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有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律できるまでと現在の状況
「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」(以下、「家庭用品規制法」という。)について
(1)経過
戦後、日本はあらゆる分野で発展をとげ、家庭用品については石油を化学繊維や合成洗剤等に加工してきました。
その結果、これら石油化学製品は今や私たちの日常生活に欠かせないものとなっており、現在では、私たちの身のまわりではありとあらゆるところに見つけることができます。
現在、世界で知られている化学物質は約1700万種類が登録されていると言われており、日本においては化学商品として約4400種類がリストされ、通常5万種類以上だと言われています。
化学製品に恩恵を受けている反面、これだけ莫大な数の化学物質が使用されているため、今まで様々な健康被害が発生してきました。
最近では急性毒性だけでなく、動物の体内のホルモン作用をかく乱することで、健康被害を及ぼす「内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)」が問題視されてきました。
年 | 国の担当 | 内容 |
---|---|---|
昭和41年 |
主婦連 |
「暮らしの中の危険と不衛生」に関して、苦情調査を実施。 |
昭和42年 |
科学技術庁 |
衣料処理剤の諸影響に関する研究会設置 |
昭和45年 |
科学技術庁 |
上記研究会が活動報告「衣料処理剤に関する基礎調査資料」を発表 |
昭和46年 |
厚生省 |
東京大学豊川行平らによる厚生科学研究「日用品などに含まれる化学物質の健康に及ぼす影響に関する研究」。これは、豊川レポ-トとよばれる。 |
昭和46年 |
通商産業省 |
消費財安全対策小委員会設置 |
昭和47年 |
通商産業省 |
上記安全対策会議の調査、検討の結果、ホルマリン樹脂加工を行う場合の加工管理基準について繊維雑貨局長通達を出す。 |
昭和47年 |
厚生省 |
生活環境審議会に家庭用品安全性問題専門委員会を設置 |
昭和48年 |
厚生省 |
上記をうけて家庭用品安全対策室を設置 |
同年 |
厚生省 |
「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」公布 |
同年 |
厚生省 |
「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律の施行期日を定める政令」にて法律の施行期日が昭和49年10月1日とされた。 |
総務省「法令データ提供システム」で法令等を参照できます。(ただし、最新の情報でない場合があります。)
- 有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律(昭和48年10月12日法律第112号)(外部サイトへリンク)
- 有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律第2条第2項の物質を定める政令(昭和49年9月26日政令第334号)(外部サイトへリンク)
- 有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律施行規則(昭和49年9月26日厚生省令第34号)(外部サイトへリンク)
(2)家庭用品行政の概要
現在、行政では、消費者からの苦情や家庭用品規制法の第5条規定に違反して家庭用品を販売しているおそれのある場合の収去試験や、流通商品を任意に購入し、試験を行う試買試験を行い、家庭用品に基準以上の有害化学物質が含有していないかをチェックしています。
厚生労働省は、大学付属病院や公立病院の協力を得て、各種家庭用品に係る消費者の健康被害事例を継続的かつ広範に収集し、健康被害の実態を把握するとともに家庭用品の安全対策を一層推進するため、病院モニター報告制度を実施しています。
しかし、これまでに分かっているものは、化学物質が単独で起こす毒性などでした。複数の化学物質による相互作用についてはこれからという段階です。
また、家具から放出されるホルムアルデヒドの暴露、掃除機フィルターに塗布されている殺虫剤の放出による暴露など新しい問題が発生しています。
法律名 |
概要 |
対象物品 |
---|---|---|
家庭用品品質表示法 |
製品の成分、性能、用途、その他品質に関し表示すべき事項及びその表示方法を定めるなどにより、家庭用品の品質に関する表示の適正化を図り、一般の消費者の利益を保護する。 |
