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平成21年度第13回大阪府戦略本部会議 議事概要
- とき 平成21年6月12日(金曜日) 13時30分から14時45分
- ところ 特別会議室(大)
- 出席者 知事、副知事、政策企画部長、総務部長
改革評価委員(赤井伸郎委員、上山信一委員、小幡寛子委員、永田潤子委員)
府政運営の現状/課題/今後の方向について
※ 総務部、政策企画部から資料をもとに説明。
【政策企画部長】
まずは資料左側、これまでの府の取組みについてご意見をお願いする。
【上山委員】
- 先週、資料の左半分にある各種計画・プランについて詳細な説明を受けた。どこの自治体も改革をやるのはほぼ当たり前の状況で各種改革プランを作っている。話を聞いた印象ではあるが、大阪府のプランはかなり突っ込んだ所までよく整理されている。最大の原因は知事の思い、方針、指示が具体的であった。あるいは深いというか、一部過激な、ほぼ無理ではないかというものまでかなりクリアな方針を出されたので、事務方で咀嚼の努力をしながら作ってきたというプロセスがある。「プログラム(案)」となっているが、実は「案」ではなく、半分は既に達成された改革の成果であると言える。よく言われることであるが、課題を解くことよりも、何が課題かということをはっきりと書くこと、それをオープンにすることが勇気のいる話。役所の書類でここまで具体的にクリアに自分たちの問題を書くというのはあまり見られない現象なので、そういう意味では改革はかなりエンジンがかかっている気がした。
- 改革の方向性と中身は具体的な方向が見えている。しかし、実施体制の方をどうするのかしばらく見えなかった。それも、最近「戦略本部」ができて、部長のマニフェストなどいろいろな体制が全部整ってきて、いよいよ第2フェーズかなという感じに見える。
- 第2フェーズの大きな課題は、キーワードでいうと、パートナーシップ、緊張感をもった対等な協力関係が重要だと思う。まずは府民からの問題提起を真剣に受け止める、あるいはほめて貰うことも改革には必要と思う。それから国との関係。知事がいろいろと問題提起をされているが、抗議すべきは抗議して、お願いすべきはお願いし、こちらが間違っていればごめんなさい、そういう関係がだんだんできつつある。私は、これはとても良いことで、もっとやるべきだと思う。ただ、足りないかも知れないのが市町村との関係。分権という言葉で語られて課題として挙げられているが、分権という言葉自体が実は上から目線。国が都道府県に向けて発するときの言葉。権限移譲であるとか、こちらから向こうに分け与えるということではなく、もう一段突っ込んで、市町村側からみた大阪府の課題を洗い出すとか、大阪府としての仕事の仕方を市町村側の職員からみてこう変えてほしいというような問題点を出していくと良いと思う。
- これらは今までの改革の延長線上であるが、プラスアルファ、さらなる課題が目の前に控えている。府庁がいくら変わっても、大阪という地域が元気にならないと元も子もない。そういう意味でいうと大阪の将来像、ビジョンを作る。しかし、産業施策とか政策創造は財源がないこと、大阪市との関係、近隣都道府県との関係を考えると大阪府だけでは実行できない。その実行体制、特に府と大阪市で連携して、改革する具体的事務局を作るべき。あるいは広域連合の話は既にかなり進んでいるが、それをもっと加速するとか、形になる推進体制の整備を周りに向けて要求していく。でないと、ビジョンのほうが先行して体制が遅れていくのは問題。
- 全体的な印象としては、知事のトップダウンだけに頼らず、国とのやり取り、府民とのやり取り、市町村とのやり取りのところから、府全体が影響を受けて、全体が活性化しながら改革していかないといけない。
【小幡委員】
- 全体的な話は上山先生がおっしゃったことと同感。よくぞここまで短い時間でされたなという印象がある。何よりも好感を持っているのは、大阪府のホームページが全く変わった。顔が見えるホームページになっている。昔は大阪府のディスクロージャーは、全国レベルからみれば下位の方だった。最近の評価は知らないが、何が言いたいのかをホームページの最初をみたら分かるし、部局長のマニフェストも顔が見えていて、100%完全とはいえないが、アウトプットとアウトカム、将来どうなりたいというところまで出されているところは素晴らしいと感じた。これだけ分析が出ていたら、だいたい半分ぐらいはできているという感じでいる。ホームページでは、府民からの意見も随分寄せられているようなので、中にはお叱りもあるだろう。これからも、出したくないところも含め、全ての情報を公表されることを期待する。
