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大阪府人権教育推進計画 1 はじめに-人権教育の今日的意義-
1 はじめに―人権教育の今日的意義―
人権とは、長い歴史の中で人々が苦しみを乗り越えて獲得し、数多くの試練に耐えて守られてきたもので、日本国憲法をはじめ国際人権規約、人種差別撤廃条約等に示された具体的な規準です。そして、人権が尊重された平和な社会の実現は現在においても、また、将来においても、すべての人の変わることのない願いとして、最も優先度の高い政策指標です。
人権を取り巻く内外の深刻な状況を直視したとき、人権の尊重とその確立は、人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する基本的な問題であり、その確立なしに真に実りある世界平和を達成することができないことを、改めて認識する必要があります。
21世紀を「人権の世紀」としていくためには、国際連合や国の取組のみならず、地方自治体、企業、市民が同じ目的に向かって、それぞれの役割を適切に果たしていくことが不可欠です。
このため、大阪府では、引き続き、すべての人の人権が尊重される豊かな社会(差別のない社会、個人としての尊厳が重んじられた社会、個性や能力を発揮し自己実現の機会が確保された社会)づくりに向けた施策の一つの柱として、人権文化が社会に浸透し、人権の視点が社会の仕組みに根付くことを目的とした人権教育を推進することとしています。
それは、人権及び人権問題に係る知識を深めるだけではなく、人権を学ぶ過程で、府民一人ひとりの「なぜ?どうして?」という疑問にていねいに応え、人権侵害や差別を生み出すおそれのある慣習や人と人との間に生じる権力関係への「気付き」を促すとともに、現実に起こっている人権問題の解決に資する「技能と態度」を身に付けることを目指した取組でなければなりません。
また、豊かな人権意識を育む観点からは、学習者自身が人権を守られ慈しまれることによって自らも人を愛し信頼することを学んでいく、共存の理念を大切にした学びの場が確保されていることも重要です。
さらには、一人ひとりの価値観や生き方が多様化する中で、多くの人が伝統的な社会慣習や家族のあり方に寄せる心情にも配慮しつつ、個人がいかなる生き方を選んでも社会的に不利益とならないような取組も求められています。
こうした意味で、人権教育とは、信頼関係のある学びの場の中で、府民一人ひとりがかけがえのない生命の尊さや痛み、あるいは人間の尊厳に思いを致し、人権を自らの課題として学ぶことを通した、差別のない、一人ひとりの人権が確立された社会の構築に向けた取組であると言えます。そして、次のような点を十分考慮したものでなければなりません。
- 一人ひとりが人権尊重社会の実現に向けて、主体的な取組を行うことが求められています。同時に、具体的な人権上のニーズや問題を抱えた当事者の自立、エンパワメントを支援し、自己選択・自己決定できる環境を整備することが不可欠です。
- 家庭や学校、地域等あらゆる機会や場をとらえて人権教育の取組に対する支援を行う必要があります。また、家庭や学校、地域等の中で、一人ひとりがかけがえのない存在として尊重され、人権尊重の理念が実践されていることが重要です。
家庭は、人間関係を形成するための基礎的な力や社会規範・倫理観、豊かな感性を育むために重要な役割を担っており、その機能が適切に発揮されるよう、適切な支援が行われることが必要です。
また、学校教育においては、すべての教育活動を子どもの人権尊重の観点から実施することが求められており、日本国憲法や国際人権規約をはじめ、児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)、人権に関する法律・条例等の趣旨、内容を適切に踏まえて、子どもに対する指導が行われなければなりません。 - 府民一人ひとりが、主体的に社会に参画するためには、自らの可能性を信じ、自己実現する力を養う「学び」の場が提供されていることが重要です。
また、情報通信技術が急激に進歩しメディアの果たす役割、影響力が大きくなる一方の社会において、メディアを使って表現していく能力、様々な情報を主体的・批判的に読み解く能力(メディア・リテラシー)を高めることが、人権教育を進める上で重要です。
さらに、個人情報の保護等についても、理解を深めることが求められています。 - 現実に起こっている人権問題に対し、人権教育等に携わる者が具体的・実践的な対応力を持つことが重要です。人権侵害につながる兆しを見逃さず、適切な対応が図られるよう、一つひとつの事例から人権の課題を明らかにするとともに、人権教育に生かすための調査・研究の取組が図られなければなりません。
- グローバル化の進展により、地域の中で暮らす外国人は増加し、文化や価値観の多様化が進む中、大阪がすべての人にとって快適な都市として発展していくためには、すべての人の人権が尊重されるとともに、言葉や文化、習慣の違いを認め合う社会を実現していくことが重要です。
このような取組は、行政だけで進められるものではありません。すべての府民が主体となった社会全体の取組が重要です。とりわけ、社会に大きな影響力を持つマスメディアに従事する関係者の取組は不可欠です。
豊かな人権文化の創造のためには、すべての人々が、それぞれの個性や価値観、生き方の違いを認め合い、多様性を尊重することが必要であり、人権侵害はあってはならないものであるとの意識を常に持たなければなりません。大阪府職員をはじめとする公務員については、自らの職務が人権尊重社会の実現を願う府民から負託されたものであることを強く自覚し、それぞれの業務の立案や事務執行、府民との応接等において、単に人権を守るだけでなく、人権の視点を重視し、人権が確立された社会の実現に努めることが厳しく求められており、他の主体以上に人権研修の取組は不可欠です。
さらには、議会・行政委員会の関係者に対しても、人権に係る情報の提供に努め、教材や講師を紹介する等、それらの取組に協力していくことが不可欠です。