ここから本文です。
自分が好き<生まれてきてよかった>
3 人権基礎教育の展開例
No | 展開例 (タイトル) |
教材名 | 9つの観点 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
自 己 肯 定 感 |
生 命 の 尊 重 |
善 悪 の 判 断 |
思 い や り |
コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 |
共 に 生 き る |
規 範 意 識 |
権 利 と 責 任 |
社 会 貢 献 |
|||
1 | 自分が好き から生まれてきてよかった |
|
◎ | ◎ | ○ | ○ | ○ | ||||
2 | 高齢者への思いやり から自分たちにできること |
|
○ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ◎ | |||
3 | 集団生活ではルールが大切だね から仲間とともに育ち合う |
|
○ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ||||
4 | 家族の一員として自分に気づく から自分でするってきもちいい |
|
○ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ||||
5 | 気持ちをわかることで から正しいことがきちんと言える |
|
◎ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
6 | 自信をもってコミュニケーション から気持ち、わかる・言える |
|
○ | ○ | ◎ | ○ |
<各展開例について>
1 タイトル
- 単元名
- 単元や教材
- 観点
- 展開例でめざす観点
- ねらい
- 展開例設定の意図、ねらい
※各校・クラスの子どもの実態に合わせること
- 展開例設定の意図、ねらい
- 展開例
小学校の教科・特別活動・道徳等の中で展開する指導案(2例)
※多様な手法(絵、紙芝居、読み物、ワークシート、参加体験型手法、ききとり、交流、話し合い、発表、行動、等) - プログラム例
生活科や総合的な学習の時間等でプログラムとして組んだ場合の例 - 教材例
※子どもの実態に合わせてアレンジすること - 取組例
- 小学校、または幼稚園での取り組みのようすやポイント
- 子ども・保護者の反応、工夫・留意点
(1)自分が好き<生まれてきてよかった>
単元名
- 友だちのいいところさがし(特別活動、生活科)
- こんなに大きくなったよ(同)
観点
◎自己肯定感 ○思いやり ◎生命の尊重 ○共に生きる ○コミュニケーション力
ねらい
- 友だちと一緒にいることの心地よさを十分に味わう。子どもたちは、周りの大人や友だちから「誉められること」や「認められること」よりも「叱られること」「否定されること」の方が多くなりがちである。
そこで、展開例1では、積極的に自分のよさに気づいたり友だちのよさを見いだしたりする学習活動により、自己肯定感を高め、共に生きるための素地を培う。 - 展開例2では、かけがえのない命に気づき、自分とともに他者や生きる者すべてに生命があることを知り、生命を大切に思うきもちを育てる。
展開例1
友だちのいいところさがし
学習活動 | 指導者の働きかけ・留意点 | 予想される反応 |
---|---|---|
1 友だちの書いた「せんせいあのね」を紹介する。
|
※「せんせいあのね」など生活日記を綴ることを、絵日記からはじめ、文字の学習の進行状況に合わせながら、継続的に位置づける。 ※「せんせいあのね」の内容は基本的には自由であるが、この学習につなげるために、事前に「友だち」という課題で書くように指示しておいてもいい。
|
|
2 「いいなあはっけん」カードを班で発表する 今度はカードに自分で書く (「自分から自分へ」) |
※あらかじめお家の人に「いいなあはっけん」カードを書いてもらえるようにしておく。(家の人や先生が書いた「いいなあはっけん」カードを渡す。) |
|
3 「友だちはっけんクイズ」 「わたしはだれでしょう」 |
|
|
<指導上の工夫>
「いいなあはっけん」・「こんなに大きくなったよ」等いずれも、家庭の理解と協力を得る必要がある。いろいろな家庭や家族の形態があることを踏まえ、そうした違いを尊重するとともに、保護者の思いに共感しながら、子どもへの思いを聞き取ることが大切である。
展開例2
こんなに大きくなったよ
学習活動 | 指導者の働きかけ・留意点 | 予想される反応 |
---|---|---|
1 「こんなに大きくなったよ」、保護者や家族の人に聞いたことを発表する 「生まれた時」、小さいころのことを発表する *参観日にして、保護者にエピソードを言ってもらってもいい。 |
※あらかじめ保護者に「こんなに大きくなったよ」カードを書いてもらえるようにする。
|
|
2 「私のたから物」「家族との思い出」を書く |
|
|
3 家に帰って、もっと話してみる | *⇒幼いころのアルバムやビデオを見直したり、まわりの人(祖父母にも)聞くようにすすめる。 |
|
プログラム例
自分たんけんの旅に出かけよう(自分を見つめて)
- 第1次 いいなあはっけん
- 今の私を見つめよう
- 今の私を描こう(等身大:図工)
- 私の好きなこと
- 私じまん
- こんな時・どんな時
- 今、できるようになったよ
- 第2次 たんけんをして
- 自分たんけんをして思いを発表しよう
- お家の人やまわりのひとに思いを語ってもらおう(生活科)
- 自分の思いを作文にしよう
- 第3次 こんなに大きくなったよ
- 自分の誕生を知ろう(名前たんけん)
- 紙芝居「赤ちゃんがうまれたよ」
- お家の方にインタビュー
- 小さい頃の私を知ろう
- 第4次 私のアルバム
- 私のアルバムを作ろう
- 今までの資料をアルバムにまとめよう(図工)
- これからを考えよう(国語)
教材例
「いいなあはっけん」カード
「こんなに大きくなったよ」
取組例(小学校)
- 「こんなに大きくなったよ」
<参観後の保護者の感想>- 一人ひとりの名前の由来や、生まれた時のお話を伺いながら、みんながそれぞれの家族にとって大切なかけがえのない存在なんだなあ、と感激しました。
- 今晩、家ではお風呂に入った後、赤ちゃんの頃のアルバムを出してきてお姉ちゃんとなつかしそうに見ていました。
- 久しぶりに昔を思い出し、子育ての初心に戻していただきました。少し日頃の態度を反省しましたがすぐ忘れてしまいます。根本的には子どもを「愛している」という気持ちはあるのですが……。
- 「ただ生きてほしい、願いはそれだけなんです」に感動!
