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部落解放同盟大阪府連合会 要望書
| 要望受理日 | 令和7年7月4日(金曜日) |
|---|---|
| 団体名 | 部落解放同盟大阪府連合会 |
| 取りまとめ担当課 | 府民文化部 人権局 人権擁護課 |
| 表題 | 大阪府2026年度予算編成にあたって 部落差別解消・人権行政の推進に関する要望書 |
要望書
2025年7月4日
大阪府
知事 吉村 洋文 様
大阪府教育庁
教育長 水野 達朗 様
部落解放同盟大阪府連合会
執行委員長
大阪府2026年度予算編成にあたって
部落差別解消・人権行政の推進に関する要望書
部落差別の解消と部落問題の根本的解決、人権尊重社会の実現にむけて、人権施策等の推進にご尽力されておられますことに、あらためまして敬意を表します。
本年は、内閣同和対策審議会「答申」(以下「同対審答申」という。)が出されて60年を迎えます。この「同対審答申」において部落問題は「単なる観念の亡霊ではなく現実の社会に実存する」「最も深刻にして重大な社会問題」であり「その早急な解決が国の責務であり、国民的課題である」との趣旨等をふまえて1969年に「同和対策事業特別措置法」が制定。幾度の法延長を経て「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(以下「地対財特法」という。)」が失効する2002年度末まで、特別対策としての同和対策事業が取り組まれてきました。
「地対財特法」失効を控えて大阪府では、時代を先取りした同和行政の改革が進められてきたものと、私たちは受けとめています。
2001年9月、大阪府同和対策審議会(以下「府同対審」という。)が「大阪府における今後の同和行政のあり方についての答申(以下「答申」という。)を大田知事(当時)に出しました。答申は「2000年部落問題実態調査」結果等をふまえた部落差別の現状認識にたったうえで「国同対審答申の精神をふまえ、その責務を分担し、部落差別が現存するかぎり、同和問題解決のための施策の推進に努める必要がある」「同和問題解決のための取り組みを、人権問題の本質からとらえ、人権条例の目的である『すべての人の人権が尊重される豊かな社会』の実現をめざして進めていく必要がある」と基本理念を示しました。
そして「部落差別は、差別を温存し、助長する因習等をなくし、全ての基本的人権を擁護する取り組みとともに、同和地区内外住民の交流、コミュニケーションを図る継続的な取り組みを通じ、相互理解を促進し、地域住民が協力して自らのまちづくりを進めていくための協働関係を構築し、同和地区とその周辺地域が一体となったコミュニティの形成を図ることにより解消し得るものである」とし、「格差の是正」から「人権のまちづくり」という新たな同和・人権行政の目標と、「府民の差別意識の解消・人権意識の高揚」「同和地区出身者の自立と自己実現の支援」「同和地区内外の住民の交流促進」という3つの条件整備の必要性を指し示しました。
そして、府同対審答申の具体化へ「特別対策としての同和対策事業」の改革を断行。「同和対策奨学金」を「大阪府育英会奨学金制度」の拡充につなげるなど、特別対策としての財源を活かし「人権尊重の観点に立った一般施策」への移行に取り組んでこられました。
地方分権の推進、地方自治の時代が到来した現在、同和・人権行政はますます府内各基礎自治体にその比重がかかってきています。この間、部落問題解決へ、先んじて取り組まれてきた経験と教訓等の普及へ、ご努力をいただいていることにあらためて敬意を表するものです。
「法期限後の同和・人権行政」が進められて、四半世紀を迎えようとしています。
「大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例」「大阪府人権尊重の社会づくり条例」「大阪府インターネット上の誹謗中傷や差別等の人権侵害のない社会づくり条例」「人権施策推進基本方針」「大阪府人権教育推進計画」等々、人権行政の時代にあって、部落差別解消行政における現状と今後の課題についてしっかりと論議を積み重ねていく必要があるのではないでしょうか。
本年は、また「部落差別地名総鑑」差別事件(以下「地名総鑑事件」という。)が発覚して50年という年にもあたります。総理府総務庁長官(当時)は「同和地区住民の就職の機会均等に影響を及ぼし、その他さまざまな差別を招来し助長する悪質な差別文書が発行され、一部の企業においてはそれが購入されたという事件が発生したことは、誠に遺憾なことであり、極めて憤りに堪えない」と談話を発表。明確に差別書籍であると断言して社会問題にまで発展しました。
