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第128回 大阪府原子炉問題審議会 議事概要
第128回大阪府原子炉問題審議会の概要について
- 日時 令和4年8月10日(水曜日)15時30分~16時45分
- 場所 プリムローズ大阪 3階 高砂
- 議題
- (1)役員の選任について
- (2)京都大学複合原子力科学研究所の安全性等について
- (3)京都大学複合原子力科学研究所定例報告について
- (4)その他
- 出席者 審議会委員28名中24名が出席
(欠席委員:甘佐勉委員、加納康至委員、千代松大耕委員、新田輝彦委員) - 事務局等 大阪府、京都大学複合原子力科学研究所、地元市町
議事に先立ち、審議会事務局担当の矢野大阪府政策企画部広域調整室事業推進課長から、議事進行と本審議会の役割について説明の後、委員の紹介が行われた。
議題1.役員の選任について
審議会規則では会長1名を委員が選任することとなっており、会長には辰巳砂委員(大阪公立大学学長)が選任された。
また、同規則では副会長2名も選任することになっているが、現在の副会長は紀田委員(大阪府議会議員)1名であるため、もう1名の副会長として鶴岡委員(関西研究用原子炉対策民主団体協議会代表)が選任された。
議題2.京都大学複合原子力科学研究所の安全性等について
堀研究炉部長から「1.原子炉施設の状況等について」の「(1)京都大学研究用原子炉(KUR)及び京都大学臨界集合体実験装置(KUCA)の利用運転等について」、釜江安全管理本部副本部長から「(2)原子炉設置変更承認申請(KURの変更)について」、三澤副所長から「(3)KUCA燃料の低濃縮化の状況等について」、中島所長から「2.KUR等の今後の在り方について」、配布資料をもとに説明があった。
- 原子炉施設の状況等について
- (1)京都大学研究用原子炉(KUR)及び京都大学臨界集合体実験装置(KUCA)の状況等について
KURは、現在、定期事業者検査期間中で、令和4年度は令和4年10月18日から令和5年2月9日までの間、利用運転を行う予定となっており、KUR炉心タンクの健全性調査等のため、利用運転の開始が例年より3カ月程度遅くなる。また、KUCAは、現在、低濃縮燃料での運転切り替えのため、令和3年7月30日より運転を休止しており、令和5年度中には運転を再開できるよう、準備を進めている。 - (2)原子炉設置変更承認申請(KURの変更)について
昨年の本審議会で報告した関係規則の解釈の一部改正に伴う原子力規制委員会からの指示に基づく基準地震動Ssの追加及び関連する評価を追加するための原子炉設置変更承認申請について、安全協定に従って熊取町長に通知の上、令和3年12月14日付けで原子力規制委員会へ申請した。その後、原子力規制庁によるヒアリング、審査会合が実施されている。 - (3)KUCA燃料の低濃縮化の状況等について
平成28年の核セキュリティ・サミットにて日米合意されたKUCAで使われている高濃縮ウラン燃料の米国への撤去及びKUCAの低濃縮化については、日米の関係機関の協力のもと、このたび、対象のすべての高濃縮ウラン燃料の撤去が無事に完了した。また、低濃縮化については、令和元年5月31日付けで申請した原子炉設置変更承認申請(KUCAの変更)が令和4年4月28日付けで原子力規制委員会に承認され、現在、燃料の製造に係る許認可手続きを行っている。同許認可手続きの終了後、燃料の製造・搬入・使用前事業者検査等を経て、令和5年度中には低濃縮燃料により運転を開始したいと考えている。
- (1)京都大学研究用原子炉(KUR)及び京都大学臨界集合体実験装置(KUCA)の状況等について
- KUR等の今後の在り方について
- (1)経緯について
京都大学複合原子力科学研究所(平成30年4月に「京都大学原子炉実験所」から名称変更)は、日本学術会議の勧告等を踏まえ、昭和38年に「原子炉による実験及びこれに関連する研究」を目的とする全国共同利用研究所として設置され、以来、KUR、KUCA等を主要施設として共同利用研究を進めてきた。
特にKURについては、全国共同利用の主要な実験装置として、大学の研究炉という特徴を活かし、物理学、化学、生物学、工学、農学、医学等の幅広い実験研究に使用され、幅広い学術分野を基盤から支える重要な役割を担うとともに、当該分野の人材育成の面においても貢献してきた。
