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【平成11年度】 環境の状況並びに豊かな環境の保全及び創造に関して講じた施策に関する報告(概要)
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1999年度【平成11年度】
1.生活環境
自動車
- 自動車保有台数
約376万台(この10年間で約1.17倍)
(注)1 運輸省調べ(各年度末現在)
2 乗用車:普通・小型・軽乗用車
貨物車:普通・小型・小型三輪・軽貨物車及び被牽引車
その他:乗合車・特殊用途車、二輪車
- ディーゼル化率
15.8%(3年連続減少)
(注)運輸省調べ(各年度末現在)
廃棄物
産業廃棄物
- 産業廃棄物の発生量(平成7年度)は、2,038万トンであり、うち27.7%(564万トン)が有効利用によって、また55.5%(1,132万トン)が中間処理によって減量化され、16.8%(342万トン)が埋立等最終処分されています。
一般廃棄物
- 府内で排出されたごみの総量は、平成10年度は440万トンで、前年度と比べ8万トン減少しました。
大気環境
年平均値 | 一般局0.023ppm(3年連続減少) 自排局0.037ppm(3年連続減少) |
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環境保全目標達成率 | 一般局95.1%(やや改善、前年度84.0%) 自排局51.4%(やや改善、前年度43.2%) |
年平均値 | 一般局0.030mg/m3 (3年連続減少) 自排局0.039mg/m3 (3年連続減少) |
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環境保全目標達成率 | 一般局98.8%(改善、前年度67.9%) 自排局86.2%(改善、前年度26.7%) |
光化学スモッグ発生状況
予報13回(前年度比16回減少)
注意報11回(前年度比14回減少)
被害訴え者数3件161名(前年度比1件159名増加)
二酸化硫黄
全局で環境保全目標達成(平成3年度以降9年連続)
一酸化炭素
全局で環境保全目標達成(昭和54年度以降21年連続)
水環境
河川
- 健康項目:98河川138地点中4地点で環境保全目標超過
- 生活環境項目:Bodの環境保全目標達成率 63.0%(5年連続改善)
海域
- 健康項目:すべての測定地点で環境保全目標達成
- 生活環境項目:Cod(表層)の環境保全目標達成率 40.0%(横ばい傾向)
- 全窒素・全燐環境保全目標は、大阪湾の2の海域で全窒素のみ未達成(暫定目標は達成)
- その他の海域は、全窒素、全燐とも環境保全目標達成
騒音
環境騒音
- 一般地域:環境保全目標達成率(昼間・夜間ともに達成) 51.3%
- 道路に面する地域:環境保全目標達成率(昼間・夜間ともに達成) 41.5%
航空機騒音
- 大阪国際空港:随時測定点8地点中1地点で環境保全目標達成
- 関西国際空港:17地点すべてで環境保全目標達成
有害化学物質
ベンゼン | 道路沿道11地点中7地点で環境保全目標未達成 一般環境12地点中1地点で環境保全目標未達成 発生源周辺4地点すべてで環境保全目標達成 |
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トリクロロエチレン | すべての地点で環境保全目標達成 |
テトラクロロエチレン | すべての地点で環境保全目標達成 |
ダイオキシン類
|
年平均値の範囲 |
測定地点数 |
|
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大気環境 |
0.024から0.35pg-Teq/平方メートル |
67 (7) |
|
水質環境 |
河川・海域 |
0.0069から1.1pg-Teq/L |
24 (6) |
地下水 |
0.0014から0.13pg-Teq/L |
3 (2) |
|
底質 |
0.010から140pg-Teq/g |
18 (2) |
|
土壌環境 |
0.0090から33pg-Teq/g |
