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更新日:2024年7月8日

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施設コンフリクト(資料1-2)

2.施設コンフリクトがもたらす人権侵害

(1) 障害者福祉の基本的考え方

  • 1981年の国際障害者年を機に障害のある人たちの福祉施策は大きく変化をしてきた。「完全参加と平等」「ノ-マライゼイション」の理念の下、数々の取り組みがなされてきた。
    我が国においても、1993年(平成5年)の「障害者基本法」の施行があり、「障害者の自立と社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動への参加を促進すること」を目的とし、「個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する」という規定に、「社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を与えられる」 という規定を加えて、その市民権の確立を明確にしている。
    また、身体障害、知的障害のみならず精神障害についても、この法律の対象とし、「福祉に関する基本的施策」を講じるものとする画期的改正を行い、その後1995年に「精神保健及び精神障害者の福祉に関する法律(通称:精神保健福祉法)」が施行され、従来の保健医療・社会復帰施策に加え(いわゆる 医療モデル中心)、ノ-マライゼイションの理念の下に、地域で自立生活が送れるようにするための福祉的援助の充実(障害者が置かれている社会的不利益の実態の直視を施策の基本に据えた社会モデルの充実)を図っていくことが求められている。
  • また、福祉のまちづくりの推進が求められているが、その目的は、高齢者、 障害者等の自立と社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動への参加を促進することであるが、障害者の人権の視点が、行政機能と施策の全てにわたって内部化されるよう、府と市町村は、地域社会を形成する市民一人ひとりとともに、取り組んでいく必要がある。

(2) 福祉施設等建設の基本理念

地域社会における生活者という視点の重視

  • 長い間、障害者は「保護」される対象と捉えられてきており、地域社会の中での共存という考え方は希薄であった。
  • 1965(昭和40)年頃には、専門性や特殊性が強調され、大規模施設が作られる一方、施設類型や措置費体系も細分化された。
  • 1950(昭和25)年に施行された精神衛生法は、精神障害者に対する適切な治療及び保護に重点がおかれ、また薬物療法も未発達であったため、精神病院への収容保護が主たる対処方法であり、1955(昭和30)年から1965(昭和40)年にかけて精神病院の大増床がおこなわれた。
  • その後、精神保健法(1987 昭和62年) 、障害者基本法(1993平成5年)が成立し、年々増加していた入院患者数が1991(平成3)年をピ-ク(約35万 人)に減少に転じたものの、入院患者はなお多く、いわゆる社会的入院の多さが指摘されているところである。

  • 国は、1995(平成7)年12月、ノ-マライゼ-ションの理念を一層おしすすめ、施策の重点的な推進を図るため、「障害者プラン ノ-マライゼ-ション7か年戦略」を策定した。その柱の一つに『地域で共に生活するため』を掲げ、「障害のある人々が社会の構成員として地域の中で共に生活を送れるように、ライフステ-ジの各段階で、住まいや働く場ないし活動の場や保健福祉サ-ビスが的確に提供される体制を確立する」としているところであり、地方自治体は、国の計画とも照応した地域の特性を踏まえた積極的な施策展開が求められている。
  • 大阪府では、1983(昭和58)年国連・障害者の10年にあわせて「障害者対策に関する大阪府長期行動計画」、1994(平成6)年には、自治体として初めて各種支援施策の整備目標値を盛り込んだ「新大阪府障害者計画ふれあいおおさか障害者計画」を策定し、国の動きにあわせる形で施策を推進してきている。

普遍的な問題として捉える視点の重視

  • 慢性疾患への疾病構造の変化や高齢化の急速な進展の中で、「障害や病気といかに共存し、生活の質をいかに高めていくか」が求められている。
  • 障害は、人の生涯の中でいつでも生じうることであり、また、家族、友人など自らと関係のある人を含めて考えれば、誰にとっても身近なことであり、特別なことではない。( 今後の障害保健福祉施策の在り方について(中間報告)/3審議会合同企画分科会 1997年12月)

  • 障害のある市民の暮らしやすい社会づくりは、全ての市民にとってその人格が重される普遍的な社会構築に繋がるとの視点を持ち、福祉施設は地域の重要な社会資源として地域社会にビルトイン(組み込まれていく)していくことが必要である。
  • また、これからは障害や病気は普遍的な問題として府民一人ひとりが捉えていくことが重要である。

(3) 多様な住まいの場の確保の緊急性

  • 障害者の地域での生活を支援するためには、住まいと連携した福祉、保健、医等在宅サ-ビスの整備が不可欠であり、こうした支援体制の整備が求められている。
  • 昨年の安田系3病院問題では、在院中の患者に対する劣悪な処遇や不適切な医療の実態とともに、社会的入院が数多く存在している現実が明らかになった。
  • 医療的に入院の必要がないにもかかわらず、本人の選択の余地のない精神病院等への長期入院(いわゆる社会的入院)は、自己決定権を侵し、社会的関係を断絶することになり重大な人権侵害である。
  • 1983(昭和58)年の厚生省の精神衛生実態調査において、長期入院中の患者で地域において生活を支える施策があれば退院可能な入院患者(社会的入院)の割合が約20%であると推定されており、大阪の精神病院入院患者数(1997〔平成9〕年6月30日現在、厚生省精神保健福祉関係資料)は約2万人であり、少なく見積もっても、その20%約4000人が社会的入院と推定され、地域での生活の場の確保が急務である。

  • 施設を生活の場として積極的に位置づけ、福祉サ-ビスのユ-ザ-である本人の自己決定権を尊重し、一人ひとりのニ-ズに合った多様なサ-ビスの選択肢用意し、生活の質(QOL)を高めていくための積極的な自立支援を進めていく必要がある。社会復帰施設等の整備、少人数で互いに支えあいながら生活するグル-プホ-ム、ホ-ムヘルプサ-ビス等の社会的介護サ-ビスを組み込んだ支援などを進め、地域全体、社会全体で本人や家族を支援していく体制を急に整備していくことが必要である。
  • 施設コンフリクトは、その発生率は10%前後と比率としては少ないが、「コンフリクトとして表面化したのは一部」「施設開設条件として公民館等の公共施設整備を受け入れるなど、コンフリクトを表面化させない構造がある」などの指摘もなされている。
    コンフリクトの存在は、障害者の主体的な生活の場を奪い、自立への不安とあきらめを助長する要因ともなり、たとえ1カ所であっても人権侵害に直結する問題であるとの認識を持つべきである。

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