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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第203号)
池築造工事関連文書不存在非公開決定異議申立事案その1
(答申日 平成23年4月8日)
第一 審査会の結論
実施機関の決定は妥当である。
第二 異議申立ての経過
1 行政文書の公開請求
異議申立人は、平成22年4月13日付けで、大阪府知事(以下「実施機関」という。)に対し、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定に基づき、「・一級河川寝屋川宝町調節池築造工事の土留め工事部の設計図書、・同上工事の初期より本体工事完了までの土留め計測モニター・土留壁・切梁支保土・掘削底盤下・周辺地盤用等記録のすべて」について行政文書公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
2 本件請求に係る決定及び通知
平成22年4月27日、実施機関は、本件請求のうち「・一級河川寝屋川宝町調節池築造工事の土留め工事部の設計図書」については、条例第13条第1項の規定に基づき、対応する行政文書として「一級河川寝屋川宝町調節池築造工事(土留工)設計図書」を特定の上、公開するとの決定を行い、異議申立人に通知した。
一方、本件請求のうち「・同上工事の初期より本体工事完了までの土留め計測モニター・土留壁・切梁支保土・掘削底盤下・周辺地盤用等記録のすべて」に対応する行政文書(以下「本件請求文書」という。)を管理していないとして、条例第13条第2項の規定により、不存在による非公開決定(以下「本件決定」という。)を行い、次のとおり理由を付して異議申立人に通知した。
(公開請求に係る行政文書を管理していない理由)
本件請求に係る行政文書は、取得していないため管理していない。
3 異議申立て
異議申立人は、平成22年5月12日、本件決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により異議申立てを行った。
第三 異議申立ての趣旨
本件処分を取り消し、全部公開を求める。
第四 異議申立人の主張要旨
異議申立書、反論書及び口頭陳述における異議申立人の主張(本件決定に関してのみ)は、概ね次のとおりである。
- 本件請求に係る土留工事は、大阪府と施工者との契約書等から計測工法であることは明らかであり、その工事において工法管理記録を残し、周辺環境変化の監視は当然である。さらに、工事内容記録は、工事完了後5年間は保管義務があり、大阪府と施工者共に保管管理義務があって当然ではないか。また、府と工事施工者との契約書の中に、府への報告書提出が規定されている。仮に、資料が大阪府において保管されていない場合は、施工者等から取り寄せるべきである。
- 府及び東大阪市の水道部の水準高さ観測記録を見ると、工事中にすでに沈下は生じており、工事施工者の注意義務違反を追及すべきである。
- 情報を公開しないのは、府職員及び施工業者の責任回避又は隠ぺい行為である。
- よって、本件決定を取り消し本件請求文書の公開を求める。
第五 実施機関の主張要旨
1 本件請求に対応する行政文書が不存在であることについて
本件請求文書は、施工者である株式会社A社(原文実名)が平成16年1月30日に一級河川寝屋川宝町調節池築造工事土留め工事の完成検査受験文書として作成し完成検査のため実施機関へ提出したものである。
本件請求文書の保存については、行政文書の区分から大阪府行政文書管理規則に基づき、保存を要しない文書として検査完了後は工事請負者へ返却しているため、現に管理していない。
2 異議申立人の主張に対する反論について
異議申立人は、工事施工中の周辺地盤等計測管理書類は、実施機関及び工事請負者が重要資料であるため、本件請求文書の保管管理義務がある旨主張する。
しかしながら、施工者は、施工中は計測管理書類を常備し、検査時には提示しなければならない義務はあるが、その後の保管管理の義務はない。
また、実施機関でも本件請求文書を取得又は保存しておらず、現に管理していないことについて、何ら違法又は不当な点はない。
3 結論
本件処分は、条例の規定に基づき適正に行われたものであり、何ら違法又は不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。
第六 審査会の判断理由
1 条例の基本的な考え方について
