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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第157号)
大公審答申第
大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第157号)
〔低周波音調査協議文書等部分公開・不存在決定異議申立事案〕
(答申日 平成20年5月15日)
第一 審査会の結論
実施機関の決定は妥当である。
第二 異議申立ての経過
- 平成19年6月13日、異議申立人は、大阪府知事(以下「実施機関」という。)に対し、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、「別紙添付文書の協議内容がわかる文書及びその他一切の協議、職務遂行の内容とその記録(以下「請求事項1」という。)」、「専門家の費用(交通費、報酬、契約書等)わかるもの。○○提示の周波数、音圧のデータ(以下「請求事項2」という。)」についての行政文書公開請求(以下、「本件請求」という。)を行った。
(別紙添付文書の記載事項)- ア H16年5月26日 八尾市と申立者宅において測定
- イ H18年4月4日 八尾市と協議
- ウ 〃 4月20日 八尾市・○○と協議
- エ 〃 4月28日 八尾市・専門家・○○と協議
- オ 〃 5月11日 八尾市・専門家・○○と協議
- カ 〃 5月30日 八尾市・専門家・○○と協議
- キ 〃 6月14日 八尾市と申立者宅を訪問
- ク 〃 7月10日 申立者来庁
- ケ 〃 11月16日 八尾市と申立者に調査計画を説明
- コ 〃 11月24日 八尾市・専門家と協議
- サ 〃 12月7日 八尾市へ「府の考え」をFAX
- シ H19年5月11日 申立者来庁
- 実施機関は、平成19年6月25日、本件請求のうち請求事項1について、条例第13条第1項の規定に基づき、対応する行政文書として(1)の行政文書(以下「本件行政文書」という。)を特定の上、(2)の部分を除いて公開するとの決定(以下「本件部分公開決定」という。)を行い、(3)のとおり理由を付して、異議申立人に通知するとともに、請求事項2については、条例第13条第2項の規定に基づき、該当する行政文書を管理していないため公開しない旨の決定(以下「本件不存在決定」という。)を行い、(4)のとおり理由を付して、異議申立人に通知した。
- (1)本件部分公開決定の対象行政文書(本件行政文書)
- ア 平成18年4月28日 八尾市等との打ち合わせ資料
- イ 平成18年5月11日 八尾市等との打ち合わせ資料
- ウ 一般住宅における低周波音苦情について
- エ 府の考え方について
- オ 平成18年11月24日 専門家等との打ち合わせ資料
- (2)本件部分公開決定における公開しないことと決定した部分
個人の電話番号 - (3)本件部分公開決定における「公開しない理由」
大阪府情報公開条例第9条第1号に該当する。
本件行政文書(非公開部分)には、個人の電話番号が記載されており、これらは個人のプライバシーに関する情報であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるものである。 - (4)本件不存在決定における「公開請求に係る行政文書を管理していない理由」
本件請求に係る行政文書については、作成又は取得していないため、管理していない。
- (1)本件部分公開決定の対象行政文書(本件行政文書)
- 異議申立人は、平成19年8月24日、本件部分公開決定及び本件不存在決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に異議申立てを行った。
第三 異議申立ての趣旨
本件部分公開決定及び本件不存在決定を取り消し、請求に該当する全ての文書の公開を求める。
第四 異議申立人の主張要旨
異議申立人の主張は、概ね次のとおりである。
1 異議申立書における主張
本件部分公開決定及び本件不存在決定は、内容の説明に不備があり、かつ、一般府民の理解しがたいものである。また、備考欄に「但し」以降類々と書かれているが、それがどういう意味を持つものか判別しがたい。
そもそも、本件は、生命にかかわる低周波音公害に苦しむ一府民が、その原因を取り除く為、調査、救済依頼した件で、担当部局(環境農林水産部環境管理室交通環境課騒音振動グループ)が専門家や当該企業と協議した中味であり、公務上の業務の一環である。この社会的公益の問題に関して、会議録や議事録、資料データなどの提示もなく、単なる雑談のように会議を進めていたとすれば、任務放棄と言わざるを得ない。そんなことは考えられないし、あり得ない。よって情報を隠蔽していると推量できる。
