平成24年度 教育コミュニティづくり実践交流会
平成24年度 教育コミュニティづくり実践交流会を実施いたしました。
ポイント
- コーディネーターによる「学校・家庭・地域の絆をはぐくむ私の『つながり』づくり」をテーマとした基調講演
- 各地域・府立支援学校からの実践報告
- 「学校・家庭・地域の絆をはぐくむこれからのネットワークづくりを考える」をテーマとしたパネルディスカッション
- 摂津市立三宅柳田小学校「三宅柳田アルファ共室〈ダンス甲子園〉」の子どもたちによる華やかなダンスパフォーマンス
- 地域の方々による特色ある取組み「匠の技」の実演
1.日時・会場等
平成25年2月23日(土曜日) 13時15分から16時30分 於 ドーンセンター 7階 ホール 287名参加
実演ブースは、12時30分から13時15分と休憩時間(14時20分から14時40分)に実施
2.実践交流会の様子
基調講演
テーマ 「学校・家庭・地域の絆をはぐくむ私の『つながり』づくり」
講師 田尻町立中学校区 地域コーディネーター
明貝 一平 さん
明貝 さんの基調講演
- 気にかけている「3つのかけ」、「仕掛け」「きっかけ」「声掛け」を今日、いち押しでご紹介をします。
- この「3つのかけ」を大切に、いろいろな団体の方に活動に参加してもらえるようつないでいます。
- たとえばすこやかネットの小学校の学校開放で、はじめ子どもたちは自由遊びで卓球をしていました。そこで、卓球連盟の人に「子どもたちに教えに来て」と言ったら、子どもたちは卓球連盟の人のいうことを聞かず、失敗しました。そこで、「一緒に対戦してあげて」「一緒に遊んであげて」と声をかけると、気軽な気持ちで相手をしてくださるようになりうまくいき、今では町民卓球大会に発展しています。
- 子ども110番ウォークラリーでは、こども110番の協力家庭300軒全てその日に回ります。お家の「ピンポン」を鳴らして、お家の人と直接会うことで知り合いになり、子どもが駆け込みやすくなります。家の人も、「ああ、うちはこんな役割をしないといけないのか」と気づいてもらえます。その上、青少年指導員さんが子どもたちと一緒に回り、顔見知りになるので、パトロールで注意しても子どもたちがよく聞いてくれます。
- 通学合宿では、子どもたちが「もらい湯」をすることによって、日頃から家に子どもがいない地域の方も子どもたちを気に掛けてくださるようになります。
- いろんな事でつなぐことができるような仕掛けが非常に良いと思います。
講師 河内長野市立美加の台中学校区 学校支援コーディネーター
大谷 裕美子 さん
大谷 さんの基調講演
- 学校は、地域の人をひきつける磁石のような力を持っていて、子どもが地域の大人をつないでくれて、そして元気と笑顔をくれます。
- 大人がつながりを作っていく上で必要なものが居場所です。
- ボランティア活動が尊重され、役立っていることを自分自身が実感できる、そして本当にやってみたいな、また頑張ろうと思ってもらえる、やりがいを感じてもらえる基盤づくりをコーディネーターは意識しています。
- 連携をはぐくみ強化していく土台として大切なことは、思いの共有・行動の共有・情報の共有です。
- ひと手間かけることが、信頼関係を築いたり、円滑な活動の促進につながっていきます。
- コーディネーターは仕掛け人で、知らせ、繋ぎ、受け止め、育て、そして出会いの場を提供します。
- 学校支援は、学校からの依頼をただ単に受けるだけではなく、地域の自分たちからも発信できるものとし、活動を自分のなかで楽しめるものとする方がいいと思って取り組んでいます。
- 子どもたちや先生たちに、ボランティアさんの名前と顔とそして活動内容を知っていただく工夫として、クイズを作るという工夫もしました。
- コーディネーターは、とっつきやすくて、ちょっとおせっかいが好きで、「ちょっとこれ無理です」とボランティアさんが言いやすい、断られ上手がちょうどいいのかなと思います。
