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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第231号)
「生活保護(家具什器費)受給関係文書不存在非公開決定異議申立事案」他4件
(答申日 平成26年3月26日)【※別紙2~12は省略】
第一 審査会の結論
実施機関(大阪府知事)の決定は、いずれも妥当である。
第二 異議申立てに至る経過等
1 別紙1番号1の事案
異議申立人は、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、平成22年4月23日、大阪府知事(以下「実施機関」という。)(担当部署:福祉部地域福祉推進室社会援護課(以下「社会援護課」という。))に対し、「家具什器費が、重要事項説明書のみで判断される文書。」の公開を求める請求を行った。
同年5月7日、実施機関はこの請求に対し、条例第13条第2項の規定により、不存在による非公開決定を行い、別紙1に記載の理由を附して異議申立人に通知した。
同年6月22日、異議申立人は、この決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、異議申立てを行った。
2 別紙1番号2の事案
平成23年7月29日、異議申立人は、条例第6条の規定により、実施機関(担当部署:社会援護課)に対し、「生活保護規定の中で、義理の親子関係が、賃貸契約を却下処分する点が分かる文書。→住宅扶助を支給しない規定」の公開を求める請求を行った。
同年8月12日、実施機関はこの請求に対し、条例第13条第2項の規定により、不存在による非公開決定を行い、別紙1に記載の理由を附して異議申立人に通知した。
同年9月5日、異議申立人はこの決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に対する異議申立てを行った。
3 別紙1番号3、4の事案
平成23年12月2日、異議申立人は、条例第6条の規定により、実施機関に対し、「社援第2448号(平成23年11月21日)の第4 2 P3『これらのことから~逸脱しているものである。』の逸脱が分かる規定」の公開を求め、当該情報が記録された文書を保有する部署を、社会援護課と指定したものと、府民文化部府政情報室情報公開グループ(以下「府政情報室」という。)と指定したものの、2件の請求を行った。
同月15日、実施機関(担当部署:社会援護課、府政情報室)は、両請求に対し、条例第13条第2項の規定により、いずれも不存在による非公開決定を行い、別紙1に記載の理由を附して異議申立人に通知した。
同月19日、異議申立人は、これらの2件の決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に対する2件の異議申立てを行った。
4 別紙1番号5の事案
平成23年12月19日、異議申立人は、条例第6条の規定により、実施機関(担当部署:社会援護課)に対し、「裁決書(社援第3048、3073、3452、3064)の根拠規定全部。」の公開を求める請求を行った。
同年12月28日、実施機関は、この請求に対し、条例第13条第1項の規定により、別紙1に記載の文書を対象文書として、公開決定を行った。
平成24年5月18日、異議申立人はこの公開決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に対し、異議申立てを行った。
5 これら5件の異議申立て(以下、これらを併せて「本件各異議申立て」という。)は、いずれも生活保護に関するものであり、共通した背景があることから、当審査会においては一括して審査を行い、判断を行った。
第三 異議申立ての趣旨等、異議申立人の主張について
別紙1記載の本件各異議申立てにかかる、異議申立て及び反論書等の内容は、下表記載のとおりである。
異議申立事案の番号(別紙1) |
異議申立書 |
反論書等 |
---|---|---|
1 |
別紙2 |
別紙3 |
2 |
別紙4 |
――― |
3 |
別紙5 |
別紙6 |
4 |
別紙7 |
別紙6 |
5 |
別紙8 |
――― |
第四 実施機関の主張について
別紙1記載の本件各異議申立てにかかる、実施機関の弁明書における主張は、下記記載のとおりである。