したがって、本件部分公開決定及び本件不存在決定は不当であり、不存在による非公開部分の取消しを強く求める。
2 反論書における主張
実施機関の主張が、成立するのであれば、行政の在り方が変わるとされた情報公開法の意義は、全く崩壊する。実施機関の主張は、今後も「低周波音公害」に対し、測定器や技術を所持しない市町村の要請があれば、全く説明責任を果たさず被害者・現場を無視した府政で、この被害を切り捨て放置すると表明したものである。又、これ迄実施機関が公開した文書は、ただ、自己の責任、不作為責任追及を回避する為だけのものである。府民に説明責任を果たしたものではない。
実施機関は請求している文書が何であるのか。平成19年5月11日、6月13日、情報公開窓口での協議、公開請求時の記載より十分認識でき、又、していた。第五-3前文中における「考えられる」、第五-3(1)の文末「特定は妥当」は、事実に反し不当なものである。決定通知書にて非公開とする文書について、行政処分の文書の特定とその理由の記載が、異議申立てる文書について、どこにも書かれていないものがある。これは、条例13条に違法する。よって本件部分公開決定及び本件不存在決定について、「それぞれ理由を付して通知した」とあるのも事実ではない。なされた決定通知書自体の記載内容も、府民を困惑させ理解しにくいものである。
第五-3以下、実施機関の作成していない文書とその理由の記載は、請求文書について、作成義務があることの認識を示すものである。又、「文書事務手引」からも明らかである。平成19年6月13日、協議に立ち会われた情報公開窓口の職員は、不存在とする不適切を認められた。当然の判断である。
第五-3(1)文中に、ア-ウ以外管理していないとあるが、そんなことは許されない。条例31条趣旨に記載の明らかな府の責務により、平成15年12月の測定依頼に始まり、現在に至る迄、この問題に対する府政がいかに行われたかを説明する文書は、これらの文書だけではない。
例えば、
- (1)前記した平成19年5月11日、6月13日の協議内容。
- (2)平成16年5月26日測定時の記録として、第五-3(1)イに、データのみとするが、これで府の責務を果たしたと、データ交付も拒否、再測定依頼も拒否し、被害者を突き放したやりとり。
- (3)平成18年2月、被害者の要望を聞き入れず、この問題を切り捨てようとしたやりとり。
- (4)H18年3月6日に、平成16年5月実施の測定データを情報公開手続しないと開示しなかった経緯。
- (5)市の記載によると、平成18年5月30日、第五-3(1)エについても、他にも協議されている。
等々
平成18年6月15日、情報公開窓口に是正を求めないと改めない説明責任についても、ことごとく当然に公開手続要求する姿勢、これらは条例前文、1条、3条等々数々の条例に違法である。それと同時に府民に不信感を抱かせ、知る権利等をも奪うことであることを、実施機関は改めて認識すべきである。列記しただけでも、実施機関は都合の悪い文書をことごとく管理していないとすると、職務放棄をも意味する。
第五-2(2)にある「手引書」は、数々の疑義があるものである。その一部を証する為、問題点を指摘した資料2通添付する。過去の悲惨な公害行政の誤りを招いた、産業優先時代の生き残りのようなものである。現在手引書は知見段階である。よって、その問題点を指摘し、何とか救済される適切な方法がなされる様、数々の要望・提案を理解してもらうべく必死で訴え、又、説明を求め続けてきた。今もそうである。府の調査計画が何故適切と言えるのか、府が何故手引書記載の他の方法を一切排除するのか、その理由の説明を求めているが、一向に説明責任を果たさず放置である。
第五-3(1)ウの「府の考え」についても、回答の前提となる私の主張が一切ない。明確な回答でなければ説明責任果たしたことにはならない。これら被害者の声を排斥して知見など成り立たない。又、それらの文書を管理していないとは、考えられない。
請求事項2の公費支出当然に予想される専門家への依頼について、何度も説明を求めた。しかし、一向に説明しようとせず、市より、実施機関の主張にある理由をやっと聞き出した次第である。何故、直ぐ説明されないのか。(1)平成18年4月28日 (2)5月11日 (3)11月24日と専門家と協議なされているが、11月24日を除いて、交通費の支出もないとは、不自然であり当然には納得できない。
請求事項2の「○○の周波数、音圧」について、第五-2(2)の「私が発生源と指摘している機器について把握するため」としつつ、第五-3(2)イの記載は矛盾する。
又、
- (1)市より専門家に依頼する根拠が、○○のデータ値による」と説明を受けている。
