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第2回みどりのまちづくり賞(愛称:大阪ランドスケープ賞)の受賞作品について
1.ランドスケープデザイン部門(まちが美しくなるみどりづくり)
【大阪府知事賞】パークシティ南千里丘(摂津市南千里丘)
事業主 三井不動産(株)
設計者 鳳コンサルタント(株)環境デザイン研究所
施工者 (株)熊谷組
講評
本物件は、阪急京都線の新駅「摂津市駅」に面する環境配慮型の再開発エリアの先行整備の一角を占める集合住宅地区のランドスケープである。環境配慮という地区全体の新しいコンセプトに呼応したランドスケープのあり方が追及されており、里庭八景と名付けられた8つの庭から構成されている。駅に面して「花の森」とそれに続く「雑木のみち」、地区の幹線街路に面して「紅葉の森」と「遊びの森」が配され、豊かな高木とアースワークや石庭から構成されるランドスケープは、地区を象徴する魅力ある街並みの形成、暮らしと環境との関わり合いの表出に大きく寄与している。
一方、内部の空間にはロビーに面した滝と水面のある「水の庭」、ラウンジに面した枯山水の「竹の庭」、住棟をつなぐ通り庭としての「光のみち」があり、光と水、風など、移ろいのある自然の気配を映し出し、ロビーとラウンジの雰囲気や居心地に大きく寄与している。立体駐車場屋上の遊具のある人工芝の広場と菜園は、キッチンガーデンとしてのクラブ活動や各種のイベントを通じたコミュニティ形成が目指されており、幅広い世代が触れ合うことのできるコモンガーデンとしての役割が大いに期待できる。
(審査委員長 増田 昇)
【公益財団法人 国際花と緑の博覧会記念協会長賞】プール学院中学校・高等学校(大阪市生野区勝山北)
事業主 学校法人プール学院
設計者 (株)竹中工務店、(株)都市環境ランドスケープ
施工者 (株)竹中工務店
講評
既成市街地や建築空間に、ランドスケープデザインやマネジメントの心と技を加えることで、地域の環境をいかに豊かに育んでいくか。今回寄せられた応募施設・活動の数々にはさまざまな試みが見られた。それぞれの取り組みの根幹に、生き物としての緑に対する感性が宿っているかどうか、地に足をつけて将来を見つめているかどうかが、評価のポイントの一つとなった。
プール学院中学校・高等学校は、伝統ある建学の精神や教育理念と、建築空間とランドスケープデザインが調和し響き合う清々しい環境を、市街地の中に生み出している。校内を巡るせせらぎは、多様な命を涵養するビオトープにつながり、水盤へと広がり、校舎を横断し滝となってテラスに注ぎ、安らぎを与えている。水盤に架かる橋を渡って登下校する生徒たちは、水や土、光や風の大切さ、季節の変化、命のつながりと尊厳を、日々の生活の中で自然
に感受し学びとることができる。竣工時から4年の時を重ね、適度に手入れされたビオトープの植生にも安定感がある。生き物調査等への生徒の参加の機会も増えるとなおよい。地域にとっても貴重な環境資源であり、大切に育て活かしていってほしい。
(審査委員 弘本 由香里)
【一般社団法人 ランドスケープコンサルタンツ協会関西支部長賞】田島大阪ビル(大阪市西区京町堀)
事業主 田島ルーフィング(株)
設計者 (株)日建設計
施工者 (株)竹中工務店
講評
大阪市京町堀の雑居ビルやしもた屋などが密集する一角、突然現れる緑に覆われた建物にまず、目を奪われる。
建物の対角線方向をガラス面にし、平面形空間に広がりを感じさせる開放感のある設計で、各階の庇には緑を地植えしている。建物内に入ると外壁から垂れ下がるつる性植物と開放感あるデッキに植えられた植物が各階の室内からの眺めを快適にしている。すなわち緑の向こうに街並みが見えると云った心地よい空間を演出し、眺望が望めない景色も自らが造り出しているのである。また建物の外部に緑を取り入れることで、電柱が林立し、決して美的とはいえない街の景観を潤いあるものにしている。以上のことはランドスケープの技術・アイデア・デザインに優れ評価に値する。
また建物中央の階段は外部からの木漏れ日が交錯し光溢れる空間となり、壁に切り取られた緑を通して街を感じることができる。屋上庭園にも多種多様の草花が植えられ省エネにも配慮があり、ビル全体が企業のショールーム的役目も十分果たしている。しかしなにより素晴らしいのは、この建物が街並みに自然に溶け込みながらもこの地域をより魅力ある地に誘導すべく積極的に活動している点である。また、敷地の角には四季にいろどりと、存在感がある高木(さくら等)を植栽することで、都心でも自然を感じられる環境型景観建築を目指したことは高く評価される。
(審査委員 二見 恵美子)