- その中でも、将来ビジョンについては、長期スパンでこれからどうしていくかを具体的に書いているが、本当にやっていけるのかな、息が続くのかなという部分もあるので、安心せずに具体的に進めていっていただきたい。
- 少し個別課題になるが、公認会計士という立場で言うと、知事がおっしゃっている「収入の範囲で」ということについて、それでは収入とはなんぞやということで分析されて、収入の定義もされたことは素晴らしいと思う。大阪府の財政状況は悪い悪いというが、どう悪いのかは府民からはよくわからない。どういう風に悪いのか、今後どうして行かなければならないかを府民から見て分かりやすい形、府民から意見を出してもらいやすい形でやっていければと思う。
- 最後に、昨日の記者会見で不適正会計があったと発表されていたが、これだけ改革し、いいことを行っている中で、内部統制、コンプラアンス、そういうところを正していかないと、少しでも小さい不正が出てきたら、府民が応援しているのに何だ、となる。これが基礎。絶対に直していただきたい。これだけ一生懸命やっておられるからこそ、余計にそう感じる。
【永田委員】
- 2人の委員がおっしゃっているように、かなり短期間に非常に頑張ってやっているというのが率直な印象。それは知事のリーダーシップももちろんあったと思うが、おそらく職員の方々もそれぞれの課題について常々検討していた、若しくはしつつあったという基礎があり、両方が相俟って短期間にできたのだろうと思った。それが今までの取組みに対する評価であるが、どんな自治体の改革も初年度、初期段階にあるメニューはそんなに変わりはない。無駄がないか全てチェックして、内部管理機能を強化していく、もちろん、メニュー自体は細かく、しかも短期間にやったというのは評価するが、それはどこの自治体でも初年度やるステップ。むしろこれからが大変。
- 今後の方向性の中で、先日のヒアリングで感じた一番のポイントは、「将来ビジョン」がわかりづらいということ。ここではマイルストーン的なものが示されていない。もちろん行政は予算が単年度なので、2009年にはこうやって、2010年にはこうするというのはお金も絡む話であるし、上山委員の指摘にあったように、大阪府だけでできるわけでもないので、プランニングしづらい部分はある。しかし、ロードマップがもう少し詳細に描けた方が、共通言語として、他の自治体ともいろいろ話ができるのではないかと思う。ビジョンとしての方向性は示されているが、実現に向けてのプロセスをどうやっていくのかが、これから詰めていかないといけない点ではないかと感じた。
- それからもう一点は、地方分権について。今年度集中的に市町村の実際のニーズがどこにあるか把握するということだが、それもこれまでは余りされてこなかったという印象。今年度は集中的に、現実的な基礎的な資料を集めて、「あり方」だけではなく、もう少し突っ込んでやっていかないといけないと思う。
【赤井委員】
- 出資法人について詳細に分析されている。府庁内の改革や方向性も客観的に分析されていると思う。今後、スピード感を持って、それを随時、情報発信し、それに対し府民がどう思うかといった、「府民とのキャッチボール」をしながら分析を継続していくことが必要。もう一つは、特に問題点のあるものを絞る中で、それぞれをどうすべきか、さらに分析を深めていくことが必要。
- 特に重要と思うことは、市町村に権限を下ろしていく上で、小さい市町村と中核市レベルの市ではかなり違うので、どのレベルぐらいで権限が移譲できるのか、担えるのかというところをできるだけ客観的なデータを示し、小さい市町村にもできるだけ権限を担っていただくために、どのような連携をしていくのかということ。
- 2つ目は、今まで歳出改革、庁内改革をやってきたが、府が歳出改革に頑張っているということを示すのは大事だが、歳出改革にも限界がある。府有財産の売却や有効活用だけでなく、企業誘致など税源を高めていく方策が必要。府民が望んでいるものがあれば、それは府民の負担で実現していく形で、「本当に必要なものは府民の負担で行う」ということを明確にした歳入・歳入改革のイメージが次のステップとしてあるのではないか。