- (2)市に確認してもらった。
- (3)上堀氏、上野氏の発言。
- (4)手引書の記載にある原因を特定するうえでの周波数のもつ重要性の認識。
- (5)企業のCSR。
- (6)条例第8条1項1号()書き該当事項
よって公開すべきものである。
第五-3(2)イにて「本件測定に関係なく提供されていない」は虚偽である。企業を庇う行為と誤解を与えるものである。第五-2(2)文中、「私が発生源と指摘した」とあるが、それを調べてくれと要望し続けているのである。よって、これの文書の不存在などあり得ない。
平成19年6月13日、公開請求時、添付した文書一覧は、府が記憶に基づくとしたものである。もはや「薬害エイズにて密室行政」と言われた行政姿勢は許されないことは条例からも明白である。強く開示を求める。
第五 実施機関の主張要旨
1 騒音行政について
騒音規制法(以下「法」という。)では、規制対象である特定工場や特定建設作業の届出、規制指導は市町村の自治事務とされている。大阪府生活環境の保全等に関する条例(以下「生活環境の保全等に関する条例」という。)においても、騒音の規制対象である工場・事業場や特定建設作業に関する届出、規制指導、あるいは、深夜における音響機器の使用の制限などについては、市町村に権限移譲されており、市町村の自治事務となっている。なお、生活環境の保全等に関する条例において、府が規制指導の権限を有するのは、広域的な騒音問題である航空機による商業宣伝放送及び飲食店等の深夜営業に関するものの2つである。
このように騒音問題は、各種公害問題のうちでも大気汚染、水質汚濁等に比べ、きわめて地域性が強いことから、騒音行政はほとんど市町村事務とされているところであり、府の役割は広域的団体として、条例で府が規制権限を有しているものを除き、市町村に対して助言や技術的支援を行うことである。
低周波音問題については、法・条例の規定はないが、低周波音も騒音の範疇であることから、通常の騒音問題と同様に市町村の事務として、第一義的に市町村が対応し、これに対して府は助言や技術的支援を行うことが、法・条例の趣旨に合致し、合理的、効率的な騒音行政を行うこととなる。実際に低周波音問題が発生した場合も、市町村において対応がなされている。
2 低周波音に関する苦情申立ての対応
(1)一般的な対応の手順
低周波音に関する苦情申立てがなされた場合には、市町村が第一義的に対応し、府は、市町村から要請があれば、低周波音測定についての調査計画の立案、実際に測定を行う場合の技術的支援を行うことになる。
府に直接、低周波音に関する苦情申立等があった場合も、市町村の騒音担当窓口を紹介している。
(2)本件の場合
本件の場合、平成16年5月頃より、府に対して異議申立人から低周波音についての苦情申立があったが、八尾市が第一義的に対応する中で、八尾市からの要請を受けて、低周波音測定を八尾市とともに異議申立人宅において実施した。測定後、府に対して、データを郵送するようにとの話があった。直接会って説明したい旨述べたが、その後、1年数ヶ月に渡り、府に対して異議申立人から連絡等はなかった。
異議申立人から府に、再度、苦情申立の電話があったのは、担当者の記憶では平成18年の2月末頃であり、それ以降、府としては、4月4日に八尾市に本件の対応を依頼し、八尾市への技術的支援の見地から、異議申立人が低周波音の発生源であると指摘している機器について、発生源と苦情内容の対応関係を把握するため、専門家の指導を得て、低周波音測定のための調査計画(以下「本件調査計画」という。)を立案したものである。
今後、本件調査計画に沿って、八尾市が低周波音の測定を行う場合には、府は測定機器の貸し出しや職員の派遣などを行う予定としている。
なお、低周波音については、平成16年6月に環境省において、「低周波音問題対応の手引書」(以下「本件手引書」という。)が取りまとめられたところである。
3 本件部分公開決定及び本件不存在決定の妥当性について
異議申立人の主張の趣旨は、決定のあった文書以外に存在すると思われる文書の開示を求めている(部分公開の公非の是非は争っていない)と考えられるので、文書特定についての判断について説明する。
(1)本件部分公開文書について
ア 「平成18年4月28日 八尾市等との打ち合わせ資料」「平成18年5月11日八尾市等との打ち合わせ資料」について
異議申立人が主張する低周波音被害の発生源を特定するためには、現場において、発生源の稼動状況と苦情内容との対応関係を把握することが重要であり、この目的に沿った的確な調査計画を立案するため、4月28日、5月11日の両日に、府、八尾市等に低周波音に関する専門家を交えて打ち合わせを行ったが、手引書のコピー及び現場周辺図等の資料は、この打合せの際に用いた資料であり、本件請求中の添付文書(以下「添付文書」という。)のエ、オに該当する。