一方、これまでKUR及びKUCAの2基の原子炉の在り方等については、使用済燃料引き取りの問題や東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故を受けての新たな安全規制への対応など、原子力施設を巡る国内外の社会環境の大きな変化を受け、その都度、学内で検討・審議を行ってきた。
このたび、核セキュリティを含む原子力規制の一層の強化が進むとともに、施設の高経年化により維持管理のための負担が増加していること、さらにKUR使用済燃料の米国引き取り期限が近づいてきていることなどから、我が国における試験研究炉の現状及び今後の動向を確認しつつ、本学におけるKURとKUCAの今後の取扱いについて、改めて多角的な観点から検討を行った。 - (2)検討結果について
学内での検討の結果、京都大学におけるKUR及びKUCAの今後の在り方について、三つの点で取りまとめた。
一つ目は、「KURについては、米国の使用済燃料引き取りにかかる使用期限(令和8(2026)年5月)をもって運転を終了する。なお、運転終了後の廃止(解体)作業については、京都大学研究用原子炉・廃止措置実施方針において、放射性廃棄物処分事業開始の見通しが立ち、工法等が確立した段階で実施することとしており、また、その資金は国からの支援を要望することとしている。そのため、本廃止(解体)作業にかかるKURの廃止措置については、安全性を最優先とし、かつ着実に実施するために、発生する放射性廃棄物の処理処分の方法の確立と必要な経費確保に関して、文部科学省との協議を進めるべきである。」こと。
二つ目は、「KURの運転終了に当たっては、共同利用研究への影響を考慮し、複合原子力科学研究所における代替中性子源を適切な時期までに整備を行うことが望ましい。この代替中性子源の利用により、これまでKURで実施してきた中性子利用に関する研究・教育の継承を目指すとともに、既存のホットラボラトリ等の施設の再整備により、核燃料及び放射性同位体元素を用いた新たな研究の展開を進める。さらには、KURの停止による中性子を利用した研究への影響を考慮し、日本原子力研究開発機構のJRR-3等、学外の中性子源の利用も進めるべきと考える。」こと。
三つ目は、「KUCAについては、炉心変更が容易で、かつ、様々な炉心を構成できる世界的にも貴重な実験装置であることから、核セキュリティ・サミットにおける日米共同声明に従い、全ての高濃縮ウランの米国への引き渡しを完了させるとともに、低濃縮ウラン燃料を用いた炉心への転換を行い、今後も実験研究、学生等の人材育成等を実施していく。」こと。 - (3)複合原子力科学研究所の今後について
KURの停止後の複合原子力科学研究所については、外部研究機関との連携を深め、代替加速器中性子源を整備するとともに、KUCA、各種加速器、ホットラボラトリ等の施設を用いた多様な放射線・RI利用拠点の共同利用研究所として、熊取キャンパスにおいて核燃料・放射性同位元素及び量子ビームを利用した新たな複合原子力科学研究及び関連する人材育成を進めていく。
具体的な研究計画案としては、2026年5月にKURが停止するまでに企業から寄附されたBNCTの治験で使用していた加速器を多様な量子ビームの利用研究を行えるよう整備すること、また、KURの廃止を踏まえ、安全な廃止措置研究や低濃縮化したKUCAなどを利用した新型原子炉研究を行うこと、加えて国内でも数少ない大型のホットラボラトリを改修し、多様な核燃料、放射性同位元素の利用研究を行うこと、さらにこのような研究を進めるにあたって、研究所の運営・研究体制の見直しを行うことを考えている。
- (1)経緯について
【配付資料】
- 資料1 京都大学複合原子力科学研究所の安全性等について
【発言(田中委員)】
KURの廃止については、昨年の本審議会で、正式には年度末に決まるであろうと伺っていた。今年の4月1日に大阪府原子炉問題審議会会長宛と関係市町の長宛にKURの今後の在り方についての報告、廃炉が決まったという報告がなされたと聞いた。その後、4月5日に記者会見があり、翌日の6日の新聞に大きく取扱われた。この間、審議会会長宛の報告文書が我々のところに来たのが4月5日で、その時は記者会見の資料と同じだったが、ただ、その資料が一部の委員には事前に送付されていたと伺っている。なぜ全員に連絡しなかったのか、もしくは市町団体を通じて明らかにしなかったのか教えてほしい。
