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更新日:2015年8月12日

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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第244号)

安威川ダム用地取得に伴う損失補償に関する文書部分公開決定審査請求事案

(答申日 平成27年8月12日)

第一 審査会の結論

諮問実施機関(大阪府知事)の判断は妥当である。

第二 審査請求に至る経過

  1. 平成26年9月29日、審査請求人は、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、大阪府知事(以下「諮問実施機関」という。)に対し、「大阪府茨木市大字生保92-1,92-2,92-3,93,94,95,1094,1203,56,150-2,1102-2に関する大阪府の『公共用地取得に伴う損失補償基準』による補償の種別、数量、金額」の行政文書公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
  2. 同年10月14日、諮問実施機関から「府土木事務所長等の職にある職員に権限を委任する規則」第11条第2号により権限を委任された大阪府安威川ダム建設事務所長(以下「実施機関」という。)は、条例第13条第1項の規定により、本件請求に対応する行政文書として(1)の行政文書(以下「本件行政文書」という。)を特定の上、(2)に掲げる部分を除いた部分を公開することとする部分公開決定(以下「本件決定」という。)を行い、(3)のとおり公開しない理由を付して審査請求人に通知した。
    • (1)行政文書の名称
      補償費の評価決定額について(通知)平成18年3月15日付け
      損失補償金算定調書(細則様式第7号)
    • (2)公開しないことと決定した部分(以下「本件非公開部分」という。)
      地上物件移転補償費等が特定される情報
    • (3)公開しない理由
      • ア 大阪府情報公開条例第8条第1項第1号に該当する。
        本件行政文書(非公開部分)には、地上物件移転補償費等が特定される情報が記載されており、これらを公にすることにより、当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められる。
      • イ 大阪府情報公開条例第9条第1号に該当する。
        本件行政文書(非公開部分)には、地上物件移転補償費等が特定される情報が記載されており、これらは特定の個人が識別される個人のプライバシーに関する情報であって、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる。
  3. 同年11月19日、審査請求人は、本件決定を不服として、行政不服審査法第5条の規定により、実施機関の上級庁にあたる諮問実施機関に対し審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。

第三 審査請求の趣旨

公開しないことと決定した部分の非公開決定処分を取り消すとの処分を求める。

第四 審査請求人の主張要旨

審査請求人の主張は、概ね次のとおりである。

1 審査請求書における主張

本件決定が条例第8条第1項第1号及び第9条第1号に該当すると判断することは違法である。

本件決定通知書では「本件行政文書の非公開部分は条例第8条第1項第1号に該当し、さらに地上物件移転補償費等が特定される情報が記載されており、これらを公にすることにより当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められる」「また条例第9条第1号に該当する。同じく地上物件移転補償費等が特定される情報が記載されており、これらは特定の個人が識別される個人のプライバシーに関する情報であって、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」とする。

しかしながら、公共事業の推進に当たっての、「公共用地取得に伴う損失補償基準」(昭和37年10月12日用地対策連絡会決定)(以下「基準」という。)第1条(目的)には「事業の円滑な遂行と損失の適正な補償の確保」が明記されている。また公共補償についてはその対象が個人であれ法人であれ、民民の補償と違って一定の情報が公開されることは一般的に受忍している。しかも本件補償に当たっても土地取得に係わる補償額は公開されている。地上物件移転補償費等を非公開にするのは根拠がない。

2 反論書における主張

(1)条例第8条第1項第1号に該当することについて

「本件行政文書には地上物件移転補償費等が特定される情報が記載されており、これらを公にすることにより、法人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められる」というが、当該地における、該当の当該事業者は2002年に事業と操業を終息しており、補償の対象となった施設や権利はすべて消滅しており、現時点に於いて公開する事により競争上の地位や正当な利益を害する事は認められずその主張には根拠がない。したがって、本件非公開部分に記載された情報は、非公開の理由とはならないことは明らかである。

(2)条例第9条第1号に該当することについて

「本件行政文書には地上物件移転補償費等が特定される情報が記載されており、これらは特定の個人が識別される個人のプライバシーに関する情報であって、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」というが、条例の「前文」には、「府の保有する情報は公開を原則とし、個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護しつつ、行政文書等の公開を求める権利等を明らかにし、・・・『知る権利』の保障と個人の尊厳の確保に資する」としている。また非公開部分の内容とその重要性及び諸疑惑からして、「個人のプライバシーの保護」についての取扱いもケースバイケースと考えられる。したがって、本件非公開部分に記載された情報が、個人のプライバシー情報をもって、非公開の理由とはならないことは明らかである。

