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更新日:2015年11月19日

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第5回みどりのまちづくり賞(愛称:大阪ランドスケープ賞)の受賞作品について

第5回みどりのまちづくり(愛称:大阪ランドスケープ賞)の受賞作品について

1.ランドスケープデザイン部門 (まちが美しくなるみどりづくり)

【大阪府知事賞】 立命館大学大阪いばらきキャンパスおよび岩倉公園の一体的なランドスケープ (茨木市)

  • 事業主 キャンパス:学校法人立命館 公園:茨木市、独立行政法人都市再生機構
  • 設計者 キャンパス:学校法人立命館キャンパス計画室、株式会社山下設計、株式会社戸田芳樹風景計画、株式会社竹中工務店
    公園:独立行政法人都市再生機構、株式会社ヘッズ、株式会社環境緑地研究所
  • 施工者 キャンパス:株式会社竹中工務店 公園:株式会社タイキ、株式会社グリーンプラニング、有限会社前田造園

立命 岩倉公園の写真

講評

本ランドスケープは、立命館大学の「塀のない」大学キャンパスと茨木市の都市公園が完全に一体的に創成されており、新たな公共的なランドスケープを生み出した優良なデザイン事例である。地域に残る条里制を参照した南北方向の「学びの軸」と東西方向の「市民交流軸」が空間構成の骨格を形成している。この交流軸沿いには、市民に開放された図書館等の大学施設と学問を象徴するカイノキの並木が配置され、軸が交差し周辺市街地に面した中央部には防災公園となる岩倉公園が整備されており、大学空間と市民空間が相互に陥入しあっている。キャンパス敷地内には、市民参画型の「ガーデンエリア」と「育てる里山エリア」も設けられており、空間ばかりでなくマネジメント面でも市民交流が強く意識されている。大学に地域社会への貢献が強く求められる現代社会において、地域社会と大学キャンパスとの新たな連携のあり方を、空間デザイン面ばかりでなく、施設の開放や市民参画型花壇等といったマネジメント面でも問うている挑戦的なデザイン事例であり、今後の大学キャンパスの新たなランドスケープデザインの方向性を示すものと高く評価できる。 (審査委員長 増田 昇)

【公益財団法人 国際花と緑の博覧会記念協会長賞】 クマリフトR&Dセンター (茨木市)

  • 事業主 クマリフト株式会社
  • 設計者 株式会社安井建築設計事務所、株式会社永田建築研究所、株式会社西川造園、北澤造園
  • 施工者 大和ハウス工業株式会社、株式会社安藤・間、株式会社西川造園、北澤造園

クマリフトの写真 クマリフトの写真その2

講評

クマリフトR&Dセンターは大阪モノレール彩都西駅近くの傾斜地に整備された研究開発施設である。施設の敷地である斜面地は駅前を利用する車や歩行者からよく見える場所にある。建設前は雑草に覆われ殺風景であった斜面地を、地域住民の方々に楽しんでもらえるようにと、心を込めて整備されている。斜面地ほぼ全面に長期間ピンクの鮮やかな花を咲かせるマツバギクをベースに、四季折々に花が楽しめるように、花木や草花を点在させ、斜面地小段には幅45mにも及ぶ藤棚を設けられている。さらに斜面地下部の歩道付近には「しあわせの小径」と名付けた遊歩道を設け、そこには野菜や果物を植え、近くの保育園児が収穫を楽しめるように解放されている。また災害時には非常コンロになるというベンチもあるなど、「地域の方々のために」という思いがひしひしと伝わってくる。また近隣にも地域のための緑化を呼びかけられていると見られ、隣地でも同じように果樹などが植えられている。今後さらに地域の方々と共に造る参加型の景観を進化させていこうとされており、地域の緑化リーダーとして潤いある環境の創造に寄与しているものであり、「自然と人間との共生」という花博の理念に合致した素晴らしい事例である。 (審査委員 當内 匡)

【奨励賞】 大阪府立精神医療センター (枚方市)

  • 事業主 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立精神医療センター
  • 設計者 株式会社安井建築設計事務所
  • 施工者 戸田建設株式会社大阪支店

