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大阪府情報公開審査会答申(大公審第208号)
特定府立学校の教職員評価・育成システム評価総括表部分公開決定異議申立事案
(答申日 平成23年10月3日)
第一 審査会の結論
実施機関の決定は妥当である。
第二 異議申立ての経過
- 1 異議申立人は、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により平成22年1月19日、大阪府教育委員会(以下「実施機関」という。)に対して、「「教職員の評価・育成システム」における2006年、2007年の○○高校のS、A、Bの全教職員(校長・事務長を除く)の評価分布(人数・%)」の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
- 2 実施機関は、平成22年1月28日、本件請求に対応する文書として、次表(1)記載の文書(以下「本件行政文書」という。)を特定の上、条例第13条第1項の規定により、同表の(2)の部分を除いて公開する旨の部分公開決定(以下「本件決定」という。)を行い、同表(3)のとおり公開しない理由を付して異議申立人に通知した。
(1) 本件行政文書
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(2) 本件決定により公開しないこととされた部分 |
(3) 公開しない理由 |
(4) (2)のうち本件異議申立ての対象とされている部分 |
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平成18年度 ○○高校職員の評価総括表(一覧表・集計表) |
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集計表のうち |
2007年度 ○○高校職員の評価総括表(集計表) |
「対象外の者の数(注2)」(注2中の1、2を除く)、「対象者数」及び「対象者の評価結果集計」の各集計欄 |
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「対象者の評価結果集計」の各集計欄 |
- 3 異議申立人は、本件決定が上記表(4)に記載の部分を非公開にしたことを不服として、平成22年3月30日、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を行った。
第三 異議申立ての趣旨
本件決定を取り消し、非公開部分の「教職員評価・育成システム」における「2006年、2007年の○○高校のS・A・Bの全教職員(校長・事務長を除く)の評価分布)(人数・%)」の全面公開を求める。
第四 異議申立人の主張要旨
異議申立人の主張は概ね以下のとおりである。
1 異議申立書における主張
(1)本論
実施機関は「条例第8条第1項第4項に該当する」として、「本件行政文書(非公開部分)には、個人の業績評価、能力評価、総合評価、評価結果の集計等が記載されており、これらの情報は、教職員の評価・育成システムに関する人事管理情報であって、これらの情報が公になると、他校の分布と比較されることにより、校長が自分の評価に対する批判などを意識して適正な評価を行うことが困難になるおそれがあるなど、人事管理に関する事務の遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあると述べ、「評価は適正になされなければならない」ことを理由に、公開を拒否している。
- ア 条例第8条第1項第4号では、(公開しないことができる行政文書として)「…人事管理…の事務に関する情報であって、公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあるもの」とあり、「これらの事務」とは本件では教職員の評価を指し、それが「公正かつ適切」に執行されなければならないとしている。
以下、「教職員の評価・育成システム」により、「これらの事務(=教職員の評価)の公正かつ適切な執行」がなされているかどうかを検証して、請求している情報の公開が「これらの事務(=教職員の評価)の公正かつ適切な執行」に不可欠であることを実証する。- (ア)学校長は客観的な基準に基づいて、「公正かつ適切」に評価することができるか。
- a 校長は、自分の専門教科を除いてその他の教科については門外漢である。従って、自分の専門教科以外の教科を評価する基本的知識・能力を欠いており、それらの教育内容、教育方法について適正に評価することは不可能である。私が在籍した○○高校校長(数学が専門、現在退職)は「自分も教員であったので、授業を見ればわかる」と強弁したが、それは教科の専門性を軽視するものである。面談の中でさらに追及すると、校長は、「(私の担当教科である)英語教育の専門的なことについてはよくわからない」と認めざるを得なかった。