異議申立事案の番号(別紙1) |
弁明書 |
---|---|
1 |
別紙9 |
2 |
別紙10 |
3 |
別紙11 |
4 |
別紙12 |
5 |
――― |
第五 当審査会の判断理由
1 条例の基本的な考え方について
行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより、「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。
このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。
2 番号1の異議申立てについて
(1)請求に至る事実経過等
当審査会が実施機関及び異議申立人とのやり取りの中から把握した事実経過は、次のとおりである。
本件請求は、大阪府知事(担当部署:社会援護課)が、平成18年2月14日(社援第3073号)、同年4月3日(社援第3452号)に行った、生活保護法による保護費の支給決定に関する審査請求にかかる2件の裁決に関連し、「家具什器費が、重要事項説明書のみで判断される文書」を求めてなされたものである。
(2)当事者の主張
- ア 当審査会は、口頭意見陳述における発言等から、異議申立人の主張を以下のとおりと解した。
異議申立人に交付された裁決書(社援第3073号及び社援第3452号)では、家具什器費の受給の可否について、家庭訪問を行うこともなく「重要事項説明書」だけで判断されている。家庭訪問を行わずに「重要事項説明書」だけで判断できる根拠規定等があるはずであり、本件請求に対し不存在決定がなされたのはおかしい。 - イ 当審査会が、本件請求に至る経緯等を実施機関に確認したところ、実施機関の説明は以下のとおりであった。
上記(1)記載の2件の裁決の後、本件請求に至るまでの間、異議申立人は、実施機関に対し数次に亘り、裁決の根拠の説明を求めたため、実施機関は、異議申立人に厚生労働省の関係通知や「生活保護手帳(別冊問答集)」の関連する部分を情報提供する等した。
こういった経緯から、本件請求の趣旨を、生活保護法による家具什器費の支給の可否を重要事項説明書の記載のみで判断できることが直接的かつ具体的に記載された根拠規定の開示を求めるものであると解した。しかし、異議申立人の求める文書は存在しないため、実施機関は不存在による非公開決定を行った。
また、2件の裁決書には、家具什器費の受給の可否について、家庭訪問を行わずに、「重要事項説明書」で判断したといった記載はない。
(3)判断
当審査会が、厚生労働省の生活保護制度にかかる通知等で異議申立人の主張に関連があると考えられるものを実施機関に提出させて見分したところ、異議申立人が求めると考えられる文書は見当たらなかった。また、2件の裁決書中にも、家庭訪問を行わずに、「重要事項説明書」で判断したといった記載はなく、異議申立人の求める文書は存在しないとする実施機関の主張に特段不自然な点は認められないから、異議申立人の主張には理由がない。
3 番号2の異議申立てについて
(1)請求に至る事実経過等
当審査会が実施機関及び異議申立人とのやり取りの中から把握した事実経過は、次のとおりである。
本件請求は、生活保護法による住宅扶助費の不支給決定に関連し、「生活保護規定の中で、義理の親子関係が、賃貸契約を却下処分する点が分かる文書。→住宅扶助を支給しない規定」を求めてなされたものである。
(2)当事者の主張
- ア 当審査会は、口頭意見陳述における発言等から、異議申立人の主張を以下のとおりと解した。
生活保護費の支給にかかる厚生労働省の通知(社発第246号、社保第34号、第123号厚生省次官通知)の中には、「転居時として、転入準備金の中に不足の場合は支給可。」といった趣旨の記載があることに照らすと、本件請求に対する決定は不存在による非公開決定とはならないはずだ。 - イ 当審査会が、本件請求に至る経緯等を実施機関に確認したところ、実施機関の説明は以下のとおりであった。
