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ヘルシーおおさか21(点字広報)第53号音声読上げ用
ヘルシーおおさか21(点字広報)第53号【平成29年2月発行】
テーマ「蚊やダニによる感染症と予防対策」
1 はじめに
蚊やダニなどを媒介して起こる感染症には、非常に多くの種類があります。世界的には、蚊が媒介する「ジカウイルス感染症(ジカ熱)」や「デング熱」、「マラリア」などの流行が大きな問題となっています。
2012年の秋には、これまでわが国では知られていなかった「マダニ」を媒介したウイルス感染症である、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)という疾患が報告されました。また、2014年に日本国内で蚊に刺されたことにより、デング熱を発症した事例がほぼ70年ぶりに報告されました。
これから暖かくなり、行楽シーズンとなる中で、蚊に刺されたり、ダニに咬まれたりすることでうつる感染症への知識を持ち、予防に役立てましょう。
2 蚊やダニが媒介する感染症の主な種類と症状について
蚊が媒介する感染症
- (1)デング熱
デング熱は、デングウイルスにより引き起こされる急性の熱性感染症です。主に熱帯・亜熱帯地域に生息する「ネッタイシマカ」、温帯地域に生息する「ヒトスジシマカ」により媒介され、ヒトから蚊、蚊からヒトへの感染サイクルを形成しています。
熱帯・亜熱帯地域では、各地で流行が続いており、WHO(世界保健機関)では、毎年5000万から1億人が感染していると推計しています。東南アジアなどの流行地域を訪れて、感染する日本人も増加傾向にあり、大阪府でも毎年このような輸入感染症例が発生しています。- 症状
2日から14日(平均3日から7日)の潜伏期間を経て、約20-50%にデング熱の症状が出現します。デング熱は、突然の高熱で発症し、頭痛、目の奥の痛み、結膜充血、顔面紅潮、筋肉痛、関節痛、全身倦怠感を伴い、発熱は2日から7日程度続きます。発症3日から4日後、発疹が出現し胸部・体幹から四肢・顔面へと広がります。
症状は7日から10日程度で消失し、後遺症なく回復します。一部の患者においては、デング出血熱に移行し、発熱2日から7日後に上記の症状に加えて出血傾向やショック症状が出現することがあります。
- 症状
- (2)ジカウイルス感染症
ジカウイルス感染症は、感染した蚊に刺されることによって感染する、蚊媒介感染症の一つです。ジカウイルスに感染した患者を蚊が吸血すると、蚊の体内でウイルスが増殖し、その蚊が他者を吸血することで、ウイルスに感染させます。通常、ヒトからヒトへ直接感染することはありませんが、輸血や性行為により感染することがありす。- 症状
潜伏期間は2日から13日で、その後、軽度の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、発疹、結膜炎、疲労感、倦怠感などがあらわれます。特別な治療法はありません。
一般的にデング熱より軽症といわれ、症状に応じた対症療法が行われ、予後は比較的良好な感染症です。
しかし、ジカウイルス感染症は、神経症状(ギラン・バレー症候群等)の原因となる場合があります。また、妊娠中にジカウイルスに感染すると、胎児に小頭症等の先天性障がいを来すことがあります。(先天性ジカウイルス感染症)
- 症状
- (3)マラリア
マラリアは、人がマラリア原虫を持った蚊に刺されることで感染する病気で、熱帯熱マラリア、三日熱マラリア、四日熱マラリア、卵形マラリアの4種類があります。
世界中の熱帯・亜熱帯地域で流行しており、日本でも年間50人近くが輸入感染で発症しています。- 症状
潜伏期間は1週間から4週間で、発熱、寒気、頭痛、嘔吐、関節痛、筋肉痛などの症状が出ます。熱帯熱マラリアは発症から24時間以内に治療しないと重症化し、しばしば死に至ります。脳症、腎症、肺水腫、出血傾向、重症貧血など、様々な合併症がみられます。
- 症状
ダニが媒介する感染症
- (1)SFTS(重症熱性血小板減少症候群)
SFTSは、ウイルスを保有している「マダニ」に咬まれることにより、感染すると考えられています。国内では、西日本を中心に年間60名程度の患者が報告されています。
