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更新日:2014年4月28日

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人権学習シリーズ ぶつかる力 ひきあう力 参加体験型学習(ワークショップ)を進めるために

参加体験型学習(ワークショップ)を進めるために

1.参加体験型学習(ワークショップ)とは

参加体験型学習(「ワークショップ」の意味)とは、単に知識を一方的に伝達する学習方法とは違います。その学びは、参加者が意見を出しあったり、ゲームや作業など体験を通じてともに学びあうだけでなく、自らや社会をふりかえるという学習のプロセスの中で、参加者が主体的に考える力を身に付けるとともに、それを直接行動に結び付けようとする学習方法です。

人権問題の解決には、知識のみでなく、解決に向けた取組みを進める態度や技能(スキル)を身につけることが必要です。地域・職場・学校などさまざまな人がいる場においては、人々の間での無理解や対立が人権に関わっていることが多くありますので、参加体験型学習が有効です。その学習は、参加者が主人公となって、それぞれの違いを認め、受け容れ、ともに社会に生きるための人権ルールをつくっていくということでもあります。

この参加体験型学習を進行する人をファシリテーターと呼びます。ファシリテーターは、単に学習を進行するだけでなく、その学びを促進していく役割を持っています。参加者の状況に応じて、学習の素材(アクティビティ)を用意し、進行しながら参加者の意見を引き出し、整理していきます。ファシリテーターは、参加者と対等な立場で、ともに学ぶという姿勢を持つことが必要です。

2.学習を企画する

  • 学習の目標を設定します
    参加体験型学習は、その学習を通じて参加者とともに作り出したい目標を設定することが必要です。対象者や学習が行われる場によって、どのような人権問題の理解や態度、技能を身につけていくのか、どのような取組みに活かしていきたいのかを決めます。そして、それを、学習の最初に参加者と共有しましょう。
  • 参加者を知る
    学習の参加者がどのような人なのかをつかんでいくことが必要です。おとななのか子どもなのか、性別の状況はどうか、これまでどのような学習や取組みをされてきたのか、などによって、参加者が何を考え、何に悩み、何を学びたい(ニーズ)と思っているかなどを推し量ることができますので、それによって学習の目標を考えていきます。
  • 参加人数
    参加体験型学習の参加人数は、参加者が意見を出し合ったり、作業するために、ペアやグループになったりしますので、人数が多すぎると十分に意見が出せなかったり、参加者間の交流が充分にできない可能性があります。また、ファシリテーターが、参加者の状況を十分に把握できないということにもなります。逆に、人数が少ないと、いろいろな意見が出されないので、学習の深まりが期待できない場合もあります。あなたがやりやすいと思う人数をまず考えてみてください。
  • 学習の流れ(プログラム)を考えます
    • アイスブレーキング
      参加者は、知らない人と同席したり、どのような学習になるのかわからない中で、硬くなっていることが多くあります。この雰囲気を和らげて、意見を出しやすくしたり、作業をしやすくするためのアクティビティを、アイスブレーキング(「氷を砕く」の意味)といいます。簡単なゲームや意見のやりとりで、アイスブレーキングになるものがあります。アイスブレーキングは、学習の最初に入れるほか、学習の途中でも入れたりします。
    • プログラムを作る
      学習のテーマにそって、アクティビティを組み合わせていきます。組み合わせは、学習の目標に到達することができるように、系統だてたものにします。アクティビティの時間配分や、じっくり進める部分など、いろいろ工夫しましょう。
    • ふりかえりと意見や考えを共有をする
      アクティビティを進めた後、参加者がどう感じたのか、何に気づいたのかを自分自身でふりかえり、再確認します。それを参加者の間で紹介しあったり、発表したりすることで、さまざまな意見にふれることができ、アクティビティでの体験が整理され、本当に大切にするべきことを、参加者全体で共有することができます。

3.会場と準備物

  • 会場
    講義形式とは違い、ワークショップでは参加者が動く場面が多くあり、学習にあわせてその都度会場のレイアウトを変えて行く必要があります。そのためには、机といすは可動式のものがよいでしょう。また机といすを片づけて何もない状態で使うこともあるので、広さは定員よりゆったりとした会場を選ぶ方がよいでしょう。
  • 準備物
    準備物はアクティビティによって変わりますが、よく使われる物として以下のものが考えられます。

【どんなアクティビティでも用意しておいたほうがよいもの】

  • ホワイトボード(黒板)、ホワイトボード用ペン、イレイザー
    …主催者からのお知らせ、出てきた意見のメモ、発表物の掲示などさまざまな場面で活躍します。
  • 時間を計測できるもの(キッチンタイマー・ストップウォッチなど)
    …時間を計るのに便利です。また、参加者にファシリテーターの声が届きにくい時など、何らかの音で活動の区切りを知らせた方が伝わりやすい場合もあります。