行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を促進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。
このように「知る権利」を保障するという理念の下であっても、一方では、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。
2 本件決定の妥当性について
本件請求に係る公開請求書の記載等によると、本件請求文書は、一級河川寝屋川宝町調節池築造工事(土留工)における工事開始より本体工事完了までの土留め計測モニター・土留壁・切梁支保土・掘削底盤下・周辺地盤用等に関する記録の全てである。
実施機関は、本件請求文書について、「行政文書の区分から大阪府行政文書管理規則に基づき、保存を要しない文書として検査完了後は施工者へ返却しているため、現に管理していない。」と弁明しているため、以下検討する。
(1)実施機関における行政文書の保存及び廃棄に関する規則等について
実施機関における行政文書の管理は、現在、大阪府行政文書管理規則(平成14年12月
27日大阪府規則第122号。以下、「文書規則」という。)及びその細目を定める大阪府行政文書管理規程(平成14年12月27日大阪府訓令第39号。以下、「文書規程」という。)によって行われている。
文書規則において、行政文書とは、条例第2条第1項に規定する行政文書を指し(文書規則第2条第5号)、文書管理については、本庁の室課及び出先機関に文書管理者を置くこととし、本庁の室課にあっては、室課の長、出先機関にあっては、出先機関の長を充てることとなっている。これら文書管理者は、室課又は出先機関における行政文書の適正な管理に関する事務を掌理すると定められている(同第5条)。出先機関の場合、行政文書は出先機関に到達したとき、当該出先機関の文書管理者がこれを受領し(同第11条第3項)、その保存は文書管理者が行うこととされている(同第16条第1項)。
また、行政文書の保存期間については、文書規則別表に定める基準に従い文書管理者が定めることとされており(同第17条第1項本文)、保存期間が満了するときは、あらかじめ、文書管理者が廃棄の決定を行った上で、保存期間満了後速やかに処分すると定められている(同第18条第1項及び第2項)。さらに、文書規則別表以外の文書で一時的にかつ補助的な用途に用いるものについては、保存期間を定めないことができる(同第17条第1項但書)。
現行の文書規則によれば、行政文書の保存期間については長期、10年、5年、3年、2年、1年の6つの区分が定められている。長期とは10年を超える保存期間とされており、長期保存の文書については、10年を超えた時点で保存期間の見直しを行い、新たに設定した保存期間が満了すれば廃棄の決定を行うこととされている。
(2)実施機関が発注する工事に係る工事竣工書類及び設計書添付書類の管理・保存について
実施機関が発注する工事に係る工事竣工書類及び設計書添付書類の管理・保存についてみる。
文書区分ごとの保存期間は文書規則別表が定めているが、別表1項には「竣工図等で重要な文書」について長期(10年を超える保存期間)と定められているだけであり、工事竣工等に関するその他の文書について定める条項はない。一方、すでにみたように、文書の管理は文書管理者が行うことになっていて、工事竣工書類等については、都市整備部事業管理室長による「通知」によって、書類ごとに保存期間が定められている。「通知」によれば、本件請求文書は、工事出来高報告書(別表2の24)に該当し、「保存を要しない文書」とされる。したがって、当該文書を施工者から取得した後、工事検査の終了日が保管期間の終了日となり、施工者へ返却されることとなる。
しかし、工事竣工書類等の文書管理の詳細を定めた「通知」は、平成17年10月25日に初めて発せられたもの(同年11月1日施行。事管第1498号。以下、「平成17年通知」という。)であり、本件請求文書が作成された当時(平成16年)には、「竣工図等で重要な文書」以外の文書の管理については、当時の文書管理規程(いわゆる電算化システムが導入された平成19年改正以前のもの)第41条にもとづき、文書管理者が、保存期間の定めのある行政文書についてはファイル基準表を、保存期間の定めのない行政文書については資料文書ファイル整理簿を作成して管理することとなっていた。平成16年度に寝屋川水系改修工営所が作成したファイル基準表(以下、「ファイル基準表」という。)は別紙の通りである。