国内でのマダニのウイルス保有調査や、動物を対象としたウイルスに対する抗体調査から、SFTSウイルスは全国的に広く存在しているものと思われております。
これまでのところ、大阪府でSFTS患者発生の報告はありませんが、SFTSウイルスを保有するマダニが身近に生息している可能性は否定できません。- 症状
発病すると高熱、嘔吐、下痢などの症状が現れ、血小板や白血球が減少し、重症化すると死亡することがあります。
(平成27年 九州・四国・中国・北陸地方で11名の死亡例が確認されています。)
- 症状
- (2)日本紅斑熱
1984年、徳島県において初めて発見された感染症で、その後、関東から九州にかけて広く分布することが明らかにされてきました。大阪府でも平成28年に数例発生しています。- 症状
潜伏期間は2日から8日、頭痛、発熱、倦怠感を伴って発症することが多く、また、発疹、刺し口がほとんどの症例にみられます。
- 症状
3 蚊やマダニの生息地について
デングウイルス、ジカウイルスを媒介する蚊は、主に熱帯・亜熱帯地域に生息する「ネッタイシマカ」、温帯地域に生息する「ヒトスジシマカ」など「ヤブカ属の蚊」です。
「ネッタイシマカ」は、国内には定着していませんが、「ヒトスジシマカ」は、秋田県・岩手県より南の地域に定着しています。
マダニは、もっぱら野山に生息していますが、草の葉先などについて野生動物などがやってくるのを待ち構えていて、野生動物などが通りかかると素早く取りつきます。
そこをたまたま通りかかった私たちも例外ではありません。
4 予防と対策について
普段から周囲の蚊の発生源になりそうな、小さな水たまりや植木鉢の皿に溜まった雨水を無くすなどをして、身の回りの蚊を減らすよう心掛けましょう。
とくに蚊媒介感染症の流行地への渡航時や、国内発生時などは、蚊に刺されないよう次のような注意が必要です。
- 長袖、長ズボン、靴を着用し、虫よけスプレーや蚊取り線香などを使用しましょう。
- とくに妊婦及び妊娠の可能性がある方は、ジカウイルス感染症流行地への渡航・滞在を可能な限り控えることとされています。
- 帰国後は、症状の有無に関わらず、国内でのウイルス拡散防止のため、少なくとも2週間程度は蚊に刺されないよう予防することが重要です。
次に、マダニに咬まれないようにするには、次のような注意が必要です。
- 野山へ出かけるときは、できるだけ長袖・長ズボンを着用しましょう。
- 虫よけスプレーを携行し、適宜使用しましょう。
- しっかりした靴(できれば長靴等)を履いて、肌の露出を避けましょう。
- 白っぽい色の服装の方がマダニを発見しやすいという利点があります。
- 帰宅後必ず入浴し、マダニのようなものがついていないかよく点検しましょう。
5 対処方法について
- 蚊関係
症状が出た場合は医療機関を受診し、感染リスクのある地域に行ったことを医師に申し出てください。
また、輸血による感染を防ぐために、感染リスクのある地域から帰ってきて4週間程度は献血を控えてください。 - マダニ
マダニの多くは長時間にわたり血を吸います。(10日以上になることもあります)もし、マダニが皮膚についていたら自分でとらずに、必ず皮膚科等の医療機関を受診しましょう。無理に引っ張ると、マダニの口が残ってしまい、皮膚の化膿を起こしたり、長くかゆみが続いたりします。
マダニに咬まれて数日後に、頭痛、発熱、発疹などの症状が出た場合は、医療機関を受診し、医師にマダニに咬まれたことを相談しましょう。
また、ハイキング等の野外活動や山林、草地に立ち入って1週間くらいしてから、熱が出るなどの症状が出た場合にも、念のため医療機関を受診しましょう。
<参考・引用文献>
- 1)厚生労働省ホームページ 感染症情報「ジカ熱」啓発リーフレット
- 2)厚生労働省検疫所ホームページ FORTH「マラリア」
- 3)IDWR国立感染症研究所ホームページ 「日本紅斑熱とは」
- 4)大阪府ホームページ 健康医療部 医療対策課 感染症グループ「大阪府感染症対策情報」
- 5)大阪府立公衆衛生研究所ホームページ
- メールマガジン かわら版 第95号・第155号・第157号
- 大阪府感染症情報センター