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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第246号)
府立学校卒業式不起立処分資料等部分公開決定異議申立事案
(答申日 平成27年8月17日)
第一 審査会の結論
実施機関(大阪府教育委員会)は、本件異議申立ての対象となった「校長報告書(添付資料を含む。)」について、公開しないことと決定した部分のうち、別紙において「非公開が妥当と判断した部分」を除いて公開すべきである。
実施機関のその余の判断は妥当である。
第二 異議申立ての経過
- 平成26年3月28日、異議申立人は、大阪府教育委員会(以下「実施機関」という。)に対し、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条第1項の規定により、「2014年卒業式での「君が代」不起立処分に関わる一切の資料」についての情報公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
- 同年4月11日、実施機関は、本件請求に対して、条例第13条第1項の規定により、対象行政文書のうち、「校長報告書(添付資料を含む。)」に関して、(1)に掲げる部分を除いた部分を公開することとする部分公開決定(以下「本件決定」という。)をし、(2)のとおり公開しない理由を付して、異議申立人に通知した。
- (1)公開しないことと決定した部分
- ア 学校名及びこれを特定し得る事項
- イ 懲戒処分の対象となった教員の氏名・印影及びこれらを特定し得る事項
- ウ 関係者の氏名・印影
- エ 事件発生の月日
- オ 事件の経過にかかる月日及びこれらを特定し得る事項
- カ 聴取の内容
- キ 顛末書
- (2)公開しない理由
- ア 条例第8条第1項第4号に該当する。
実施機関が行う懲戒処分等の事務に関する情報である事情聴取書や聴取の内容等は、公にすることで、外部の者から中立・公平な審査に影響を及ぼされることにより当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあると認められる。 - イ 条例第9条第1号に該当する。
処分等の対象となった教員等その他関係者の氏名、経歴等や個人の特定につながり得る情報が記載されており、これらは特定の個人が識別される個人のプライバシーに関する情報であって、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる。
- ア 条例第8条第1項第4号に該当する。
- (1)公開しないことと決定した部分
- 同年5月12日、異議申立人は、本件部分公開決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に対して、異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を行った。
第三 異議申立ての趣旨
公開しないことと決定した部分のうち、「校長報告書」の中の「聴取の内容」「顛末書」の「非公開決定」処分の取り消し及び当該情報の全部開示を求める。
第四 異議申立人の主張要旨
異議申立人の主張は、概ね次のとおりである。
1 異議申立書における主張
本件「非公開決定」処分は大阪府情報公開条例第1条の趣旨に反する。
2 反論書における主張
「『知る権利』の保障と個人の尊厳の確保に資するとともに、地方自治の健全な発展に寄与するため」に制定された大阪府情報公開条例(1999年大阪府条例第39号、以下「条例」という。)は、周知のようにその前文において、「情報の公開は、府民の府政への信頼を確保し、生活の向上をめざす基礎的な条件であり、民主主義の活性化のために不可欠なものである。」とし、更に「府が保有する情報は、本来は府民のものであり、これを共有することにより、府民の生活と人権を守り、豊かな地域社会の形成に役立てるべきものであって、府は、その諸活動を府民に説明する責務が全うされるようにすることを求められている。」と、条例制定の「精神」を明示している。特に、「府は、その諸活動を府民に説明する責務が全うされるようにすることを求められている。」という部分は、従前の大阪府公文書公開条例(1984年大阪府条例第2号、以下「旧条例」という。)にはなく、市民の「知る権利」(前文)もしくは「行政文書の公開を求める権利」(第1条)の保障を目的とする条例の「精神」をより一層具体化するために追加されたものである。
従って、実施機関が、大阪府情報公開条例の「精神」に沿った情報公開を進めることは、大阪府民に対する責務である。
異議申立人が公開を求める「聴取の内容」及び「顛末書」について、実施機関が弁明書で述べるとおり、「公正な処分の決定にあたっては、所属学校長からの報告が正確かつ詳細な情報であることが必要かつ重要であり、処分にかかる事務を遂行する上でも、所属長である校長による当該教職員への事実関係の調査、本人への事情聴取や顛末書の提出が重要な情報」と指摘している。まさに「公正な処分の決定」にとって「重要な情報」なのである。
異議申立人が公開を求める文書は、大阪府教委による「君が代」不起立処分に関わるものであり、マスコミでもたびたび取り上げられ、府民の間でも関心の高いものである。従って、実施機関の処分が「公正な処分」にあたることの担保として「聴取の内容」及び「顛末書」を公開しオープンにすることは当然のことである。