63 (4) |
注:( ) 内数字は、府測定地点数
環境基準 |
大気 |
年平均値 0.6pg-Teq/平方メートル以下 |
---|---|---|
水質 |
年平均値 1pg-Teq/L以下 |
|
土壌 |
1000pg-Teq/g以下 |
2.自然環境
森林・農地
森林面積は漸減、耕地面積は毎年減少
森林面積 56,791ha(前年度57,008ha)
耕地面積 15,600ha(前年度16,000ha)
3.都市環境
公園・緑地
都市公園 4,754か所、総面積 4,105ha、府民1人あたり面積 4.66m2/人
道路緑化
緑化延長 434km、管理本数 約2,566千本(平成12年4月1日現在)
景観
大阪まちなみ賞〔大阪府知事賞〕:くずはローズ幼稚園(枚方市)
みどりの景観賞〔大阪府知事賞〕:瀧定株式会社高槻寮(高槻市)
史跡・文化財
国及び府の指定等文化財 1,260件 (前年度比7件増加)
国登録文化財 53か所 98件 (前年度比16か所26件増加)
埋蔵文化財包蔵地 8,181件 (前年度比22件増加)
4.地球環境
二酸化炭素排出量
府内 1997(平成9)年度 約1,468万炭素換算トン(1990年(平成2)年度比約4.4%増加)
酸性雨
降雨pH年平均値 国設大阪5.19(前年度5.28) 池田4.81(前年度4.97)
(長期的にはやや改善傾向)
5.豊かな環境の保全及び創造に関して講じた施策
府域の環境状況は、依然として自動車による大気汚染や騒音をはじめ、生活排水による河川の水質汚濁や廃棄物問題、ダイオキシン類等有害化学物質問題の克服が課題となっており、温室効果ガスの大量排出による地球温暖化やオゾン層の破壊などの地球環境問題への対応も求められている。
また、府民のニ-ズが「ゆとり」や「ふれあい」のあるより質の高い生活を求める精神的豊かさへと変化していることから、自然と人間との豊かなふれあいの場をひろげ、将来にわたって府民が自然の恵みを受けられるよう施策を推進するとともに、緑豊かな生活環境の実現や地域の個性を活かした都市景観の創造、さらには文化や伝統も視野に入れた、より質の高い環境を保持し、創造していかなければならない状況にある。
これらに対応するため、大阪府は、行政、事業者、府民のそれぞれの責務と、府の施策の基本となる事項を定めた「大阪府環境基本条例」(平成6年大阪府条例第5号、以下、「環境基本条例」という。)を制定するとともに、平成8年3月に、長期的な目標、施策の大綱及びその推進のための事項を定めた「大阪府環境総合計画」を策定し、「人のこころがかよいあう豊かな環境の保全と創造」を目指す施策を総合的、計画的に展開しているところである。
平成11年度に豊かな環境の保全と創造に関して講じた施策のとりまとめにあたっては、大阪府環境総合計画の進捗状況として把握している施策体系に基づき整理した。
平成11年度は、これまで取り組んできた施策を引き続き実施するとともに、今日的な環境問題に対応するため下記のような視点によりそれぞれの施策を展開した。
有害化学物質対策についての包括的な取組
有害化学物質の中でも、ダイオキシン類による環境汚染が大きな社会問題となっており、大阪府では、平成10年4月に「大阪府ダイオキシン対策会議」を設置し、発生源対策や環境調査等の施策を講じてきたところであるが、平成11年7月にダイオキシン類対策特別措置法が制定され、平成12年1月に施行されたことから、発生源に対する一層の規制・指導強化とともに、大気、水質、土壌環境中におけるダイオキシン類の常時監視の充実及びダイオキシン類等有害化学物質の検査分析体制の整備を行った。
また、自動車から排出されるベンゼン等の有害大気汚染物質については、その排出・汚染実態の把握に努め、国等と連携しながら低減対策の検討を行った。
有害化学物質については、法等により物質を定め排出規制を行ってきたところであるが、外因性内分泌攪乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)をはじめ、多種多様で種々の発生源から大気、水、土壌等の環境媒体を経由するなど、その挙動メカニズムが複雑であり、かつ、極めて低濃度でも影響を及ぼすことが懸念されている。
