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第122回大阪府原子炉問題審議会 議事概要
第122回大阪府原子炉問題審議会の概要について
- 日時 平成28年8月30日(火曜日)午後1時30分~14時45分
- 場所 大阪府庁 本館5階 正庁の間
- 議題
- (1)役員の選任について
- (2)京都大学原子炉実験所の安全性等について
- 原子炉施設の再稼働に向けて
- 核セキュリティ・サミットを受けての対応について
- (3)京都大学原子炉実験所定例報告について
- (4)その他
- 出席者 審議会委員28名中22名が出席
(欠席委員:加納委員、川岡委員、徳永委員、富田委員、橋本委員、松浦委員) - 事務局等 大阪府、京都大学原子炉実験所、地元市町
議事に先立ち、審議会事務局担当の居軒大阪府政策企画部戦略事業室参事から、議事進行と本審議会の役割について説明の後、委員の紹介が行われた。
議題1.役員の選任について
審議会規則では会長1名を委員が選任することとなっており、会長には辻洋委員(大阪府立大学理事長・学長)が選任された。
また、同規則では副会長も委員が選任することとなっているが、現在の副会長は山本大委員(大阪府議会議員)1名のみのため、もう1名の副会長として山口百合子委員(関西研究用原子炉対策民主団体協議会代表)が選任された。
議題2.京都大学原子炉実験所の安全性等について
議題2に先立ち、川端所長から、挨拶と原子炉実験所陪席者の紹介が行われた。
中島研究炉部長・臨界装置部長から、資料1「1.原子炉施設の再稼働に向けて」及び補足説明資料「新規制基準への対応について」に基づき、新規制基準への対応状況、今後の見通しについて、次のとおり説明。
次いで、川端所長から、資料1「2.核セキュリティ・サミットを受けての対応について」及び別添資料「京都大学臨界集合体実験装置(KUCA)高濃縮ウラン燃料の返還等について」に基づき、これまでの経緯、返還予定の高濃縮ウラン燃料等について説明。
(報告内容)
- 原子炉施設の再稼働に向けて
2013年12月に研究炉を含む核燃料施設等の新規制基準が施行され、この基準に合格しなければ運転不可。実験所では、KUR、KUCAとも申請書を提出。
KUCAについては、2016年5月11日に申請が承認され、運転手引きに該当する保安規定の変更についても承認された。現在、工事を行うための許認可手続きを申請中で、工事を行ったのち、使用前検査、施設定期検査を受けて、12月頃には運転再開をめざしたい。
KURについては、7月27日の規制委員会で審査書が承認され、今後、文部科学大臣、原子力委員会の承認を経て、最終的に原子力規制委員会で正式に承認される予定。その後、保安規定の変更の申請、工事を行うための許認可手続き、工事、使用前検査、施設定期検査を受けて、1月頃の運転再開をめざしたい。
ただし、この運転再開の目標については、約束はできない。早期の運転再開をめざして鋭意努力していく。 - 核セキュリティ・サミットを受けての対応について
背景として、研究用原子炉に使用されている燃料が核爆弾の材料に転用する国などに盗まれないようにするという世界的な動きがあり、高濃縮ウランを低濃縮ウランに換える動きがある。
KURについてはすでに低濃縮化されているが、KUCAについてはこれまで検討が進められてきた。そして、3月31日から4月1日に開催された核セキュリティ・サミットにおいて日米首脳の共同声明の中で、KUCAの高濃縮ウランを米国へ返還すること及びKUCAを低濃縮化することが表明された。
今後、日米合意の趣旨に基づき関係機関の協力のもと、高濃縮ウラン燃料の返還等を着実に実施していきた。
また、高濃縮ウランに対するセキュリティ対策の維持・向上に努め、安全管理を引き続き徹底していく。
【配布資料】
- 資料1 京都大学原子炉実験所の安全性等について
- 補足説明資料 新規制基準への対応について
[発言(重光委員)]
先ほど京大炉より新規制基準への対応についてご報告いただきました。これにつきまして、その説明の中にありましたが、実際にこれで施設が運転される場合、運転時の防災マニュアル自体、今はありますけれども、できれば大阪府自体が防災マニュアルの基本ができて、できれば熊取町はそれを受けて作って、原子力防災についてはそれでやっていきたい。
