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更新日:2016年2月4日

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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第251号)

高校教科書採択教育委員会意見交換会文書不存在非公開決定異議申立事案

(答申日:平成28年2月4日)

第一 審査会の結論

実施機関(大阪府教育委員会)の決定は妥当である。

第二 異議申立ての経過

  1. 平成26年12月8日、異議申立人は、大阪府教育委員会(以下「実施機関」という。)に対し、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条第1項の規定により、「2013年度・2014年度の高校教科書採択に関して、教育委員の意見交換会で行われた議論の概要とその場に提出された資料、2013年に条件付き採択となった高校へ配布した補助教材の作成に関する教育委員の意見交換会の議論の概要と配布された資料、『慰安婦』問題の補助教材の作成に関する資料のすべて」についての情報公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
  2. 平成26年12月22日、実施機関は、本件請求のうち、「2013年度・2014年度の高校教科書採択に関して、教育委員の意見交換会で行われた議論の概要とその場に提出された資料」に対応する行政文書として、条例第13条第1項の規定により、次のとおり特定し、その全部を公開する旨の公開決定を行い、異議申立人に通知した。
    • ア 教科用図書の補完教材に関する指示事項(通知)(案)
    • イ 確認報告書(案)
    • ウ 補完教材(案)
    • エ 平成26年度使用教科用図書の採択について(報道提供資料)
    • オ 教科用図書の補完教材に関する指示事項(通知)
    • カ 確認報告書
    • キ 補完教材
  3. 同日、実施機関は、本件請求のうち、「2013年に条件付き採択となった高校へ配布した補助教材の作成に関する教育委員の意見交換会の議論の概要と配布された資料、『慰安婦』問題の補助教材の作成に関する資料のすべて」について、「作成されていないため存在しない」との理由を付して、条例第13条第2項の規定により、不存在による非公開決定(以下「本件決定」という。)を行い、異議申立人に通知した。
  4. 平成27年1月10日、異議申立人は、本件決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に対して、本件決定のうち、2013年に条件付き採択となった高校へ配布した補助教材の作成に関する教育委員の意見交換会の議論の概要を示す文書の不存在による非公開決定処分に対する異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を行った。

第三 異議申立ての趣旨

「2013年に条件付き採択となった高校へ配布した補助教材の作成に関する教育委員の意見交換会の議論の概要の不存在による非公開決定処分の取り消し及び当該情報の全部公開」するとの決定を求める。

第四 異議申立人の主張要旨

異議申立人の主張は、概ね次のとおりである。

1 異議申立書における主張

本件、不存在による非公開決定処分は、条例第1条の趣旨に反する。

2 反論書における主張

(1)大阪府情報公開条例の「精神」と実施機関の情報提供義務

「『知る権利』の保障と個人の尊厳の確保に資するとともに、地方自治の健全な発展に寄与するため」に制定された条例は、周知のようにその前文において、「情報の公開は、府民の府政への信頼を確保し、生活の向上をめざす基礎的な条件であり、民主主義の活性化のために不可欠なものである。」とし、更に「府が保有する情報は、本来は府民のものであり、これを共有することにより、府民の生活と人権を守り、豊かな地域社会の形成に役立てるべきものであって、府は、その諸活動を府民に説明する責務が全うされるようにすることを求められている。」と、条例制定の「精神」を明示している。特に、「府は、その諸活動を府民に説明する責務が全うされるようにすることを求められている。」という部分は、従前の大阪府公文書公開条例にはなく、市民の「知る権利」(前文)もしくは「行政文書の公開を求める権利」(第1条)の保障を目的とする条例の「精神」をより一層具体化するために追加されたものである。
従って、実施機関が、条例の「精神」に沿った情報公開を進めることは、大阪府民に対する責務である。