【説明(事務局(鍋島補佐))】
京大複合研から4月1日に審議会会長様宛にご連絡(通知)いただいて、事務局からはその通知を受け、審議会の委員へこういう通知があった旨、情報を入れさせていただいた。ただ、地元市町については、実際に協議会を持たれている市町もあり、その担当を通じて審議会の委員にも情報提供いただいている部分があるため、そこで若干他の委員とのタイムラグが生じていると思う。
【発言(田中委員)】
その説明は理解できる部分もあるが、大阪府の審議会のメンバーには、大阪府の審議会の事務局から連絡すべきではないか。熊取町の協議会には、自治体など地元に近いメンバーが多いので、大阪府にはこのような通知が出ているということを知らせるべきではなかったのか。私がこの通知を知ったのは4月5日の記者会見の日で、これがどうかということはないが、事務局の在り方としては、重なっているとはいえ、大阪府の審議会のメンバーで、大阪府から連絡したところと市町を通して連絡したところがあるというのはおかしいのではないか。
【説明(事務局(矢野課長))】
今後地元市町と協議しながら連絡体制に関して、考えていきたい。
【説明(川端委員)】
事務局を統括している部の責任者として発言させていただく。ただ今の連絡については、確かに市町との関係で連絡ルートがツーウェイになっているところがある。我々としては、地元市町との関係でそちらから行った方が良いと判断したが、田中委員からご指摘があったように事務局としてワンウェイで行うということも含め、これからきちんと情報のタイムラグが無くなるよう検討する。
議題3.京都大学複合原子力科学研究所定例報告について
各担当者から、配付資料に基づき、原子炉の運転状況、令和4年度の共同利用研究等の採択状況、令和3年度の環境放射能の測定結果等について、事項ごとに次のとおり説明があり、質疑応答後、了承された。
(報告内容)
- (イ)堀研究炉部長から、配付資料の「京都大学複合原子力科学研究所の現状報告書(定例報告)」をもとに、次のことについて説明が行われた。
- (1)報告対象期間(令和3年6月~令和4年5月)におけるKUR・KUCAの運転状況、役割等。
- (2)令和4年度の共同利用研究及び研究会の採択状況。
- (ロ)五十嵐放射線管理部長から、配付資料の「京都大学複合原子力科学研究所の現状報告書(定例報告)」をもとに、京都大学複合原子力科学研究所における環境放射能測定報告(令和3年4月~令和4年3月)に関し、次のとおり説明が行われた。
- (1)研究所では、原子炉施設の排水口及び排気口から放出される放射能の量や濃度及び敷地境界での線量評価の結果について、6ヶ月に1回、監督官庁である原子力規制委員会へ報告している。
- (2)これらに加えて、研究所と熊取町、泉佐野市及び貝塚市との間で締結している安全協定に基づき、実験所の周辺地域での放射線の積算線量を測定していること及び研究所周辺の環境試料に含まれる放射能の濃度を年2回測定している。
- (3)研究所では、自然に存在する放射性物質だけでなく、それよりもはるかに低い濃度の人工の放射性物質もその核種毎に分けて測定している。このような核種別測定の結果を一覧表にしており、原子炉施設からの新たな放出と思われる核種が検出されたり、放射能の量や濃度が増加しているようなことはない。また、実験所外の周辺9カ所における放射線の積算線量についても、自然放射線によるバックグラウンドレベルを示している。
- (4)環境試料中のうち、土壌や底質については、全国的にも検出されている核実験による放射性物質以外に原子炉の運転に由来すると思われる人工の放射性物質は検出されていない。また、野菜等の植物については、自然に存在する放射性物質しか検出されておらず、その濃度の変動も全国的な調査で明らかになっている変動の範囲内である。
- (5)研究所周辺の環境中における放射能及び放射線は、自然放射能及び自然放射線のレベルであり、一般住民の方々にご心配をおかけするようなレベルではない。
【配付資料】
- 資料2 京都大学複合原子力科学研究所の現状報告書(定例報告)
【発言(植田委員)】