両日の打合せは、資料に沿った説明を受け、手引書に則って調査計画を作成するということでまとまったものであり、議事録等は作成しておらず、本件に該当する行政文書は他に管理していない。
イ 「一般住宅における低周波音苦情について」について
平成16年5月26日に、八尾市の要請を受け、八尾市とともに低周波音の測定を異議申立人宅において行った際の行政文書であり、添付文書のアに該当する。本件に該当する行政文書は、他に添付文書のコの文書中「低周波音の調査データ」があるが、本件行政文書と「低周波音の調査データ」以外に本件に該当する行政文書は他に作成しておらず、管理していない。
ウ 「府の考え方について」「平成18年11月24日 専門家等との打ち合わせ資料」について
「平成18年11月24日 専門家等との打ち合わせ資料」は、府が作成した調査計画について、八尾市とともに専門家を交え、打ち合わせを行った際に用いたもので、添付文書のコに該当する。府から資料説明とともに、併せて異議申立人からの主張である「低周波音を感じるときに周辺の家庭の機器の稼動状況を調べよ。また、機器が停止してすぐ症状がゼロになるものではない。」ということも報告したところ、専門家からは府の調査計画は手引書に則っており適切との判断をいただいたものである。調査計画の修正もなかったことから議事録等は作成しておらず、他に本件に該当する行政文書は管理していない。
また、「府の考え方について」は、11月24日の専門家等との打合せ内容を、府の考え方としてまとめ、八尾市にファックスで送付したものであり、添付文書のサに該当する。他に本件に該当する行政文書は作成しておらず、管理していない。
エ その他の行政文書について
添付文書のうち、「平成18年4月4日の八尾市との協議」(添付文書のイ)については、府から市に本件の対応を依頼したものであり、「同年4月20日の八尾市・○○との協議」(添付文書のウ)は、府から、専門家に相談していきたいとの提案をし了承を得たものであり、いずれも議事録等は作成していない。
「同年5月30日の八尾市・○○との協議」(添付文書のカ)は、府が調査計画の案を説明したもので、風速計を追加すべきとの意見があり、後日、調査計画に風速計をつけ加えた。この時の案(風速計がないもの)は、保存する必要性がないと判断し保存していない。また、この協議の内容は、風速計の追加だけであったため議事録等は作成していない。
「同年6月13日の協議内容」については、異議申立人が来庁され、情報公開請求をされたもので、いずれも議事録は作成していない。
「同年6月14日の八尾市と異議申立者宅を訪問」(添付文書のキ)は、異議申立人に調査計画を説明する目的であったが、ほとんど説明できず、異議申立人は従前からの主張を繰り返すだけであったので、議事録等は作成していない。
「同年7月10日の申立者来庁」(添付文書のク)は、専門家との打合せ資料等を要求されたので情報提供したものであり、議事録等は作成していない。
「同年11月16日の八尾市と申立者に調査計画を説明」(添付文書のケ)は、異議申立人に調査計画を示しながら説明したものであり、異議申立人は従前からの主張を繰り返すだけであり、また、府として持ち帰り調べる必要のあるものは、「機器が停止してすぐ症状がゼロになるものではない。」旨の発言だけだったので議事録等は作成していない。
「平成19年5月11日の申立者来庁」(添付文書のシ)は、異議申立人が来庁され、今までの経過と調査計画の根拠を要求され、後日、異議申立人に打合せ日等と調査計画の根拠に関する資料をファックスしたものであり、議事録等は作成していない。なお、このファックスした資料については、既に異議申立人に送付していることから、本件情報公開請求の対象文書からは除いている。
また、ファックスした資料である請求事項1中の添付文書のカ「平成18年5月30日 八尾市・専門家・○○との協議」については、専門家が入っていないため、記載に誤りがあったものである。
その他の苦情者からの申立ての経過等については、府の役割は調査計画の立案・技術的支援であるため、文書は作成していない。
以上のとおり、請求事項1に対応する文書について、実施機関が作成・取得した文書は上記アからウの行政文書以外には管理しておらず、本件部分公開決定における行政文書の特定は妥当である。
(2)本件不存在決定に係る文書の不存在理由について
ア 専門家の費用(交通費、報酬、契約書等)わかるもの
調査計画を立案するにあたっては、手引書においても、「それぞれの技術力や内容に応じて専門家に助けを求めることも視野に入れながら、対応を進めていくことも重要です。」と記述されていることから、低周波音に関する専門家から指導を得ることとした。