- b 校長は、1時間程度の授業観察で教員の教える能力をはかることは出来ない。授業観察を増やすとしても2~3時間が限度である。授業には1年を通した流れがあり、その内の多くて2~3時間(私は2007年度約600時間授業をした)を切り取って1年間の授業を評価するのは、野球選手が2~3試合の結果で査定されるようなものである。
また、教頭が一次評価者となっているが、教頭が授業を見に来たことは全くない。「教職員の評価・育成システム手引き1」(以下「手引き1」という。)3頁には「一次評価者は、教職員の自己申告と日常的に教職員と接する中で把握した評価の対象となる事実(行動や態度)をもとに評価を行い…」とある。たしかに、教頭は教員と接する時間は校長よりは長いが、それでも教員との接点は断片的である。授業も見ないで、なぜ教える能力がわかるのか。 - c 24学級規模の府立高校全日制普通科には、教頭、事務長、事務職員、技能員、教諭、養護教諭、実習助手と多岐に渡る職種の職員が約60名いる。教諭に対してでさえ専門外の教科は「よくわからない」と言っているのに、教諭以外の未経験の職種に対しては、さらにわかるはずがない。それらの全教職員を「公正かつ適切」に評価することは、現実的に不可能である。
- d 手引き1の10頁で「能力評価は、日常の業務の遂行を通じて発揮された能力(態度・行動)を絶対評価します。*職務全般の取組が評価の対象となります。」とあるが、校長が多数の教職員の「職務全般」を把握するのは不可能である。「担任している生徒(約40人)の学校生活全般を把握している」と言う教員がいたとしたら、その教師は同僚からバカにされるだけである。(担任した生徒と卒業後に話すと、担任中の秘話がぞろぞろ出てきて「いかに生徒を知らなかった」か、痛感させられる。)
- (イ)「評価・育成システム」は、教員にとって(および生徒にとっても)授業が最も重要であるということを理解しておらず、その点でも教員を「公正かつ適切」に評価することは出来ない。
- a 能力評価の3つの評価要素「学ぶ力の育成」「自立・自己実現の支援」「学校運営」が能力評価を占める割合は、なぜ1対1対1であるのか。(「1対1対1の比率は教育委員会の指針である」と複数の教育委員会教職員企画課職員が確認している。)
私は2007年度週18時間授業を行った。その18時間の授業の教材研究、教材作成、提出物の点検・評価、小テストの作成・採点および授業に要した時間は、週当たり30時間以上であった。週40時間の勤務時間のうち、4分の3以上を使って行った教科教育(「学ぶ力の育成」)が、どうして「自立・自己実現の支援」「学校運営」と同じ比重なのか。また、「教員の仕事の中で最も重要で中心になるのは、授業(教科教育)である」というのは、私の32年間の教員生活での常識であったし、一般的な共通認識だと思う。 - b 「教職員の評価・育成システム手引き2」(以下「手引き2」という。)10頁、11頁「自立・自己実現の支援」の「着眼点の例」には、「授業を通じ、自立・自己実現を支援する」という観点がないのはなぜか。
授業の役割は、授業を通して生徒が科学的知識・正しいものの見方・真に必要な学力をつけることである。そのことは必然的に生徒達の自立・自己実現につながる。生徒と最も長く接し、勤務時間の中で最も長い部分を使い、教師として最も専門性を持って行っている授業により、生徒の「自立・自己実現の支援」をはかるという観点が実施機関にないとは、私には信じられない。「授業」こそ生徒の「自立・自己実現の支援」の中心であり、また中心でなければならない。
- a 能力評価の3つの評価要素「学ぶ力の育成」「自立・自己実現の支援」「学校運営」が能力評価を占める割合は、なぜ1対1対1であるのか。(「1対1対1の比率は教育委員会の指針である」と複数の教育委員会教職員企画課職員が確認している。)
- (ウ)以上のように、「評価・育成システム」はきわめて杜撰な制度設計だと言わざるをえないが、評価結果に納得できない場合、「苦情申出」の制度がある。では、「苦情申出」は「評価の公正性・公平性に資すること(手引き1の21頁)ができるだろうか。
- a 苦情審査会の構成は教育監、教育振興室長、総務企画課長、教職員室長、教職員人事課長の5名で全て実施機関の職員で占められている。いわば身内だけの審査で、果たして「公平・公正」な審査ができるのか。ちなみに、議事録がある2007年~2009年の苦情審査では、計87件の苦情申出に対し、教職員の主張(苦情)が認められたものは1件もないことが、情報公開により明らかになっている。
- b 手引き1の23頁「苦情対応要領」には、「審査会は、申出事案にかかる評価結果が事実に基づき、評価基準等に照らして評価されているかどうかを審査する」とある。審査会に提出された書類は、(a)校長からの「評価・育成シート」、(b)教職員企画課の調査員が校長より聞き取りまとめた調書(以下「校長調書」という)、(c)教職員の「苦情申出書」(調査員による書き込み有り)・「評価者調書に対する追加意見」である。教職員が「苦情申出」で述べている事実と、「校長調書」で述べられている事実が相反する場合、苦情審査会は何を持って判断するのか。
2006年度、私の苦情申出はまさにその点が争点であったが、苦情審査会は、私の主張を一方的に却下した。私は自分自身のことを述べている。校長は約60人もの教職員を評価しなければならない。一人一人の言動について思い違いがあっても不思議ではない。