精神医療センターの写真(全景) 精神医療センターの写真その2

講評

ゆるやかな丘陵地に立地する、大阪府域の基幹精神科医療施設。高いコンクリート塀に囲まれ、周辺地域と隔絶されていたが、現地での全面建て替えを機に、塀を取り払って、敷地内に豊かに育まれ、入院・通院等の患者や家族の心を癒してきた緑の環境を、周辺と連続する地域のランドスケープへと導いている。児童思春期棟、成人棟、医療観察棟等々、多様な患者に配慮した分棟構成を包み込むように、四季折々に変化する樹木や草木の敷地が広がり、作業療法農園やデイケア農園など、緑の療養環境が有効に活かされている点も高く評価できる。植栽帯や斜面に残る藪の管理など、より積極的なマネジメントが行われることで、環境の力がさらに発揮されることを期待する。 (審査委員 弘本 由香里)

【奨励賞】 田辺三菱製薬本社ビル (大阪市中央区)

  • 事業主 田辺三菱製薬株式会社
  • 設計者 株式会社大林組
  • 施工者 株式会社大林組

田辺三菱製薬株式会社本社ビルの写真(全景) 田辺三菱製薬本社ビルの写真(植栽状況)

講評

田辺三菱製薬本社ビルは大阪の歴史的都心、船場の真ん中、道修町にある。日本の薬業発祥の地として知られ、多くの製薬企業や薬問屋が軒を連ねる。歴史・文化的な資源がいまも多く残る船場では、それらを生かしたまちづくりが盛んで、街並み形成、地元イベントである船場博覧会など、多面的な活動が展開している。こうした地域性との協調が本作品では重視され、道路側に沿った空地の確保、薬にちなんだ植栽など、道修町にしっくりとくる景観の創出に成功している。日常のオフィスビルとしての利用のみならず、非日常のイベント、地域のまちづくり、歴史・文化の継承、環境への貢献まで視野にいれた豊かなランドスケープが生み出された。 (審査委員 嘉名 光市)

2.ランドスケープマネジメント部門 (まちが笑顔になるみどりづくり)

【大阪府知事賞】 豊島公園を拠点にリーダー会と花とみどりの相談所が協働するみどりの支援活動 (豊中市)

  • 活動者 豊中緑化リーダー会
  • 所在地 豊中市

豊中緑化リーダー会(全景) 豊中緑化リーダー会(活動状況その2)

講評

本会は、平成16年4月に始まった豊中市の「緑化リーダー養成講座」の初級、中級、上級の修了生が平成19年3月からスタートさせた活動である。豊島公園内にある豊中市花と緑の相談所に活動拠点を置き、長きに渡って活動を継続している市民と行政が連携し、パートナーシップを基本とした優良なマネジメント事例である。講座はそれぞれ1年間で、上級を終えるまでに3年間という長きに渡る学習となるが、講座では座学とともに豊富な実習が組まれている。相談所を彩る実習花壇は、いずれも公共の場に相応しい優しさを伴った美しい花壇が展開されているが、それぞれの講座の熟度を感じさせ、中々興味深い。手作りの専用圃場では、市内のその他活動団体を指導、協力しながら育苗も行っており、年間で支援提供は13,000ポットにもおよび、市内の各所でここで育った苗が花開いている。会の皆様方は、公園内の花壇や圃場の育成管理ばかりでなく、講座の実習のサポートや独自の体験プログラムの実施、小学校や地域団体の後方支援など、多岐にわたる活動を積極的に取り組んでおり、ほぼ1年中を通じて活動されているが、満面に笑みを湛え、生き生きとした姿や仲の良さが印象深く残っており、充実した活動であることが感じ取れた。 (審査委員長 増田 昇)

【公益財団法人 国際花と緑の博覧会記念協会長賞】 東住吉区クラインガルテン広場 (大阪市東住吉区)

  • 活動者 クラインガルテン・東住吉
  • 所在地 大阪市東住吉区

東住吉区クラインガルテン広場の写真(全景) 東住吉区クラインガルテン広場の写真(全景その2)