我々働いている者からの視点として、京大複合研でお勤めされている方、労働者の健康管理の報告などというのは、こういった場でお示しいただくことは可能か。
【説明(五十嵐教授)】
労働者、RIの作業従事者のデータは、四半期毎に労働基準監督署へ提出しており、必要であれば、後日委員の皆様へ公開、お配りすることは可能。
【発言(植田委員)】
問題の無い管理をされているということでよろしいか。
【説明(五十嵐教授)】
はい。特段に大きな被ばく、事故等は無かった。
【発言(紀田副会長)】
7ページの一部(研究所・グランド南2)に最高値が平常値を若干逸脱する値の記載があるが、これはどう評価すればよいのか。
【説明(五十嵐教授)】
ここで示している平常値というのは、平均値にデータの変動の標準偏差の3倍を足し合わせたもので、これらについては、若干超えてはいるが、降水に伴う線量率の上昇というデータとして捉えている。
【発言(紀田副会長)】
要するに雨が降って一時的に少し数値が上がっただけで、平均値で見ると問題ないから安全性上問題ないということでよいのか。
【説明(五十嵐教授)】
おっしゃるとおり、問題ないと捉えていただければよい。参考資料の22ページに降水量と外部線量率のグラフがあるが、この事例のように降水があると、大気中のラドンの子孫核種が地表面に沈着する。これはかなり強い放射能を持っており、そのために線量率が上昇する。
議題4.その他について
次のとおり質疑応答があり、了承された。
【発言(田中委員)】
私の住んでいる家は、KURから500m以内のEPZの中であることもあり、これまでも京大複合研の変化を見てきたが、KURが令和8年5月に運転を終了し、その後、他の研究炉の事例から約10年程度冷やし、廃炉作業に入っていくと聞いている。その際に使用済燃料については、米国が引き取ってくれるということだが、令和8年5月までの運転の間に発生する廃棄物、KUR運転終了後の解体の際に発生する廃棄物については、どのように管理されるか、ある程度目途は立っているか教えていただけるか。
【説明(中島所長)】
廃棄物については、資料の中でもご説明したが、研究所等から出る廃棄物の処理処分は平成20年に日本原子力研究開発機構が事業主体となるということは決まっている。ただ、埋設場所、方法などの具体的なことは未だ決まっていない状況。我々としては、廃棄物の処理処分事業が開始してから解体をすることになると考えているので、それまでは日常の安全管理上の廃棄物は出るが、それ以外の大きな物は出さないことになる。先ほどお話しいただいたように、他の施設の状況を見ると停止後10年間はそのまま置いておいて、放射能の減衰を待って、その後に可能なところから解体していくことになるが、それについても処理処分事業の確立が見えた時点で実施する。運転停止後には原子力規制委員会に廃止措置実施計画を申請し、おそらく1年から2年かけて審査を受けることになる。審査中は運転しているのと同等の安全管理をしっかりと行うが、承認後は廃止モード、廃止に必要な安全管理を行っていくことになる。このような間の中で、我々の原子炉施設としてどこがどのくらい放射能を帯びているかを調査し、どこまでを廃止してどこが再利用できるかということも検討したうえで、着実に廃止を進めていきたい、また、廃止措置を研究テーマとしても考えているので、そこはしっかりとやっていきたい。
【発言(田中委員)】
京大複合研だけでどうにかなる話でもないと思うが、先程の説明で良くわかったが、二つ程問題があるかと。一つは、20年までの間に出てくるKURだけでなくKUCAも一緒かと思うが、それらの廃棄物はずっと保管していくということで、その安全管理については十分お願いしたい。もう一つは、今後、KURの廃止と解体が全国の商業炉の見本になるかと思うので、その辺りの研究をしっかりしていただき、地元としては放射性廃棄物の管理が周辺に影響が出ないよう、万全を期していただき、安心できるような研究所でお願いしたい。
【説明(中島所長)】
ご懸念十分了解した。我々は当然廃棄物の管理については、それなりの廃棄物倉庫があり、廃棄のための設備等も用意しているので、運転中もKURが停止後も変わらずにしっかりと安全を守りながらやっていきたい。
【発言(辰巳砂会長)】
KUR停止後どうなるかというのは、今のところ未だはっきりしていない部分もあるが、分かった時点で丁寧にご説明していただきたい。
以上