繊維製品、合成樹脂加工品、電気機械器具及び雑貨工業品のうち政令で定めるもの |
電気用品取締法 |
電気用品の形式の認可、表示制度などをとおして電気用品の製造、販売等を規制し、粗悪な電気用品による危険及び障害の発生を防止する。 |
電気用品一般 |
食品衛生法 |
食品等の規格基準の設定、表示制度等をとおして、飲食に起因する衛生上の危害発生を防止し、公衆衛生の向上及び増進に寄与する。 |
食品、添加物、おもちゃ器具(食器を含む。)容器包装、洗浄剤 |
農林物質の規格化及び品質表示の適正化に関する法律 |
適正かつ合理的な農林物質の規格を制定し、これを普及させることにより農林物質の品質の改善、生産の合理化、使用又は消費の合理化等を図るとともに、その品質に関する適正な表示を行わせることによって、一般消費者の選択に資する。 |
飲食料及び油脂 |
毒物及び劇物取締法 |
毒物、劇物及びそれを含む物について、保健衛生上の見地から必要な取締りを行う。 |
毒物、劇物 |
化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律 |
難分解性の性状を有し、かつ、人の健康をそこなうおそれがある化学物質による環境の汚染を防止するため、新規の化学物質の製造又は輸入に際し、事前にその化学物質がこれらの性状を有するかどうかを審査する制度を設けるとともに、これらの性状を有する化学物質の製造・輸入・使用等について必要な規制を行うことを目的とする。 |
放射性物質、毒物及び劇物取締法(特定毒物に限る)、覚せい剤取締法、麻薬取締法で規制されるもの以外の化学物質(放射性物質を除く) |
工業標準化法 |
適正かつ合理的な工業標準の制定及び普及により、工業標準化を促進し鉱工業品の品質の改善、生産能率の増進その他生産の合理化、取引の単純公正化及び使用又は消費の合理化を図る。 |
医薬品、農林物質等を除く鉱工業品 |
消費生活用製品安全法 |
一般消費生活用品のうち構造材質等主として物理的性質の欠陥による危害の発生の防止を図るため、特定製品の製造及び販売を規制するとともに、消費生活用製品の安全性の確保のために民間の自主的な活動を促進するための措置を講ずる。 |
船舶安全法、食品衛生法、消防法、毒物及び劇物取締法、道路運送車両法、高圧カ゛ス取締法、武器等製造法 薬事法で規制されるもの以外の一般消費者の生活用品 |
薬事法 |
医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療用具の品質、有効性及び安全性を確保する |
医薬品、医薬部外品、化粧品、医療用具 |
農薬取締法 |
農薬の品質の適正化とその安全かつ適正な使用の確保を図り、もって農業生産の安定と国民の健康の保護に資するとともに、国民の生活環境の保全に寄与する。 |
農作物を害する病害虫の防除に用いられる殺菌剤、殺虫剤及び農作物の成長促進剤、発芽抑制剤 |
労働安全衛生法 |
職場における労働者の安全と健康を確保する。 |
労働者に健康障害を生ずる物又は生ずるおそれのある物(黄リンマッチ、ヘ゛ンシ゛シ゛ンン等) |
特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(環境省) |
環境の保全に係る化学物質の管理に関する国際的協調の動向に配慮しつつ、化学物質に関する科学的知見及び化学物質の製造、使用その他の取扱いに関する状況を踏まえ、事業者及び国民の理解の下に、特定の化学物質の環境への排出量等の把握に関する措置並びに事業者による特定の化学物質の性状及び取扱いに関する情報の提供に関する措置等を講ずることにより、事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境の保全上の支障を未然に防止することを目的とする。 |
化学物質は、人の健康や生態系に有害なおそれがあるなどの性状を有するもの |
ダイオキシン類対策特別措置法(環境省) |
ダイオキシン類が人の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある物質であることにかんがみ、ダイオキシン類による環境の汚染の防止及びその除去等をするため、ダイオキシン類に関する施策の基本とすべき基準を定めるとともに、必要な規制、汚染土壌に係る措置等を定めることにより、国民の健康の保護を図ることを目的とする。 |
タ゛イオキシン類 |
参考文献
- 保健衛生安全基準家庭用品規制法関係実務便覧
- 鶴保 謙四郎:生活衛生 Vol.43 No.5(1999)
- 化学工業日報社,13599の化学商品(1999)