もう一つは、先ほどセキュリティのことおっしゃいましたけれども、京都大学が、大阪府や警察等と連携を取りながらやっているということになっておりますが、これは京都大学が主体でやるという形になっている。しかし、本来であれば、こういう審議会が大阪府にあることに対して、大阪府が、国、府が、セキュリティをどう確保していくか、日常的にある緊急時にどう対応するか、ここで審議で声が出なければ何もない、というのはおかしいのではないか。例えば、大阪府自体が、高濃縮ウランがあることに対して、大阪府が主体となって、それをどのように熊取町の京都大学原子力実験所のセキュリティを確保するのか、大阪府の主体がどこにあるのか。これは、今、大阪府これで意見言ってますけれども、この審議会が、知事の諮問でありますからこういう結果が出ましたよということはあるでしょうけれども、ただ、大阪府自体がそれに対してどうするのかという回答は府からいただけないと思います。というのは、大阪府でこの問題に対応する責任の方が出ておられない、各町の町長、それから当事者は出ておりますけれども、それはあくまでも審議会ですので、あくまで、大阪府の責任者はこの会議の部屋にはおられないので、こういう質問をしても誰も答えられないので、意見を言うだけ。だから、そういうここで出た問題について、大阪府は京大に対して安全の責任を大丈夫だと、国がするのですけれども、その辺りを考えていただいて、大阪府がどうしようとしているのかをぜひ明確にしていただきたいと思います。
それから、防災マニュアルはもちろんですけれども、大阪府が主体となってやる、この管理主体が京大ではなく、大阪府にあるということを明確にしていただきたい。
それから、京大は今回福島事故を受けて、原子力発電所と同じような安全性を要求されてそれに対応している。府の、事故が起こったら福島と同じようなことになるという認識を持っておられる方がたくさんいる。この規制で認可された限りは、熊取町の実験所は、発電所と全然違う、だから、発電所の規模と同じような想定であってはならないということを、大阪府の明確に府民に示す必要がある、この3点について、大阪府から明確な回答を得られるようお願いしたい。
[発言(辻会長)]
今のご意見に対する確認ですけれども、この資料は「主体は京都大学」ということでよろしいですね。マニュアルについても高濃縮ウランも維持して出していくのは京都大学。それで、ご意見としては、京都大学だけでなく、府がもっとやってほしい、国も関係するけれども、というご指摘と言うことでよろしいでしょうか。
[発言(重光委員)]
議題から見て、他でこういう発言をするべきところがないかなとなりまして、関連で報告されたところに関しまして、私の意見を述べさせていただきました。
[発言(辻会長)]
「府がもっと・・」という意見が出たということで事務局の方から回答ありますか。
[説明((大阪府事務局)山田課長)]
審議会事務局としてお答えさせていただきます。
先ほど来お話が出ております燃料の部分に関しては、京都大学さんの方が主体的に国の方と色々と連携を図りながら対処法を考えておられるところでございますので、大阪府としましては、その状況を見守りながら適切にこういった審議会の場などを含めて、情報提供等を含めて対応していきたいと思っております。
ただ、現時点では大阪府としては、燃料に関しまして、特別に主体的にこういう風に対応するということは申し上げることができないという風に今のところは考えております。
[発言(山口信彦委員)]
事務局の方からお答えしましたけれども、京大原子炉の問題は京大と地元の方たちだけの問題では決してないというのは我々も理解しており、そういう意味で、このような形で審議会を作らせていただいて、どういう形で日々動いているのか、どういう状況になって今、国の方でされているのか、こういうことを皆さんにオープンにさせていただいて、色んなご意見をいただく。このご意見をいただいたものには当然、京都大学でやっていただくこと、あるいは、大阪府でやっていくこと、あるいは地元市町さんでやっていただくこと、そういう課題が出てくると思います。