- (エ)評価の客観性は、評価・育成システムのなかに組み込まれていない。
実施機関は地位確認請求訴訟(平成19年(行ウ)第81号、第102号、第168号)平成20年4月8日付け「訴えの変更に対する答弁書」11頁で「(自己申告票未提出者について)自己申告票による目標の設定等の手続なしに業績評価を行おうとしても、目標設定等の客観的基準がないために、結局校長の主観的判断により業績評価を行うことになる。そして、この場合、実施機関が別に業績評価の基準を作成したとしても、基本的に校長の主観的評価であることに変わりがなく、また、校長の主観による業績評価を行う場合は、能力評価との区分が曖昧になるおそれがある。しかも、能力評価、業績評価及び総合評価がともに校長の主観によることになれば…」と述べている。
この文面で実施機関は、(a)能力評価及び総合評価は、「校長の主観により行われる」こと、(b)手引き2の10頁、11頁の教諭・講師(実習担当)・実習助手に対する能力評価の評価基準等(評価基準・評価要素/判断基準・着眼点・着眼点の例)は、実施機関が別に作成した基準であるので客観的基準でないと自ら認めている。
業績評価について「目標設定等の客観的基準」があるので、客観的であると主張するが、手引き1の9頁、10頁「評価について」を読むと、「目標ごとの達成状況の判断」「業績の評価」とも「最終的には校長が主観的に判断する」と解釈できる。教育活動を総合的に評価することは至難であることは、実施機関も理解していて、それを無理やり評価するには、評価しやすいように「単年度で切り取り、教育活動のごく一部に焦点を当てる」必要があった。それが「目標設定」の真の理由で、決して「客観的基準」などではない。
- (ア)学校長は客観的な基準に基づいて、「公正かつ適切」に評価することができるか。
- イ 私は、(ア)学校長は、客観的な基準に基づいて「公正かつ適切」に評価することは不可能であること、(イ)「評価・育成システム」は、授業の持つ意味・重要性を理解していないという、重大な欠陥を持っていること、(ウ)苦情審査会は、構成メンバーが偏っているうえ審査方法に欠陥があるため、「評価の公正性・公平性」を保障するものではないこと、(エ)評価の客観性は、評価・育成システムのなかに組み込まれていないこと、について述べ「これらの事務(=教職員の評価)の公正かつ適切な執行」が不可能であることを実証してきた。
「評価・育成システム」による評価は、ボーナス・昇給・年金にリンクしているため、教職員に対し一生涯影響を与える。従って、万に一つも評価の誤りは許されない。実施機関は「これらの情報が公になると他校の分布と比較されることにより、校長が自分の評価に対する批判などを意識して適正に評価を行うことが困難になるおそれがある」と主張する。現状のように、各校長の評価の実態がブラックボックスに入っていて外部から何もわからず、苦情申出をしても一方的に校長に有利な制度のもとでは、校長は「安心して」恣意的な評価ができる。評価結果の分布を公表することは、「自分の評価に対する批判などを意識」することで校長に緊張感を与え、より適切な評価を行おうという動機付けになる。つまり、それは「人事管理に著しい支障を及ぼす」のではなく、むしろ良い影響を与えると考えるのが合理的である。
日本国憲法第28条は、経営者・使用者の一方的支配から勤労者(労働者)を守るため、勤労者(労働者)に団結権、団体交渉権その他の団体行動権を保障している。しかし、現行の「教職員の評価・育成システム」は、「客観的基準」に欠ける評価により、教職員を分断し、教職員の連帯と協働を阻んでいる。校長の評価結果が、(実施機関が言うとおり)実施機関のチェックを受けず、外から全く見えない状況は、教職員の苦情申立に実効性がないこともあり、教職員を一方的に不利な立場に追いやっている。校長が恣意的な評価をしても、当人が裁判で訴えない限り、どこからもチェックされない構造になっている。
(2)校長が退職した場合について
私が公開請求した「2006年、2007年度の評価」を行った校長は、2008年3月31日付けで退職している。
従って、実施機関が主張している「これらの情報が公になると他校の分布と比較されることにより、校長が自分の評価に対する批判などを意識して適正な評価を行うことが困難になるおそれがある」ことは、事実として起こりえない。
(3)本異議申立てで争わない範囲
「公開しない理由」の「条例第9条第1号に該当する」については、私が請求した文書には直接関係しないため、本異議申立てでは争わない。
2 反論書における主張
- (1)実施機関は、「弁明書」で、私が異議申立書の「異議申立ての理由」で提起した以下の点に、何ら弁明せず、「弁明する権利・機会を放棄」している。
- ア 条例第8条第1項第4号では、(公開しないことが出来る行政文書として、)「…人事管理…の事務に関する情報であって、公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるもの」とあり、「これらの事務」とは本件では教職員の評価を指し、それが「公正かつ適切」に執行されなければならないとしている。