「地名総鑑事件」は、差別図書が200を超える企業や個人が購入し、結婚や就職時の身元調査に悪用するなど部落差別を助長していたことにあります。
要するに政府は「差別を助長・誘発する『出版の自由』は許されるものではない」問題として対応されたものと、私たちは受けとめているところです。
今日、被差別部落の所在地情報(識別情報の摘示)が、インターネット上で流布・拡散、野放し状態となっています。
この問題に関しても、大阪府は「ネット上の差別解消条例」を制定。人権施策推進審議会での検討論議を経て同条例を改正。2024年度からは、不当な差別的言動等の削除等の対策を講じるための「行政指導指針」を策定して取り組みが進められています。
他方、2023年6月「全国部落調査」復刻版出版事件に係る東京高裁判決(確定判決)では、「社会通念上受忍すべき限度を超えた精神的苦痛が生じた場合には、私生活の平穏などの人格的利益の侵害が成立する」との判断が示され、最高裁での棄却により確定判決となりました。
今年4月「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律(情報流通プラットフォーム対処法。以下「情プラ法」という。)」が本格施行し、情プラ法第26条ガイドラインにおいて、前述の確定判決が引用されているところです。
歴史は繰り返される―とよく言われますが、高度情報流通社会にあって「表現の自由」と向きあいながら、ネット上の部落差別をはじめ人権侵害をなくしていくルールづくりをどう作り上げていくのかが、大きなポイントの一つと捉えているところです。
この間、吉村知事との政策懇談会で、ネット上の部落差別や人権侵害の問題に関して、「差別する表現の自由は許されるものではない」という基本的な方向についてお互いに認識を共有してきました。
「情プラ法」ならびに「ネット上の差別解消条例」を具体化した取り組みがつみ重なり、大阪府全域へ広がりをもって推進されることにより、インターネット上における部落差別の根絶へ、より効果を発揮することを大いに期待するものであります。
「情プラ法」は大規模プラットフォーム(以下「PF」という。)事業者が対象であり、各々のPF事業者が作成・公表する「削除基準(仮称)」をもとに削除要請が推進されるものです。しかし「削除基準」に温度差が生じたり、中小PF事業者は「情プラ法」の対象外であったりすることから、削除されないケース等々も大いに予想されます。
その際「ネット上の差別解消条例」に基づいた施策等が、はたして大阪府民のセーフティネットとしての役割を果たしていけるのかどうか。削除されなかったケースや偏見等を助長する言動等を「立法事実」としていくため集積と分析に取り組むのか等々、懸案される課題等を共有化し、ともに歩みを進めたいと考えているところです。
高度情報流通社会、人口減少・超高齢社会へと時代の変遷とともに、大阪府と府内基礎自治体との連携等のあり方も変わりました。
だからこそ、部落問題の根本的解決へむけた施策等のあり方、基本的な方向性等に関して論議を積み重ねていくことが非常に重要だと考えています。
つきましては、2025年度予算編成にあたって、貴庁として部落差別の解消と部落問題の根本的解決、人権行政のさらなる推進と充実を求めるため、下記のとおり、要望いたします。
要求項目
【1】部落問題解決のための施策等の推進に関して
(1)大阪府「同和対策審議会」答申(府「答申」。2001年9月)から四半世紀が経過しようとしている。2002年3月末「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(以下「地対財特法」)」の失効以降、地域改善対策協議会「意見具申」(1996年5月)をふまえて、一般施策に工夫等を加えて部落問題解決のための施策(人権施策)を実施、推進されてきた。下記の諸点について基本見解等を示されたい。
- 府「答申」をふまえた部落差別をなくす施策等の推進に関して、これまで実施されてきた施策等の効果測定が重要と考えるが、大阪府としての見解等を示されたい。
- ご承知のように、地対財特法失効後、特別対策としての同和対策事業の改革により実施されてきた「総合相談」「人権相談(人権ケースワーク)」「進路選択」「地域就労支援」の4相談事業に関しては、補助金から交付金へと移行。以降「総合相談事業交付金」を活用した相談活動が、府内各基礎自治体で実施・展開されている。同和・人権行政の推進の観点から大阪府としてどのように評価等をされているのか明らかにされたい。
(2)「大阪府人権教育推進計画(2022年9月改定版)」について
- 「大阪府人権教育推進計画」を具体化した施策に関して、この間の成果と課題について明らかにされたい。あわせて大阪府の職員等を対象とする取り組み状況と課題等についても示されたい。