指導いただいた専門家は、手引書の作成にも携わっており、騒音・振動等に関する調査研究などを行う専門機関に所属している方で、電話にてお願いし、来阪時に指導を得たもの。府は費用を支出していないため、専門家の費用に係る行政文書は作成しておらず、管理していない。
イ ○○提示の周波数、音圧のデータ
低周波音の測定にあたっては、現場での発生源と考えられる機器の稼動状況と被害の訴えの対応関係が重要であり、異なる条件での周波数、音圧のデータは、本件測定には関係なく、また、○○からデータの提供も受けていない。
(3)異議申立人の主張について
○○提示の周波数、音圧のデータに関して、異議申立人は、「(1)市より専門家に依頼する根拠が、○○のデータ値によると説明を受けている。」及び「(2)市に確認してもらった。」と主張しているが、市の話であり、府として承知していない。
また、「(3)上堀氏、上野氏の発言。」は、当時のグループ長の名前が出ており、○○からのデータ提供があった旨の発言をしたという趣旨かと思われるが、そのような発言をしたということはない。
さらに、「(4)手引書の記載にある原因を特定するうえでの周波数のもつ重要性の認識。」は、「現場」での機器の稼動状況と被害の訴えの対応関係が重要であり、○○がデータを保有しているかどうか承知していないが、本件測定には関係ない。
「(5)企業のCSR。」は、○○の問題であると考える。
「(6)条例第8条1項1号()書き該当事項」は、「例外公開情報」に該当するとの主張と思われるが、○○からデータを受け取っていないので、これには当たらないと考える。
4 結論
以上のとおり、本件部分公開決定及び本件不存在決定は、条例に基づき適正に行われたものであり、何ら違法、不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。
第六 審査会の判断理由
1 条例の基本的な考え方について
行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより、「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。
このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。
このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第2条第1項に規定する行政文書に記録されている場合には、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならないのである。
2 低周波音に関する苦情に対する実施機関の対応の実情について
府域における騒音に関する規制や指導は、法及び生活環境の保全等に関する条例に基づいて行われている。これらの規定によると、騒音の規制対象である工場・事業場や特定建設作業に関する届出、規制指導、あるいは、深夜における音響機器の使用の制限などは、市町村の自治事務であり、広域的な騒音問題である航空機による商業宣伝放送及び飲食店等の深夜営業に関するものに限って、府が規制指導権限を有している。
このため、府に直接、府民から騒音に関する苦情申立があった場合には、府の規制権限に係るものを除き、市町村の騒音相談窓口を紹介したり、苦情申立人の了承を得て、市町村に適切な対応を要請しているところである。
一方、低周波音は、法律や条例上で規制対象とはなっていないが、通常の騒音問題と同様に市町村の事務として第一義的に市町村が対応し、府は、広域的団体として、環境省が取りまとめた手引書を参考として、助言や技術支援を行っているところである。
本件の場合、平成16年5月頃より、異議申立人から実施機関に対して、苦情の申出があったが、第一義的には八尾市が対応し、実施機関は、異議申立人が低周波音の発生源であると指摘した機器について、発生源と苦情内容との対応関係を把握するため、調査計画を立案したところである。
この調査計画は、環境省において公表されている手引書をもとに、八尾市、○○と協議し、専門家の指導を得て立案されたものであり、手引書には、地方公共団体における低周波音問題の対応に関して、苦情申立ての受付から解決までの具体的な方法や配慮事項、技術的な解説などが盛り込まれている。
3 本件部分公開決定及び本件不存在決定に係る具体的な判断及びその理由
異議申立人は、異議申立書及び反論書の記載内容並びに審査会における口頭意見陳述の内容を総合して判断すると、本件部分公開決定の非公開部分の公開を求めているのではなく、本件請求における請求事項1及び請求事項2に対応する行政文書が本件行政文書以外にも存在する旨を主張し、その公開を求めているものと認められる。