(オリジナル紙芝居「あかちゃんはどこからきたの」を見て、命の始まりのしくみを知った後、お母さんたちの話を聞いた。)
生まれながらに心臓に大きなハンディを背負い、何度もの大手術を乗り越えてきたAのことを、お母さんが子どもたちの前に立って話してくれた。
医師から心臓のことを告げられた時のショックや心配、何度もの手術を家族で乗り越えてきたこと、「おばちゃんは、勉強ができる子に育ってほしい、とかそんなんないんです。ただ生きてほしいって、願いはそれだけなんです。」というお母さんの言葉に、その場にいた教職員や保護者はもちろんのこと、子どもたち(1年生)も真剣な表情で聞き入っていた。
そしてAのことを通して、命(存在)そのものの大切さ、かけがえのなさを感じとってくれたようだった。このことをきっかけに、Aの体を常に気遣い、いたわり、思いやることのできるやさしい心を持った子どもたちに育っていることを、その後多くの場面を通して実感する。 - Bさんもみんなもともに伸びていく
Bさんはとても明るい性格の子である。下肢に麻痺があり、生活する中で支援が必要であり、トイレや体育の時には教員が付き添っている。自分の思いを人に伝える時には、短く声を出したり、指をさしたりして表現するが、まわりの子どもはBさんの言うことがよくわかっている。
週2回のクラス遊びの時間は、もちろんみんなと一緒である。キックベースボールをしたとき、Bさんがちょこっと蹴ると、Cさんが手をつないで走る。その間にDさんがササッと一塁へ走って、つまり代走をしてセーフ。そんなことも、ともに生活する中で子どもたちが自然に考えて行動していった。子どもたちの柔軟さに感心した。
子どもも大人も自然に工夫して、それが楽しさにつながっていく。Bさんが友だちに抱きつくことで、Bさんも友だちもお互いが温かい気持ちになれる。そんな、Bさんもみんなもともに伸びていく関係を大事にしたい。
取組例(幼稚園)
- おじいちゃん・おばあちゃん、いつまでも元気でね
高齢者福祉施設で劇遊び公演をしました。
初めて挑戦した演歌「ずんどこぶし(替え歌)」では、♪やさしいばあちゃん、いつまでも……げんきなじいちゃん、いつまでも……長生きしてねから♪と歌う子どもたちの可憐な姿に、笑顔いっぱいだったおばあちゃん達も次から次と目頭を押さえ、涙をぬぐったり……と、涙と喝采の感動シーンの連続でした。 - 障害のある人との交流「いろんな人がいていいんだよ」
知的障害者の施設との交流は今年で3年目を迎えます。紅葉に囲まれた秋真っ盛りの学園の芝生広場で一緒に遊んだり落ち葉拾いや土手すべり……と、一日たっぷり遊びました。子どもたちの姿を見るや否やフェンス越しに大きく手を振り、笑顔いっぱいで迎え入れてくれ、それぞれに用意してくれたプレゼントをそっと子どもたちに手渡してくれたり、と大歓迎を受けました。
学園長さんは、子どもたちに「学園」の方々のことを、いつも自分に正直に一生懸命生きているし、とても優しくとてもきれいな心を持っている人達なんだよ」「世の中にはいろんな人がいていいんだよ」と優しい口調で話して下さいました。交流で、学園の方々の優しさ、偏見なしに一緒に遊ぶ子どもたちのすなおな心に教えられました。 - 集団の中で育ち合う子どもたち
- 良さを見つけ、気持ちを理解することで
入園当初、遊びを転々としていたE児は、三輪車なら長く遊び続けることができるようになったが、同じ色にこだわりがあり、よくトラブルが起こった。「Eちゃん、緑色しかイヤやねんて」とE児に代わり思いを代弁したり、E児には順番の大切さを知らせたりしながら、丁寧に言葉がけをしていった。 - 充実して遊ぶことから、かかわりが深まる
その年の後半には、E児は運動遊びで自分の力を発揮するようになり、長縄跳びは得意だった。順番を待っていた園児たちと一緒に「Eちゃん、すごい」と声をかけて認め合った。Eは友だちから認められ、一緒にする喜びから、友だちとのかかわりが自然に深まっていった。 - 認め合うことから、ともに生きる関係に
年長になったある日、E児が「片づけ、きらい」と言って、自分が出した遊具を放りっぱなしにして、一緒にしようと誘っても、一向にしようとしなかった。クラスのみんなでこのことを話し合ったが、E児がその気になるまでにはいかなかった。「どうしたらEちゃんが片づけをしようと思う気になるか、みんなで考えてみようね」と、解決を急がずに課題を投げかけた。すると翌日、E児と2人の園児が「私と一緒やったら、Eちゃん、片づけするって」と報告してくれた。「なあ、Eちゃん」と呼びかけられて、嬉しそうにうなずくE児だった。
自分に関心を示し、一緒にしようと言ってくれたことが嬉しく心地よかったので、気持ちを切り替えられたのだろう。友だちの言葉を何度も聞いてE児自身が一つひとつ納得して前に進もうとするのを、焦らず待つ姿勢が大切だと感じた。また、解決を急がなかったことで、周りの子どもの主体性や温かい関係にもつながったと思う。
- 良さを見つけ、気持ちを理解することで
〔戻る〕