それに対し、実施機関は「条例第8条第1項第4号に該当する」として、「本件行政文書(非公開部分)には、個人の業績評価、能力評価、総合評価、評価結果の集計等が記載されており、これらの情報は、教職員の評価・育成システムに関する人事管理情報であって、これらの情報が公になると他校の分布と比較されることにより、校長が自分の評価に対する批判などを意識して適正な評価を行うことが困難になるおそれがあるなど、人事管理に関する事務の遂行に著しい支障を及ぼすおそれがある」と述べ、「評価は適正にされなければならない」ことを理由に、公開を拒否している。
私は以上の点を踏まえ、「教職員の評価育成システム」により、「これらの事務(=教職員の評価)の公正かつ適切な執行」がなされているかどうかを検証し、請求している情報の公開が「これらの事務(=教職員の評価)の公正かつ適切な執行」に不可欠であることを実証した。 - イ「教職員の評価・育成システム」における評価結果に納得できない場合は、「苦情申出」の制度があるが、「苦情申出」も、「評価の公正性・公平性に資すること(手引き1の21頁)にはならないことを、具体例を挙げて実証した。
- ウ「教職員の評価・育成システム」による評価は、ボーナス・昇給・年金にリンクしているため、教職員に対し一生涯影響を与える。したがって、万に一つも評価の誤りは許されない。実施機関は、「これらの情報が公になると他校の分布と比較されることにより、校長が自己の評価に対する批判などを意識して適正に評価を行うことが困難になるおそれがある」と主張する。現状のように、各校長の評価の実態がブラックボックスに入っていて外部から何もわからず、苦情申出をしても一方的に校長に有利な制度のもとでは、校長は「安心して」恣意的な評価ができる。評価結果の分布を公表することは、「自分の評価に対する批判など意識」することで、校長に緊張感を与え、より適切な評価を行おうという動機付けになる。つまり、それは「人事管理に著しい支障を及ぼす」のではなく、むしろ良い影響を与えると考えるのが合理的である。
- ア 条例第8条第1項第4号では、(公開しないことが出来る行政文書として、)「…人事管理…の事務に関する情報であって、公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるもの」とあり、「これらの事務」とは本件では教職員の評価を指し、それが「公正かつ適切」に執行されなければならないとしている。
- (2)「私が公開請求した2006年、2007年度の評価を行った校長は、2008年3月31日付けで退職している。したがって、実施機関が主張している『これらの情報が公になると他校の分布と比較されることにより、校長が自分の評価に対する批判などを意識して適正な評価を行うことが困難になるおそれがある』ことは、事実として起こりえない。」という私の主張に対し、「弁明書」では、「異議申立人の誤解であることは明らかであり、校長が退職したからといって、上述のような業務支障のおそれがなくなるわけではない。」と述べるだけで、「どのようにして支障が起こるのか」について何の説明もない。「退職後の評価結果の公表をおそれて、評価をゆがめる校長がいる」と実施機関は思っているとしたら、実施機関はそのことを明言し、その点について合理的な説明をしなければならない。
- (3)弁明書では、1月28日付「部分公開決定通知書」にはなかった「また、府民にとっては、学校ごとの評価の分布の差が、所属教職員の資質・能力の差であると受け取られ、ひいては、学校自体の優劣を示すものと誤解されるおそれがある。そうすると、所属教職員や在校生に対する偏見を生み、あるいは、学校の序列化につながるなど、今後の学校運営に著しい支障を及ぼすことも考えられる。」という理由が追加されているが、
- ア あとから理由を追加するのは、認められない。私がここで反論しても、それに対する実施機関の弁明を聞く機会がない。
- イ 上記の理由は、「条例のどの項目に該当するのか」という説明がない。「学校運営に著しい支障を及ぼす」の「学校運営」を、条例の「これらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼす」の「これらの事務」に当てはめるには、無理がある。「これらの事務」は、本件では「教職員の評価」を指している。
- ウ「所属教職員の資質・能力の差であると受け取られ、ひいては、学校自体の優劣を示すものと誤解されるおそれがある。」ということには、根拠がない。なぜなら、
- (ア)府立高校には既に「学校自体の優劣を示す」学校間格差が歴然とある。学校間格差は、私が教員になった1976年に既にあった。それは、退職した2008年まで、学校の課程が変わることなどで若干の変遷はあったが、ほぼ固定的に存在したことは、私の経験からも明らかである。
- (イ)府民(特に中高生を持つ親)の府立高校に対する最大の関心事は、各高校の大学進学実績である。府立高校全日制普通科の序列を決めているのは、大学進学実績であり、「学校ごとの評価の分布の差が、所属教職員の資質・能力の差であると受け取られ、ひいては、学校自体の優劣を示すものと誤解されるおそれ」はない。
