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更新日:2016年2月18日

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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第252号)

賠償等支払関連文書公開請求拒否決定審査請求事案

(答申日:平成28年2月18日)

第一 審査会の結論

諮問実施機関(大阪府公安委員会)の判断は妥当である。

第二 審査請求に至る経過

  1. 平成25年9月20日、審査請求人は、大阪府警察本部長(以下「実施機関」という。)に対し、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、(1)「平成24年10月1日から平成25年9月30日までに発生した、大阪府警による誤認逮捕事件の捜査の為に支出した金額、内容等が記載された、一切の資料。」、(2)「上記の期間内の誤認逮捕事件の謝罪、賠償等の名目を問わず、誤認逮捕の結果支払われ、また支払われるであろう金額がわかる一切の資料。※幸いな事に上記期間中に、多発しているので、個人の特定にならない。」についての行政文書公開請求を行った。
  2. 平成25年10月3日、実施機関は、条例第15条第1項の規定により、「公開請求に係る行政文書の情報量が著しく多く、30日以内にそのすべてについて内容を確認し、公開決定等をすることにより、事務の遂行に著しい支障が生じるおそれがあるため。」として、1(2)の請求(以下「本件請求」という。)に対応する行政文書(以下「本件対象文書」という。)を公開請求があった日から30日以内に公開決定を行うこととし、1(1)の請求に対応する行政文書について公開決定等を行う期限を同年12月27日とする決定を行い、審査請求人に通知した。
  3. 平成25年10月22日、実施機関は、本件対象文書について、条例第13条第2項の規定により公開請求拒否決定(以下「本件決定」という。)を行い、次のとおり行政文書の存否を明らかにしない理由を付して、審査請求人に通知した。
    (行政文書の存否を明らかにしない理由)
    本件請求は、特定の個人が大阪府警察に誤認逮捕された件について、謝罪・賠償等名目を問わず、誤認逮捕の結果支払われ、また支払われるであろう金額について問うものである。
    本件請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えることは、特定の個人に対して、上記のような支払が行われ、又は行われるか否かを明らかにするものであって、個人のプライバシーに関する情報を公にするものである。
    したがって、本件請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、条例第9条第1号に該当する情報を公開することになるため、条例第12条の規定により、当該行政文書の存否を明らかにしないで、本件公開請求を拒否する。
  4. 平成25年10月24日、審査請求人は、本件決定を不服として、行政不服審査法第5条の規定により、実施機関の上級庁である大阪府公安委員会(以下「諮問実施機関」という。)に対して、審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。

第三 審査請求の趣旨

本件決定を取り消し、本件対象文書について公開するよう求める。

第四 審査請求人の主張要旨

審査請求書における審査請求人の主張は、概ね次のとおりである。

本件請求の趣旨は、一定の期間内に生じた多数の誤認逮捕事件の為に無駄な公金支出があったか否かを知るためであり、OECDで採択された原則にいう個人情報があるとすれば、マスキングをすればよく、結果的に1件であったとしても、まさに結果として偶然に1件であっただけで、それをもって条例の示す、特定個人のプライバシーに関する条項には反しない。
請求が可能な方々は、当該期間内だけでも多数いらっしゃり、少なくとも分母が多数である限り、「特定の個人」ではなく、「ある一定の請求権を持った集団」であり、示された理由は事実誤認であることは疑いない。よって、条例第9条第1項の適用は誤りであり、条例第12条の規定は適用できないため、原請求の情報公開を行うように求める。

第五 諮問実施機関の主張要旨

諮問実施機関の主張は概ね次のとおりである。

1 本件処分の妥当性について

(1)条例第9条第1号について

条例は、その前文で、大阪府の保有する情報は公開を原則とし、併せて、個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護する旨を宣言している。また、第5条において、個人のプライバシーに関する情報をみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなけらばならない旨規定している。
本号は、このような規定を受けて個人のプライバシーに関する情報の公開禁止について定めたものである。
同号は、情報が記録された行政文書については公開してはならないと定めている。
そして、「個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報」とは、個人のプライバシーに関する情報を例示したものであり、「特定の個人が識別され得る」情報とは、当該情報のみによって直接特定の個人が識別される場合に加えて、他の情報と結びつけることによって間接的に特定の個人が識別され得る場合を含むと解される。
また、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる情報」とは、社会通念上、他人に知られることを望まないものをいうと解される。