- 政府「人権教育・啓発に関する基本計画(第二次)」が閣議決定されたが、「大阪府人権教育推進計画」の改訂(補強)にあたっての基本的考え方を示されたい。
(3)部落差別解消にむけた施策等の推進に関して
- 府内自治体も含めた人権研修(部落問題研修)の実施状況調査をふまえて、今後の課題等に関して、大阪府としての見解を示されたい。
- 「大阪府人権問題に関する府民意識調査」が今年11月に予定されているが、今後の人権教育・啓発の在り方の基礎資料としていくために、調査結果の分析を深めることが重要である。学識者の参画による「検討委員会」を設置し、必要な予算措置を講じられたい。
- 今後の同和・人権行政推進にむけた基礎資料とするために、当該自治体の協力を得ながら、隣保館活動(隣保事業)等に関する実態把握の実施を検討されたい。
- 前述した両調査結果の分析等をふまえ、今日的な部落問題解決にむけた施策等の在り方に関して、同和問題解決推進審議会に諮られたい。
【2】「情報流通プラットフォーム対処法(「情プラ法」という。)」を具体化した施策等の推進に関して
- 被害者への支援及び加害者への対応など「大阪府インターネット上の誹謗中傷や差別等の人権侵害のない社会づくり条例(以下「ネット上の差別解消条例」という。)」とも連動した普及啓発の充実に関して、大阪府としての基本見解を示されたい。
- 「情プラ法」施行により、大手プラットフォーム事業者に対し個人が削除要請することが可能となったとはいえ、削除されなかったケースも多々出てくることも予想される。あらためて「削除を求める被害者」の相談・支援を強化するための方針を示されたい。
- 削除されなかったケース等の集積へ、「ネットハーモニー」はもとより、府内各基礎自治体での人権相談とのネットワークにより取り組みを推進されたい。
- 「情プラ法」に関する「違法情報ガイドライン」によれば、部落差別問題は「私生活の平穏」を脅かす問題としても位置づけられたと捉えている。大阪府として「私生活の平穏」を脅かし、部落差別を助長・誘発するおそれのある情報(投稿)とはどのような情報と捉えているのか、見解等を示されたい。大阪府同和問題推進審議会に諮って「部落差別解消にむけた削除指針(仮称)」の策定を検討されたい。府内市町村等によるモニタリング活動に役立てられたい。
- 被差別部落の所在地情報の摘示情報(偽・誤情報含む)が、インターネット上で流布されている現状等をふまえ、「部落差別を助長・誘発する恐れのある情報(投稿)」を禁止する旨を、「ネット上の差別解消条例」あるいは「大阪府部落差別に係る調査等の規制等に関する条例」の条文として明確に位置づけるよう検討されたい。
【3】「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」具体化に関して
- おおさか男女共同参画プランの改定にあたって、現行プランの指標に関して達成状況の概要等について示されたい。
- 府内各自治体における「困難女性を支援する施策」等の推進にむけて、大阪府としてどのような支援や連携等を考えておられるのか。それぞれの地域の実情にあわせた施策が積極的に推進されるよう、その下支えとなる中間支援機関の整備など、物心両面での支援等を検討されたい。
- 「改正住宅セーフティネット法」の施行(2025年10月1日)により、「困難な問題を抱える女性」が住宅確保要配慮者の中に定義づけられることとなった。「大阪あんぜん・あんしん賃貸住宅登録制度(セーフティネット住宅)」に登録された賃貸物件について「困難女性」の受け入れ可能となる物件が増え、必要な支援等が行われるよう、関係する者や団体・機関等に対して積極的に働きかけられたい。
- 性犯罪・性暴力被害者支援に関しては連携型支援が進められているところであるが、協力医療機関の拡充についての進捗状況を示されたい。
- 女性支援相談員の養成講座受講内容にマイノリティ女性(高齢、障がい、ひとり親、部落、在日コリアン、在日外国人、アイヌ民族等)についての理解促進や配慮等についての研修内容を盛り込まれたい。
【4】教育分野に関する課題
- 授業料無償化により高校進学への選択肢が増える一方、再編整備計画に基づいて府立高校の統廃合が進んできている。後期中等教育における公教育の役割と責任に関して、大阪府教育庁としての基本的な考え方を示されたい。
- 高等学校において授業料以外で当該校への納付金(入学金含む)に関する実態把握を実施されたい。生徒の進路選択にあたって適切に公表されているのかもあわせて調査を実施されたい。