- (ウ)実施機関は、弁明書では「学校の序列化」に否定的であるように思えるが、実際は、現存する「学校の序列化」を解消するための有効な施策をとっていないだけでなく、それを助長する方向に舵をきっている。約25年前私のT高校時代の校長は、指導一課長(高校教育担当-当時)経験者であったが、「実施機関では、9学区(当時)のトップ校+T高校のことを、『トップテン』と言っている。」と言っていた。教職員組合は「高校間格差」の是正と「学区縮小」を要求してきたが、実施機関は逆に2007年度より「学区統合」をして「格差」を拡大する施策を行った。また上記10校を「進学指導特色校」に指定し、私学に押され凋落著しい府立高校「トップテン」を、エリート校化することに躍起になっている。
- (4)条例第8条第1項第4号では、(公開しないことができる行政文書として)「…人事管理…の事務に関する情報であって、公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあるもの」と規定しており、また実施機関も、「条例第8条第1項第4号に該当する。」として、「本件行政文書(非公開部分)には、個人の業績評価、能力評価、総合評価、評価結果の集計等が記載されており、これらの情報は、教職員の評価・育成システムに関する人事管理情報であって、これらの情報が公になると他校の分布と比較されることにより、校長が自分の評価に対する批判などを意識して適正な評価を行うことが困難になるおそれがあるなど、人事管理に関する事務の遂行に著しい支障を及ぼすおそれがある」と述べ、ともに「著しい支障」という限定をつけている。しかし、評価結果の分布を公表することで、「自分の評価に対する批判などを意識」する校長が中にはいるかもしれないが、それは評価に緊張感を与え、より適切な評価を行おうという動機付けになる。つまり、それは「人事管理に著しい支障を及ぼす」のではなく、むしろ良い影響を与えると考えるのが合理的である。また、校長研修等で、「自分の評価に対する批判などを意識」せず「公正な評価」を行うように指導することは、十分可能である。少なくとも、「著しい」支障が出ないようにはできるはずである。その程度の指導ができないほど、実施機関は自らの指導力に自信がないのだろうか。
- (5)「異議申立書」では指摘していないが、さらにもう一点付け加えたい。
- 「教職員の評価・育成システム」における「業績評価」に基準は、
- S:目標を大きく上回る、著しく高い業績である A:目標を上回っている
- B:概ね目標に達している C:目標に達していない
- D:目標を大きく下回り、著しく低い業績である
- 「能力評価」の基準は、
- S:非常に優れた能力を発揮し、児童生徒の成長・発達に大きく寄与するような教育活動を展開している。同僚教職員の模範となる水準である。
- A:優れた能力を発揮し、児童生徒の成長・発達に大きく寄与するような教育活動を進めている。職務を円滑に遂行している。
- B:期待されている能力を概ね発揮しながら、教育活動を進めている。職務を滞りなく遂行している。
- C:期待されている能力を概ね発揮していないことがあり、児童生徒の成長・発達に寄与するような教育活動を進めることができていない。業務遂行上、支障をきたす場合がある。
- D:期待されている能力を概ね発揮しておらず、児童生徒の成長・発達の上で、悪影響を及ぼしかねない状況である。業務遂行上、非常に大きな支障をきたしている。
これらはすべて文章表記で、評価者の「主観」によりどのようにでも変わるものである。「SとA」「AとB」「BとC」「CとD」の境界はどこにあるのか、おそらく「評価者」である校長でさえ合理的な説明はできないだろう。このような「評価の主観性、恣意性、曖昧さ」は、校長におべっかを使う「ゴマすり教職員」を生み出す温床となる。そして、多くの校長が「ゴマすり教職員」を重用するため、「良心的な教職員」との間に深い溝が生じ、学校全体が不信感・無力感で覆われ劣化していく。
- 「教職員の評価・育成システム」における「業績評価」に基準は、
第五 実施機関の主張要旨
実施機関の主張は概ね以下のとおりである。
1 教職員の評価・育成システムについて
- (1)実施機関は、平成14年7月、「教職員の資質向上に関する検討委員会」から、「教職員全般の資質向上方策」について最終報告を受けた。この最終報告の中で、教職員の意欲と資質能力を高め、教育活動をはじめとする学校の様々な活動を充実し、学校を活性化する方策として提言されたのが「教職員の評価・育成システム」(以下「システム」という。)であり、試行実施を経て、平成16年4月16日に開催された大阪府教育委員会会議で、府立学校に勤務する教職員を対象とした「府立の高等専門学校、高等学校等の職員の評価・育成システムの実施に関する規則」(平成16年大阪府教育委員会規則第12号)(以下、「システム実施規則」という。)を新たに制定し、平成16年度以降は、これら規則に基づいて実施している。
