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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第232号)
生活保護(住宅扶助)受給関係文書不存在非公開決定異議申立事案
(答申日 平成26年3月26日)
第一 審査会の結論
実施機関(大阪府知事)の決定は、いずれも妥当である。
第二 異議申立ての経過
- 異議申立人は、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、平成23年9月27日、大阪府知事(以下「実施機関」という。)に対し、「住宅費の扶助基準の内、親子関係で子の実父に対して子の配偶者が扶養義務を負わなければならず、それを理由に住宅費を支給しないとする根拠資料(扶養義務及び住宅費の一般的な支給要件等内容を記載した厚生労働省の通知等は除く)」の行政文書公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
- 同年10月3日、実施機関は、本件請求に対応する行政文書(以下「本件行政文書」という。)を作成又は取得していないとして、条例第13条第2項の規定により、不存在による非公開決定を行い、次のとおり理由を附して異議申立人に通知した。
(公開請求に係る行政文書を管理していない理由)
本件公開請求にかかる行政文書は、作成又は取得していないため、管理していない。 - 同年10月7日、異議申立人は、この決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を行った。
第三 異議申立ての趣旨
処分の取消しを求める。
第四 異議申立人の主張理由
異議申立人の主張は概ね以下のとおりである。
平野区役所が、本件請求内容を理由に却下処分している為、不存在はおかしい。
第五 実施機関の主張要旨
実施機関の主張は概ね以下のとおりである。
1 生活保護制度と住宅扶助について
生活保護制度は、生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的としている。
生活保護の実施機関(以下「保護実施機関」という。)は、原則として、都道府県知事、市長及び福祉事務所を管理する町村長である。生活保護の事務は、社会福祉法に基づき都道府県や市等が設置している福祉事務所が行っている。
社会生活を営む上では、衣食住のみならず、いろいろな経費が必要となることから、生活保護法では、保護として最低生活に必要と考えられる扶助を、「生活扶助」、「住宅扶助」、「教育扶助」、「医療扶助」、「介護扶助」「出産扶助」、「生業扶助」、「葬祭扶助」の8種類に分類している。
この中で、住宅扶助は、困窮のために最低限度の生活を維持することのできない者に対して「住まいの確保」及び「補修その他住宅の維持のために必要なもの」の範囲内において行われる。具体的には、日々の生活の場としての家屋の家賃、間代、地代等のほか、破損等により住居としての機能に障害が生じた場合の小規模な補修費を保証するものである。
なお、保護実施機関の行った生活保護の受給決定等についての審査請求については、都道府県知事がその審査庁となっている。
2 本件請求文書に対応する行政文書が不存在であることについて
実施機関は審査庁として、住宅扶助については、「生活保護法による保護の基準」(昭和38年4月1日厚生省告示第158号)、「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日厚生労働省社発第246号厚生省社会局長通知)及び「生活保護問答集について」(平成21年3月31日厚生労働省社会・援護局保護課長事務連絡)といった通知等を保有している。しかし、異議申立人の請求する、「住宅費の扶助基準の内、親子関係で子の実父に対して子の配偶者が扶養義務を負わなければならずそれを理由に住宅費を支給しない旨の記載(扶養義務及び住宅費の一般的な支給要件等内容の記載を除く)」の記載された通知等を、実施機関は作成又は取得していない。
なお、実施機関は、本件決定を行う前には、異議申立人に対し請求趣旨の確認を行い、(1)「生活保護法による保護の基準」(昭和38年4月1日厚生省告示第158号)、「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和36年4月1日厚生省発社第123号厚生事務次官通知)、「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日社発第246号厚生省社会局長通知)及び「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」(昭和38年4月1日社保第34号厚生省社会局保護課長通知)(以下「関係通知等」という。)に生活保護の受給決定を行うに当たり扶養義務を負う者の範囲の一般的な考え方が記載されている旨、また、(2)関係通知等に住宅扶助の一般的な支給要件が記載されている旨を説明し、これらの関係通知等を請求対象文書として特定することでよいかを尋ねた。
しかし、異議申立人は、関係通知等は異議申立人の求める文書ではない旨を述べ、請求の対象から一般的な支給要件等の内容を記載した通知等は除くことを求めた。さらに、実施機関が、本件請求内容を変更しなければ不存在決定とならざるを得ない旨説明したのに対し、異議申立人は不存在決定でよいので、本件請求に対する決定を行うよう、主張した。請求後、念のため、再度当該文書が有るか探したが、見つからなかったため、不存在決定したものであり、本件処分は適法である。
よって、異議申立人は、「平野区役所が、本件請求内容を理由に却下処分している為、不存在はおかしい」旨主張しているが、現に文書を管理していない以上、異議申立ての理由はない。
3 結論
以上のとおり、本件決定は、条例に規定に基づき適正に行われたものであり、何ら違法又は不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。
第六 当審査会の判断理由
1 条例の基本的な考え方について
行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより、「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。
このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。
2 本件決定の妥当性について
本件請求書の記載及び実施機関の主張内容からすると、本件請求文書は、「生活保護法に基づく住宅扶助の支給について、生活保護受給申請者と親子関係にある者の配偶者が扶養義務を負わなければならないとの記載と、これを理由として住宅費を支給しない旨の記載がされた文書(扶養義務及び住宅費の一般的な支給要件等内容の記載を除く)」であると解される。
異議申立人は、「平野区役所が、本件請求内容を理由に却下処分している為、不存在はおかしい」旨主張するので、以下検討する。
当審査会が、厚生労働省の生活保護制度にかかる通知等で異議申立人の主張に関連があると考えられるものを実施機関に提出させて見分したところ、異議申立人の求める文書は見当たらず、異議申立人の求める文書は存在しないとする実施機関の説明に特段不自然な点は認められないから、異議申立人の主張には理由がない。
第七 結論
以上のとおり、本件異議申立てには理由がなく、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。
主に調査審議を行った委員の氏名
野呂充、松本哲治、小谷寛子、久末弥生