(2)本件「弁明書」の不当性

今回「不存在により非公開決定」を受けた「教育委員の意見交換会で行われた議論の概要」について、弁明書では「本件会議は非公開で行っており、また、原則として、議論の概要をまとめた文書の作成を行っておらず、行政文書としての記録は残っていない。」と主張している。しかし、これは、情報公開を求める府民に対して全く説得力のないもので、行政の場当たり的な対応であり一貫性のないものである。ひいては、行政の公平性・公正性に疑義が生じざるをえない。
なぜならば、実施機関は、これまで「教育委員の意見交換会で行われた議論の概要」について作成した事実があり、しかも情報公開請求に対して公開決定を出したことがあるからである。申立人が知る限り、2014年9月19日に行われた「教育委員の意見交換会」の概要が公開されている(添付資料「公開決定通知書(教委小中第2695号)」の写し(省略))。また、「教育委員の意見交換会」ではないが「教育長と事務局室・課長との意見交換(10月30日)」の概要も公開されている(添付資料「公開決定通知書(教委総第3089号)」の写し(省略))。もし、実施機関の弁明書が正しいとすれば、これらの会議は「非公開」で行っており、概要は作成していないはずである。ましてや、情報公開請求に対して公開されるはずがないものである。
「教育委員の意見交換会」のあるときは概要が作成され公開される、あるときは作成さえされない。なぜ、このような不統一な対応が生じるのか、実施機関は明確な説明を何ら行っていない。これらのことが実施機関の裁量に任されるとすれば、不当な情報隠し、裁量権の乱用を招きかねず、府民への信頼を損ねることになると思われる。現に、9月19日の「教育委員の意見交換会」は、弁明書では「審議会等の会議にあたるものではない」としつつも、中原教育長(当時)は、この意見交換会での審議で「認定こども園」の定員について教育委員会の見解を承認されたと、大阪府教育委員会議、大阪府議会の中で何度も発言している。中原教育長(当時)の態度は、弁明書の主張とは完全に矛盾している。

(3)大阪府府民文化部府政情報室はどちらを向いているのか?府民かそれとも行政サイドか?

情報公開グループは、申立人による質問に対して、実施機関の代弁に終始した。実施機関の上記の異なる対応に対して「ちぐはぐな対応」と認めつつ、「概要を作成するかどうかは実施機関において判断すべきこと」と発言し、大阪府として統一的な対応を求める申立人に対して何も動かない趣旨の発言を行った。これでは、大阪府の統一的な情報公開のルール作りを放棄することに等しい。情報公開を求める府民に対して、極めて不誠実な態度である。強く改善を求めるものである。

(4)結論

以上の通り、本件処分は、条例の趣旨を蔑ろにし、条例第1条に明確に反するもので、実施機関の「弁明書」には、何ら正当性・公平性・公正性がない。「教育委員の意見交換会」の概要について、すでに公開した実績があることから、基本的には概要を作成し、公開をしていくことが開かれた大阪府行政としてとるべき態度であると考える。従って、実施機関の決定は不当との決定をのぞむものである。

第五 実施機関の主張要旨

実施機関の弁明書における主張は概ね次のとおりである。

1 本件請求文書を作成していないことについて

異議申立ての対象文書は、平成25年度に条件付き採択となった高校へ配布した補助教材の作成に関して、平成25年9月20日及び平成25年9月27日に実施された教育委員の意見交換会(以下「本件会議」という。)における議論の概要を示す文書であると認識している。
本件会議は、府の教育方針を決定するにあたり公開により行われる教育委員会会議とは異なるものであり、条例第33条に規定されている審議会等の会議にあたるものではない。
したがって、これまでから、本件会議は非公開で行っており、また、原則として、議論の概要をまとめた文書の作成は行っておらず、行政文書としての記録は残っていない。

2 非公開の理由

以上のとおり、異議申立ての対象文書は作成していないため、行政文書として不存在であり、公開することはできない。

3 結論

異議申立ての対象文書は、作成されていないため、不存在による非公開の決定を行ったものであり、異議申立人が主張する条例第1条の趣旨に反することもなく、違法又は不当な点は何ら存在しない。
よって、実施機関の決定は妥当であるとの答申を求めるものである。

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。
このように「知る権利」を保障するという理念のもとにあっても、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。
このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第2条第1項に規定する行政文書に記録されている場合には、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。