地方公務員法第40条第1項には「任命権者は、職員の執務について定期的に勤務成績の評定を行い、その評定の結果に応じた措置を講じなければならない。」とあり、実施機関においては、平成16年4月16日付けで旧勤評規則を廃止し、平成16年度以降、システムの評価結果をもって地方公務員法第40条第1項に規定する勤務評定として実施している。
評価結果の給与への反映については、平成19年度から、前年度の評価結果を昇給及び勤勉手当における勤務成績の判定に活用することとし、職員の給与に関する条例、府人事委員会規則の改正や実施機関による「勤務成績に応じた昇給の取扱いに関する要領」等を制定するなど必要な規定整備を行い、各府立学校長に通知し、全ての教職員に周知している。 - (2)システムは、システム実施規則に基づき、自己申告と面談を基本に実施しており、府立学校における教諭の評価者については、1次評価者は教頭、2次評価者は校長としている。
各教職員は、学校や校内組織の目標達成に向け、各自が年間を通じて取り組む目標を設定し、自己申告票(設定目標等)を作成して育成(評価)者である校長に提出する。教職員の設定目標は、自己申告票をもとに、育成(評価)者との面談によって決定される。
教職員から提出された自己申告票に対して、育成(評価)者は、児童生徒や保護者、同僚教職員などの意見も参考にしながら評価を行う。
評価では教職員の自己申告を踏まえ、設定された個人目標の達成状況を判断して「業績評価」として評価し、また、職務全般の取組みを対象に、教職員の日常の業務の遂行を通じて発揮された能力を「能力評価」として評価する。その上でこれらの評価をもとに「総合評価」が行われる。
評価は、いずれもA・B・Cの3段階を基本にS・Dを加えた5段階(S・A・B・C・D)の絶対評価でなされ、評価の結果は年度末に教職員本人に開示され、取り組みの改善や、次年度の目標設定に生かすこととされている。
2 本件行政文書について
(1)府立学校長からの評価結果の報告
各府立学校長は、システム実施規則第11条第1項に基づき、システムに係る評価結果について、教育長に報告することとなっており、平成18年度は、教育委員会事務局が各校長に配布した、様式の収録されたフロッピーディスクに、各校長が所属教職員の評価のデータを入力後、事務局に提出している。また、平成19年度は評価結果入力システムを用いて、所属教職員の「業績評価」、「能力評価」、「総合評価」及び評価結果のない職員については、対象外区分のデータを入力することとしている。
(2)本件行政文書の記載内容及び出力について
本件行政文書のうち、平成18年度○○高校職員の評価総括表(一覧表・集計表)の記載内容は以下のとおりである。
○○高校職員の評価総括表(一覧表)には、
ア 所属コード、イ 所属名、ウ 職員番号、エ 漢字氏名、オ カナ氏名、カ 職名、キ 業績評価、ク 能力評価、ケ 総合評価、コ 備考
の各欄があり、キからコの欄については、記入要領に基づき、各府立学校長によって入力がなされたものである。
○○高校職員の評価総括表(集計表)には、
ア 業績評価、イ 能力評価、ウ 総合評価の各欄について、
評価区分(S、A、B、C、D)ごとの人数の集計及び構成比(%)の分布がそれぞれ記載された2つの表で構成されている。これらの表は、上記評価総括表(一覧表)のキ~ケの各欄にS~Dの評価区分を入力することにより、自動的に集計結果が表示される仕組みになっている。なお、この集計表は、校長が一覧表の記載に誤りがないか点検、確認するための便宜として設けられたものである。
さらに本件行政文書のうち、2007年度○○高校職員の評価総括表(集計表)には、「学校名」、「課程等」、「校長名」が記載され、また「総職員数」、「対象外の者の数(注2)」、「対象者数」の項目別集計表及び、「対象者の評価結果集計」の表があり、2つの表の集計は、上記(1)で、各校長が入力したデータをもとに作成されるものであるが、入力完了と同時に集計されて出力されるものではなく、入力完了後、以下の作業を行うことにより、評価対象外の者の数、自己申告票の不提出者の数、「業績評価」、「能力評価」及び「総合評価」の評価区分(S、A、B、C、D)ごとの集計表等が出力できる仕組みになっている。
- 別の作業メニューから、帳票指示を行い、帳票配信システムへデータを移動する。
- 入力システムとは別の、帳票配信システムから、移動されてきたデータを基に作成された集計表を出力する。
この集計表についても、各校長がそれぞれの学校の入力結果に誤りがないかどうかを点検、確認するための便宜として、作成できることとしたものであるが、実施機関としては、必要としていない情報であり、各校長に対して、集計表を出力の上、実施機関へ提出する指示は行っておらず、実施機関としても出力していない。
なお、実施機関では、各校長が入力したデータを集約して、府立学校全体の評価結果を毎年公表しているところである。
3 本件処分理由について
(1)本件処分は、本件行政文書のうち、
- 1 平成18年度 ○○高校職員の評価総括表(一覧表)における、「職員番号」、「業績評価」、「能力評価」、「総合評価」及び「備考」の各欄の情報及び
- 2 2007年度○○高校職員の評価総括表(集計表)における、「対象外の者の数(注2)」、「対象者数」の集計欄の情報