このため、規制対象外の物質についても「大阪府化学物質適正管理指針」(平成7年5月施行)に基づき、事業者による有害化学物質の適正管理を推進するとともに、平成11年7月に制定された「特定化学物質の環境への排出量の把握及び管理の改善の促進に関する法律(Prtr法)」の本格施行(平成14年4月)に向けた準備作業に着手するなど、包括的な有害化学物質対策に取り組んでいるところである。
地球温暖化対策に向けた取組
地球温暖化問題は、府民の一人ひとりの理解と実践が極めて重要であり、エネルギーと環境に配慮したライフスタイルの実践を促す観点から、「大阪府地球温暖化防止行動ガイドライン」のパンフレットを事業者や府民に配付するなど普及に努めた。
また、大阪府が、事業者、消費者の立場から、あらゆる事務事業に環境への配慮を徹底していくことを目指して策定した「環境にやさしい大阪府庁行動計画(府庁エコアクションプラン)」に基づき、省エネルギーやリサイクル等の取組を一層推進し、平成11年2月、本庁舎の事務活動を対象にして、認証を取得した環境管理の国際規格(ISO14001)に基づき、電気使用量の削減や事務用品のグリーン購入などの取り組みを行った。
あわせて、平成12年3月に府域における地球温暖化対策をさらに推進させるため、「大阪府地球温暖化対策地域推進計画」を改定するとともに、地球温暖化対策の推進に関する法律を受け、大阪府自らの事務事業に関する温室効果ガスの排出抑制等を図るために「大阪府温室効果ガス排出抑制等実行計画」を策定した。
また、新エネルギーの導入等のまちづくりを含めたエネルギー利用のあり方を示す中長期的なエネルギービジョンである「エコエネルギー都市・大阪計画」を策定した。
循環型社会の構築に向けた取組
良好な環境を保全し、真に豊かな社会を創造するためには、従来の資源浪費型のライフスタイルを見直し、廃棄物の発生抑制やリサイクルを推進する循環型の社会経済システムへ転換を図っていくことが重要である。
このため、「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」(平成7年法律第112号。以下、「容器包装リサイクル法」という。)の完全施行を踏まえ、各市町村の分別収集計画を集約し、広域的な観点から容器包装廃棄物のリサイクルを促進するため、平成11年7月に「第2期大阪府分別収集促進計画」を策定した。
また、住民・事業者・行政等で構成される大阪府廃棄物減量化・リサイクル推進会議において、各主体の実践行動メニューにリサイクル関連法の理念を取り入れ、府域の新たな減量化目標を設定することを主な内容として、「ごみ減量化・リサイクルアクションプログラム」の改定に着手した。(平成12年6月に新たな減量化目標を設定した。)
平成11年3月に策定した「大阪府ごみ処理広域化計画」に基づいて、減量化・リサイクルの推進及び施設整備を内容とする府内6ブロックの計画の取りまとめに向けて、市町村とともにブロック会議を運営した。
また、廃棄物処理法の改正において、地方公共団体が廃棄物処理施設の設置や運営に関与する範囲の拡大が検討されているのを踏まえ、今後の廃棄物対策として、府域の処理実態を踏まえた公共関与の処理システムについて検討した。
建設系廃棄物の適正処理、リサイクルによる減量等の推進については、「建設工事等における産業廃棄物の処理に関する要綱」や元請業者の処理責任を定めた指針に基づいて指導した。
増加傾向にある野焼き、不法投棄などの不適正処理対策としては、「大阪府産業廃棄物不適正処理対策要綱」に基づき、未然防止、早期是正を指導した。また、平成11年11月に「不適正処理防止推進強化月間」を新たに設定するとともに、平成12年3月には監視パトロールを集中的に実施した。
自然との共生に向けた取組
大阪の自然は、大阪湾と淀川、大和川水系をはじめ多くの河川が流れる大阪平野及びこれを取り囲む北摂、金剛生駒、和泉葛城の三山系からなっている。
これらの自然は、生態系の維持、大気や水の環境調節機能、水源のかん養、治山・治水といった国土保全機能に加え、農林水産業の生産基盤の提供、安らぎや潤いといった人の心や健康に有益な効果など、多様な公益的機能を有しており、府民生活に重要な役割を果たしている。
