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ヘルシーおおさか21(点字広報)第55号音声読上げ用
ヘルシーおおさか21(点字広報)第55号【平成30年2月発行】
テーマ「見直そう!歯と口の健康づくり」
1 はじめに
歯と口は、食べる、飲み込む、話すなど、人間の基本的かつ重要な役割を担っています。
また、歯と口の健康づくりは、生活習慣病の予防や、社会生活を営むために必要な機能の維持・向上、そして質の高い生活を営む上で極めて重要といえます。
歯と口の健康づくり推進のためにセルフケア(歯と口の清掃)の実践や定期的な歯科健診の受診を積極的に行いましょう。
2 歯と口の機能と全身への影響
- 歯と口の機能の重要性
食べ物は、噛んで、飲み込み、消化され、はじめて栄養として摂取されます。このため、歯と口の機能が低下すると、食べ物の種類や食事の内容が制限され、免疫力の低下から病気にかかりやすくなったり、傷の治りが悪くなったりします。
また、歯と口は、コミュニケーションにかかわる重要な役割も果たしています。食事や会話に支障をきたすと人との付き合いがおっくうになり、家に閉じこもりがちになるなど、身体的にも精神的にも活動量が低下し、高齢者では寝たきりや認知症の引き金になるとも言われています。
心身の健康を保つためにも、栄養バランスを考えた食事を心がけること、歯と口の機能を維持することはとても大切です。 - 「よく噛む」ことの全身への影響
よく噛むことは、単に食べ物を体に取り入れるためだけではなく、全身を活性化させるうえで大変重要な働きをしています。
噛む効用には、肥満を防ぐ、味覚の発達を促す、言葉の発音がはっきりする、脳の発達を促す、歯の病気を防ぐ、がんを予防する、全身の体力を向上するなどがあります。
3 歯と口の健康に影響を及ぼす要因について
喫煙と糖尿病が歯と口の健康に及ぼす影響について紹介します。
- 喫煙と歯周病
口は最初に直接的に喫煙の影響を受ける臓器です。
たばこには三大有害物質であるニコチン、タール、一酸化炭素をはじめ約200種類もの有害物質が含まれています。
歯周病は、歯の周りの組織や骨に炎症が起こる病気で、むし歯に比べて痛みなどの自覚症状が出にくいのが特徴です。たばこの有害物質により歯周病は悪化しやすく、治療しても回復には時間がかかるといわれています。
また、ニコチンによる影響としては、歯ぐきが炎症を起こしていても、出血などの症状がみられにくく、気づかぬうちに症状が進んでいってしまうこと、タールによる影響としては、タールが歯に沈着し、歯が黒褐色になってしまうことがあげられています。
喫煙による影響は他に、口臭の発生や味覚の低下、咳や痰の増加、がんや心臓病等の発症リスクを高めることなどがあります。これらは禁煙することで健康な状態に回復していくといわれています。 - 糖尿病と歯周病
糖尿病と歯周病はいずれも生活習慣病の一つであり、相互に関連することがわかってきました。
糖尿病になると、血管の中は血糖値が高い状態が続きます。血糖値が高い状態は、血管を傷つけたり、血液をドロドロにしたり、さまざまな負担を血管に与え、長い
時間をかけて血管をボロボロにしていきます。
また、糖尿病の人は歯周病に関連する細菌にも感染しやすくなり、その結果、炎症により歯の周りの組織が急激に破壊されるなど、歯周病が重症化しやすくなります。
歯周病の人には歯ぐきに慢性的な炎症症状が見られますが、これをコントロールすることにより、糖尿病の状態も改善する可能性が示されています。
4 成人・高齢期の歯と口の特徴
- 成人期
成人期は、多くの人がむし歯を有しているだけではなく、進行した歯周疾患を持つ人が年齢とともに増加する時期です。特に歯周病が進行すると、歯を失ったり、
歯の根元にむし歯ができやすくなります。失った歯の数や歯の状態により、食生活に支障をきたし体に栄養素がうまく取り込みにくくなることで、身体機能の低下を招くおそれがあります。 - 高齢期
高齢期は、歯の喪失に伴い、義歯(入れ歯)を使用する人が増えてきます。
加齢や薬の副作用により唾液の分泌が減少すると、唾液等により口の中の汚れなどが洗い流される作用も低下します。また、唾液の分泌の減少や食べ物を
かみ砕いて飲み込む機能の低下により、飲食物を誤嚥しやすくなります。
誤嚥とは、食道を通って胃に入るべき飲食物などが誤って気管内に入ることです。
口の中を清潔に保っていない場合、誤嚥すると口の中の菌を肺に吸い込み、肺炎になりやすくなります。