第五 諮問実施機関の主張要旨

諮問実施機関の主張は、概ね次のとおりである。

1 部分公開とした理由

(1)安威川ダム建設事業における用地事務について

一般に、公共事業を行うために土地を買収するときに、その買収する土地に事業に支障となる建物や工作物等がある場合は、それらを撤去するか別の場所へ移転することを所有者に対して求める。その際、起業者は補償金として、支障物件の撤去や移転に要する費用をはじめ、それに伴い通常生じる費用を支払うことになる。

この補償金の算定にあたっては、「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」(昭和37年6月29日閣議決定)(以下「要綱」という。)及び基準等に基づき行い、その考え方は、支障物件を移転させる際には、通常妥当と認められる移転先に、通常妥当と認められる移転方法によって移転するのに要する費用を補償するというものである。

また、補償費の評価決定額については、大阪府が作成している「都市整備部用地事務処理要綱」及び「同細則」に基づき決定するものである。

(2)本件行政文書について
ア 平成18年3月15日付け用地第1953号補償費の評価決定額について(通知)

安威川ダム建設事業に係る地上物件移転補償費及びその他の補償費の評価決定額を大阪府土木部(現都市整備部)用地室長から安威川ダム所長あて通知する文書であり、「決定額」が「物件の所在地」及び「補償対象者」ごとに表形式で記載されている。

このうち、本件決定においては、「補償対象者」の一部及び「決定額」を非公開とした。

イ 損失補償金算定調書

補償費の評価決定額の内訳等を記載した調書であり、「事業名」、「予算」、「調査番号」「物件の所在地」、「被補償者の住所及び氏名」、「居住者数」、「土地・建物の種別」、「構造・用途」、「建物敷地面積」、「建物延面積」、「建物対象面積」、「営業の有無と業種」、「仮住居所要面積」、「認定工法」、「家賃月額」、「更地価格」及び「補償項目」ごとの「種別」、「補償額」、「算定基礎」から成る。「補償項目」としては、「地上物件補償額」、「仮住居補償」、「借家人補償」、「動産移転料」、「仮施設補償」、「家賃減収補償」、「営業補償」、「移転雑費」、「その他」及び「合計」が記載されている。

このうち、本件決定においては、「建物種別」の一部、「建物敷地面積」、「建物延面積」、「建物対象面積」、「補償項目」ごとの「補償額」、「合計金額」及び「動産移転料」における「台数」、「回数」、「動産容積」及び「車両動産移転費」を非公開とした。

2 本件処分の適法性について

(1)条例第8条第1項第1号について

本条は、行政文書公開制度における適用除外事項について定めたものであり、行政文書の公開請求に対し、実施機関が公開しないことができる情報の範囲を規定している。

また、本号において、公開しないことができる文書については、法人その他の団体又は個人の事業に関する情報のうち、公にすることによりその競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるものとされている。

事業者の適正な活動は、社会の維持存続と発展のために尊重、保護されなければならないという見地から、社会通念に照らし、競争上の地位を害すると認められる情報その他事業者の正当な利益を害すると認められる情報は、営業の自由の保障、公正な競争秩序の維持等のため、公開しないことができるとするのが本号の趣旨である。

(2)条例第8条第1項第1号に該当することについて

本件非公開部分のうち、同号に該当するとして非公開としたのは、以下のとおりである。

  • ア 平成18年3月15日付け用地第1953号補償費の評価決定額について(通知)に記載された、補償対象者株式会社A(以下「本件法人」という。)にかかる「決定額」
  • イ 損失補償金算定調書に記載された「建物種別」の一部、「建物敷地面積」、「建物延面積」、「建物対象面積」、「補償項目」ごとの「補償額」、「合計金額」及び「動産移転料」における「台数」、「回数」、「動産容積」及び「車両動産移転費」

まず、本件非公開部分に記載されているこれらの情報については、安威川ダム建設事業により支障となった法人に対する地上物件移転補償に関する情報であるから、本号における「法人等に関する情報」に該当する。

次に、当該情報を公にすることにより、本件法人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるかどうかについて検討を行う。

本号における「競争上の地位を害すると認められるもの」とは、生産技術上又は営業上のノウハウや取引上、金融上、経営上の秘密等を公開されることにより、公正な競争の原理を侵害すると認められるものをいう。また、「その他正当な利益を害すると認められるもの」とは、事業者に対する名誉侵害、社会的評価の低下となる情報及び公開により団体の自治に対する不当な干渉となる情報等で、必ずしも競争の概念でとらえられないものをいう。

一般に、地上物件が公共事業により支障となり移転補償の対象となったことは、外見上明らかであり、その移転補償費の算定は、要綱及び基準等に基づき客観的に行われるもので、公正性と公平性が求められる。