- 笑顔や挨拶を大切にしながら行動力を発揮し、次の方へバトンを渡すのではなく、バトンをつないでいけたらいいなと思っています。
実践報告(電子ポスターセッション)1
コーディネーター 大阪教育大学 新崎 国広 准教授
テーマ 「『ふれあいのつどい』から広がる学校と地域のつながり」
報告者 豊能町立吉川中学校区 学校支援地域本部 地域コーディネーター
米田 暁美 さん
- 「ふれあいのつどい」では、教育分野や福祉分野の方々が多様なブースを出展し、参加者もスタッフも様々な立場の方々と交流できる意義深いつどいとなっています。
- 子どもたちが店の手伝いや催し物の司会・募金の呼びかけや生徒会ブースなどで自主的に活躍する場面もあります。
- 「放課後まなび舎」という学習支援の取組みは、曜日を決めて自学自習の時間として設定しており、特に定期テスト前には集中的に行っています。卒業生の大学生や、学校の関係者も来られていて、多くの方々の協働により、子どもたちのいい時間になっています。
- 福祉のボランティアをされている方々の協力により、アイマスク体験など中学生の福祉体験の授業を支援しています。
- 子どもたちが地元で大きくなって、故郷というものを思い出す時に、地域の方々の姿も一緒に思い出すような、そして自分に続く後輩を優しく見守れるような、そんな活動のお手伝いをしたいと思っています。
テーマ 「夕陽丘の笑顔支える夕陽丘の応援団」
報告者 大阪市立夕陽丘中学校 校長
竹島 園枝 さん
- 事業を受ける前から、地域の多様な団体からの支援がありました。これらの団体をつないで、2年前から学校元気アップ地域本部事業に取り組んでいます。
- 学校のニーズについては、教職員に地域コーディネーターも加わって整理し、地域に発信していきました。
- 校内大清掃では、清掃関連の企業ともつながりました。「元気アップ通信」で地域に大清掃のことを発信するとともに、子どもたち自身も掃除の目的を話し合いました。当日は、企業の方や、約30名くらいの地域の方々が来校されました。子どもたちの各班に1人ずつくらい入っていただいて、丁寧に清掃に取り組みました。最後には、学校元気アップ地域本部からも企業からも賞をいただきました。
- 「夕陽丘子どもカルチャー教室」の活動では、生け花、能楽、和太鼓、茶道等に取り組みました。
テーマ 「堺・地域コミュニティ学校の取組み」 ―地域とのかかわりのなかで学ぶ―
報告者 堺市立金岡小学校 コーディネーター
大江 正浩 さん
- 金岡小学校では、1年生から6年生まで、地域が関わって学習支援を行っています。
- 6年生では、校区の「ボランティア金岡」のメンバーの支援によって、全員が福祉とボランティアについて学習をします。30人前後のグループに分かれて高齢者施設や幼稚園などを訪問して交流します。幼児の母親たちが懇談・情報交換をしている間、子どもたちが幼児の相手をするという体験学習もしています。
- 5年生は地域農家の有志とボランティアの方々の協力を得て、毎年田植えから稲刈りまで経験しています。農家のご苦労だけではなく、植物の成長、土や昆虫などを肌で感じることによって豊かな情操が育まれることが期待されます。一昨年には、地域の方々と一緒に育てた米を東北の被災地に持参しました。
実演ブース
茨木市 天王小学校区 放課後子ども教室
かんたん工作
門真市 子ども科学教室
みえかたのふしぎ
摂津市 三宅柳田小学校 「三宅柳田アルファ共室<三宅柳田家の科学室>」
古代の火おこし術・紙コップは重みに耐えられるか他
河内長野市 千代田中学校区 楽習室
液体窒素を用いた超低温の世界
パフォーマンス
摂津市立三宅柳田小学校「三宅柳田アルファ共室<ダンス甲子園>」の皆さん
「GOOD TIMES」「POISON」「Mr.Saxobeat」の3曲のダンスが披露されました。
2曲めからは、「三宅柳田アルファ共室<ダンス甲子園>」を卒業した先輩たちが作ったダンスクラブ「PURE DANCE BOX」の皆さんも加わりました。