5 歯と口のケアについて
歯周病とむし歯の予防のためには、普段からの丁寧な口腔ケアが大切です。
口の中の歯垢(プラーク)は食べかすとは違い、細菌があつまったもので、さまざまな病原菌が含まれています。プラークは水に溶けない性質で、歯の表面に
くっつき増殖していき、歯周病をはじめ歯の病気を引き起こします。このため、プラークの量を増やさないよう、口の中を清潔に保つことが大切です。
特に、歯と歯ぐきの境目を清潔にすることは歯周病を防ぐのに効果的です。自覚症状に乏しい歯周病は気づかぬうちに進行してしまうおそれがありますので、
日頃から丁寧なセルフケアを心がけましょう。
まずは基本的なブラッシングの方法を理解して、自分にあった磨き方をすることが大切です。
- 歯ブラシの持ち方について
歯ブラシをにぎるように持つと、力が入りすぎたり、歯ブラシを大ざっぱに動かすようになり、歯ぐきを傷つけたり、歯を丁寧に磨くことが難しくなります。
歯ブラシはペンを持つようにすると、力が入りすぎず、丁寧に磨けます。 - 歯ブラシのあて方
歯と歯ぐきの境目は、歯ブラシの毛先を歯ぐきに対して約45度の角度にあて、横に小刻みに動かします。歯の並びや形に合わせて、歯ブラシの角度やあて方を変えるとよいでしょう。歯がでこぼこした場所は歯ブラシを縦に入れるとうまく磨くことができます。年齢とともに歯ぐきが下がり、歯の根元が露出する人が増えてきます。歯の根元が露出した部分は歯磨き剤をつけて磨くと削れてしまう場合がありますので、歯を磨くときは、歯ブラシの圧力に注意しましょう。 - お手入れしにくい部分について
抜けた歯の両端の歯を支えとして人工の歯を橋のように架ける治療法をブリッジといいます。ブリッジの下部は、歯ぐきが下がり、歯と歯の間にすき間があることが多いので、歯間ブラシを使って清掃したり、フッ素入り歯磨き剤を併せて使うと良いでしょう。
また、入れ歯を使用している場合は、入れ歯の裏側のくぼみに食べ物が詰まったり、金属バネとつながっている部分は汚れがたまりやすいので、専用ブラシをつかって清潔に保ちましょう。 - 孤立した歯や歯の根だけが残っている場合
隣の歯が無い場合は、孤立した歯の周りを磨くようにします。歯ブラシの側面を使って磨くと良いでしょう。また、歯の根だけが残っている場合には、食べかすが
入りやすいので、歯ブラシの先を使って磨き、歯ぐきを傷つけないように注意しましょう。 - 歯がない場合
歯がなくても口腔清掃をするようにしましょう。
細菌は、歯だけでなく舌や口腔粘膜、上あごにも潜んでいるので、身体の免疫力が低下すると、感染しやすくなったり、炎症が悪化しやすくなってしまいます。
口腔清掃には、口腔粘膜用のスポンジを用いると良いでしょう。 - 歯科医師や歯科衛生士による定期健診
日頃のセルフチェックに加えて、歯科医師や歯科衛生士による定期的な健診も大切です。むし歯や歯周病は、初期段階での自覚症状はほとんどありません。
症状がある程度進行して初めて自覚することが多いのです。そのため、自覚症状がなくても定期的に健診を受けることが、むし歯や歯周病の早期発見・早期治療につながります。
また、入院前・手術前には特に歯科の受診をおすすめしています。私たちの口の中には多くの細菌が存在します。普段は身体に影響しない細菌であっても、病気や手術等で一時的に全身の抵抗力が弱まると肺炎などのさまざまな合併症の原因となることがあります。あらかじめ歯と口の状態を改善し、清潔にしておくことで、手術後の食事開始がスムーズとなり、全身状態の回復を早めることが期待できます。
6 おわりに
大阪府は健康寿命をはじめとする様々な健康指標が全国と比較して低く、これらを改善するためにも、歯と口の健康づくりをさらに推進していくことが必要です。
平成25年度から27年の国民健康・栄養調査の平均値では、大阪府内で自分の歯を20本以上有する人の割合は、80歳で42.1%となっていました。
府民一人一人が80歳になっても20本以上自分の歯を残すことを目標に、日頃から歯と口の健康づくりに取り組みましょう。また、自分の歯で噛んで味わうことにより、健康で楽しく充実した生活を目指しましょう。
<引用・参考文献>
- 1)大阪府歯科口腔保健計画 平成26年3月 大阪府
- 2)歯と歯ぐきの健康づくり小読本「歯っけよい 残った 8020」平成27年3月 大阪府
- 3)大阪府歯科口腔保健計画 評価報告書 平成29年3月 大阪府