講評

住宅地に心地のよい中庭が広がっている。「東住吉区クラインガルテン広場」は、平成21年に旧市営住宅の跡地に生まれた地域農園である。所管は区役所にあり、管理運営を区民ボランティアが担うこの活動には、2つの注目すべき「広がり」が認められる。第一に、彩りと潤いにおいて。約990平方メートルの敷地には、各種施設が機能的に配置され、花壇や花飾り、広場の芝生、ゴーヤのカーテンなど、場所ごとの彩りがスタッフにも来場者にも潤いを与えている。しかも、花や野菜たちは様々な公共空間に供され、敷地の外へと広がっていくのである。この広場が存在し、様々な活動がある。そのことが、地域環境の全体の質に寄与している。第二に、コミュニティの「広がり」において。花と野菜の両方を扱うため、体験会や交流イベントのテーマは多岐に渡り、幼児から高齢者まで幅広い層が、各自の関心に従って出入りしている。中にはこれを機にスタッフに加わるケースもみられ、結果として、男女比がほぼ等しく、年齢も活動頻度も様々なスタッフが、徐々に増え続けている。多様な人々それぞれの関わり方を受け容れる柔軟性が、コミュニティの広がりを支えているのであろう。健全な公共性とともに、心地のよいランドスケープが日々創出されている。(審査委員 井原 縁)

【一般社団法人 ランドスケープコンサルタンツ協会関西支部長賞】 大阪ステーションシティ (大阪市北区)

  • 活動者 西日本旅客鉄道株式会社、大阪ターミナルビル株式会社
  • 所在地 大阪市北区

大阪ステーションシティの写真(天空の農園) 大阪ステーションシティの写真(風の広場)

講評

複合施設として2011年にグランドオープンした大阪ステーションシティには、「水・緑・時・Eco・情報」を共通テーマとする8つの広場があり、屋内・屋外あわせて面積は約3,000平方メートルにおよぶ。季節の植物は年4回作成されるフラワーリストのほか、ホームページ「グリーンブログ」でも楽しむことができる。四季折々の草花で彩られる「南ゲート広場」の花壇をはじめ、広場の植物は常駐する専門のグリーンスタッフによって丁寧に美しく管理されている。特に、地上78メートルにある「天空の農園」には、菜園(野菜・ハーブ・果樹)・水田・葡萄棚などがあり、作物が生育する様子を楽しむことができるほか、定期的に収穫イベントが開催され、野菜も無料配布されている。人工地盤での植物の管理には多くの工夫が必要である。この広場では緑の専門家を育成する大阪府立園芸高等学校の実習を受け入れている。また、「みんなで育てる花いっぱいプロジェクト」で大阪市内の小学生が育てた花を「風の広場」に植えるほか、小学生を対象とした職業体験イベント「キッズウィーク」を開催するなど、まさに「天空の恵み」を実体験する活動が精力的に行われている。審査を通じて最も印象的であったことは、洗練されたコスチュームを身にまとったグリーンスタッフが、植物と利用者とのふれあいを大事にしている姿である。買い物や散策に訪れる来訪者が、広場の花や植物をより深く楽しめるよう、グリーンスタッフのみなさんが様々な工夫を行っていることを高く評価したい。 (審査委員 仲 隆裕)

【奨励賞】悠久の松林づくり (堺市西区)

  • 活動者 浜寺公園指定管理グループ
  • 所在地 堺市西区浜寺公園

悠久の松林づくりの写真(全景) 悠久の松林づくりの写真(活動状況)

講評

美しい光景、歴史あるランドスケープの継承。今日、その大切さに異を唱える者はいないであろう。しかし、それを目指した現実の活動のなかには、その場所の来歴が示す継承すべき事柄の核心を捉えそこない、ちぐはぐな印象を与えるものも多い。その点において「悠久の松林づくり」は、この場所の精髄を捉えた優れた取り組みといえよう。古の万葉集にも詠われた松林は、これまで何度も消失の危機に瀕しつつ、先人たちの手により保全され受け継がれてきた。浜寺公園の開設もまた、その歴史の一コマである。この公園の核心は、松林にあるといっても過言ではない。今後は、この活動を担う公園指定管理者と行政ならびに関係諸団体との緊密な連携に基づく、より強固なマネジメント体制の確立が強く望まれる。 (審査委員 井原 縁)

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