異議申立人は、2011年以降、毎年同様の内容について公開請求を行ってきた。昨年までは「聴取の内容」及び「顛末書」は公開されていた内容である。何故、突然公開・非公開の判断が変わるのか。実施機関が言うように、「これらの情報は、実施機関が懲戒処分にかかる事務を遂行する上で必要かつ重要な情報であり、仮にその内容が公開され、さらに、今後公開が前提となれば、非違行為を行った教職員が、事実関係や動機等を率直に述べなくなるおそれがあり、実施機関が懲戒処分にかかる事務の実施に必要かつ十分な情報を得ることが困難になり、当該若しくは同種の事務の公正かつ適正な執行に著しい支障を及ぼすおそれがある。」のであれば、なぜ、昨年までは公開していたのか。昨年から今年にかけて、「公正かつ適正な執行に著しい支障」があったとでも言うのか。
条例や規則に変更がない中で、実施機関の判断がコロコロ変化すること自体、事務の恣意的な運用とみなされても仕方なく、情報公開の公平・公正の原則を逸脱するものであり、しいては行政に対する信頼を著しく損ねるものと言うべきである。
以上の通り、本件処分は条例の趣旨を蔑ろにし、条例第1条に明確に反するもので、実施機関の「弁明書」には、何ら正当性がない。従って、実施機関の決定は不当との決定をのぞむものである。
第五 実施機関の主張要旨
実施機関の主張は概ね次のとおりである。
1 弁明書における主張
(1)任命権に基づく懲戒処分
地方公務員法第27条では、「すべて職員の分限及び懲戒については、公正でなければならない」と規定されており、さらに「職員は、この法律で定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、若しくは免職されず・・・」と平等取扱いの原則が規定されている。一方で、任命権者が懲戒処分をすべきかどうか、また、懲戒処分をするときにいかなる処分を選択すべきかの具体的な基準が法律等で規定されていないことから、任命権者は、懲戒事由に該当すると認められる行為の原因、動機、性質、態様、結果、影響のほか、当該公務員の行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等、諸般の事情を考慮して、懲戒処分をすべきかどうか、また、懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきかを決定すべきものと解されている。(最高裁判所昭和52年12月20日判決)
このことから、府立学校において懲戒事由に該当すると思われる事案が生起した場合、所属学校長が事実関係を調査の上、実施機関に対して報告書を提出し、実施機関においても本人に対する事情聴取を実施し、事実確認等を行った後、前述の事項を総合的に考慮して、懲戒処分を行うかどうか、いかなる処分を行うかを決定している。
したがって、公正な処分の決定にあたっては、所属学校長からの報告が、正確かつ詳細な情報であることが必要かつ重要であり、処分にかかる事務を遂行する上でも、所属長である校長による当該教職員への事実関係の調査、本人への事情聴取や顛末書の提出が重要な情報となっている。
(2)本件請求の非公開部分の条例第8条第1項第4号の該当性について
条例第8条では、行政文書公開制度における適用除外事項を定め、該当する情報については、実施機関は公開しないことができる旨を規定している。そして、同条第1項第4号では、「府の機関・・・が行う・・・人事管理・・・等の事務に関する情報であって、公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるもの」と規定している。
本件では、申立人は、「校長報告書」の中の「聴取の内容」「顛末書」の「非公開決定」処分の取消し、及び当該情報の全部公開を求めている。
「校長報告書」の中の「聴取の内容」とは、本件処分に関し、所属学校長が非違行為の事実確認、当該行為を行った動機等を直接当該教職員から聴取した記録である。
また、「顛末書」とは、当該教職員が非違行為に関し、事実関係や動機等について書面に記載して校長に提出したものである。
これらの情報は、実施機関が懲戒処分にかかる事務を遂行する上で、必要かつ重要な情報であり、仮にその内容が公開され、さらに、今後公開が前提となれば、非違行為を行った教職員が、事実関係や動機等を率直に述べなくなるおそれがあり、実施機関が懲戒処分にかかる事務の実施に必要かつ十分な情報を得ることが困難になり、当該若しくは同種の事務の公正かつ適正な執行に著しい支障を及ぼすおそれがある。
2 追加資料における主張
(1)懲戒処分等の実施手続きについて
府立学校において、懲戒事由に該当すると思われる事案が生起した場合、まず、本人に対して「顛末書」の提出を求め、その内容に基づき、当該教職員の所属する学校長が「事情聴取」を行い、また、関係者から聞き取りをするなど事実関係を調査の上、実施機関に報告書を提出する。
その後、実施機関においても当該教職員からの事情聴取等の事実確認を行った後、実施機関は、諸般の事情(原因、動機、性質、態様、結果、影響等)を総合的に考慮して、懲戒処分等をすべきかどうか、またいかなる処分を行うかを決定している。
その過程において、本人から提出される「顛末書」及び学校長による「事情聴取」は、非違行為をするに至った原因、動機、態様等を迅速かつ正確に把握し、また、公正な処分の決定、処分にかかる事務を遂行する上で、極めて重要な情報となっている。
(2)「聴取の内容」及び「顛末書」を公開することに伴う具体的な支障について