- もう一つは国との関係。今の地方財政の制度自体が国に頼りきっているというのがあるので、その制度をどのように変えていくのか、国直轄事業負担金制度はもちろんのこと、地方交付税制度など、府だけではなく地方全体と国との関係をどうしていくのかという発信も、分析しながら、もう少し深めていく必要。
【知事】
- 今日はじめて、改革評価委員の先生方と府の最高幹部との直接議論を行う場を設定。幹部の方も意見があれば厳しく反論するなど、激論を交わしながらその中で真実を見つけていきたいと思っている。
- これまでの取組みは、本当にテーマが広い。改めて1年4ケ月を振り返ってみると、職員が頑張ってくれていると思っているが、それでも満足せずに先に行かなければならないと思っている。大きな方向性を示して職員に頑張ってもらいたい。もっといろんな問題点が出て「これはこうした方がいい」という風になると思ったが、委員の先生方から二重丸をいただいた印象。
【永田委員】
進捗管理をやるべきメニューがこれだけあがっているが、優先順位をつけてやっていくのか。
【総務部長】
進捗管理は行政改革課で工程表を作成してやっている。今回の財政再建プログラムが従来のものと異なるのは、3ケ年の予算を決めてしまったような内容になっているところ。ある意味結論が出ている。ただし、出資法人や公の施設の見直しについては、ペンディングにしたものもあるので、点検作業はこれから。公の施設については、恒常的に点検できるようなPDCAサイクルを確立しようと検討している。改革評価委員のお力も借りながら毎年点検していく。その中で、宿題になっていたものについては結論を出していく。
【知事】
公の施設のPDCAサイクルのC(チェック)の部分では、第三者のチェックが働くようにしている。他の人に見てもらうことが重要なので、学生さんなどを使いながらチェックできるサイクルをきちんとつくっていきたい。
【上山委員】
- 改革は、文字にして公開してしまえばやらざるを得ない。ある程度は自動的に進む。問題は、ここで課題と位置づけているものを実際にやる場合、悩むことが出てくる。価値判断でダメなものもあるし、「抜本的に見直す」と言いながら「抜本的」の内容が人によって異なっていることなど。個別具体的に見直し作業をやっていくことが必要。
- 部局長マニフェストも重要だが、それも所詮は内部の議論。保健医療など、分野毎に市町村の生の意見をストレートに聞いてみるべき。たとえば、今の大阪府の保健衛生行政に対しての印象など、府と市町村の専門職員同士で議論できるようにすればいい。知事と市町村長とは盛んに議論しており、管理部門の人も議論しているが、担当課長レベルではまだ「お願い」と「指示」の関係ではないか。それが議論できるような仕組みをつくっていけば、かなり深まってくるし、解けない課題もだんだんわかってくる。大阪市内と周辺市町村では相当状況が違うので、その辺りもわかってくる。市町村の専門職員は地元の状況をよく知っているはずで、そういう人たちからのインプットはほしいところ。
- 国との関係も同じ。大臣と知事はいろいろな場面で会っているが、もっと多様なレベルで議論していくことが必要。
【政策企画部長】
- 市町村との連携など、本日いただいたご意見については、今後策定する「府政運営の基本方針」の中の、「これまでの取組みに対する評価」を記載する際に、十分参考にさせていただく。
- では、引き続き、全体について意見交換をさせていただく。特に、「基本姿勢」部分で追加すべき点、さらに追求すべき点などあれば。
【上山委員】
- まだ骨子なので、これをパッとみただけで何ともいえない。敢えて言うなら、財政の問題。財政再建だけでいいのかという問題がある。財政再建という言葉は、どこの自治体もそうだが、帳尻あわせのイメージが強い。収入の範囲内で予算を組んで、再建団体にならないようにする。それは当然なので、それができればよかったということで終わってしまう。「大阪府庁財政研究会報告書」にも記載されているが、借金をいつまでにどれだけ減らせばいいのかという設定をしないといけない。たとえば、借金ゼロが理想ではない。健全な借金もある。大阪府はこれだけ資産があるのだという前向きな姿勢で、大阪という都市を全国、そして世界に打ち出していかないといけない。「財政再建を頑張っています」だけではなく、今は厳しいが、その先に明るいことがあるということの打ち出しが重要。でないと、企業も住民も、大阪に工場を作ろう、大阪に住もうなんて思わない。
