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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第237号)
「私立学校指導要録関係文書関係文書公開決定異議申立事案」他4件
(答申日 平成26年8月22日)※別紙2~別紙6は省略
第一 審査会の結論
実施機関(大阪府知事)の決定は、いずれも妥当である。
第二 異議申立てに至る経過等
- 別紙1番号1の事案
平成24年12月25日、異議申立人は、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、大阪府知事(以下「実施機関」という。)(担当部署:府民文化部私学・大学課(以下「私学大学課」という。))に対し、「私学大学課は、私立高等学校Aの指導要領の引き継ぎを欠く法令違反を指導不可とする法令通知。指導要録欠く際、指導基準分かるもの。2件」(平成24年度受付番号第1328号)の公開を求める請求を行った。
平成25年1月15日、実施機関はこの請求に対し、別紙1記載の番号1の「決定の理由等」欄の文書を対象文書として、公開決定を行った。
同年3月18日、異議申立人はこの決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に対する異議申立てを行った。 - 別紙1番号2の事案
平成24年12月25日、異議申立人は、条例第6条の規定により、実施機関(担当部署:私学大学課)に対し、「私学大学課の保有する不登校対策資料」の公開を求める請求(平成24年度受付番号第1329号)を行った。
平成25年1月15日、実施機関はこの請求に対し、別紙1記載の番号2の「決定の理由等」欄の文書を対象文書として、公開決定を行った。
同年3月18日、異議申立人はこの決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に対する異議申立てを行った。 - 別紙1番号3の事案
平成24年12月25日、異議申立人は、条例第6条の規定により、実施機関(担当部署:福祉部子ども室家庭支援課(以下「家庭支援課」という。))に対し、「児童家庭室の保有する不登校対策資料、児童家庭室の保有する不就学対策資料」の公開を求める請求(平成24年度受付番号第1330号)を行った。
平成25年1月10日、実施機関はこの請求に対し、別紙1記載の番号3の「決定の理由等」欄記載の文書を対象文書として、公開決定を行った。
同年3月18日、異議申立人はこの決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に対する異議申立てを行った。 - 別紙1番号4の事案
平成24年12月25日、異議申立人は、条例第6条の規定により、実施機関(担当部署:総務部人事室人事課(以下「人事課」という。))に対し、「職員研修資料内、地公法第28・29・30・33・35条分」の公開を求める請求(平成24年度受付番号第1331号)を行った。
平成25年1月4日、実施機関はこの請求に対し、別紙1記載の番号4の「決定の理由等」欄の文書を対象文書として、公開決定を行った。
同年3月18日、異議申立人はこの決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に対する異議申立てを行った。 - 別紙1番号5の事案
平成25年4月19日、異議申立人は、条例第6条の規定により、実施機関(担当部署:家庭支援課)に対し、「福祉部子ども室家庭支援課は、子家第3968号の国(厚生労働省・文部科学省)見識・見解・見地分かるもの全部「不登校対策・不就学対策」求む。」の公開を求める請求(平成25年度受付番号第148号)を行った。
同年5月2日、実施機関はこの請求に対し、条例第13条第2項の規定により、不存在による非公開決定を行い、別紙1に記載の理由を附して異議申立人に通知した。
同年5月28日、異議申立人はこの決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に対する異議申立てを行った。 - これら5件の異議申立てのうち、番号1から4までは、いずれも同一日に請求の有った事案であって、番号5の事案は番号3の事案に関連するものであることから、当審査会においては一括して審議を行い、判断を行うこととした。
第三 異議申立ての趣旨等、異議申立人の主張について
別紙1記載の本件各異議申立てにかかる、異議申立ての内容は、下表記載のとおりである。
異議申立事案の番号(別紙1) |
異議申立書 |
---|---|
1 |
別紙2 |
2 |
別紙3 |
3 |
別紙4 |
4 |
別紙5 |
5 |
別紙6 |
第四 当審査会の判断理由
1 条例の基本的な考え方について