実施機関の説明によれば、平成17年通知が発せられる前は、会計検査院による会計実地検査が概ね2カ年に一度実施されていたことにあわせて、実地検査時まで工事竣工書類等を保存し、検査終了後、当該文書を破棄又は請負者に返却するよう組織的に運用していた。したがって、本件請求文書についても、平成16年1月に工事が完成した後、寝屋川水系改修工営所で保存していたところ、平成17年2月14〜18日に実施された会計実地検査の後、請負者に返却したとのことである。
本件請求文書は、ファイル基準表によれば7年以上の保存を要する文書に該当せず、かりに平成17年通知を適用した場合であっても「保存を要しない文書」としてあつかわれることから、本件請求文書の管理に関する実施機関の説明について、著しく不自然な点は認められず、本件請求文書について保存義務がなく、また、現に存在しないとする実施機関の主張は合理的であると認められる。
(3)異議申立人のその他の主張について
異議申立人は、実施機関は本件請求文書を施工者へ返却しているのであれば、取り寄せて公開しなければならないと主張する。しかしながら、条例に基づく行政文書公開制度は、公開請求時に実施機関が現に保有している行政文書を公開する制度であり、現に保有していない行政文書の取り寄せを求めることはできない。
また、異議申立人は、自らにとっての本件請求文書の重要性や必要性等種々の主張をするが、いずれも本件請求文書の存否についての当審査会の判断に影響を及ぼすものではない。
以上(1)~(3)で述べたところを総合すると、本件請求文書については、現在、実施機関においては保有していないと認められることから、本件決定は妥当である。
3 結論
以上のとおりであるから、本件異議申立てには理由がなく、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。
主に調査審議に関与した委員
松田委員、岩本委員、大和委員、野呂委員
別表1
行政文書管理規則別表(第十七条関係)
項 |
行政文書の区分 |
保存期間 |
---|---|---|
一 |
条例、規則、訓令及び通達に関する起案文書 |
長期 |
府政の総合基本計画、府政重点施策等に関する起案文書 |
||
諮問、答申、建議、報告及び意見具申の起案文書 |
||
許可、認可、免許、承認、処分の取消し等の行政処分に関する起案文書で法律関係が十年を超えるもの |
||
知事及び副知事の事務引継書 |
||
叙位、叙勲、褒章及び表彰に関する起案文書 |
||
公有財産の取得、管理、処分等に関する起案文書 |
||
市町村の廃置分合、行政区画等に閲する起案文書 |
||
予算及び決算に関する行政文書で特に重要なもの |
||
府議会の招集に関する起案文書及び議案書 |
||
土地収用に関する起案文書 |
||
争訟に関する起案文書 |
||
起債に関する起案文書 |
||
統計調査に関する行政文書(集計結果に係るものに限る。) |
||
竣工図等で重要な行政文書 |
||
府政と特に関係の深い歴史的事実に関する資料 |
||
債権及び債務に関する行政文書で十年を超えて保存を要するもの |
||
その他府政の基本となる重要事項に関する行政文書で十年を超えて保存を要するもの |
||
二 |
府議会に関する行政文書で重要なもの(一の項に掲げるものを除く。) |
十年 |
事務及び事業の基本的な計画及び執行に関する起案文書で重要なもの |
||
許可、認可、免許、承認、処分の取消し等の行政処分に関する起案文書で法律関係が五年を超えるもの |
||
国庫補助金に関する起案文書で重要なもの |
||
消滅時効十年の法律関係に関する起案文書 |
||
その他十年保存を要する行政文書 |
||
三 |
予算及び決算に関する起案文書で重要なもの |
五年 |
補助金、各種交付金及び給付金に関する起案文書(二の項に掲げるものを除く。) |
||
許可、認可、免許、承認、処分の取消し等の行政処分に関する起案文書で法律関係が三年を超えるもの |
||
行政指導に関する起案文書 |
||
事務の管理改善に関する起案文書 |
||
会計管理者及び部長、局長その他これらに準ずる者の事務引継書 |
||
消滅時効五年の法律関係に関する起案文書 |
||
その他五年保存を要する行政文書 |
||
四 |
事務及び事業の基本的な計画及び執行に関する起案文書で軽易なもの |
三年 |
許可、認可、免許、承認、処分の取消し等の行政処分に関する起案文書で法律関係が一年を超えるもの |
||
予算及び決算に関する起案文書で軽易なもの |
||
府議会に関する起案文書(一の項及び二の項に掲げるものを除く。) |
||
各種連絡会議に関する起案文書 |