  • ア 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、
  • イ 特定の個人が識別され得るもののうち、
  • ウ 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる
(2)条例第12条について

本条は、公開請求に対し、当該公開請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、条例第8条及び第9条に規定する適用除外事項によって保護される利益が害されることとなる場合には、例外的に公開請求に係る行政文書の存否自体を明らかにしないで公開請求を拒否することができる旨規定している。
本条による公開請求の拒否は、公開請求に係る行政文書が存在するか否かも明らかにしないというものであり、安易な運用は行政文書公開制度の趣旨を損なうことになりかねないが、公開請求に係る行政文書の存否が明らかになることによる権利利益の侵害や事務執行の支障等が具体的かつ客観的に認められる場合には、本条によって公開請求に係る行政文書の存否を明らかにすることなく公開請求を拒否することができるものである。

(3)本件請求に係る行政文書の存否を答えることにより明らかとなる情報と条例第9条第1号該当性について

本件請求は、平成24年10月1日から平成25年9月30日までの間に特定の個人が大阪府警察に誤認逮捕された件について、謝罪、賠償等名目を問わず、誤認逮捕の結果支払われ、また支払われるであろう金額について記録された文書の存在を前提に、その公開を求めており、仮に誤認逮捕されたすべての個人に対して大阪府警察から金銭の支払が行われ、若しくは行われようとしていた場合、対象となる文書が存在することを答えると、特定の個人が大阪府警察から何らかの金銭の支払を受けたか、若しくはこれから受けようとしている事実を明らかにしてしまい、逆に誤認逮捕されたすべての個人に対して大阪府警察からの金銭の支払が行われていない場合に、対象となる文書が存在していないことを答えると、特定の個人が大阪府警察から金銭の支払を受けていないという事実を明らかにしてしまうこととなる。
このような、特定の個人が誤認逮捕されたことにより金銭の支払を受けるか否かに関する情報は、(1)ア及びイの要件に該当することが明らかであり、また、社会通念上、他人に知られることを望まないものであることから、(1)ウの要件にも該当する。
したがって、本件請求に係る行政文書は、その存否を答えるだけで、条例第9条第1号に該当する情報を公開することになるため、条例第12条の規定により公開請求を拒否したものである。

2 結論

以上のとおり、本件処分は条例の趣旨を踏まえて行われたものであり、何ら違法、不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。

第六 審査会の判断

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。
このように「知る権利」を保障するという理念のもとにあっても、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。
このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第2条第1項に規定する行政文書に記録されている場合には、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。

2 本件決定に係る具体的な判断及びその理由について

本件決定について、諮問実施機関は、本件対象文書が存在するか否かを答えるだけで、条例第9条第1号に該当する情報を公開することとなるため、条例第12条の規定に基づき、存否を明らかにしないで公開請求を拒否したことは正当であると主張しているので、検討したところ、次のとおりである。

(1)条例第9条第1号について

条例は、その前文で、府の保有する情報は公開を原則としつつ、併せて、個人のプライバシーに関する情報は最大限保護する旨を宣言している。また、第5条において、個人のプライバシーに関する情報をみだりに公にすることのないように最大限の配慮をしなければならない旨規定している。
本号はこのような趣旨を受けて、個人のプライバシーに関する情報の公開禁止について定めたものである。
同号は、情報が記載されている行政文書を公開してはならない旨定めている。
そして、「個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報」とは、個人のプライバシーに関する情報を例示したものであり、「特定の個人が識別され得る」情報とは、当該情報のみによって直接特定の個人が識別される場合に加えて、他の情報と結びつけることによって間接的に特定の個人が識別され得る場合を含むと解される。
また、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる情報」とは、社会通念上、他人に知られることを望まないものをいうと解される。