一方、具体的な補償金の算定は、被補償者の協力のもとに、対象となる建物等について詳細に調査を行い、その結果をもとに行われるものであり、当該調査結果や算定根拠については、通常は公にされることのない内部情報が含まれる。また、建物については、通常不動産登記簿により公示されているものの、補償金の算定に必要となる建物内部の構造、使用資材、施工態様、損耗の状況等までは、外部に明らかになっているとはいえないため、調査を行ったことにより判明するこれらの情報は、通常は公にされることのない内部情報といえる。

したがって、イの情報のうち、調査を行うことにより判明する情報である「建物敷地面積」、「建物延面積」、「建物対象面積」並びに「動産移転料」における「動産容積」及び「車両動産移転費」の補償対象物件に関する数量等に関する情報については、通常は公にされることのない内部情報であり、これらを公にすることは、法人の事業活動に対する不当な干渉となり、本件法人の正当な利益を害すると認められる。

また、これらの調査結果に基づき算定された「補償項目」ごとの「補償額」及び「合計金額」並びにアの情報についても、内部情報を根拠として算定されたものである以上、これらを公にすることは、法人の事業活動に対する不当な干渉となり、本件法人の正当な利益を害すると認められる。

さらに、本件法人に対する移転補償においては、事業所全体が移転対象となっており、本件法人に対して支払われる地上物件移転補償費等は、本件法人の資産の大半を占める可能性があると想定されることから、「補償項目」ごとの「補償額」及び「合計金額」並びにアの情報を公にすることは、本件法人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められる。

以上のことから、本件法人に係るア及びイの情報は、「公にすることにより、当該法人等又は当該個人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの」に該当するため、非公開とすることは妥当なものである。

(3)条例第9条第1号について

本条は、第8条とともに、行政文書公開制度における適用除外事項について定めたものであり、本号は個人のプライバシー保護の観点から、個人のプライバシーに関する情報の公開禁止について定めたものである。

条例は、その前文で、大阪府の保有する情報は原則公開としつつ、併せて、個人のプライバシーに関する情報は最大限保護する旨を宣言している。また、第5条において、個人のプライバシーに関する情報をみだりに公にすることのないように最大限の配慮をしなければならない旨を規定している。

このような趣旨を受けて、個人のプライバシーに関する情報の公開禁止を定めたのが本号であり、「個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報(事業を営む個人の当該情報に関する情報を除く)であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの」については、「公開してはならない情報」とし、公開することを禁止するという基本原則が明確に定められている。

このうち、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報とは、社会通念上、他人に知られることを望まないものをいい、「正当であると認められる」情報判断については、個人を取り巻く背景や情報そのものの性質等を十分に考慮した上で行う必要がある。

(4)条例第9条第1号に該当することについて

本件非公開部分のうち、同号に該当するとして非公開としたのは、平成18年3月15日付け用地第1953号補償費の評価決定額について(通知)に記載された、個人の「氏名」及び「決定額」である。

地上物件移転補償費及びその他の補償費の補償対象者たる個人の「氏名」については、通常一般に公になっている情報から特定或いは類推できるものではないため、「個人のプライバシーに関する情報であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報である。

次に、「決定額」については、安威川ダム建設事業を推進していくことにより支障となる個人が所有する財産の移転等に係る費用であり、特定個人の財産及び所得が分かる情報である。したがって、「個人のプライバシーに関する情報のうち、特定の個人が識別され得る」情報であるといえる。また、これらの情報は、登記簿や地価の公示価格等、通常一般に公になっている情報から特定或いは類推できるものではなく、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報である。

以上のことから、個人の「氏名」及び「決定額」については、「個人のプライバシーに関する情報であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの」に該当するため、非公開とすることは妥当なものである。

3 審査請求人の主張について

審査請求人は、本件審査請求において、「公共補償については、その対象が個人であれ法人であれ、民民の補償と違って一定の情報が公開されることは一般的に受忍している。しかも本件補償に当たっても土地取得に係わる補償額は公開されている。地上物件移転補償費等を非公開にするのは根拠がない。」旨の主張をしている。

公共事業であるため、補償内容等については公正性と公平性が求められるが、被補償者は自身の正当な利益を害さない限りにおいて、一定の情報が公開されることを受忍しているものと解され、公共事業に関する情報であっても、当該情報が条例により保護される対象となることは条例の趣旨からも明らかである。