については、条例第9条第1号に該当することから、また、
- 3 平成18年度 ○○高校職員の評価総括表(集計表)のうち、「業績評価」、「能力評価」及び「総合評価」の各欄及び
- 4 2007年度○○高校職員の評価総括表(集計表)における、「対象者の評価結果集計」の集計欄
については、条例第8条第1項第4号に該当することから部分公開としたものであるところ、異議申立人は、異議申立書の最後で、条例第9条第1号に該当する部分については、この異議申立では争わないとしていることから、本件行政文書のうち、条例第8条第1項第4号に該当することから部分公開とした部分(3・4)(以下「本件情報」という。)について弁明することとする。
(2)条例第8条第1項第4号の該当性について
教職員の評価は、前述のとおり、校長が個々の教職員ごとに、その業績及び能力について、絶対評価を行うことにより実施している。
本件情報を公開すると、学校間の評価結果の分布を比較することが可能となり、評価者(校長)ごとの評価分布の異同が明らかになることから、個々の評価者にとっては、自身の評価に対する批判を避けようとする心理や、あるいは他校とのバランスを図ろうとする心理が働き、所属教職員の評価に予断が生じることが考えられるなど、システムの公正かつ適切な運用に著しい支障を及ぼすおそれがある。
また、府民にとっては、学校ごとの評価の分布の差が、所属教職員の資質・能力の差であると受け取られ、ひいては、学校自体の優劣を示すものと誤解されるおそれがある。そうすると、所属教職員や在校生等に対する偏見を生み、あるいは、学校の序列化につながるなど、今後の学校運営に著しい支障を及ぼすことも考えられる。
異議申立人は、「平成18年度、19年度の評価」を行った校長は、すでに退職しているので、「これらの情報が公になると他校の分布と比較されることにより、校長が自分の評価に対する批判などを意識して適正な評価を行うことが困難になるおそれがある」ことは、事実として起こりえない、と主張しているが、これは異議申立人の誤解であることは明らかであり、校長が退職したからといって、上述のような業務支障のおそれがなくなるわけではない。
本件情報は、教職員の人事管理に関する情報であって、公にすることによって、府民に誤解を与えるなど、当該及び同種の事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがある情報に該当する。
なお、実施機関においては、こうした事務執行上の支障を回避するため、学校ごとの評価結果は公表せず、全府立学校全体の評価分布を公表しているところである。
4 結論
以上のとおり、本件処分は、条例の規定に基づき適正に行われたものであり、何ら違法又は不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。
第六 審査会の判断理由
1 条例の基本的な考え方について
行政文書公開についての条例の基本的な理念は、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。
このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、一方では、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。
このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、条例第8条及び第9条に定める事項に該当する場合は、非公開となる。
2 評価・育成システムについて
実施機関は、教職員の自己申告による個人目標の設定(自己申告票の作成)や上司との面談等を内容とするシステムを2年間にわたる試験的実施と試行実施を経て、平成16年度から本格的に実施している。
評価・育成システムによる、府立学校教諭の評価者は、1次評価者を教頭、2次評価者を校長とし、具体的な評価は、教職員の自己申告を踏まえ、設定された個人目標の達成状況を判断して「業績評価」として評価し、また、職務全般の取組みを対象に教職員の日常の業務の遂行を通じて発揮された能力を「能力評価」として評価する。その上でこれらの評価をもとに「総合評価」が行われる。
なお、実施機関は、評価・育成システムの評価結果をもって地方公務員法第40条第1項に規定する勤務成績の評定とし、平成18年度の評価結果からは、翌年度の昇給や勤勉手当の支給割合にも反映させている。
また、評価・育成システムによる評価は、いずれも5段階(S・A・B・C・D)の絶対評価であり、評価区分ごとの割合は定められておらず、結果は年度末に本人に開示されている。
3 異議申立ての対象とされている情報(以下「本件係争情報」という。)について
本件行政文書は、大阪府立○○高等学校における「平成18年度 ○○高校職員の評価総括表(一覧表・集計表)」及び「2007年度 ○○高校職員の評価総括表(集計表)」である。
本件決定の非公開となった部分は、「第二 異議申立ての経過」2に掲載の表(2)のとおりで、異議申立人は、非公開とした部分のうち、実施機関が条例第9条第1号により非公開とした部分については、本件請求では争わないとしているため、本件係争部分は同表(4)掲載部分である。