したがって、以下においては、本件部分公開決定の非公開部分を公開しないこととした判断が妥当かどうかの検討は行わず、本件請求における請求事項1及び請求事項2に対応する行政文書が本件行政文書以外に存在するかどうかについて検討することとする。
(1)条例第2条第1項について
行政文書公開請求の対象となる「行政文書」の定義については、条例第2条第1項に「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画、写真又はスライド並びに電磁的記録であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が管理しているもの」をいう旨規定されている。
「職務上」とは、実施機関の職員が、法令、条例、規則、規程、訓令、通達等により、与えられた任務又は権限を、その範囲内において処理することをいう。
「実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関の職員が管理しているもの」とは、作成又は取得に関与した職員個人の段階のものではなく、組織としての共用文書の実質を備えた状態、すなわち、当該実施機関の組織において、業務上必要なものとして利用又は保存されている状態のものを意味する。
(2)請求事項1に対応する行政文書の存否について
請求事項1は、異議申立人からの苦情に対応するため、平成16年5月26日から平成19年5月11日の間に12回にわたって行われた実施機関と異議申立人、八尾市、○○、専門家との間で行われた協議等並びにこれに類する協議や実施機関の職務遂行の内容及びその記録である。
請求事項1に対応する行政文書が本件行政文書以外に存在しないことについての実施機関の説明は、概ね次のとおりである。
ア「H16年5月26日 八尾市と申立者宅において測定」について
実施機関は、八尾市の要請を受け、平成16年5月26日に八尾市とともに、異議申立人宅に赴き、低周波音の測定を実施するとともに、被害状況の確認を行ったところである。その概要をまとめた第二-2(1)ウの行政文書を本件部分公開決定の対象行政文書として特定したものであり、これ以外に、当日の測定に関する記録は作成していない。
イ「H18年4月4日 八尾市と協議」及び「H18年4月20日 八尾市・○○と協議」について
平成18年4月4日の八尾市との協議は、実施機関から八尾市に対し、異議申立人宅の低周波音の問題についての対応を依頼したものであり、平成18年4月20日の八尾市・○○と協議は、実施機関が八尾市及び○○に対して専門家に相談していきたい旨の提案を行い、了承を得たものである。いずれも議事録等は作成していない。
ウ「H18年4月28日 八尾市・専門家・○○と協議」及び「H18年5月11日 八尾市・専門家・○○と協議」について
異議申立人が主張する低周波音被害の発生源を特定するには、現場において、発生源の稼動状況と苦情内容との対応関係を把握する必要があり、その目的に沿った的確な調査計画を立案するため、4月28日、5月11日の両日に、実施機関、八尾市、○○が低周波音に関する専門家を交えて打ち合わせを行った。この打合せの際に用いた資料は、手引書のコピーと現場周辺図等の資料であり、これらの文書を第二-2(1)ア及びイの行政文書として本件部分公開決定の対象としたものである。なお、両日の打合せは、参加者から資料に沿った説明を受け、手引書に則って調査計画を作成することとなったが、この内容に関して議事録等は作成していない。
エ「H18年5月30日 八尾市・専門家・○○と協議」について
同日の協議は、実施機関と八尾市、○○との間で行われたもので、専門家は協議に同席していない。協議の内容は、実施機関が八尾市及び○○に対し、調査計画の案を説明し、これに対し、参加者から風速計を追加すべきとの意見が出たものである。この意見を踏まえ、後日、調査計画に風速計を付け加えたところであり、この日の協議で用いた変更前の案は、保存する必要性がないと判断したため保存していない。また、同日の協議内容は、風速計を追加するという内容だけであったため、議事録等は作成していない。
オ「H18年6月14日 八尾市と申立者宅を訪問」について
実施機関と八尾市が異議申立人に、調査計画を説明するため、自宅を訪問したが、異議申立人は、従前からの主張を繰り返すだけで、実施機関は、ほとんど調査計画の説明ができない状況であった。そのため、同日の議事録等は作成していない。
カ「H18年7月10日 申立者来庁」について
異議申立人が府庁を訪れ、専門家との打ち合わせ資料等を要求したため、4月28日及び5月11日の専門家との打合せの際に使用した資料等を情報提供した。同日のやりとりに関する議事録等は作成していない。