実践報告(電子ポスターセッション)2
テーマ 「キッズランドがとりもつ『絆』」
報告者 池田市立石橋小学校区 石橋キッズランド
代表者 中村 彰男 さん、安全管理員 村田 美代子 さん、松本 昌也 さん
- 支援の必要な児童の参加に際して、当初、私たちに発達障がい等の知識が全くなく、もめごとなど多様な問題に直面しました。そして、「安全管理員を辞めたい」という声が聞かれる中、皆で話し合ってみたところ、悩みが共有できて「もう少し続けてみよう」ということになり、その後、私たちは研修を受けるなどしました。今ももめごとは起きていますが、しばらく様子を見て、これ以上は危険と判断したら間に入っています。支援の必要な児童には特別なことをしているわけではなく、そのほかの子どもも同じように傍らでさりげなく見守っています。学校とは、活動を始めるにあたって激論もしましたが、その結果、今では信頼関係が築けています。
- 保護者とは、はじめは距離がありましたが、現在は互いの助け合いが芽生えて、楽しく活動をしています。和やかな雰囲気となったポイントは、子どもたちに慕われることを通じて保護者に理解されたこと、大きなイベントの大変さを多くの方々が知ってくださり、「絆」が深まったこと、安全管理員や保護者の見守り隊が協力し、相互に時間調整して子どもたちの安全確保をしていることなどです。
テーマ 「乳幼児との交流から学ぶ、中学生への親学習」
報告者 岸和田市親学習リーダー会「はっぴねす」 委員長
木村 尚美 さん
- 親学習リーダーのメンバーの子どもが土生中学校に通っていることをきっかけに、毎月中学校に行けることとなり、中学生や先生ともつながり、授業時間に「たまごのワーク」をさせていただくこともできました。一方で、幼児サークルの親子が来て中学生と触れ合う取組みも行っていたことから、「親学習」や親学習リーダーが支援する「乳幼児と中学生の交流授業」が実現し、定着するようになってきました。
- 「乳幼児と中学生の交流授業」を行うことで、中学生は、自分が親になった時のことを考えられ、乳幼児は大きなお姉さん・お兄さんに関わってもらう経験ができ、保護者の方々は、「自分の子どもが中学生になったらこんな感じになるのだなぁ」と実感でき、先生方は、「地域の方々から良い支援を得られた」と感じられています。私たちも、活動の場が広がってありがたく思っています。
- 岸和田市の生涯学習課では、親学習リーダーの派遣、市広報などでの周知、受付、費用の負担、場所の貸出、各団体との連絡、会議や講座への立ち会いなどをしてくださいます。このように教育委員会と協働しているためにこれまでの活動ができたのだと思います。
テーマ 「学校支援ボランティアについて」
報告者 大阪府立東大阪支援学校 教頭
田村 嘉宏 さん
- 田植えは、学年のニーズを受けたもので、田んぼを借りるための仲介、米作りの指導、水の管理、除草、施肥など、地元の方とコーディネーターのお世話になっています。生徒による田植え、稲刈りの後は、脱穀、精米などをコーディネーターやボランティアの方にお願いしています。
- 読み聞かせについては、ボランティア募集の掲示を見て応募された地域の方と環境整備ボランティアの方々を中心にサ-クルを結成し、毎月第3木曜日昼休みに大型絵本を使って活動されています。
- ボランティアの指導によるジャグリング、お茶会などの経験もできます。学校とボランティアをつなぐことで子どもたちが豊かな体験をしています。また、近隣大学の学生が社会見学の付添いボランティアに来てくださっています。
- 環境整備については、芝生広場の手入れや花壇の整備などを支援していただいています。
- 広報活動については、自治会や近隣スーパーによるボランティア募集のポスターを掲示をはじめ、市政だより、一般新聞、市社会福祉協議会への情報提供もしています。最近では学校ホームページの役割が大きくなっています。
パネルディスカッション
