ここから本文です。
企業のがん対策について(一般社団法人エル・チャレンジ事務局へのインタビュー)
「健康診断は行って当たり前」!~がん検診を含めた社員の健康管理に取り組む~
一般社団法人エル・チャレンジは、「はたらく・まなぶ・くらす」というテーマで障がいのある人の“幸せ”について追及するため設立されました。
「就労継続支援B型/就労定着支援 えるえる」、「スクール型 自立訓練・就労継続支援B型 L’s college (エルズカレッジ)おおさか」を設立し、支援学校等を卒業された方が社会で豊かに生きていくために、その人の持っている力をさらに引き出し、より幅を広げ、社会人として必要な力を身につけるため活動されています。
同時に、自社の従業員の健康管理にも積極的に取り組まれています。
一般社団法人エル・チャレンジのHPはエル・チャレンジを(外部サイトへリンク)(別ウィンドウで開きます)
1.がん検診推進について
一般社団法人エル・チャレンジ 事務局長 丸尾様(左、以下M)、波多野(はたの)様(右、以下H)
- 法人の従業員数等について教えてください。
事務局と他2事業所(えるえる、エルズカレッジ)合わせて50人弱で、男女比は1対2で女性の方が多いです。年齢層は40代以上が多いですが、エルズカレッジは20,30代も増えてきています。 - がん検診の実施方法について教えてください。
H)協会けんぽが実施している健診※の中に胃・大腸(・肺)がん検診が含まれており、対象の方にはそちらを利用していただいてます。(※生活習慣病予防健診)
女性の乳がん・子宮頸がん検診については2年に1回のオプションですが、追加して受診してもらっています。 - 具体的な推進方法についてお聞かせください。
M)「健康診断は行って当たり前」のスタンスで、未受診者に対しては、事務局長や総務担当から積極的に受診を促しています。
H)また、自己負担分にあたる費用は事務局が全額負担しています。 - 検診結果や精検結果の把握についてお聞かせください。
H)生活習慣病予防健診受診者の健診結果については、本人が受診前に記入する問診票に情報開示(ただし、定期健診の結果についてのみ)の承諾欄があり、健診機関経由により会社で把握できますが、精検の受診有無や結果については個人情報の問題があり、なかなか把握ができない状況です。 - 精検受診は重要ですが、やはり難しい部分があるのですね
H)要精検となっている方には、すぐにでも精検を受診してほしいと考えていますが、個人情報の問題もあり、なかなか確認が難しいと感じています。
M)男性には私が精検受診を促します。ただ、女性が多い職場でもあり、女性には配慮が必要と思っていますので、女性社員には同性の波多野さんから促してもらうようにしています。 - この健診(検診)により実際にがんが発見されたケースはありますか?
M)(がん以外も含めると)過去に40代以上の人のうち3人がこの健診(検診)をきっかけに病気が見つかりました。幸いなことに全員が早期発見だったため、1週間程度の入院で職場に復帰しています。
病気が見つかった社員からは「本当にありがとう。」と、非常に感謝されました。 - がんになった途端に退職してしまうケースも多いのですが……
M)他企業の場合、そのようなケースもあると聞きます。事務局では全員が健診(検診)を受けており、早期発見できていることが、結果として仕事との両立につながっているのだと思います。 - 新たな取組みがありましたらお聞かせください
H)50人未満の事業所で産業医がいない状況の中、「やりっぱなし健診(検診)」にしないために、昨年度より地域産業保健センター(産保センター)を活用し、従業員の健診(検診)結果を基に仕事の配置に問題ないか等のアドバイスをもらっています。 - 理想的な産保センターの活用方法ですが、どのようにしてお知りになったのですか
H)きっかけは、社会保険労務士からの紹介でした。産保センターの利用は無料のため、より多くの企業に活用してもらいたいです。 - 今後実施したいと考える取り組みはありますか
M)一定年齢以上の従業員に対しては、半日ドッグの受診を必須にしたいと考えています。 - お話をお伺いしていると、かなり熱心にがん検診を含めた健康管理に取り組んでらっしゃいますが、その理由をお聞かせください。
M)従業員は会社の財産であり、従業員の健康保持に取り組むことは会社の責任であると思っています。また、会社側にとっても、従業員の健康保持はメリットがあります。もし退職者が発生し、求人をする場合には1回あたり40万円の費用がかかります。
また、中小企業の場合は大企業に比べて採用までに時間がかかることが多く、更なる費用が発生する可能性もあります。さらにその従業員の持っていたノウハウ等も失われてしまいます。一方、健康診断にかかる費用はそれに比較すると少額であり、従業員には健康のまま仕事を続けてもらうことが一番です。
2.事務局長について
- 丸尾事務局長自身ががん罹患の経験があるとお聞きしているのですが、その発見経緯をお聞かせください。
M)実は検診ではなく、たまたまでした。腸炎をきっかけに、5年ほど大腸の内視鏡検査をしていなかったことから、病院で内視鏡検査を受けましたら腫瘍があることがわかりました。
正確に言えば、がんではない腫瘍で早期の直腸カルチノイド(サイズ:5mm)の診断を受けました。ただし、こちらも大きくなれば悪性になることも多いため、早期発見ができてよかったです。 - すぐにその診断は出たのですか?
M)検査から診断までは数週間かかりました。恐らく早期だと言われていましたが、診断までの数週間が一番不安でした。ただ、家族にはその不安を出さず「全然大したことはない」と言っていました。結果、5mm程度の早期のものでよかったですが。 - 治療についてお聞かせください
M)数日入院し、内視鏡治療で切除しました。入院先としては、がん専門病院と地域の医療機関の選択肢がありましたが、地域の医療機関を選択しました。
理由は、地域の医療機関で5年前に大腸内視鏡検査をしていたこともあったのですが、中小企業の経営者ならではの問題もありました。「がん専門病院に入院=がんに罹患」と周囲に広まってしまい、会社の取引等に影響を及ぼす可能性を考えました。
これは私だけの考えではなく、他の中小企業の経営者の方と話をしていても同様の意見が出てきます。 - ありがとうございました。最近は治療と仕事の両立には周囲の理解も重要視されており、特定の社内という範囲だけでなく、事務局長の仰っておられるような、病院を選ばないといけないようなケースをなくすためには、社会全体に「がん=死の病気ではない」という理解がもっと深まる必要があると感じました。