  • ア 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、
  • イ 特定の個人が識別され得るもののうち、
  • ウ 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる
(2)条例第9条第1号該当性について
  • ア 本件対象文書は、特定の期間に大阪府警察に誤認逮捕された個人に対して、謝罪、賠償等の名目を問わず、誤認逮捕の結果支払われ、又は支払われるであろう金額について記録されたものである。
    誤認逮捕や、金銭の支払に関する情報は、個人のプライバシーに関する情報であり、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であり、(1)ア及びウに該当することは明らかである。
  • イ 特定の個人が識別され得るか否かについて、審査請求人は、本件請求で指定した期間内に起きた誤認逮捕により補償の支払を求めることができる個人が多数存在すると主張しているが、諮問実施機関は、上記期間内に発生した誤認逮捕は極めて少数であり、これらに関する報道情報と照合することにより、特定の個人が識別されてしまうおそれがあると主張している。
    諮問実施機関の説明で示された当該期間の誤認逮捕の件数が少なく、また、当該情報が公開されることによって誤認逮捕とそれによる金銭の支払という、特にプライバシー性の高い情報が明らかになってしまうことから判断すると、特定の個人が識別されることには相当程度の蓋然性があると認められ、(1)イに該当すると考えることが妥当である。
(3)条例第12条について

本条は、公開請求に係る行政文書の存否を明らかにするだけで第8条及び第9条に規定する適用除外事項によって保護される利益が害されることとなる場合には、例外的に公開請求に係る行政文書の存否自体を明らかにしないで公開請求を拒否することができる旨を定めたものである。
本条は、公開請求に係る行政文書が存在するか否かを答えるだけで適用除外事項に該当する情報を公開することとなる場合にのみ例外的に適用できるのであって、安易な運用は行政文書公開制度の趣旨を損なうことになりかねないが、公開請求に係る行政文書の存否が明らかになることによる権利利益の侵害や事務執行の支障等が具体的かつ客観的に認められる場合には、本条によって公開請求に係る行政文書の存否を明らかにすることなく公開請求を拒否することができるものである。

(4)条例第12条該当性について

本件対象文書が存在するとして公開又は非公開の決定を行うと、誤認逮捕された結果、金銭の支払を受けた、又はこれから受けようとしている個人が存在することが明らかとなる。また、このような行政文書は存在しないとして、不存在による非公開決定を行うと、誤認逮捕されたが、金銭の支払は受けていない個人が存在することが明らかとなる。
したがって、本件対象文書の存否を答えることにより、誤認逮捕の結果、金銭の支払を受けた個人又は受けなかった個人の存在が明らかとなる。
これらの個人の情報は、(2)アで述べた個人のプライバシー情報であり、また、イで述べたように、特定の個人が識別され得るものである。
以上のことから、本件請求にかかる行政文書の存否を答えることにより、条例第9条第1号に該当する情報を公開することとなり、それによる個人の権利利益の侵害のおそれがあると考えられる。よって、条例第12条の規定により、行政文書の存否を明らかにしないで本件公開請求を拒否することは妥当である。

3 その他

審査請求人から、平成26年7月4日付け口頭意見陳述申出書により、審査会での口頭による意見陳述の申出がなされたが、当審査会は、(1)から(3)までの理由をもって、条例第24条第1項の規定により、口頭意見陳述を行わないことと決定した。

  • (1)当審査会において、本件決定の妥当性を判断する資料が得られたこと。
  • (2)審査請求人から提出された口頭意見陳述申出書には、代理人による意見陳述を希望する記載がなかったこと。
  • (3)平成26年6月20日付け大公審第12号、同年7月11日付け大公審第23号、同年8月11日付け大公審第30号及び同年11月18日付け大公審第44号により意見書の提出を求めたが提出がなく、また、平成27年1月27日付け大公審第64号により、同年2月17日までに意見書の提出がない場合は提出する意思がないものとして判断すると通知したが、提出がなかったこと。

4 結論

以上のとおりであるから、本件審査請求は、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

主に調査審議を行った委員の氏名

北村和生、小原正敏、尾形健、三成美保

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