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第7回みどりのまちづくり賞(愛称:大阪ランドスケープ賞)の受賞作品について
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1.ランドスケープデザイン部門 (まちが美しくなるみどりづくり)
【大阪府知事賞】 ダイキン工業株式会社 テクノロジー・イノベーションセンター(TIC)の森 (摂津市)
- [事業主]ダイキン工業株式会社 淀川製作所
- [設計者]日建設計・NTTファシリティーズ設計共同企業体
- [施工者]株式会社竹中工務店、住友林業緑化株式会社
講評
「T I Cの森」の内部にはせせらぎや芝生広場、ウッドデッキが配され、研究・開発技術者に癒しとともに感性を刺激する空間となっています。隣接する淀川の環境とも連続し、野鳥類や昆虫相も豊かで生物多様性に大きく寄与しています。外観はシャープなセンター棟との対比的調和が達成され、執務室や会議室からは緑が全面的に展開する内観となっています。メモリアルフォレストは長い歴史の中で植栽されてきた多くの記念樹を謂れとともに移植されており、歴史と記憶の継承に大きく貢献しています。
社員有志によるワークショップを通じてプランニングがなされ、完成後も直ちに社員有志による管理運営が実行されています。この森の実生苗も敷地内の他の区画や他の工場へ移殖できるよう有志の手によって育苗されています。また、近隣住民にも開放され格好の散策路となっている点もすばらしい。
(審査委員長 大阪府立大学研究推進機構特認教授 植物工場研究センター長 増田 昇)
【奨励賞】 グランドメゾン千里中央東丘 (豊中市)
- [事業主]東丘住宅マンション建替組合、積水ハウス株式会社大阪マンション事業部(参加組合員)、株式会社長谷工コーポレーション(参加組合員)
- [設計者]株式会社長谷工コーポレーション大阪エンジニアリング事業部
- [施工者]株式会社長谷工コーポレーション
講評
開発後半世紀以上の歳月を重ねた千里ニュータウンには、魅力的な二次的自然が形成されている。
「グランドメゾン千里中央東丘」は、千里東町公園と千里中央公園の間に位置する分譲集合住宅だが、事業者の環境に対する思いを反映し、人々の暮らしを包み込む、千里ならではの二次的自然のランドスケープが再現されている。
フロントガーデンには、歴史をつなぐシンボルとして既存樹のケヤキを残し、千里丘陵の自生種や在来種を活かした、ガーデンコリドールやヒーリングガーデンを設けるなど、生活動線や生活場面に寄り添い、心身になじむ植栽計画が心地よい。
緑地とライフスタイルが響き合って、より豊かな景観とコミュニティを形づくっていくことを期待したい。
(審査委員 大阪ガス株式会社エネルギー・文化研究所 特任研究員 弘本由香里)
【奨励賞】 コイズミ緑橋ビル (大阪市東成区)
- [事業主]小泉産業株式会社
- [設計者]株式会社竹中工務店
- [施工者]株式会社竹中工務店
講評
住宅街に、独創的な緑の壁面が聳(そび)えている。多様な樹木が各階から空に向かって列状にずらりと立ち並ぶ様は、一瞬重力が狂ったかのような錯覚に陥るほどの迫力である。各階のバルコニーに出ると、樹木周辺には思いのほかゆとりがあり、思い思いに利用することが可能な設えになっている。建物内から外を望むと、工夫を凝らした人工光が自然光と溶け合う狭間で樹木が添景として絶妙な効果を醸し出しており、この緑のデザインは、独自の光の風景づくりに寄与していることが分かる。
ただし、その継承には知恵と技術が試される。各階の樹木は日照を求めより外部に伸びていくことが予想され、樹種のなかには特に肥大・伸長成長しやすいものも含まれている。枝折れや根上がり等の防止を含む、この空間に相応しい適正かつ安定した樹木の生育管理が、今後の重要課題となってくるであろう。
(審査委員 奈良県立大学地域創造学部地域総合学科 准教授 井原 縁
2.ランドスケープマネジメント部門 (まちが笑顔になるみどりづくり)
【大阪府知事賞】 ガーデンシティコープ金剛東すみれ会 (富田林市)
[活動者] ガーデンシティコープ金剛東すみれ会
講評
平成10年から活動を開始され、今年は20年目に当ります。集合住宅団地の横の約300mにも及ぶ緑道を色とりどりの草花で緑化され、華やかで魅力的な空間をまちに提供されています。