||
報告、届出等に関する起案文書 |
||
統計調査に関する起案文書(集計結果に係るものを除く。) |
||
陳情及び要望に関する起案文書 |
||
次長、課長その他これらに準ずる者の事務引継書 |
||
消滅時効一年から三年までの法律関係に関する起案文書 |
||
その他三年保存を要する行政文書 |
||
五 |
庶務に関する行政文書で重要なもの |
二年 |
その他二年保存を要する行政文書 |
||
六 |
庶務に関する行政文書で軽易なもの |
一年 |
各種照会、回答等の往復文書 |
||
各種帳票、伝票等 |
||
その他一年保存を要する行政文書 |
備考
- 「起案文書」とは、起案により意思決定をした行政文書をいう。
- 「長期」とは、十年を超える保存期間をいう。
- 法令等に保存に関する期間の定めのある行政文書の保存期間については、当該法令等に定める期間によるものとする。
別表2
番号 |
書類名 |
保存期間 |
---|---|---|
1 |
完成図 |
10年間 |
2 |
品質管理 |
10年間 |
3 |
材料伝票(一覧表)Co、Asに関するもののみ |
10年間 |
4 |
工事写真帳(ダイジェスト版) |
10年間 |
5 |
施工計画書 |
2年間 |
6 |
実施工程表 |
2年間 |
7 |
工事月報 |
2年間 |
8 |
現場発生品調書 |
2年間 |
9 |
材料確認書 |
2年間 |
10 |
段階確認書 |
2年間 |
11 |
協議書(内容変更に係るもの) |
2年間 |
12 |
協議書(内容変更に係らないもの) |
2年間 |
13 |
立会請求書 |
2年間 |
14 |
施工体制台帳 |
2年間 |
15 |
出来形成果表 |
2年間 |
16 |
出来形図 |
2年間 |
17 |
建退共関係書類 |
2年間 |
18 |
残土・残塊処分等 |
2年間 |
19 |
材料伝票(一覧表)Co、Asに関するものを除く |
2年間 |
20 |
承諾書 |
2年間 |
21 |
工事写真帳(写真帳) |
2年間 |
22 |
工事損失補償関係書類 |
10年間 |
23 |
社内検査記録届 |
保存を要しない。 |
24 |
工事出来高報告書 |
保存を要しない。 |
25 |
出来形数量計算書 |
保存を要しない。 |
26 |
休日・夜間工事届 |
保存を要しない。 |
27 |
材料伝票(伝票原本) |
保存を要しない。 |
28 |
安全に関する訓練等の実施 |
保存を要しない。 |
29 |
As舗装コア等 |
保存を要しない。 |
30 |
工事履行報告書 |
提出も要しない。 |
31 |
出来形管理表 |
提出も要しない。 |
32 |
品質管理総括表削減する書類 |
提出も要しない。 |
33 |
工事出来高内訳書 |
提出も要しない。 |
34 |
工事写真原本(ネガ・密着) |
提出も要しない。 |
別紙
番号 |
簿冊件名 |
保存期間 |
---|---|---|
1 |
府有財産売買契約関係 |
常用 |
2 |
用地再取得(買戻し)関係 |
常用 |
3 |
会計実地検査結果 |
常用 |
4 |
事業に伴う用地取得及び地上物件補償契約 |
常用 |
5 |
土地売買・物件移転補償契約関係 |
常用 |
6 |
府有財産賃貸借(使用貸借)契約関係 |
常用 |
7 |
各種協定・契約関係(繰越) |
常用 |
8 |
契約委託関係書類(繰越) |
常用 |
9 |
各種協定・契約関係 |
長期 |
10 |
境界確定関係 |
長期 |
11 |
歳出予算差引表 |
10年 |
12 |
戻入整理表 |
10年 |
13 |
歳出証拠書類 |
10年 |
14 |
支払領収証書 |
10年 |
15 |
工事請負契約一般 |
10年 |
16 |
特別嘱託員経費支出関係 |
10年 |
17 |
非常勤職員(アルバイト)経費支出関係 |
10年 |
18 |
光熱水費等関係 |
10年 |
19 |
アルバイト雇用関係 |
10年 |
20 |
普通財産貸付料 |
10年 |
21 |
共済費関係 |
10年 |
22 |
行政文書等複写費用関係 |
10年 |
23 |
工事損失補償関係 |
10年 |
24 |
歳出予算差引表(支出負担行為) |
10年 |
25 |
歳出予算差引表(支出命令) |
10年 |
26 |
現金出納簿(小口支払基金) |
10年 |
27 |
現金出納簿(資金前渡「常時」) |
10年 |
28 |
行政財産の用途廃止関係 |
10年 |
29 |
修繕関係 |
7年 |