアチームに伝え、話し合いや共有する、人生会議をしましょう。
そうすることで、よりご自身のご希望が叶えられやすくなります。
これが「人生会議」をおすすめする理由です。
おわりに
誰の人生にも、始まりがあり、また終わりがあります。
「自らの人生の終わりに向けた活動」、いわゆる「終活」は、言葉としても活動としても、ずいぶんと私たちの生活に浸透してきています。一般的な終活の内容としては、お墓やお金、葬儀などの事前準備、エンディングノートの作成などがあります。そこに、ご自身の人生の締めくくりの時をどこで、どんな風に過ごしたいかということを考え、大切な人と共有する「人生会議」も加えてみませんか。
引用・参考資料
- 大阪府ホームページ アドバンス・ケア・プランニング(ACP、愛称『人生会議』)をご存知ですか?
- 大阪府パンフレット そのときが来たら考えられない だから今、人生会議
- 大阪府パンフレット 人生会議の記録 もしものときの医療やケアについて伝えておきたいこと
- 厚生労働省ホームページ ゼロからはじめる人生会議「もしものとき」について話し合おう