キ「H18年11月16日 八尾市と申立者に調査計画を説明」について
実施機関及び八尾市が、異議申立人に対し調査計画を示しながら説明したが、異議申立人は従前からの主張を繰り返すだけであった。実施機関において、持ち帰って調べる必要のあるものは、「機器が停止してすぐ症状がゼロになるものではない」旨の発言だけであったため、同日の説明に関して議事録等は作成していない。
ク「H18年11月24日 八尾市・専門家と協議」について
実施機関が作成した調査計画について、八尾市とともに専門家を交え、打ち合わせを行った際に使用した資料を第二-2(1)オの行政文書として本件部分公開決定の対象としたものであり、この資料は、「八尾市○○低周波音調査計画」「都市計画の図面」「低周波音の調査データ」の各文書で構成されている。
同日の協議では、実施機関が資料説明を行った後、「低周波音を感じるときに周辺の家庭の機器の稼動状況を調べよ。また、機器が停止してすぐ症状がゼロになるものではない。」旨の異議申立人の主張を報告したところ、専門家は、府の調査計画は手引書に則っており適切と判断を示した。調査計画の修正もなかったことから、同日の協議に関する議事録等は作成していない。
ケ「H18年12月7日 八尾市へ「府の考え」をFAX」について
H18年11月24日の八尾市、専門家と実施機関との打ち合わせ結果を府の考え方としてまとめて、八尾市にファックスで送信したものを第二-2(1)エの行政文書として本件部分公開決定の対象としたものである。ほかに、同日のファックス送信に係る行政文書は作成していない。
コ「H19年5月11日 申立者来庁」について
異議申立人が府庁を訪れ、今までの経過と調査計画の根拠を要求したものであるが、同日の議事録等は作成していない。後日、異議申立人には、打ち合わせ日時と調査計画の根拠に関する資料をファックスしている。
上記アからコの説明については、2で述べた実施機関における低周波音に関する苦情への対応の実情に照らして、特段、不自然な点はなく、他に、請求事項1に対応する行政文書の存在を確認することもできなかった。
(3)請求事項2に対応する行政文書の存否について
請求事項2は、本件苦情への対応に関し、専門家との協議に要した費用(交通費、報酬、契約書等)がわかる行政文書及び○○提示の周波数、音圧のデータである。
請求事項2に対応する行政文書が存在しないことについての実施機関の説明は、概ね次のとおりである。
ア 専門家の費用がわかる行政文書について
実施機関が行う調査計画の立案にあたっては、本件手引書において「それぞれの技術力や内容に応じて専門家に助けを求めることも視野に入れながら、対応を進めていくことも重要です。」と記載があることから、専門家の指導を得ることとした。専門家は、本件手引書の作成に携わっており、電話により依頼し、来阪した際に任意で協力を得たものである。協議に関して契約は交わしておらず、経費の支出も行っていないため、これらに関する文書は作成していない。
イ ○○提示の周波数、音圧のデータについて
低周波音の測定は、現場での発生源と考えられる機器の稼働状況と被害の訴えの対応関係が重要であり、現場と異なる条件下のデータは、調査計画に関係ないため、実施機関は、○○から調査データを受領していない。また、異議申立人は、「専門家へ依頼する根拠が○○のデータ値による」旨八尾市から説明を受けたと述べているが、実施機関は、この点について承知しておらず、○○が調査データを保有しているかどうかも関知していない。
上記ア及び?の説明については、2で述べた実施機関における低周波音に関する苦情への対応の実情に照らして、特段、不自然な点はなく、他に、請求事項2に対応する行政文書の存在を確認することもできなかった。
以上のことから、本件請求に対応する行政文書は、本件行政文書以外には存在しないと認められる。
また、異議申立人は、条例前文、第1条、第3条及び第31条などの規定から、実施機関が府民に対する説明責任を果たしていない旨主張しているが、これらの主張は、本件請求に対応する行政文書が存在するか否かについての当審査会の判断に影響を及ぼすものではない。
よって、実施機関が、本件部分公開決定において、本件行政文書のみを対象行政文書として特定したこと及び本件不存在決定において、公開請求に対応する行政文書が存在しない旨の決定を行ったことは、妥当であると認められる。
4 結論
以上のとおりであるから、本件異議申立てには理由がなく、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。
主に調査審議を行った委員の氏名
岡村周一、福井逸治、松田聰子、岩本洋子