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更新日:2009年7月10日

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効果的な学習教材の選定・開発

2.効果的な学習教材の選定・開発

人権教育の学習教材を選定・開発するに当たっては、まず何よりもその学習の目的が明確化されなければならない。その教材から、子どもたちにどのような知識や技能を身に付けさせたいのか、子どもたちの中にどのような意識や態度を育みたいのかが、具体的に設定されている必要がある。
その上で、人権が尊重される社会づくりを自らの問題としてとらえ、自ら考えることができるようにするなどの教育効果を高めるため、身近な事柄を取り上げたり、児童生徒の興味・関心を活かしたりするといった教材の内容面での創意工夫を行う。むろん、このことは、身近でない課題を取り上げないということを意味するのではない。子どもたちの日常を超えた、社会全体や地球全体に関わる課題を取り上げることによって、逆に身近な課題についての認識が深まり、人権問題と自らとのつながりが見えてくることも考えられる。
学習の目的に応じて、生命の大切さに気付くことができる教材、様々な人権問題に気付くことができる教材、それぞれの人権問題を深く考えるための教材、自分自身を深く見つめることを意図した教材、身の回りの世界や周囲の人々との関わりを問い直すための教材、コミュニケーションのとり方や自己を的確に表現する技能を学ぶ教材など、多様な学習教材の選定・開発が望まれる。
この場合において、既存の教材や教職員が作成した教材を子どもたちに与えるだけでは必ずしも十分ではない。例えば、保護者をはじめとする地域の人々の生き方・考え方や地域の様々な歴史・伝統を学ぶ際の聞き取りや調べ学習といった活動の中から、子どもたち自身が自らの教材を作り上げていくというプロセスも大切にしたい。
また、それと関連して、教師・教授者の役割を問い直すことも重要であろう。子どもたちの主体性を引き出し、活発な学びの場を生み出すために、教師には「ファシリテータ(学習促進者)」としての役割が期待される。すなわち、知識の一方的な伝達に止まらない、創造的・生産的な活動を保障する進行役としての働きかけが望まれるのである。
なお、学習教材の選定・開発に際しては、児童生徒の発達段階を十分考慮するとともに、その内容を公正さの確保の観点から吟味することも大切である。例えば身近な事柄を取り上げる場合など、教材の内容によっては、プライバシーの保護等にも十分配慮することが重要である。

【参考】効果的な教材の例

1:地域の教材化

地域におけるフィールドワークなどとの関連を図りながら、地域の歴史や産業などを取り上げて教材化する。市区町村においては、これに関連する資料等が図書館などに保管されていることも多いので、それらの活用は可能であり、容易であろう。ただし、活用に当たっては、児童生徒の実態や発達段階を踏まえ、また、学校がねらいとしている課題との関連等の点から検討する。

2:外部講師の講話やふれあいの教材化

福祉作業所や高齢者施設などにおいて人権課題と直接関わって働く人、また、高齢者や障害のある人などの講話や談話は、児童生徒に自分の生き方を振り返らせ、人権課題と真摯に向かい合わせる契機となる。また、地域の人や人権課題に直接関わる人から直接出されるメッセージは、生活課題と結びついて、児童生徒に深く考え自らを見つめ直させる教材として効果的である。なお、高齢者や障害のある人と直接ふれあい学ぶ場合には、人権上の配慮に基づいた十分な事前指導を行う必要がある。

3:生命の大切さに関する教材

自殺、いじめ、暴力行為などの問題と関連する場合も含め、生命の大切さについての指導を行うに当たっては、できるだけ共に生きる喜びや大切さに気付けるような教材の活用が望まれる。発達段階を踏まえつつ、生きることを肯定するような建設的な内容の教材を選定したい。具体的には、例えば、以下のような工夫も考えられる。

  • 医療機関や消防署等で救命活動に直接関わる人々からの講話や体験談の教材化
  • 保護者や産院等の協力を得る誕生の記録の教材化
  • 保育所や幼稚園で働く人の講話の教材化
  • 妊娠中の女性をゲストティーチャーとした講話の教材化

4:保護者や地域関係者と共に作る教材

児童生徒と関わる大勢の人達との協働による教材の開発は、学校における人権教育への理解を深めるとともに、共に児童生徒を育てるという人権教育の基盤づくりにもつながるものであり、意図的に設定していきたい。学校だけが主導権を握るのでなく、地域の人権擁護委員など、公の組織や団体の支援を積極的に取り入れていくことが、成功につながる。

5:視聴覚教材など児童生徒の感性に訴える教材の活用

人権劇や映画、ビデオなど、学校がねらいとしている課題を取り上げたものが活用できる。読み物資料も視聴覚教材として再編集することにより、児童生徒の関心を高め、学習効果を向上させることが可能となる。パソコンの活用なども考えられる。例えば、児童生徒が自ら演じる「人権劇」などは、当事者としての意識を高めるだけでなく、観劇する児童生徒達にとっては、効果的な教材となる可能性を持っている。

6:小説、詩、歌などの作品の教材化

学習教材は、一人一人の児童生徒が自らの体験を十分に追体験できるものであることが望ましい。小説、詩、歌などの作品については、児童生徒の実態を踏まえ、取り上げようとしている人権課題のねらいを明確にして活用したい。また、取り上げ方によっては、ねらいから外れてしまう危険性も考慮し、指導過程上のどこでどのように活用していくのかを事前に想定して開発していく。

7:同世代の児童生徒の作品の教材化

人権作文・人権標語・人権ポスターをはじめ、同世代の児童生徒たちが取り組んだ作品は、児童生徒にとって身近な学習教材である。広く社会にその成果が認められた作品はもちろんであるが、当該校の児童生徒による人権作文などは、特に、興味や関心を高めるために効果的であり、十分に児童生徒の心に迫るものとなる。ただし、活用に当たっては、誤解や偏見を生じさせないよう、事前に人権上の配慮をしておくことが重要である。

8:歴史的事象の教材化

児童生徒の発達段階を踏まえ、歴史上、人権課題に直面した人物の生き方に触れさせたり、人権侵害の出来事について考えさせるような教材を選定することも重要である。

9:教材を通して、よりよい出会いをつくるための教材

人権教育の教材は、人として共に生きていく上での、よりよい出会いをつくる機会を与えるものとして、また、そうした出会いづくりに必要な知識・態度・技能を養うためのものとしても重要である。児童生徒が人間同士の関係について考えるための基礎・基本として、「権利に関する知識を習得する」、「世界人権宣言、児童の権利条約、憲法などの条文化された法規への理解を深める」、「知識を通して行動や態度の変容を促し実践へとつなぐ」などの学習が必要であり、そのための教材の工夫が求められる。また、技能を学ぶ学習においては、例えばエンカウンターのような、児童生徒の人間関係づくりのための手法やプログラムの活用も念頭に置き、必要な教材の選定・開発を行っていくことが考えられる。

10:情報交換できるシステムの活用

教材の選定・開発に当たっては、開かれた体制づくりに留意することが重要であり、ホームページやメールの活用などにより、情報の共有化を図ること等が求められる。相互の交流や情報交換を通じて、広い視野に立ち、学校に対する様々なメッセージ等を収集し、これを活用することで、児童生徒の実態に迫る資料の作成や、より望ましい教材の選定等において、大きな成果を上げられるものと期待できる。

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