上記のとおり、学校長による「事情聴取」及び「顛末書」の情報は、実施機関が処分にかかる事務を遂行する上で、必要かつ極めて重要な情報であり、仮にその内容が公開され、さらに、今後公開が前提となれば、非違行為を行った者が、非違行為の事実関係や動機等を率直に述べなくなるおそれがある。
その結果、実施機関が懲戒処分等に係る事務の実施に必要かつ十分な情報を得ることが困難になり、当該若しくは同種の事務の公正かつ適正な執行に著しい支障を及ぼすおそれがある。
このように、「校長報告書」のうち「聴取の内容」を公開することによって、迅速性かつ正確性の観点から、実施機関の懲戒処分の事務の公正かつ適正な執行に著しい支障がある。
学校長による「聴取の内容」については、貴審査会答申(平成10年5月21日付け大公審答申第56号)において、「当該教職員の具体的な発言内容等については、必ずしも公知のものとはいえず、先に述べた事情聴取書の考え方(*)からしても、聴取された発言内容等の詳細といい得るものであって、今後、不祥事に関する聴取等が公開を前提としてなされることとなるなどにより、正確かつ詳細な報告等を得ることに支障を生じるおそれがあり、その結果、報告者である市教委や実施機関が、服務義務違反等の事実を正確に把握できなくなるおそれがある」との判断が示されているところである。
さらに、「顛末書」についても、その内容は、非違行為を行った者が、非違行為の内容を中心に、背景、動機、当時及び現在の心境等を詳細に記述したものであり、まさに非違行為を行った者からの事情聴取というべきものである。
なお、近年、卒業式等において職務命令違反をした者が、「顛末書」の提出、学校長及び実施機関による「事情聴取」を拒否するという事案が複数発生しているが、これらの事案については、本人から非違行為の内容、背景、動機等の情報を得ることができず、起立斉唱の職務命令を発した学校長の報告や、教頭等による職務命令違反の現認報告により、かろうじて事実認定ができている状況である。
これを他の事案にあてはめると、仮に、本人から「顛末書」が提出されず、「事情聴取」を拒否する場合、捜査権限等を有しない実施機関としては、正確な事実関係や動機等の把握が極めて困難となり、懲戒処分等にかかる事務の公正かつ適正な執行に著しい支障がある。
*「事情聴取書の考え方」について
「たとえ、一般人が当該教職員等の個人を識別できない情報として公にするとしても、上司や同僚、不祥事の相手方など特定の関係者に知れるおそれがあるだけで知られたくないと望むのが通例であり、そのこと自体は正当でないといい得るものではなく、本事案において事情聴取を内密に実施したことには、一応の合理性があると認めざるを得ず、事情聴取した内容そのものの詳細については、これを公にすることにより、今後服務義務違反等の事実が正確に把握できなくなることから、教職員の勤務関係における規律と公務遂行上の秩序の維持という事後措置の事務の目的が達成できなくなり、また、その公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがある情報である。」
(3)「聴取の内容」及び「顛末書」の大阪府情報公開条例第8条第1項第4号の該当性について
条例第8条第1項第4号では、「府の機関・・・が行う・・・人事管理・・・等の事務に関する情報であって、公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるもの」と規定し、「大阪府情報公開条例解釈運用基準」(平成25年4月)において、同条第1項第4号に「該当する情報例」として、「懲戒処分のための調査に係る事情聴取書」が記載されている。
学校長による「聴取の内容」については、上記2で述べたとおり、貴審査会答申(平成10年5月21日付け大公審答申第56号)において、事情聴取書についての考え方に照らし、条例第8条第5号(現在の条例第8条第1項第4号)に該当する情報であるとの判断が示されている。
また、「顛末書」についても、既に述べたとおり、非違行為を行った者からの事情聴取というべきものであり、条例第8条第1項第4号の規定に基づき非公開とすべき情報である。
3 実施機関説明における主張
昨年度までは校長報告書及び顛末書は個人が特定され得る部分を除いて公開としていたが、本件決定に際し、あらためて校長報告書及び顛末書の公非の検討を行ったところ、当該文書は懲戒処分にかかる事務を遂行するうえで、必要かつ重要な情報が記載されており、公開が前提となると非違行為を行った教職員が事実関係や動機等を述べなくなるおそれがあり、当該若しくは同種の事務の公正かつ適正な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあるため、非公開が妥当と判断したものである。
4 結論
以上のとおり、本件処分は、条例に基づき適正に行われたものであり、違法、不当な点はなく適法、かつ、妥当なものである。
第六 審査会の判断理由
1 条例の基本的な考え方について
行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。
このように「知る権利」を保障するという理念のもとにあっても、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。
このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第2条第1項に規定する行政文書に記録されている場合には、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。
2 異議申立ての対象とされている行政文書について