- 2028年度の府立高校入学者選抜制度で、特別選抜と一般選抜の統合、学校の特色と生徒の興味・関心がよりつながりやすくするように「学校特色枠」が導入されることとなった。「誰一人取り残されない」教育の推進、人権教育の視点がどのような反映されるのか、基本的な考え方を明らかにされたい。2028年度以降に高校進学を控えている生徒・保護者への周知等に関して基本方向も示されたい。
- この間、府立高校においてヤングケアラーに関する実態調査を実施されているが、分析等の結果から見えてきた課題等とともに、それらの解決にむけた取り組み方向について明らかにされたい。
- ヤングケアラー問題やひきこもり、高校中退等の「子どもの貧困」に係る様々な課題に対応しつつ、全てのこどもを対象とした多様な学びをどのように保障されようとしているのか、大阪府教育庁としての見解を示されたい。
- 今年6月、4省庁による「教育DXロードマップ」が公表された。その中で生成AIの利活用が示されている。教員の業務効率化や「生成AIによるデータ等を活用してさらに学びを深める」という積極面もある一方で、偽・誤情報を信じてしまったり、著作権やプライバシーの侵害を引き起こしたり、子どもたちの「生きる力」をのばしていくための思考力や創造性を失われることも大いに懸念される。文部科学省がガイドラインを公表しているが、大阪府教育庁としてのどのように対応されるのか、見解等を示されたい。
- 教育における権利保持者(学習者)の尊重と、人権尊重に資する学校運営と教育活動を推進するため、公立高校・私立高校における人権教育推進計画を作成・公表するよう、積極的に働きかけられたい。
- ひきこもりや不登校、高校中退等により、十分な教育を受けられなかった者への支援施策に関して、大阪府教育庁としての方針を示されたい。必要とする財政的支援も講じられたい。
- 学校現場において、SNS上でのやりとりからいじめや部落差別などの人権侵害事象へと進展している事例の収集と分析に取り組まれたい。
【5】生活福祉分野に関する課題
- 孤独・孤立対策に関する施策の推進を図るための重点計画がこのほど改定された。現在直面している課題の一つに子ども・若者の孤独・孤立状態の予防にむけた取り組みの推進(家庭でも学校でもない多様な居場所づくり、子ども・若者の悩みを地域で受けとめ、伴走支援を行う体制の構築等)が強調されている。隣保館や青少年施設の利活用など、大阪府としてどのような取り組みを推進されようとされるのか、基本見解を示されたい。
- 物価高騰等が続き、介護事業所等はもとより、街かどデイハウスや子ども食堂など、地域福祉に係る居場所活動等の運営に支障をきたしているが、大阪府としての支援策を検討・実施されたい。
- 改正生活保護法をふまえ昨年10月から実施されている「子どもの進路選択支援事業」の状況等(福祉事務所を有しない町村含む)を把握されたい。
- 地域共生社会の実現、地域住民の参画による地域福祉活動の推進、包括的な支援体制の整備に係る「地域づくり」等を担う地域人材の育成・支援に関して、大阪府の役割を明らかにされたい。
- 生活困窮者自立支援制度や隣保事業に関して、地域イベントや共生型食堂(子ども食堂)の運営サポート等に要支援者が参加するなど、社会参加支援(出番づくり)の企画・実施に活用できるような財政的支援について、国に積極的に働きかけられたい。
【6】「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セーフティネット法)等の一部を改正する法律等に関わって
- 住宅セーフティネット法が国土交通省と厚生労働省の共管となり、住宅確保要配慮者(以下「要配慮者」という。)に対する賃貸住宅の供給の促進に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)がこのほど公表された。基本的な方向として「要配慮者の居住のニーズ・実態」「住宅ストックの状況」「福祉サービスの提供体制」等を的確に把握することが強調されているが、大阪府としてどのように取り組まれるのか、見解等を示されたい。
- 住宅セーフティネットの整備に関して、賃貸人等へ働きかけて登録住宅・居住サポート住宅を積極的に確保に取り組むこと。公的賃貸住宅の的確な供給と公営住宅もまた「目的外使用で登録住宅・居住サポート住宅として提供可能」となった。都道府県・市町村は、基本方針等に基づいて「賃貸住宅供給促進計画を作成することが望ましい」とも示しているが、大阪府としての見解を示されたい。
- 改正住宅セーフティネット法により「居住支援協議会」の設置が努力義務とされた。しかし、大阪府域の市町村の中で「居住支援協議会」が整備されていないところが多数存在。そのため総合的・包括的な地域の居住支援体制の整備や居住支援団体が活用可能な施策の実施、要配慮者に必要な支援が届けられるのかが大いに懸念されるが、大阪府としての見解を示されたい。