しかしながら、人の活動による自然資源の利用は、自然の持つ回復能力を超え、われわれの生活に必要不可欠なこれらの機能の確保が困難となってきている。
私たちは、大地、空気、水などの自然の恵みを享受し、その生命を育み、歴史を刻んできた。これらの恵みは、生態系をはじめ自然が有する種々のシステムが良好に維持されることによって、受けることができるものである。
そのため、自然環境の保全や創造を進め、自然の一員としての責務を果たすことにより、自然との共生を図り、現在及び将来の府民がその豊かな自然の恵みを引き続き受けられるようにすることを基本方向とし、平成11年3月に策定した「大阪府広域緑地計画」及びこれを指針として市町村が策定する「緑の基本計画」に基づく取り組みを進めている。
その実現化方策の一つとして、平成11年10月に大阪で開催された「全国育樹祭」を契機に、府内各地で森林ボランティアによる“森づくり活動”を展開するとともに、府民、NPO、森林組合、行政機関、さらには企業も加わった、多様な人々の継続的な森づくりへの参加をより一層推進するため、平成11年度より(財)大阪みどりのトラスト協会をコーディネーターとする「里山トラスト」(里山保全活動)の推進を支援した。
また、自然との共生を図るためには、自然環境を構成する重要な要素である野生動植物種、特に希少な野生動植物種に関する情報を的確に把握し、それらを適切に保全していく必要から、平成12年3月に「大阪府レッドデータブック」を作成したところである。
6.今後の課題と方向
府域の環境問題については、自動車による大気汚染や騒音をはじめ、生活排水を主因とする水質汚濁などの都市・生活型公害や廃棄物問題が依然として重要な課題となっており、引き続き、その克服と循環型都市の構築に向けた取組を進めていく必要がある。
また、「地球温暖化対策の推進に関する法律」の施行や「特定化学物質の環境への排出量の把握及び管理の改善の促進に関する法律(Prtr法)」の制定など、地球温暖化対策をはじめとするグローバルな環境問題や有害化学物質対策、多様化・複雑化した諸課題への対応とともに、みどり豊かで文化や伝統も視野に入れた、より質の高い環境を保持し、創造していかなければならない状況にある。
このようなことから、「大阪府環境総合計画」で体系化した環境の保全及び創造に関する諸施策について、より一層の推進を図ることにより、府民が健康で豊かな生活を享受できる社会、自然と共生する豊かな環境の創造、文化と伝統の香り高い環境の創造、さらに地球環境保全に資する環境にやさしい社会の創造を基本方針として、今後とも各種の施策を総合的・計画的に推進し“豊かな環境都市・大阪”を目指していく。
また、将来の大阪府が、身近な場所の多様な文化を大切にし、持続的に発展する明るい展望が持てる魅力ある都市としてありつづけるために、府域外の環境状況や社会的背景を十分に踏まえた上で、もっとも効果的な施策について検討していくこととする。
そのため、府単独の施策だけでなく、これまでの廃棄物処分における広域的な整備事業や淀川、大和川における流域管理など広域連携を行ってきた実績を基盤に、関西のさらなる広域的連携を図ることとする。
「環境の世紀」に向けた環境総合計画の策定
大阪府は、昭和48年に全国の都道府県に先駆け、環境管理計画(Big Plan)を策定し、その後、昭和57年にSTEP21、平成3年にNew STEP21と環境の総合計画を策定し、環境施策を展開してきた。
平成6年には、環境基本条例が制定されたことを受け、平成8年に長期目標として「豊かな環境都市・大阪」の構築をめざした現在の環境総合計画を策定し、関係部局との協力・連携のもと、全庁的な取り組みを行っている。
しかしながら、環境をめぐる情勢の変化や環境に関連する新たな法整備が進むなど、「環境の世紀」と呼ばれる21世紀を見据えた取り組みが求められる中、循環型社会づくり等、今日的な課題に対応するため、平成13年度を目途として新たな環境総合計画を策定することとする。
策定にあたっては、長期的な目標や施策の展開についての考え方など基本的な事項について、大阪府環境審議会に諮るとともに、「府民とともに考える」という視点を大切にして、計画検討の早い段階から府民の意見を聴きながら、計画づくりを進める。
自動車公害対策についての取組