本件係争部分のうち、「平成18年度 ○○高校職員の評価総括表(一覧表・集計表)」中の「業績評価」、「能力評価」及び「総合評価」の各欄には、平成18年度の府立○○高等学校の評価区分(S、A、B、C、D)ごとの人数の集計及び構成比(%)がそれぞれ記載されている。
また、「2007年度 ○○高校職員の評価総括表(集計表)」中の「対象者の評価結果集計」の各集計欄には、平成19年度の同校の評価区分(S、A、B、C、D)ごとの人数の集計が記載されている。
4 本件決定に係る具体的な判断及びその理由について
(1)条例第8条第1項第4号について
行政が行う事務事業に関する情報の中には、当該事務事業の性質、目的等からみて、執行前あるいは執行過程で公開することにより、当該事務事業の実施の目的を失い、又はその公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼし、ひいては、府民全体の利益を損なうおそれがあるものがある。また、反復継続的な事務事業に関する情報の中には、当該事務事業実施後であっても、これを公開することにより同種の事務事業の目的が達成できなくなり、又は公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるものもある。
このような支障を防止するため、これらの情報は公開しないことができるとするのが条例第8条第1項第4号の趣旨である。
同号は、
- ア 府の機関又は国等の機関が行う各種の事務に関する情報であって、
- イ 公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるもの
は、公開しないことができる旨を定めている。
(2)条例第8条第1項第4号該当性について
本件係争情報が上記(1)ア及びイの要件に該当するか否かについて検討したところ、以下のとおりである。
本件情報は、実施規則に基づき、評価・育成システムに係る評価結果について、実施機関により作成された文書であることから、「府の機関又は国等の機関が行う人事管理等の事務に関する情報」として、(1)アの要件に該当する。
次に、本件係争情報が(1)イの要件に該当するかどうかについて検討する。
本件係争情報は、評価者である府立○○高等学校の校長が、所属の教職員について行った評価・育成システムによる人事評価における「業績評価」、「能力評価」及び「総合評価」の結果の評価区分ごとの該当人数及び構成比に係る情報である。また、評価・育成システムによる評価は、全て絶対評価であり、5段階の評価区分(S、A、B、C、D)ごとの割合は定められていない。
このような事情の下で、本件係争情報を公にし、各学校の評価結果の分布が明らかになると、今後、各校長が評価・育成システムによる人事評価を行うに当たって、他校とのバランスを取ろうとしたり、自身が行った評価に対する被評価者等の批判を避けようとする心理が働くことが想定され、評価結果が特定の評価区分に集中するなど客観的で公正な評価を行うことが困難になる恐れがある。
異議申立人は、「S・A・Bに係る評価分布」についての公開を求めているが、5段階の評価区分の一部のみの公開であっても、当該公開部分について他校とのバランスを取ろうとし、あるいは被評価者等からの批判を回避しようとする行動は容易に予想されるから、客観的で公正な評価を行うことが困難になるおそれが減じられるわけではない。
さらに、異議申立人は、同校の校長が既に退職していることから、公開されることがあっても、校長が自分が行った評価に対する批判などを意識して、今後、適正な評価を行うことが困難になる恐れはないと主張する。しかし、退職していることや、勤務を離れることが近い将来確実であることを理由に、校長がした評価結果を公開するとした場合、当該校長は、離職後もなお継続する可能性がある被評価者等との個人的な人間関係を考慮し、あるいは、校長時にした行為に対するその後の社会的な批判を意識し、これを回避しようとする行動にでることは容易に予想される。こうしたことから、この点についても異議申立人の主張は是認できない。
以上のことから、本件係争情報については、公にすることにより、評価・育成システムによる人事評価事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあると認められ、(1)イの要件に該当する。
よって、本件係争情報は、条例第8条第1項第4号の規定に基づき、公開しないことができるものである。
5 その他の異議申立人の主張について
異議申立人は、評価・育成システム制度そのものの問題点等に関して種々主張しており、これらについては、実施機関との十分な意見交換を行うべきものであるが、本件決定の公開・非公開の判断に影響するものではない。
6 結論
以上のとおりであるから、本件異議申立てには理由がなく、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。
主に調査審議を行った委員の氏名
松田聰子、岩本洋子、大和正史、野呂充