2.ランドスケープマネジメント部門(まちが笑顔になるみどりづくり)
【大阪府知事賞】中之町フラワーウェーブ(堺市)
活動者 中之町フラワーウェーブ
所在地 堺市堺区中之町西
講評
公園でのコミュニティ活動を始めてから10年、年毎に活動が広がり、公園入口の壁、遊具も塗り変えられ、存在感を新たに、美しく刈られた芝生で幼稚園児の走り回る声、安心して見守る先生の視線、小学生が広場で遊び、周囲のフェンス際には、緩やかな曲線のレンガで縁取られた花壇に宿根草と多年草が配植され、公園樹木と調和し、公園が輝きを取り戻していることを実感しました。まずゴミが落ちていない、掃き清められた公園は、訪れる人をもてなし、まちづくりと公園利用の在り方を教えてくれています。
大阪府知事賞の選考趣旨は、人々の都市緑化に関する意識の高揚や普及を図り、「みどりの風を感じる大都市・大阪」の実現に寄与しているもの。そして、地域コミュニティ活性化への貢献度または継続性に特に優れ、都市緑化の啓発、緑化に関する地域・市民活動に優れた案件で、中之町フラワーウェーブのマネージメント活動とその姿に、審査員全員が大阪府知事賞に最も相応しい公園であると高く評価しました。
第一回CLA関西支部長賞受賞コメントに「もてなしの花作りの心」を是非とも子供達に受けついで頂きたいと願っています。と書きましたが、第二回での現地審査でそのことを強く感じることが出来ました。
(審査委員 福原 成雄)
【公益財団法人 国際花と緑の博覧会記念協会長賞】赤坂アジサイロード(堺市)
活動者 赤坂アジサイロード
所在地 堺市南区赤坂台
講評
小学校と中学校に隣接する犬の糞だらけとなっていた緑道を綺麗にしたいと約10年前から始められた活動です。
植栽環境に合わせ日陰に適したアジサイを植えようと、自宅の株から苗を作り植えることからスタート。今ではアジサイ20種約300株が植えられ管理されています。植栽地はレンガや瓦などタイプの違う土留めで変化をつけ、所々に花壇を設けてポイントをつくり、花の写真や種名の解説なども掲示して、見る人を楽しませる様々な工夫もされています。活動を一緒にされていた方が亡くなられ、前より活動が絞られているようですが、この賞をきっかけに協力者が現れてくれることを期待します。
一年草による花壇づくりの活動が多い中、赤坂アジサイロードは低木の花木や宿根草を用いることによって、比較的手間が少なく美しい空間づくりができることを教えてくれます。応募されている中でも範囲が広すぎて管理が行き届いていないところがいくか見られましたが、低木や地被、宿根草なども活用されることをお勧めいたします。
デザイン部門において感想ですが、折角良いデザインをされていても、施工上や管理上の問題で、木が枯れたり、水が止まったりして、デザインが損なわれてしまっている例がいくつかありました。施工からあとの管理までしっかり配慮することが望まれます。
(審査委員 當内 匡)
【奨励賞】茨木交流倶楽部 花咲かせ隊(茨木市)
活動者 茨木交流倶楽部 花咲かせ隊
所在地 茨木市見付山
講評
茨木交流倶楽部「花咲かせ隊」は、茨木市の中心市街地にある本町商店街のお客様駐輪場と商店街東側の交差点で清掃活動や花壇づくりを行っており、本年で10年目を迎える。駐輪場のマナーの向上とともに商店街や買い物の方々の気持ちが元気なることを願って活動されている。活動仲間の交流が深まるばかりでなく、道行く人々とも花を通じた関わり合いが増えてきており、人々との交流がさらに発展することが期待される。今後取り組まれようとしている種からの育苗への取り組みや花飾り技術の向上などに加え、ツタ類や低木の導入、宿根草の活用などによって植え替え手間の軽減とともに緑のストックの育成も一考されたい。また、市や商店街にちなんだテーマに沿ったデザイン展開も一興であろう。
(審査委員長 増田 昇)
【奨励賞】花と緑の会いぶき(交野市)
活動者 花と緑の会いぶき
所在地 交野市天野が原
講評
花と緑の会「いぶき」は、交野市が平成17年から5年計画で開催した「花と緑のボランティア育成講座」の修了生27名で発足し、今では40名からなる活動グループである。講座で習得した技術を活かして、河内磐船駅前の西側と東側、交野市駅前、イズミヤ前の4か所で花壇づくりを行っている。午前中は主に温室での育苗、その後は
花壇での植え付けなどと月4-5回の活動と当番制で花壇の日常管理をしている。駅前や大型商業施設など多くの人々が行きかう空間のランドスケープの向上に寄与している。花壇デザインに際しては、交野市のランドスケープの骨格を形成している生駒山系への眺望性を活かしたテーマ設定などに取り組み、交野市固有のランドスケープ形成に寄与することも一考されたい。
(審査委員長 増田 昇)