また、土地が買収された事実については、不動産登記簿により公示されており、買収価格については、要綱及び基準等に基づいて客観的に算定されたものである。この土地買収価格に影響を与える周辺環境等の諸要因は、一般に周知されている事項、或いは容易に調査可能な事項であることから、土地買収価格は、一般人であればおおよその見当をつけることができるものといえる。このことなどから、通常は、土地買収価格を非公開とすることに理由はなく、この点において地上物件移転補償費等とは性質を異にするものである。したがって、情報公開の適否判断において、土地買収価格と地上物件移転補償費等とは区別して取り扱う必要があり、地上物件移転補償費等を非公開とした理由については、前記2に記載のとおりである。

4 結論

以上のとおり、本件決定は、条例の規定に基づき適正に行われたものであり、適法かつ妥当なものである。

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、一方では公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第2条第1項に規定する行政文書に記録されている場合には、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。

2 本件決定に係る具体的な判断及びその理由について

諮問実施機関は、本件行政文書の非公開部分について、条例第8条第1項第1号及び第9条第1号に該当すると主張しているので、以下に検討する。

(1)条例第8条第1項第1号について

事業者の適正な活動は、社会の維持存続と発展のために尊重、保護されなければならないという見地から、社会通念に照らし、競争上の地位を害すると認められる情報その他事業者の正当な利益を害すると認められる情報は、営業の自由の保障、公正な競争秩序の維持等のため公開しないことができる。

同号は、

  • ア 法人(国、地方公共団体、独立行政法人等(独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号)第2条第1項に規定する独立行政法人等をいう。以下同じ。)、地方独立行政法人、地方住宅供給公社、土地開発公社及び地方道路公社その他の公共団体(以下「国等」という。)を除く。)、その他の団体(以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、
  • イ 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの

に該当する情報については、公開しないことができる旨定めている。「その他正当な利益を害すると認められるもの」とは、事業者に対する名誉侵害、社会的風評の低下となる情報及び公開により団体の自治に対する不当な干渉となる情報等必ずしも競争の概念でとらえられないものをいうものである。

(2)条例第8条第1項第1号該当性について

諮問実施機関が本号に該当するものとして非公開としている情報は、安威川ダム建設事業により支障となった法人に対する地上物件移転補償に関するものであることから、(1)アに該当する。次に(1)イの該当性について検討する。

  • ア「損失補償金算定調書」に記載されている具体的な補償金の算定については、被補償者の協力を得て、建物内部の構造、使用資材、施工態様、損耗の状況等を調査し、その結果をもとに行われるものであり、これら調査結果等については、不動産登記簿により公示されている建物の情報とは異なり、通常、公にされることのない内部情報といえる。また、当該内部情報を根拠として算出された「補償項目」ごとの「補償額」及び「合計金額」並びに補償費の「決定額」についても、同様に内部情報といえる。よって、これらの情報は(1)イに該当し、非公開とすることが妥当である。
  • イ「補償費の評価決定額について(通知)」、「損失補償金算定調書」に記載されている決定額(合計額)については、補償項目別の補償額を合計したものである。諮問実施機関の説明によると、本件法人に対する移転補償は、その対象が事業所全体に及んでいることから、本件法人の資産の大半を占める可能性があると想定され、また、本件法人は当地での操業終息後、他の場所で事業を行っているとのことである。

これを踏まえると、決定額を公にすることは、本件法人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるとの諮問実施機関の主張は理解することができる。よって、これらの情報は(1)イに該当し、非公開とすることが妥当である。

(3)条例第9条第1号について

条例は、その前文で、府の保有する情報は公開を原則としつつ、併せて、個人のプライバシーに関する情報は最大限保護する旨を宣言している。また、第5条において、個人のプライバシーに関する情報をみだりに公にすることのないように最大限の配慮をしなければならない旨規定している。

本号はこのような趣旨を受けて、個人のプライバシーに関する情報の公開禁止について定めたものである。

同号は、

  • ア 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、
  • イ 特定の個人が識別され得るもののうち、
  • ウ 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる

情報が記載されている行政文書を公開してはならない旨定めている。

(4)条例第9条第1号該当性について

諮問実施機関が本号に該当するものとして非公開としている情報は、個人の「氏名」及び「決定額」である。

  • ア 地上物件移転補償費及びその他の補償費の補償対象者である個人の「氏名」については、通常一般に公になっている情報から特定或いは類推できない特定の個人に関する情報であって、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められ、(3)に該当し、非公開とすることが妥当である。
  • イ 「決定額」については、特定個人の財産及び所得に関する情報であって、これらの情報は、登記簿や地価の公示価格等、通常一般に公になっている情報から特定或いは類推できるものではないため、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められ、(3)に該当し、非公開とすることが妥当である。

3 結論

以上のとおりであるから、本件審査請求は理由がなく、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

主に調査審議を行った委員の氏名

北村和生、小原正敏、尾形健、三成美保

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