2 不存在非公開に係る具体的な判断及びその理由について

(1)教育委員の意見交換会について

実施機関に確認したところ、教育委員の意見交換会は、教育委員会会議の前後の時間を利用して、教育委員会事務局(以下「事務局」という。)から、これまでに教育委員より個別に指示・質問のあった事項の説明や、教育委員の視察日程の確認等の事務的な報告を行う場であり、意見交換会と称してはいるものの設置根拠となるような規程は存在しないとのことであった。また、通常は、意見交換会において、事務局からの説明や報告に対して質問が出てくることはあるが意思決定は行われないことから、議事録の作成については義務付けておらず、報告を行う事務局担当課の判断により必要に応じて作成するとのことであった。

(2)本件異議申立てに係る意見交換会について

本件異議申立てに関して、実施機関は「異議申立ての対象文書は、平成25年度に条件付き採択となった高校へ配布した補助教材の作成に関して、平成25年9月20日及び平成25年9月27日に実施された教育委員の意見交換会における議論の概要を示す文書であると認識している」と述べていることから、当該意見交換会が開催される経過等を確認したところ以下のとおりであった。
平成25年8月30日の教育委員会会議において「平成26年度使用府立学校教科用図書の採択」について審議が行われ、「課題があると認められる教科書については、課題のある部分について補完するための具体策を大阪府教育委員会が指導し、それを基に学校長がマネジメントをするという条件のもとで、当該教科書を採択する」と決定がなされた。
この決定に基づき、事務局において課題がある部分を補完するための補助教材を作成し、平成25年9月20日及び平成25年9月27日に実施された教育委員の意見交換会において、その内容の報告を行った。当該意見交換会において、教育委員から特段の質問や意見もなかったことから、事務局において議事録を作成しなかった。

(3)他の意見交換会における議事録の作成について

異議申立人は、「実施機関は、これまで「教育委員の意見交換会で行われた議論の概要」について作成した事実があり、しかも情報公開請求に対して公開決定を出したことがある」として、異議申立人から当審査会へ「平成26年11月21日付け教委小中第2695号の公開決定通知書」の提出があったことから、当審査会において当該公開決定に係る対象文書の確認を行った。
当該文書は、平成26年9月19日の教育委員の意見交換会において議題とされた「認定子ども園条例の改正」に係る教育委員の発言概要が記載されたものであり、当該条例の改正に関する教育委員間の実質的な議論や一定の意思決定が行われたことが確認でき、事務局からの単なる説明や報告というものではなかった。
また、当該文書に係る作成経過について実施機関に確認したところ、認定こども園条例の改正案について、知事へどのような意見を述べるべきかの方向性に係る内容に踏み込んだ議論となったことから、通常の意見交換会とは異なり、組織として情報共有したほうがよいと判断して担当職員が作成した個人メモを会議の概要として組織共有したとのことであった。

(4)当審査会の再度の確認と判断

上記のとおり、教育委員の意見交換会においては、事務局からの説明や報告だけでなく、教育委員間において実質的な議論が行われ、議事録が作成されているケースもあることから、本件決定が「不統一な対応」であるとの異議申立人の主張は一定理解できる。
ましてや本件異議申立てにかかる意見交換会は、本項(2)記載のとおりの条件付き採択を受けての意見交換会であったから、事務局から報告のあった補助教材の内容について、条件付き採択の条件が満たされているかどうか意見が出てもおかしくない状態であった。
そこで、当審査会が実施機関にその点につき再度確認したところ、実際に教育委員から特段の質問や意見もなかったため、議事録作成の必要性が認められず、出席した職員も個人メモを作成しなかったし、録音も行わなかったとのことであった。
以上の再確認した内容と、教育委員の意見交換会は条例第33条に規定する公開の努力義務が課せられる会議ではなく、議事録の作成は実施機関の裁量に委ねられていることとに鑑みると、本件文書が不存在であるとの実施機関の説明に特段不自然な点はない。

3 付言

実施機関は、教育委員の意見交換会における議事録の作成について、報告を行う事務局担当課の判断により必要に応じて作成するとしているが、教育委員の意見交換会において実質的な議論が行われているケースもあることから、府民への説明責任を果たせるよう教育委員の意見交換会における議事録の作成について検討されたい。

4 結論

以上のとおりであるから、本件異議申立ては、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

主に調査審議を行った委員の氏名

小谷寛子、有澤知子、尾形健、近藤亜矢子、長谷川佳彦

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