- 昨年は、いろいろな問題点が表に出て大変だったと思う。まるで目覚まし時計のように、あらゆる課題を府民に問題提起してきた。さらに税収が落ち込んで大変だが、それを言っているだけでは次が見えない。その中で、1100億円プラス税収落ち込みにどう対応するか。さらにその先の、5兆円の借金とは実は何なのか、どうすれば減るのかを見せることが大事。
- もちろん、国の制度も変えてもらわないといけない。大阪市・大阪府の資産の分析もいる。提言するパワーが強くなるには、府民の理解が必要。中には、大阪府が失敗をしただけじゃないかと思っている人もいる。大阪府も確かに反省すべき点はあると思うが、まず、経済情勢や地方財政制度などの諸事情があったため今の状態に至っている。この切り分けをきちんとやるべき。国も消費税を上げるという議論をやり始めているが、大阪府の場合、もうちょっと高度な議論ができるのではないか。税についても、お金がないから上げるというのではなく、資産はどうなるのか、借金をどうやって減らすのか、もっと立体的な議論をすべき。この骨子にも、単に「財政再建」と記載するのではなく、「財務戦略」など、赤井先生に知恵を出していただいて、戦略的な構造改革を国の制度に対して問題提起するというような厚みがほしいところ。
【綛山副知事】
- 上山委員に高く評価していただき嬉しいが、1100億円プラス税収落ち込みに対してどう対応するのか。各部局長もそうだと思うが、私も教育長時代に、次なる大阪を作るためのメッセージをきちんと府民に出していかないといけないと思っていた。今回、マニフェストを作ったのもそういう意味がある。特に行政としてやっていかないといけないのは、教育や障がい者施策。部局長マニフェトでもそういう議論を行ったところ。
- もう一つは、市町村との関係。大阪府という都道府県の原点は市町村。市町村に特例市並みの権限を与える。そのときには、職員と財源を投資してもいい。大阪府はコーディネーター役に特化する。そういうことをやりながら、国と議論。そして、“国のあり様”も変えてもらわないといけない。こうした動きが次への展開であると考えている。
【木村副知事】
- 私の担当する商工労働分野で考えると、これだけ落ち込んだ大阪の経済をどうしようかと頭を悩ませている。特に、雇用では、従来型の行政ミッションをいかに日々、強めていくか、このあたりが非常に気がかり。是非、これからは、こういう予算に力を入れるということに頑張りたいと思っているのでご理解を。
- そして、今、一番思っているのは、職員の意識について。知事部局1万数千人の皆さんが価値観を共有しているのか、大いに疑問がある。きちんと職員に説明できているのかという我々の問題もあるが。情報公開、スピード感、外部人材の活用、組織の強化などいろいろある中、知事の一番のエンジンは、組織と微妙な距離感があること。知事は組織の利益代表ではない。これが微妙な距離感を生む。だからこそ、これまでの改革ができたのだと思う。そのあたりを職員が理解しているかどうか。これがうまく重なっていかないと、大阪府政は、いつまでも「橋下府政」であって、「大阪府政」になれない。このあたりを1年できっちりとできれば。
- たとえば、何年も前の不適正会計の話が先日になって出てきた。また、物理的な環境について、ホスピタリティを上げたいのに、天井の内装がはげてくるような府庁舎で職員の能率が上がるのか。さらに、長期間、採用を抑制してきた結果、部下もいない、上下横のコミュニケーションも取りにくいといった状況に陥っている。こういう点に根本的にメスを入れないと、職員の意識は変わっていかない。私は人事制度を引っ張っていくということでいろいろと議論してきているが、こういった制約があるため、もう一歩踏み出すためには、さらに思い切った施策が必要であると思っている。
【小幡委員】
数年前にも不適正会計が発覚し、さらにまた不適正会計が出てきた。府民としてすごくショック。府はすごく頑張っているのに、こうした一つのことが出てきたため信頼をなくしてしまうことになる。2年前に実施した調査でも、外部に頼むと何億円という費用がかかるので内部で行うことになった。その結果、意識改革ができていなかったということ。
【知事】
私が弁護士のときも、適正な会計処理というのは徹底して行ってきた。余った金はすぐ返す。返さなかったら自分の口座にいれずに、代理人口座を作って別管理。これは、身にしみてわかっていること。現金を持っておくだけで怖い。その恐怖心をそれぞれの職員に持ってほしい。大阪府庁のことだけではなく、例えば、全国知事会でも近畿ブロック知事会でも、余ったお金を積み立てている。税金は預かり金なのに、そういう意識がない。すぐに精算すべき。今、全国知事会、近畿ブロック知事会でも、そういう方針でいこうとしている。単純に、「余ったものはすぐ返す」、「お金については利便性より手続きを重視する」。この2点を徹底すれば、以後は大丈夫かと思う。