本件異議申立ての対象とされている行政文書は、校長報告書が府立高等学校6校から各校1名分であり、そのうち4校の校長報告書について顛末書がそれぞれ1名分、1校の校長報告書について職員会議の記録が添付されている。
3 校長報告書及び顛末書の非公開部分に係る具体的な判断及びその理由について
校長報告書及び顛末書の非公開部分について、実施機関は条例第8条第1項第4号及び第9条第1号の規定に該当すると主張することから、以下において検討する。
(1)条例第8条第1項第4号について
府の機関又は国等が行う事務事業に係る情報の中には、当該事務事業の性質、目的等からみて執行前あるいは執行過程で公開することにより、当該事務事業の実施の目的を失い、又はその公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼし、ひいては、府民全体の利益を損なうおそれのあるものがある。
本号は、
- ア 府又は国等の機関が行う取締り、監督、立入検査、許可、認可、試験、入札、契約、交渉、渉外、争訟、調査研究、人事管理、企業経営等の事務に関する情報であって、
- イ 公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあるもの
に該当する情報については、公開しないことができる旨定めている。
本号の「人事管理」とは、職員の任免、服務監督、懲戒、勤務評価、人事異動などの事務をいうものである。
また、本号のおそれのあるものに該当して公開しないことができるのは当該情報を公開することによって、「事務の目的が達成できなくなり」、又は「事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼす」程度が名目的なものに止まらず具体的かつ客観的なものであり、また、それらの「おそれ」の程度も単なる確率的な可能性でなく法的保護に値する蓋然性がある場合に限られると解される。
(2)条例第8条第1項第4号該当性について
- ア 校長報告書の「聴取の内容」は非違行為を行った教職員の懲戒処分等の実施に際し、所属学校長が非違行為の事実確認や当該行為に至った理由等を直接当該非違行為を行った教職員から聴取した記録であり、当該校長報告書に添付された「顛末書」は、当該教職員が非違行為に関し、事実関係や動機等について書面に記載して所属学校長へ提出したもので、いずれも上記(1)アの「人事管理の事務に関する情報」に該当する。
次に、本件非公開部分が(1)イの要件に該当するかどうかについて、審査会において確認した内容に基づいて検討したところ、次のとおりである。
実施機関は、学校長による「聴取の内容」及び「顛末書」(以下「顛末書等」という。)の情報が、実施機関が処分にかかる事務を遂行するうえで、必要かつ極めて重要な情報であり、仮にその内容が公開され、さらに、今後公開が前提となれば、非違行為を行った者が、非違行為の事実関係や動機等を率直に述べなくなるおそれがあると主張する。
顛末書等の情報は、非違行為を行った背景、心理などを詳細に記載したものであり、これらの内容が一般には知られることはないとの前提で作成されるものである。
従って、顛末書等の情報は公開が前提となれば、非違行為を行った者が、非違行為の事実関係や動機等を率直に述べなくなるおそれがあり、懲戒処分に係る事務の実施に必要かつ十分な情報を得ることが困難になり、当該若しくは同種の事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすとの実施機関の主張は一定理解できる。
しかし、非違行為を行った教職員が職務命令に反し、起立斉唱していなかったという事実は、管理者により比較的容易に現状を把握できること、また、前年度に同様の情報公開請求により校長報告書及び顛末書を部分公開したことで、公開を理由に事情聴取の拒否や顛末書を提出しないといった具体的な事務の支障に関する主張はなかったことから、顛末書等の情報を公開することにより、事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすとは認められない。よって、(1)イの要件には該当しないため、(4)に該当する部分を除き、公開が妥当である。 - イ 校長報告書に添付されている職員会議に関する記録は、公開を前提とした記録ではなく、公開が前提となると職員会議に参加する教職員が自由に発言できなくなり、ひいては、職員会議の目的が達せられなくなるおそれが高いと認められることから、(1)イの要件に該当し、非公開が妥当である。
(3)条例第9条第1号について
条例は、その前文で、府の保有する情報は公開を原則としつつ、併せて、個人のプライバシーに関する情報は最大限保護する旨を宣言している。また、第5条において、個人のプライバシーに関する情報をみだりに公にすることのないように最大限の配慮をしなければならない旨規定している。
本号はこのような趣旨を受けて、個人のプライバシーに関する情報の公開禁止について定めたものである。
本号は、
- ア 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、
- イ 特定の個人が識別され得るもののうち、
- ウ 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる
情報が記載されている行政文書を公開してはならない旨定めている。
(4)条例第9条第1号該当性について
実施機関によると、平成26年の府立学校卒業式において当該非違行為を行い、同じ日に処分を受けた教職員は、本件校長報告書の対象となった6名と少人数であり、卒業式出席者が比較的容易に当該非違行為を確認できることに鑑みれば、特定の個人が識別され得るものと認められる。