自動車交通量の増加やディーゼル化率の増加に加え、近年の貨物自動車の大型化は、排出ガスによる大気汚染や騒音等の深刻な自動車公害をもたらし、平成12年1月の尼崎訴訟第一審判決では、自動車排出ガスと健康被害との因果関係や一定濃度を超える排出差し止め請求権を認めた司法判断がなされるなど、沿道環境の改善をはじめとする自動車公害の防止は、喫緊の課題となっている。
このため、行政機関、事業者、府民等が相互に連携し、より低公害な自動車への転換、自動車使用の合理化、道路環境の改善等の自動車公害防止対策を総合的に推進することが求められている。
排出ガスや騒音を低減するための最も基本的な対策である自動車一台ごとの単体規制については、一層の規制強化を国に求めていく。特に排出ガス対策については、平成5年11月に策定した「大阪府自動車排出窒素酸化物総量削減計画」に基づき、最新規制車への早期代替、車種規制の実施、低公害車の普及促進及び物流・人流・交通流対策等の諸施策を関係機関の連携の下に引き続き推進する。
また、ディーゼル車に重点をおいた対策を実施するため、「自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(自動車NOx法)」の抜本的な改正やディーゼル排ガス処理技術の開発を国に要望するとともに、事業者に対する自動車排出ガスの抑制指導の強化、庁内公用車への率先導入をはじめとする天然ガス自動車等の低公害車の普及促進、購入物品等の配送に環境負荷の少ない車の使用を働きかける「グリーン配送」運動の展開を図る。
さらに、自動車は広域に移動することから、近隣府県と連携した取り組みが必要であり、京阪神6府県市が指定する低NOx車普及などをより一層強力に推進するとともに、土壌や光触媒を用いた大気の直接浄化手法の実用化や都市環境と調和した都市交通体系の構築に向けた交通需要マネジメント(TDM)について、関係機関と連携し、その推進を図ることとする。
自動車騒音については、環境基準の達成など、騒音の実態を的確に把握するとともに、関係機関で構成する「大阪府道路環境対策連絡会議」において策定された「大阪府域の沿道環境対策について」に基づき、関係機関と連携し、発生源対策や道路構造対策等の総合的な対策を推進する。
有害化学物質対策についての包括的な取組
近年の科学技術の進展、消費の多様化等に伴い、生産・使用される化学物質及びその発生源は、非常に多種・多様となり、また、ダイオキシン類のように非意図的に生成されるものがあるなど、化学物質による環境問題への対応が新たな課題となっている。
さらに、外因性内分泌攪乱化学物質等の化学物質による人や野生生物等への影響について未解明の部分はあるものの、各種文献等で報告されており、影響が発現してからでは取り返しのつかない問題として懸念されている。
これらの化学物質は、種々の発生源から大気、水、土壌等の環境媒体を経由するため、その挙動メカニズムも複雑であり、また、極めて低濃度でも影響を及ぼすおそれがある。
したがって、府民への健康影響を未然に防止するため、引き続き、国をはじめとする関係機関と連携し、暴露・毒性評価等に関する知見の集積等に努めるとともに、以下に示すとおり、環境調査の充実や化学物質の管理促進や環境中への排出抑制を図っていく。
ダイオキシン類については、平成12年1月にダイオキシン類対策特別措置法が施行され、大気、水質及び土壌に係る環境基準の設定や廃棄物焼却施設等からの排出ガス及び排出水に係る排出基準等が規定されたことから、環境中におけるダイオキシン類の常時監視を行うとともに、発生源に対して排出基準の徹底を指導していく。
また、事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境の保全上の支障を未然に防止することを目的としたPrtr法が平成12年3月に施行されたため、国をはじめとする関係機関と連携を図りつつ、対象事業所の把握及び法制度の周知徹底を行い、法の円滑な施行に努める。さらに、府の検査・分析能力を高める。
大気環境に係る有害物質対策については、引き続き、有害大気汚染物質モニタリング体制の整備、排出実態の把握、法令に基づく規制基準の遵守徹底及び大阪府化学物質適正管理指針に基づく排出抑制の促進等に努める。