【永田委員】
部局長マニフェストではプランニングが見えにくいという印象。マニフェストには「今年度はこれをやります。あれをやります。」ということは書いてあるが、3年後、5年後にここまでのことをやりたいから、今年はこういうことを書いている、という関係性が見えにくい。そういう点をクリアに見えるようにしていかないと、果たしてマニフェストに盛り込んでいる項目が妥当かどうか評価できないのではないか。
【小河副知事】
戦略本部会議で部局長マニフェストを審議した際に、その議論は出ていた。示せるものについては、できるだけ将来像も見える形にしていこうと。
【政策企画部長】
知事からは5年後、10年後までを睨んで目標を出すよう指示を受けているが、今の段階ではそこまでの熟度がないものが多い。
【木村副知事】
- 私も昨秋「将来ビジョン」を議論した際、「工程表がないではないか」と指摘したが、工程表をつくると計画的になってチェックも必要になるとのことだった。もっと自由に将来を考えようということで、こういうふわっとしたビジョンになったという経緯がある。
- 今年のマニフェストは中途半端だが、我々としては、今年の夏に、来年度以降を見据えた骨太的な府政運営方針をつくる予定であるので、来年度以降の部局長マニフェストは、そういう方針に沿ったメリハリのあるものになるかと思う。
【知事】
戦略本部体制を立ち上げたのは4月からなので、通常であれば基本方針を先に示してから、部局長マニフェストを作成するのであるが、今年は順番が逆になった。子育てや文化振興ビジョンについてもそうであるが、私も、とにかく具体的にゴールを示して、それだから今年度はこういう取組みを行うのだというものをきちんと出してほしいと言い続けている。
【永田委員】
府市連携について、水道事業統合のように府民に見えやすいものは見せた方がよい。地方分権と権限移譲は府民からすると理解しにくいものなので、ある政策テーマや分野に絞って協議するなど、何かパイロット的な予定はないのか。
【総務部長】
大阪市との関係においては、永田委員がおっしゃった水道の問題や、WTCの問題などがあるが、それ以外の市町村とは権限移譲を最大の課題としており、府からの移譲事務全体としては102事務を提示させていただいている。赤井委員からのご指摘もあったが、確かに実態からすると、市町村の規模によっては移譲できない事務も出てくるかもしれないが、我々としてはどの市町村にも差を設けていない。これから個別の議論を進めていくところであるが、中には、お願いをして先に権限委譲の取組みを進めてもらっている市町村もあり、徐々にではあるが、それらが府民に見えてくるのではと考えている。
【知事】
大阪狭山市の吉田市長に、府と南河内で連携して研究会を開催していると伺ったが。
【総務部長】
たとえば、大阪狭山市だけでは、移譲事務の件数が1件しかないのでメリットはあまりないが、南河内全体で連携すれば一定の規模になり、効率化が図れる場合もある。大阪狭山市長を中心に非常に良い取組みを進められているので、府としても応援している。
【知事】
「地方分権改革ビジョン」の中にも入っていたと思うが、そういう取組みをモデル、典型例として発信できないか。
【総務部長】
ぜひ発信していきたいが、まだそこまで至っていない。
【赤井委員】
- 一番重要なのは、市町村への権限移譲をどのような仕組みで行えばうまくいくのかということ。
- もう一つは財務戦略。単に歳出を削るだけでなく、将来につながるような歳出で、結果として歳入として生まれてくるようなものを選択していくべき。その中で、府民とどのように協力し合うのか。必要なコストは負担してもらう必要がある。
- あとは、財政再建ともかかわるが、国との関係の見直し。直轄事業負担金も当然、財政に影響してくるもの。「大阪府庁財政研究会報告書」にも「収入とは何か」といったようなことが書かれているが、日本の地方財政システムでは、ほとんどの自治体が交付団体で、国に頼り切り。財政的な計画を組むときにも「交付税措置されるからよい」としている。交付税で措置されるからよいのではなく、直轄事業負担金もそうだが、本当に国がやるべきもの、地方がやるべきものと分けて、もう少し歳入の戦略、あり方を示しながら次のステップに進むべき。
【小河副知事】