視察時にはどこからともなくメンバーが三々五々と集まりだし、楽しげな会話が弾みます。始めからのメンバーに新たに引っ越してきた方が加わり、お友達作りの絶好の機会となっています。
クリスマスローズやシュウメイギク、ホスタ、グロリオサなど、あっと驚くような花が多いのが魅力作りの大きなポイントになっており、四季を通じて珍しい花が咲き乱れています。毎朝の通勤通学者に喜ばれるだけでなく、福祉施設からの散歩や小学校での花プロジェクトへの参加、高齢居住者への花束の配布など、地域に大きく貢献されています。
また、近隣だけでなく他都市からの視察や現地研修会も積極的に受け入れられており、花と緑のあるまちづくりに大きく貢献されています。
(審査委員長 大阪府立大学研究推進機構特認教授 植物工場研究センター長 増田 昇)
【公益財団法人 国際花と緑の博覧会記念協会長賞】 長池オアシス管理会 (泉南郡熊取町)
[活動者]長池オアシス管理会
講評
ため池は古くから農村地域の共有空間として活用されてきましたが、農業に従事されている方以外にとっては少し縁遠い存在であることが一般的です。しかし、熊取町北部のため池「長池」は、池周囲の市街地にお住まいの方々も憩い・楽しむことができる地域に開かれた魅力的な空間となっています。こうした環境は水利組合と池周辺の自治会とで構成される同会による長年の活動により育まれたものであり、これは賞の趣旨である「自然と人間の共生」という観点からも、ため池と人々との新たな関わり方を示しているものだと感じました。
府の事業により親水空間が平成12年に整備され、その後同会による維持管理が行われていますが、役員の方々は活動を「毎日継続すること」をモットーとしており、その貢献度および継続性は高く評価できるものです。さらに同会の活動の成果や意義が空間利用者にも伝わり、その人たちが新たに維持管理活動に参加するなど、約100人にも及ぶ会の活動が地域を巻き込みながら発展していることも評価でき、今後の持続的な保全活動も期待できます。
地域固有の景観・生物多様性の保全に寄与するとともに、地域社会をつなぐコミュニティの場であり、今後も大切に育て活かしてほしいと思います。
(審査委員 大阪大学大学院工学研究科環境・エネルギー工学専攻 助教 松本邦彦)
【みどりのまちづくり活動賞】 花咲かしんきん運動 (府内各営業店舗)
[活動者]大阪信用金庫
講評
府内に70店舗以上を展開する地域金融機関の大阪信用金庫。地域貢献として活気ある街づくりを応援するため、店舗の周辺に趣向を凝らした花壇や緑のカーテンを設け、周辺の清掃活動を行うなどの「花咲かしんきん運動」を全店舗で10年以上継続されている。
通常そのような活動は手間がかかり業務の支障になると思われがちであるが、予想に反して、若手の人材育成や働き方改革などの業務改善に繋げられていることは特筆に値すべきことである。そのマネジメント力に敬意を表する。
今後も積極的に運動を展開し、その取り組みを紹介することで、御社のシステムが周囲に波及し、活気ある街づくりの企業リーダーとして活躍されることを期待する。
(審査委員 株式会社庭樹園 代表取締役 當内 匡)
【審査委員長特別賞】 UR都市機構 千里青山台団地 (吹田市)
[活動者]ITO×UR みんなの庭プロジェクト(みんなの庭活動の住人グループ、UR都市機構、伊東豊雄建築設計事務所)
講評
千里青山台団地は、1970年の大阪万博開催にむけて開発された千里ニュータウンの北の一画に位置しています。丘陵地には74棟が建ち並んでいますが、高低差のある地形を活かしていることから、のびやかな風景が広がっており、豊かに育った緑地はもはや歴史的資産といえるでしょう。完成から50年を経て世代交代が進むなか、高齢者が生きがいを感じ、若い世代が子育てをしたいと思える環境づくりが、この「みんなの家プロジェクト」で取り組まれていることは誠に喜ばしいことです。小さな庭(花壇)をつくり育てることで住人同士のつながりをもつくり育てようとする活動は、まず平成27年に「ハーブの庭」として誕生し、現在は5か所で22の庭が作られています。
取り組みはまだ3年目でありますが、今後ますます花壇と笑顔が増えていくことを期待いたします。
(審査委員 京都造形芸術大学芸術学部歴史遺産学科 教授 仲 隆裕)
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