水環境に係る有害物質対策については、引き続き、法令に基づく規制基準の遵守徹底を図るとともに、要監視項目等に関する公共用水域のモニタリング体制の整備等に努める。
地下水及び土壌については、引き続き、地下水質や土壌汚染の状況把握や有害物質を含む汚水等の地下浸透の禁止などにより汚染の未然防止を図るとともに、汚染が判明した地下水については、原因究明調査をし、汚染者の特定とともに地下水の浄化を図ることとする。
地球温暖化対策に向けた取組
二酸化炭素は地球温暖化の原因となる「温室効果ガス」の主要なガスの一つであり、石油や天然ガス等の化石燃料の燃焼など資源やエネルギーの消費により発生する。そのため、府民・事業者・行政が一体となってエネルギー消費の抑制や環境への負荷の少ないエネルギーの利用を進める社会システムに変革していかなければならない。
このため改定した「大阪府地球温暖化対策地域推進計画」に基づく諸施策を推進するとともに、省資源・省エネルギーの取組の推進については、家庭・オフィスにおける省エネルギー行動の実践効果を把握し、策定した「地球温暖化防止行動ガイドライン」の普及啓発やセミナー等を通じて府民の省資源・省エネルギーに対する理解と協力を呼びかけ、省資源・省エネルギー型ライフスタイルの確立をめざす。
環境共生型エネルギーの利用促進としては、エネルギー利用による環境への負荷を低減し、省資源・省エネルギー型社会への転換を目指し、平成12年3月に策定した「エコエネルギー都市・大阪計画」に基づき、地域特性に応じた自然エネルギーや未利用エネルギー活用など、総合的なエネルギー効率の高いシステムや環境への負荷の少ない新エネルギーの普及促進を図るとともに、ごみ焼却熱や工場等からの余熱・廃熱等の未利用エネルギーの有効利用等の推進に努める。
また、太陽光発電や風力発電などの新エネルギーの府有施設への導入に向けての基礎調査を実施し、環境負荷の少ないエネルギーシステムへの変革を目指す。
また、環境ISOの取組を一層進めるため、環境配慮型商品を優先して購入する「グリーン購入」の促進にむけ、府内のISO14001取得企業と自治体のネットワーク化やキャンペーンの展開、さらに、府庁における「グリーン購入」の拡充を図ることとする。
循環型社会の構築に向けた取組
近年の経済活動の多角化や生活様式の多様化に伴う廃棄物の質的変化、不法投棄が増加傾向にあるなど、従来の「発生した廃棄物の適正処理」という対応だけでは限界にきている。
循環型社会形成推進基本法をはじめ、種々のリサイクル関連法が制定された中、省資源・省エネルギーで環境負荷の少ない循環型社会の構築を目指した取り組みが重要であり、府民、事業者、行政が相互の連携と適切な役割分担のもとに、廃棄物の発生抑制、再使用、再生利用(リサイクル)を推進し、資源の循環を図る循環型社会の実現を目指した、総合的な施策を展開する。
廃棄物の発生抑制については、「ごみ減量化・リサイクルアクションプログラム」に基づく実践啓発活動を通じて、生活様式の見直しなどを促進する。また、産業廃棄物の発生抑制や処理に配慮した排出を推進するため、「大阪府産業廃棄物管理計画」に基づいて実施してきたところであるが、平成13年度に当該計画を改定する。
リサイクルの推進については、容器包装リサイクル法に基づく「第2期大阪府分別収集促進計画」を推進するとともに、平成13年度に本格施行される家電リサイクル法の円滑な施行に努める。産業廃棄物については、多量排出事業者に対する要綱等の運用により、事業者に対する指導を行う。
農林技術センターでは、食品廃棄物のリサイクル技術など食の分野における先端研究に対応できる機能を有する新実験棟を整備し、大学や他の試験研究機関、食品関連企業との共同研究拠点として、循環型社会づくりに向けた食とみどりに関する研究機能の充実を図る。
廃棄物の適正処理の推進については、「大阪府ごみ処理広域化計画」に基づき、府内6つのブロック計画の取りまとめに向けて、市町村とともに検討を行う。また、平成12年6月に公布された改正廃棄物処理法において、地方公共団体が廃棄物処理施設の設置や運営に関与する範囲が拡大されたことなどを受けて、今後の廃棄物対策として、府域の処理実態を踏まえた公共関与の処理システムについて検討を進める。さらに、排出事業者に対して産業廃棄物管理票(マニフェスト)の交付の徹底や平成14年までに段階的に施行される建設リサイクル法の円滑な施行に努める。