本件請求の際に異議申立人に趣旨を確認したところ、生活保護法による住宅扶助費の一般的な支給要件を示したものではなく、「賃貸借契約を義理の親子関係で締結している場合は住宅扶助費の支給対象にはならないことを具体的かつ明確に記載したもの」を求めるものであるとのことであった。また、異議申立人が主張する厚生労働省の通知は、(1)昭和38年4月1日付け社発第246号厚生省社会局長通知、(2)昭和38年4月1日付け社保第34号厚生省社会局保護課長通知、(3)昭和36年4月1日付け厚生省発社第123号厚生事務次官通知であると考えられるが、これらの通知の中にも、実施機関の保有する他の文書にも、異議申立人の求める文書は存在しない。よって、不存在による非公開決定を行った。
(3)判断
当審査会が、厚生労働省の生活保護制度にかかる通知等で異議申立人の主張に関連があると考えられるものを実施機関に提出させて見分したところ、異議申立人の求める文書は見当たらず、異議申立人の求める文書は存在しないとする実施機関の説明に特段不自然な点は認められないから、異議申立人の主張には理由がない。
4 番号3の異議申立てについて
(1)請求に至る事実経過等
当審査会が実施機関(担当部署:社会援護課)及び異議申立人とのやり取りの中から把握した事実経過は、次のとおりである。
本件請求は、実施機関が、平成23年11月21日付けで大阪府情報公開審査会に対して提出した、番号2の異議申立て(以下「別件異議申立て」という。)に関する弁明書(以下「別件弁明書」という。)(別紙10)の中で、「異議申立人は、そもそも本件請求文書を実施機関が保有していないことを既に認識しているのであるから、不服申し立て制度の趣旨を逸脱しているものである。」という記載を行ったことに関連し、「社援第2448号(平成23年11月21日)の第4 2 P3『これらのことから~逸脱しているものである。』の逸脱が分かる規定」を求め、当該情報が記録された文書を保有する部署を社会援護課と指定してなされたものである。
(2)当事者の主張
- ア 当審査会は、口頭意見陳述における発言等から、異議申立人の主張を以下のとおりと解した。
社会援護課が、別件弁明書に逸脱と記載したことについては、当然、法的な理由があるはずだから、別件弁明書に「逸脱」と記載した「法的根拠(作成根拠)」を示すべきである。 - イ 当審査会が、本件請求に至る経緯等を実施機関に確認したところ、実施機関の説明は以下のとおりであった。
番号2の異議申立事案の公開請求(以下「別件請求」という。)時に異議申立人に確認したところ、異議申立人は、別件請求より前に大阪市に対し、同じ文書の公開請求を行っており、その結果から、異議申立人は別件請求の対象文書が存在しないことを知っていた。社会援護課は、別件請求時に異議申立人に、別件請求に対する決定が不存在決定となることを説明したが、異議申立人は社会援護課に対し、不存在による非公開決定がほしいとの発言があった。
こうした経緯があるにもかかわらず、異議申立人が別件異議申立てを行ったので、別件弁明書中に、「不服申し立て制度の趣旨を逸脱している」と記載したものである。
社会援護課は異議申立人の求める、本件異議申立てを「逸脱」と判断するに至った法的根拠となる文書を作成又は取得していないから、本件請求に対して、不存在による非公開決定を行った。
(3)判断
かかる事実関係からすると、異議申立人の求める規定は法令上存在すると認められないから、異議申立人の主張には理由がない。
5 番号4の異議申立てについて
(1)請求に至る事実経過等
当審査会が実施機関(担当部署:府政情報室)及び異議申立人とのやり取りの中から把握した事実経過は、次のとおりである。
本件請求も、上記4記載の番号3の公開請求と同様、社会援護課が別件弁明書に「逸脱」と記載をしたことに関連し、「社援第2448号(平成23年11月21日)の第4 2 P3『これらのこと~逸脱しているものである。』の逸脱が分かる規定」を求め、当該情報が記録された文書を保有する部署を府政情報室と指定してなされたものである。
(2)当事者の主張
- ア 当審査会は、口頭意見陳述における発言等から、異議申立人の主張を以下のとおりと解した。
社会援護課の作成した別件弁明書中に、異議申立人が別件異議申立てを行ったことについて不服申立制度の趣旨を逸脱していると記載されているが、このような理不尽な記載をするのはおかしい。府政情報室は行政不服審査法を所管する上で、社会援護課に対して「逸脱」と記載されている別件弁明書の修正を求めなかった「法的根拠(作成根拠)」を保有しているはずであり、この根拠を示すべきだ。 - イ 当審査会が、本件請求に至る経緯等を実施機関に確認したところ、実施機関の説明は以下のとおりであった。