【よく使われる物】

  • マーカー(裏写りしないように水性マーカーの方がよいでしょう)
  • のり付きふせん(サイズは用途によって変わりますが、正方形のものを使うことが多いです)
  • 白紙や模造紙(切って半分サイズで使う方がよい場合もあります)

4.実施する

  • 参加と信頼
    参加体験型学習は、あくまでも参加者が主役です。参加者からの意見がなかなか出なかったり、思いもよらない方向に話が行ってしまうこともあります。時には積極的な参加や発言を促されることに反発されることもありますが、その反応自体が学習者の参加姿勢でもあるのです。参加者の意見を注意深く聴くことで、少しでもその意図や背景がわかり、学習の進め方を柔軟に変更することができます。参加している人々の力を信じ、学習者とともに学ぶ姿勢で進めることが大切です。
  • 安心できる場
    参加者が意見を出したり、活動をしやすくするために、安心できる学習の場を作ることが大切です。そのために、学習の間で参加者が守りたいルールを決めておくことが有効です。参加者自身から提案してもらう方法もありますが、時間や参加度合によっては、ファシリテーターが提案し、参加者の承認をもらう方法もあります。(参加者や学習の目標によって付け加えていくのがよいでしょう)
    参加体験型学習のルールには次のようなことが考えられます。
  • 尊重しよう
    自分と違う意見であっても、お互いの意見を大切にして、しっかり聴き、まずは受けとめることです。その上で私はどう考えるのかを、きっちりと主張することが大切です。出した意見を一方的に批判されたり、その人が丸ごとダメであるように言われると、参加者はその場で意見を出せなくなります。
  • 私メッセージ
    「私は・・・と思う。」という、私から始まる、私の意見を語るということです。「○○さんが・・・と言っていた。」「世間では・・・だ。」というようなほかの人の意見を代弁する言い方では、他の参加者は発言者を信頼することができません。また、「あなたは・・・だ。」という相手を決めつける言い方では、参加者どうしの意見を交わらせることはできません。
  • 秘密を守ろう
    学習の場で出された話は、学習の外では公表しないということです。自分の経験や意見を率直に出して話し合う以上、そのことが、外で話されるようでは、安心して体験や意見を言うことができません。学習後は、心の中にしまっておきます。
  • 参加しない権利もある
    参加者の中には、学習の内容や方法、その日の体調や気分など、さまざまな事情で意見を出したくない、活動に参加したくないという人がいます。参加しないという選択肢もありにして、できるところから参加してもらうことが大切です。

5.留意する

  • 正しい答えよりもプロセスが大事
    人権問題は、さまざまな状況がある現実の中では、学習によってすぐに答えが見つかるとは限りません。しかし、明確な答えをみつけられなくても、それを一緒に考えて取り組んだ経過(プロセス)こそが大事なのです。そこで出された多くの人の知恵や経験、大切な事柄、そして人のつながりが、これから人権に取り組む上での財産になるでしょう。
  • 差別的な発言や非難するような発言には
    人権問題をあつかう学習の中では、時には差別につながるような発言が出たり、非難するような発言が出たりします。その時は、答えを急がず、ほかの参加者からの意見を出してもらいながら、参加者とともに考えます。しかし、あまりにも過度な発言であったり、意見を交換していく時間がないときは、ファシリテーターの考えをきっちり説明したいものです。
  • 辛い経験や信念を持った人
    差別や暴力を受けた経験があるなど、辛い経験をした人が少なからずいます。その時は、辛い気持ちのままで無理に意見交換に参加しなくてもよいこと、できる範囲で参加することを勧めます。また、確固とした信念を持っていて、ほかの人の意見を聞かない人がいたら、その信念を認めながら、ほかの人の意見も聞いてみることを勧めます。ファシリテーターは、このような人もいる可能性があることをあらかじめ念頭においておいた方がよいでしょう。
  • 話がとまらない人
    参加者の中には、話し始めると止まらない人がよくいます。その時は、ファシリテーターがある程度、一人が話す時間の目安を示しておくことが有効です。また、ほかの人はどうですかなどと声をかけて、話し合いに介入することも必要です。
  • 工夫と創造
    アクティビティは、説明されているとおりに進めてもかまいませんが、あなた自身の考えで、柔軟に変更することもできます。企画で考えた学習の目標や参加人数、参加者の様子、そしてあなたの個性を加味して、あなた流の人権学習の創造にチャレンジしてみてはどうでしょうか。

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