そのために、こういう審議会を置いておりますので、当然、安全の問題は極めて重要な問題ですから、当然原子炉を動かすにあたって京大が主体的にやっていただくのですが、これに絡んで地元の方で問題があれば、大阪府としても当然サポートさせていただくつもりで、こういう立場ですので、ご理解をよろしくお願いしたいと思います。
[発言(辻会長)]
こういう場で、みんなが見ている場、そういう中で京都大学さんが主体を持ってやっていただくというのが現状でございます。
そういうご意見が出たということで他にご意見はありますでしょうか。
[発言(松浪委員)]
核セキュリティ・サミットを受けての対応について、配布資料の文章の4行目ですが、「高濃縮ウラン燃料を米国へ返還すること」の「返還」という言葉ですが、常識的に返還するということは借りたものを返すという意味があると思います。これは、日本が、あるいは京大原子炉実験所が、米国から高濃縮ウランを借りた結果、「返還」という言葉を用いられているのかお聞かせ願いたい。ちなみに、その下の枠で囲んだ「以下、核セキュリティ協力に関する日米共同声明の抜粋」の1行目では、「本日両国は、KUCAのすべてのHEU燃料を米国に撤去し、希釈し、恒久的に脅威を削減するために協働するとの表明」というような声明が書かれていて、「撤去し希釈し、恒久的に脅威を削減するため」云々と書かれているんですよ。ここでは、「返還」という言葉は使っていない。なぜ説明の文章では「返還」という言葉が使われているのでしょうか。
[説明(川端所長)]
これについては、核燃料に関する非常に特殊な国際的なルールがございまして、最初に原材料(ウラン)がどこのものかということ、それを、我々が燃料を購入した際にその原材料の提供元である国に対して、燃料の取扱いに関する約束を行うルールがございます。所有権としては我々にあるのですが、それをどうするかという、コントロールする権限はその原材料を供給した国にあることになっています。そういうことで、我々は米国から購入しておりますので、この原材料の一番最初の供給源が米国にあるということで、そういうのが付いて回るんですね。我々の財産なんですけれども、ここのOKなしに、あちこちに送ったりできない、ということで、そういう非常に特殊な契約なもとに米国に送るということで、最終的にぐるっと回ったところが一番最初に供給された国に戻るという意味で「返還」という言葉をつかっているというところです。
[発言(松浪委員)]
分かりやすくも聞こえたんですけれども、そうであれば、日米共同声明の抜粋、恐らくこれは、英訳だと思いますが「高濃縮ウラン燃料を米国に撤去し、希釈し」という言葉を使って、「返還」という言葉を使ってない。そこのところのニュアンスの違いを教えていただきたい。
[説明(川端所長)]
法的に厳密に使っているのは、合意文の、国の方で書いた話ですので、法律的にはこちらの方が正しいと思います。「返還」というのは我々の分野の慣用的な言葉という風にとっていただく。慣用的な言葉がまずいということであれば、法的に合わせるべきかと思います。ただ、今まで我々の分野、世界的にそうなんですけれども、元々の原材料国が強い権限を持っているということで、最終的にそこに戻るということで「返還」という言葉を慣習として使ってきたという意味です。ですので、慣習として使っているのが誤解を生みやすいということでしたら変えるべきと思います。
[発言(松浪委員)]
慣例として「返還」という言葉を使っているのであれば、法的により厳密な「撤去し、希釈し」の方がいいのではないかなと個人的には思います。慣用的・慣例的な言葉ということでしたら、法的に正しい言葉を使用すべきではないかと思います。
[説明(川端所長)]
そちらの方が厳密です。
[発言(辻会長)]
共同声明の方が正式な表現であれば、誤解を招かないように、委員仰ったように、法に合わせておいた方が混乱を生じないと思いますのでお願いします。
議題3.京都大学原子炉実験所定例報告について
中島研究炉部長・臨界装置部長から、原子炉の運転状況、平成28年度の共同利用研究等の採択状況について、高橋放射線管理部長から、環境放射能の測定結果等について、配布資料をもとにそれぞれ次のとおり説明があった。