- 市町村との関係について、先ほどの上山委員の「市町村の意見を聞く、パートナーシップ」というご意見に同感。今年度から地域力をアップしようということで、府内に7つある土木事務所に「地域支援課」を作った。そこで、市町村と一緒に、顔の見える距離で芝生化や安全見守り、まちづくりなどに取り組んでいる。八尾市では、協議会を作って一緒にやっていこうという動きにも発展。地域支援課自体は土木事務所に置いているが、職員は府民文化部兼務となっており、ハードだけでなく、ソフト面の取組みも行っている。
- もう一つは、大阪市との関係。それぞれの職員レベルではいろいろ話をしながら業務を進めているが、組織となると難しいところもある。知事も市長と頑張ってくれているが、先生方のお力も借りながら進めていきたい。
【知事】
- 私のこれまでの取組みで、府には借金が多いので何とかしようということは府民の皆さんににわかってもらえたと思う。次は、財務マネジメントの中で、きちんとメッセージをまとめてホームページに出していかなければいけないと思っているが、今これだけの取組みを行って将来どうなっていくのかということがはっきり伝わっていない。「大阪府庁財政研究会報告書」の8ページにあるように「実質負債残高倍率が2.0以内」という目標、つまり、収入の2倍くらいの借金であればよいのではないかということを掲げている。平成26年度か27年度に2.0を下回るということで、ここを1つのターゲットにおいている。
- ターゲットを考える際に、負債の「質」を考える必要はないか。
【総務部長】
赤字債と建設債で違いはあるが、府は基本的に建設債。建設債の中での違いということは余りない。
【知事】
では、2.0ということだけをターゲットにすればよいか。
【総務部長】
そこはもう少し議論をする必要がある。先ほどのご意見でもあったとおり、借金が減れば減るほどいいのかというとそうではない。世代間負担の公平を考えながら実施すべき事業もある。たとえば、2.0がいいのか1.5がいいのかというところまでは議論できていない。
【知事】
その目標が達成されたら、ある程度余裕が出て、積極的にいろいろと手を打っていけると思うが、そのときに、減収補填債や臨時財政対策債などをどうするかという議論もある。
【赤井委員】
この資料では、臨時財政対策債などを負債残高から控除している。他の自治体もこのような試算をしていると思うが、これはどうか。交付税で措置されるものを除外しているということだと思うが、交付税の総額は政治的に決まるもの。必要な額を地方に配るのではなく、政治的に決まった額を割り振っているだけ。だから、臨時財政対策債が増えても、交付税の総額で見たら変わっていない。健全性、将来性を見る上ではリスクがある。できればそれに頼らない戦略を練った方がよい。
【総務部長】
むしろ国の地方財政制度をどう見て、どう我々が改革するのかという話。
【赤井委員】
すぐには変えられないと思うが、国の地方財政制度自体が問題でこのような事態になっているということを発信しながら、自分で別の狙いを定める必要がある。
【綛山副知事】
国の地方財政制度の大いなる問題で、「基準財政需要額を積み上げているのだからきちんと財源確保している」ということを、いつも言われる。
【赤井委員】
将来の交付税でみてもらわなければならない分が、1年の交付税の総額の5倍ぐらい(平成19年度で約90兆円)に膨らんでいる。それを将来、どうしてみていくのか。
【綛山副知事】
平成6年から8年くらいの景気対策で、将来の交付税で措置するという約束で地方債をどんどん発行した経緯が今日の地方財政のしんどさの大きな原因。
【赤井委員】
ただ単に「交付税措置されているからいい」というのではなく、違う戦略を立てて数値も出す。そして知事には国全体の制度の問題点を発信してもらうという両睨みでいくべき。
【知事】
報告書の6ページ「引当金を積むべきか」という点については、当面は引当金の導入は難しいということだが、今回、東京都のような会計方式をとるに当たって、そこの考え方が若干変わってくるのではないか。いきなり引当金を積むことはできないと思うが、東京都も、引当金があったからこの危機状況でも何とか耐えられたということなので、引当金の考え方は、東京都の会計方式をとる以上は、あわせて考えてほしい。
【政策企画部長】
- 本日の議論を踏まえ、事務局でさらに検討を深め、7月中にも再度、合同会議を開催してご議論いただく予定であるので、よろしくお願いする。
- 本日の会議コストは、75分で359,375円。