最終処分場については、堺第7-3区における埋立処分事業や、近畿の関係府県市と協力して、フェニックス事業(大阪湾圏域広域処理場整備事業)を促進する。
不法投棄などの不適正処理対策としては、警察等関係機関との連携強化とともに「大阪府産業廃棄物不適正処理対策要綱」の運用による未然防止、早期是正に努める。
また、改正廃棄物処理法において、マニフェスト制度の適用範囲の拡大、廃棄物の野外焼却の禁止、不適正処理に関する措置命令の強化等が盛り込まれたが、改正法の円滑な施行に向けた取り組みを進める。
自然との共生に向けた取組
近年、みどりに関する環境面や防災面からの社会的要請の高まりに加え、趣味やボランティアを通じたみどりに親しむ人々の増加や企業自らの手によるみどりづくりの先進的な実施など、みどりを取り巻く社会情勢にも大きな変化がみられる。
これらの社会情勢や、市街地における民有地緑化の重要性も踏まえ、『都市内の緑地の保全と創出、ため池、河川等都市内の水面の確保による災害やヒートアイランド現象の緩和』や『森林や樹林、樹木の保全と整備による二酸化炭素吸収源の確保』、『ビオトープ空間としての“水と緑のネットワーク化”の推進』及び『自然環境教育の推進を通した府民、企業等との連携・協力』などに留意しながら、みどりを“まもり ふやし つなぎ ひろげる”ための方策を推進していく。
また、地球温暖化対策について、みどりの果たす役割も大きいと考えられることから、温暖化防止に効果的なみどり施策の推進に努める。
具体的には、“二酸化炭素排出量の削減対策”としては、「水と緑のネットワーク化の推進」、「木材資源の有効利用の推進」、「府内産木材を利用した住宅づくり」、「新エネルギーとしてバイオマスの取り組みの推進」「施設緑化の推進」、「屋上・壁面緑化の推進(冷暖房の節減)」等に取り組む。
“二酸化炭素吸収源の増大対策”としては、「周辺山系の森林の健全化のための育林、住民・企業などの多様な人々の参加による継続的な森づくり(里山林整備)の推進」、「森林の持続的経営により、木材資源を持続的・安定的に利用する新たな循環型の仕組みづくり」等に取り組むほか、前記に共通するものとして、「府民の森やビジターセンター、森林総合利用施設など、自然の中での体験活動を通じた“自然環境学習”の推進」、「学校林やビオトープづくりを通した“自然環境教育”の推進」などについて、取り組みを進める。
一方、府域において“貴重な自然環境”を維持してきた周辺山系の“みどり”である森林は、そのほぼ全域が都市計画区域内に位置する“大都市近郊林”であると同時に、人々の生活との関わりの中で保全されてきた、いわゆる“里山林”であるとも言える。
この身近な“里山林”に対する都市住民の意識としては、適切な保全・整備を通じ、「都市と農村とのふれあいの場」「生物の生息環境の場」「自然環境教育の場」「地域住民の参加による多様な活動の場」あるいは「健康づくりの場」などの多様な役割を発揮する場として、ますます期待が高まりつつある。
しかし、近年、これらの森林の多くで管理放棄による荒廃が進んでおり、森林の有する各種“公益的機能”の発揮に支障が生じ、生物の多様性も減少するなど、身近な“森林”が遠い“森林”となりつつあるが、私有林の占める割合が9割以上という状況の中で、ひとり森林所有者の努力だけで森林を適正に管理することはもはや不可能なことであると言える。
このような状況に対する今後の取り組みとして、府民にとって貴重な里山空間の保全と利用を早期に図るため、“府立自然公園構想”の推進や都市緑地保全法に基づく“市民緑地制度”の活用等による森林の保全・整備を進めるほか、“多様な人々の参加による継続的な森づくり”を目指して、「里山トラスト」(里山保全活動)の推進を引き続き支援する。
また、森林整備を行いながら、自然環境教育のフィールドとしても活用するなど、森林の多様な公益的機能、国土保全や水循環等を維持する“環境財”として森林生態系の管理を進めていくとともに、森林組合の広域合併による“環境事業体”としての基盤強化にも取り組んでいくこととする。