(報告内容)
- (イ)中島研究炉部長・臨界装置部長から、配布資料の「京都大学原子炉実験所の現状報告書(定例報告)」をもとに、次のことについて説明が行われた。
- (1)報告対象期間(平成27年6月~平成28年5月)におけるKUR・KUCAの運転状況、役割等のこと。
- (2)KUR・KUCAは、現在、施設定期検査期間中のため運転を停止しており、この期間中に新規制基準に伴う適合確認を受けていること。
- (3)平成28年度の共同利用研究及び研究会の採択状況のこと。
- (ロ)高橋放射線管理部長から、配布資料の「京都大学原子炉実験所の現状報告書(定例報告)」をもとに、京都大学原子炉実験所における環境放射能測定報告(平成27年4月~平成28年3月)に関し、次のとおり説明が行われた。
- (1)実験所では、原子炉施設の排水口及び排気口から放出される放射能の量や濃度及び敷地境界での線量評価の結果について、6ヶ月に1回、監督官庁である原子力規制委員会へ報告していること。
- (2)これらに加えて、実験所と熊取町、泉佐野市及び貝塚市との間で締結している安全協定に基づき、実験所の周辺地域での放射線の積算線量を測定していること及び実験所周辺の環境試料に含まれる放射能の濃度を年2回測定していること。また、重水熱中性子実験設備からの重水漏洩に起因するトリチウム濃度についても排気中、排水中又は空気中濃度限度を超えることはなかったこと。
- (3)実験所では、自然に存在する放射性物質だけでなく、それよりもはるかに低い濃度の人工の放射性物質もその核種毎に分けて測定していること。このような核種別測定の結果を一覧表にしており、原子炉施設からの新たな放出と思われる核種が検出されたり、放射能の量や濃度が増加しているようなことはないこと。また、実験所外の周辺9カ所における放射線の積算線量についても、自然放射線によるバックグラウンドレベルを示していること。
- (4)環境試料中のうち、土壌や底質については、全国的にも検出されている核実験による放射性物質以外に原子炉の運転に由来すると思われる人工の放射性物質は検出されていないこと。また、野菜等の植物については、自然に存在する放射性物質しか検出されておらず、その濃度の変動も全国的な調査で明らかになっている変動の範囲内であること。
- (5)実験所周辺の環境中における放射能及び放射線は、自然放射能及び自然放射線のレベルであり、一般住民の方々にご心配をおかけするようなレベルではないこと。
【配布資料】
- 京都大学原子炉実験所の現状報告書(定例報告)
議題4.その他について
山田大阪府政策企画部戦略事業室課長から平成28年3月にBNCT研究会から改組したBNCT推進協議会について、配付資料をもとに説明があった。
(配布資料)
- BNCT推進協議会について
[発言(重光委員)]
BNCTシンポジウムが東京で開催されるということで、中身的にも非常にいい内容が開催されるそうで、講演やディスカッションとかありますので、出られない人がたくさんいると思いますので、その状況につきまして情報提供等配慮をお願いしたい。
[説明(山田課長)]
シンポジウムの概要につきましては、府のホームページや関係機関のホームページ等を通じて広く、その結果やその反響などについて情報提供させていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
[発言(辻会長)]
これは一般の方向けというよりも研究者の方向けのシンポジウムですか。
[説明(山田課長)]
特に限定しておりませんので、一般の方もご聴講いただける形となっております。
[発言(辻会長)]
私ども(大阪府立大学)ではホウ素薬剤の研究をしております。皆さまご存知かもわからないですが、がんを治療すると副作用が多く、なかなか治療が難しかったんですけれども、ホウ素薬剤をうまくがん細胞だけに集めたところに中性子をあてると、がん細胞だけが消滅するということを目指した非常に大切な技術でございます。
昔は、放射線治療はがんになって最後に行くところと言われていたんですけれども、今後、最初に行くところになるんじゃないかと私は期待しております。
以上