行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより、「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。
このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。
2 別紙1番号1の異議申立てについて
(1)請求に至る事実経過等
当審査会が実施機関及び異議申立人とのやり取りの中から把握した事実経過は、次のとおりである。
本件請求は、私学大学課が私立高等学校Aを適切に指導すべきであると主張して、「私学大学課は、私立高等学校Aの指導要録を引き継ぎ欠く法令違反を指導不可とする法令通知。指導要録欠く際、指導基準分かるもの。2件」を求めてなされたものである。
実施機関は、別紙1記載の番号1の「決定の理由等」欄の文書を対象文書として公開決定を行い、異議申立人に開示した。
(2)当事者の主張
- ア 当審査会は、口頭意見陳述における異議申立人の発言等から、異議申立人の主張を以下のとおりと解した。
私(異議申立人)が、私立高等学校Aが指導要録を中学校から引き継いでいないことを法令違反だと、指摘したところ、私学大学課の当初の担当者は当該私立高等学校を指導したが、その後の担当者は、「法令違反があっても指導できない」と主張するばかりで、何ら私の申入れに対応しない。法令違反であるのにその指導ができないとするのなら、その根拠が存在するはずだ。 - イ 当審査会が、本件請求に至る経緯等について実施機関に確認したところ、実施機関の説明は以下のとおりであった。
私立高等学校Aが、生徒の指導要録を引き継ぐ義務のある中学校から引き継いでいなかったことについては、今後このようなことのないよう、既に指導を行った。
本件請求については、異議申立人の求める文書は存在しないため、請求の趣旨に関連しうるものとして、私立学校の指導に関連する文書を対象文書と特定し、異議申立人に開示したものである。
(3)判断
以上のことからすると、異議申立人の求める文書が存在しないため、本件請求の趣旨と関連しうる文書を対象として公開決定したとする実施機関の主張に不自然・不合理な点はない。また、異議申立人の求めるような文書が存在すると考えられる特段の事情も認められない。よって、異議申立人の主張には理由がない。
なお、情報公開制度は、本来行政の保有する行政文書の公開を求めるものであって、情報公開請求にかかる異議申立ては、公開を求める行政文書が公開されないことに対する不服を述べるためのものである。従って、仮に本件異議申立てにおける異議申立人の主張が、私学大学課が私立高等学校Aを適切に指導していないことに抗議するという趣旨であれば、異議申立ての利益はない。
3 別紙1番号2の異議申立てについて
(1)請求に至る事実経過等
本件請求は、「私学大学課の保有する不登校対策資料」を求めてなされたものである。
実施機関は、別紙1記載の番号2の「決定の理由等」欄の文書を本件請求の対象文書として公開決定を行い、異議申立人に開示した。
(2)当事者の主張
- ア 当審査会は、口頭意見陳述における異議申立人の発言等から、異議申立人の主張を以下のとおりと解した。
私学大学課の職員は、私立高等学校Aが指導要録を引き継いでいないことについて何ら指導も行わず、不登校対策を欠いている。また、私学大学課は、当該高等学校が通信制高校であるから「不登校・不就学対策」というものがないという私立高等学校Aの見解を肯定しながらも、本件公開決定をしており、この決定にも矛盾がある。 - イ 当審査会が、本件請求に至る経緯等について実施機関に確認したところ、実施機関の説明は以下のとおりであった。
本件請求の趣旨は、通信制学校に対する不登校対策資料に限定されたものと推測されるが、これに該当する文書が存在しないため、本件請求の趣旨に関連しうるものとして、一般的な「不登校対策」について言及された通知で最新のものを対象文書と特定し、異議申立人に開示した。
(3)判断
以上のことからすると、異議申立人の求める文書が存在しないため、本件請求の趣旨と関連しうる文書を対象として公開決定したとする実施機関の主張に不自然・不合理な点はない。また、異議申立人の求めるような文書が存在すると考えられる特段の事情も認められない。よって、異議申立人の主張には理由がない。
なお、情報公開制度は、本来行政の保有する行政文書の公開を求めるものであって、情報公開請求にかかる異議申立ては、公開を求める行政文書が公開されないことに対する不服を述べるためのものである。従って、仮に、本件異議申立てにおける異議申立人の主張が「不存在決定をすべき」という趣旨であれば、異議申立ての利益はない。
4 別紙1番号3の異議申立てについて
(1)請求に至る事実経過等
本件請求は、「児童家庭室の保有する不登校対策資料、児童家庭室の保有する不就学対策資料」を求めてなされたものである。
実施機関は、別紙1記載の番号3の「決定の理由等」欄の文書を対象文書として公開決定を行い、異議申立人に開示した。