今回の対象行政文書のうち、校長報告書の聴取の内容には、当該教職員が非違行為を行うに至った理由、信条等個人の内心に関する記載が含まれており、また、顛末書には当該教職員の氏名、所属学校名、学校長名、個人の印影及び当該教職員が自ら非違行為に至った理由等に関する記載が含まれている。
これらの情報は、特定の個人が識別され、個人の思想、信条等に関する情報であって、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるものであることから、(3)アからウまでに該当し、非公開が妥当である。
4 結論
以上のとおりであるから、本件異議申立ては、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。
主に調査審議を行った委員の氏名
小谷寛子、有澤知子、近藤亜矢子、長谷川佳彦
別紙
1 公開対象文書 |
2 非公開が妥当と判断した部分 |
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(1)平成25年度卒業式における国歌斉唱時の不起立・不斉唱について |
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2ページ |
10行目 12行目 15行目から21行目まで全部 26行目から29行目まで全部 |
3ページ |
1行目の教諭名 3行目から7行目まで全部 11行目 |
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7ページ |
学校名、本文中の月日、教諭の氏名及び印影 4行目の17文字目から5行目の2文字目まで |
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(2)卒業式における国歌斉唱時の不起立、不斉唱者について(報告) |
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9ページ |
31行目及び32行目の教諭名 |
10ページ |
1行目の6文字目以降全部 4行目の26文字目から6行目まで全部 9行目の26文字目から10行目まで全部 |
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14ページ |
学校名、校長名、本文中の月日、教諭名及び印影 9行目全部 |
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(3)平成25年度卒業式について |
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18ページ |
学校名、校長名、本文中の月日、教諭名及び印影 8行目から13行目まで全部 |
(4)平成25年度卒業式国歌斉唱時における不起立・不斉唱の教職員について |
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20ページ |
6行目、11行目及び16行目の教諭名 10行目から11行目の9文字目まで 11行目の34文字目から12行目まで全部 |
22ページ |
学校名、校長名、本文中の月日、教諭名及び印影 12行目以降全部 |
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(5)平成25年度卒業式における不起立について(報告) |
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24ページ |
22行目の19文字目から23行目まで全部 |
25ページ |
22行目の22文字目から23行目の15文字目まで 26行目から27行目の24文字目まで 28行目の26文字目から35文字目まで |
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(6)平成25年度○○高等学校第○回卒業式における不起立不斉唱について |
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30ページ |
17行目、18行目及び35行目の教諭名 19行目の10文字目から22文字目まで |
31ページ |
3行目及び29行目の教諭名 19行目から23行目まで全部 25行目の5文字目から27行目の37文字目まで |
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32ページ |
2行目の教諭名 |
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34ページ |
24行目以降全部 |
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35から36ページ |
全部 |
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40から43ページ |
全部 |
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46から49ページ |
全部 |
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53ページ |
18行目以降全部 |