不存在による非公開決定通知書に記載したとおり、異議申立人との本件請求時のやり取りの中から、本件請求の趣旨は、情報公開審査会の庶務を担当する府政情報室が担当課に弁明書の修正作業を求めなかった根拠となる規定であると解した。府政情報室は公開決定等について調査審議を行う大阪府情報公開審査会の庶務を担当する部署であって、異議申立人の求める文書は管理していないから、不存在による非公開決定を行った。
(3)判断
かかる事実関係からすると、異議申立人の求める規定は法令上存在すると認められないから、異議申立人の主張には理由がない。
6 番号5の異議申立てについて
(1)請求に至る事実経過等
当審査会が実施機関及び異議申立人とのやり取りの中から把握した事実経過は、次のとおりである。
本件請求は、次に掲げる生活保護法による保護費の支給決定にかかる審査請求に対する4件の裁決(下表記載)に関連し、「裁決書(社援第3048、3073、3452、3064)の根拠規定全部。」を求めてなされたものである。
本件請求に対し、実施機関は、厚生労働省が各種の通知をまとめ、生活保護費の支給にかかる地方行政機関の実務上の運用基準等を示した、「生活保護手帳(別冊問答集)1993年版」のうち、当該裁決に関連する部分と、各都道府県や政令指定都市・中核市の生活保護担当係長あてに、家具什器費の取扱いにかかる事例について通知した平成14年5月7日付け厚生労働省社会・援護局保護課保護係長通知を対象文書として、公開決定を行った。
なお、異議申立人は、下表の裁決がなされた後、本件請求に至るまでの間、実施機関に対し数次に亘り説明を求め、これらの裁決の根拠規定等について、実施機関は情報提供をする等している。
裁決日 |
内容 |
審査された処分 |
裁決書番号 |
---|---|---|---|
平成18年2月14日 |
棄却 |
住宅扶助費支給決定 |
社援第3048号 |
平成18年2月14日 |
棄却 |
家具什器費支給申請却下決定 |
社援第3064号 |
平成18年2月14日 |
棄却 |
家具什器費及び被服費支給申請却下決定 |
社援第3073号 |
平成18年4月3日 |
棄却 |
入学準備金及び家具什器費支給申請却下 決定 |
社援第3452号 |
(2)当事者の主張
- ア 当審査会は、口頭意見陳述における発言等から、異議申立人の主張を以下のとおりと解した。
生活保護費の支給にかかる厚生労働省の通知(社発第246号、社保第34号、第123号厚生省次官通知)の中にある「転居時として、転入準備金の中に不足の場合は支給可。」といった趣旨の記載と、4件の裁決書の内容には矛盾がある。本件決定に基づく公開文書以外にも対象となる文書があるはずだ。 - イ 当審査会が、本件請求に至る経緯等を実施機関に確認したところ、実施機関の説明は以下のとおりであった。
これまでの経緯や異議申立人との本件請求時のやり取りから、請求の趣旨を「裁決の根拠で、裁決中に根拠となる法令や国の通達の番号等が明記されていないもの」と解し、上記(1)記載のとおり文書を公開したものであり、本件公開文書以外には対象となる文書は存在しない。
なお、異議申立人の主張する3つの通知は、(1)昭和38年4月1日付け社発第246号厚生省社会局長通知、(2)昭和38年4月1日付け社保第34号厚生省社会局保護課長通知、(3)昭和36年4月1日付け厚生省発社第123号厚生事務次官通知、であると考えられるが、これらの通知は生活保護制度全般にかかる包括的なものであり、個別具体的な事案の判断に当たっては、これらの通知を踏まえて、厚生労働省が作成した「生活保護手帳(別冊問答集)1993年版」記載の運用基準等により判断しており、これらの通知と裁決との間に矛盾はない。
(3)判断
当審査会が、実施機関に提出を求めた、上記4件の裁決書や本件公開文書、異議申立人の主張する厚生労働省の通知やこれ以外で上記4件の裁決に関係する厚生労働省の通知等を見分したところ、本件公開文書以外に異議申立人の求める文書は見当たらないから、異議申立人の主張には理由がない。
第六 結論
以上のとおり、異議申立人の主張には、いずれの異議申立てにも理由がないから、「第一審査会の結論」のとおり答申するものである。
主に調査審議を行った委員の氏名
野呂充、松本哲治、小谷寛子、久末弥生
※別紙2~別紙12は添付省略