(2)当事者の主張
- ア 当審査会は、口頭意見陳述における異議申立人の発言等から、異議申立人の主張を以下のとおりと解した。
不登校・不就学は、「ひきこもり」とは重なる概念ではなく、全く別のものであり、不登校・不就学をひきこもりとすることは偏見である。府教育委員会の配付する「就学事務の手引き」等を見ても、現在の学校教育法のもとでは、義務教育の期間に不就学は起こり得ないことであり、不就学にかかる対策の文書として本件決定を行うことは、学校教育法の考え方と矛盾している。 - イ 当審査会が、本件請求に至る経緯等について実施機関に確認したところ、実施機関の説明は以下のとおりであった。
「不登校対策・不就学対策」は家庭支援課の所管ではなく、異議申立人の求める文書は保有していないが、本件請求の趣旨に関連しうるものとして、「ひきこもり対策」に関する資料のうち「不登校対策」について言及している部分を対象文書と特定し、異議申立人に開示したものである。
(3)判断
以上のことからすると、異議申立人の求める文書が存在しないため、本件請求の趣旨と関連しうる文書を対象として公開決定したとする実施機関の主張に不自然・不合理な点はない。また、異議申立人の求めるような文書が存在すると考えられる特段の事情も認められない。よって、異議申立人の主張には理由がない。
なお、情報公開制度は、本来行政の保有する行政文書の公開を求めるものであって、情報公開請求にかかる異議申立ては、公開を求める行政文書が公開されないことに対する不服を述べるためのものである。従って、仮に、本件異議申立てにおける異議申立人の主張が「不存在決定をすべき」という趣旨であれば、異議申立ての利益はない。
5 別紙1番号4の異議申立てについて
(1)請求に至る事実経過等
本件請求は、「職員研修資料内、地公法第28・29・30・33・35条分」を求めてなされたものである。
実施機関は、別紙1記載の番号4の「決定の理由等」欄の文書を対象文書として公開決定を行い、異議申立人に開示した。
(2)当事者の主張
- ア 当審査会は、口頭意見陳述における異議申立人の発言等から、異議申立人の主張を以下のとおりと解した。
地方公務員法の該当条文の逐条解説を記載した文書を公開決定すべきである。 - イ 当審査会が、本件請求に至る経緯等について実施機関に確認したところ、実施機関の説明は以下のとおりであった。
本件請求趣旨は、職員の分限・懲戒や服務に関して、人事課が職員研修資料として、職員に示している直近の資料を知りたいとのことであると確認されたことから、本件公開決定を行い、開示したものである。
なお、異議申立人の求める地方公務員法の該当条文の逐条解説を記載した文書については、職員研修資料中には含まれてはいなかった。
(3)判断
当審査会が、人事課の保有する本件請求の年度の職員研修資料を見分したところ、異議申立人の求める文書は見当たらなかった。
なお、職員研修資料の他に、地方公務員法の逐条解説書等の資料を実施機関が保有しているとしても、一般に市販されており、不特定多数の者に販売することを目的として発行されている資料は、条例第2条第1項ただし書により行政文書には当たらず、その公開を求めることはできないから、異議申立人の主張には理由がない。
6 別紙1番号5の異議申立てについて
(1)請求に至る事実経過等
本件請求は、異議申立書及び異議申立人の主張からすると、番号3の事案で「不登校対策資料・不就学対策資料」の公開を求めたのに対し、「ひきこもり」に関連する資料が対象文書として公開決定されたことに関連し、「福祉部子ども室家庭支援課は、子家第3968号の国(厚生労働省・文部科学省)見識・見解・見地分かるもの全部『不登校対策・不就学対策』求む。」を求めてなされたものである。
(2)異議申立人の主張
当審査会は、口頭意見陳述における異議申立人の発言等から、異議申立人の主張を以下のとおりと解した。
不登校対策資料の公開を求める請求に対し、「ひきこもり」に関する資料を公開決定した以上は、「ひきこもり対策」が「不登校対策・不就学対策」であるといえる根拠があるはずだ。
(3)判断
上記4(2)イ記載のとおり、「不登校対策・不就学対策」は家庭支援課の所管ではなく、異議申立人の求める文書を保有していないが、請求の趣旨に関連しうるものとして、「ひきこもり対策」に関する資料中の「不登校対策」について言及している部分を対象文書と特定し、異議申立人に開示したとする実施機関の説明からすると、異議申立人の求める文書を保有していないとする実施機関の主張に不自然・不合理な点はないことから、実施機関のさらなる主張を待つまでもなく、異議申立人の主張には理由がない。
第五 結論
以上のとおり、異議申立人の主張には、いずれの異議申立てにも理由がないから、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。
主に調査審議を行った委員の氏名
野呂充、松本哲治、小谷寛子、三成美保