テーマ 「学校・家庭・地域の絆をはぐくむこれからのネットワークづくりを考える」
コーディネーター 大阪教育大学 新崎 国広 准教授
パネルディスカッションでは、実践報告いただいた各市町・学校から各1名ずつご登壇いただき、次の2点について意見交流をしていただきました。
- 「つながり」をつくっていくために、コーディネーターとして、あるいは学校長や教頭としてどのように活動しているか
- 「つながり」をつくっていく際に、何を大切にして取り組んでいるか
基調講演・実践報告・パネルディスカッションを受けての 大阪教育大学 新崎 准教授からのコメント
- 学校側の「こんな生徒に育てたい」という生徒像を明らかにし、それをもとに「こんな支援が必要です」「こんなことで困っています」というニーズを抽出して積極的に発信し、地域から本当に必要な力を貸していただくという「助けられ上手」になれるといいですね。地域の役に立てるという、中学生のいいところを発信するとともに、地域からの支援に対して感謝している生徒の気持ちを広報していくことも大切ですね。
- 学校と地域が前向きなつながりを築いていくためには、管理職が「学校を地域に開く」という明確なミッションをもっていることが特に重要です。
- 複数の報告で福祉分野の方々との連携に触れていましたが、やはり福祉のボランティアの方々も何か役に立ちたいという思いを強く持っていますので、ぜひ、連携・協働について考えてみてください。
- つながりづくりについて、コーディネーターやボランティア同士のつながりと、学校とのつながりの両面から考えている報告がありました。障がいのある子どもたちのトラブルなどに悩んだ際に、コーディネーター・ボランティアが皆で話し合い、悩みを共有することによって乗り越えられたという内容は、とても示唆に富んでいます。学校とのつながりでは、激論を乗り越えて信頼関係を築かれたということも参考になります。
- 乳幼児と中学生、保護者の交流授業の取組みは、まさに『ナナメの関係づくり』の実践ですね。生徒にとっては、ふだんの友だち関係とは違って、小さい子どもたちから慕われる喜び、自分たちが愛情を注げば返してくれる喜びがあり、乳幼児にとっては、お兄ちゃん・お姉ちゃんと接することができる喜びがあります。そして保護者にとっては、多くの方が「子育て不安」「子育て負担」を感じている中、地域の中で親学習の取組みとして中学生と関わることによって、我が子への愛情を再確認し深めていけるというよさがあります。
- 支援学校の取組みでは、地域との交流をうまく取り入れられていると感じました。障がいのある子どもたちにとっては、いろいろな人間関係が広がるというメリットがあります。地域の方々にとっては、田植えなどの交流をすることにより、障がいのある子どもたちも自分たちと同じ存在なんだと実感でき、「障がい者理解」がすすむという素晴らしい点があります。子どもたちの生活や喜びを地域に情報発信されていること、地域からの支援が子どもたちのために有効であることを教職員間で情報共有されていること、どちらも大切ですね。
3.参加された皆さんの感想から
実践報告・パネルディスカッションについて
- 田尻町の明貝さんの講演がとても参考になりました。「気に掛けている3つのカケ」について、もっと詳しくお話を聞きたいと思いました。パネルディスカッションについては、新崎先生の言葉にいつも温かく心がこもっていて気持ちいいです。報告者さんのチラホラ本音も聞けてよかったです。
- 非常に参考になりました。地域の一員として、子どもたちがすこやかに成長する手助けになればとボランティアを続けます。特に、地域のボランティアの人たちを写真で紹介して、子どもたちが知っているかどうかをたずねるクイズの取組みは参考になりました。
- 「すこやかネット」と「福祉まつり」との合同の取組み、大きなエネルギーが必要だったのだと感じ入りました。また、発達障がいのある子どもとの関わりあいは、当たりさわりのない関係から一歩、二歩とふみこんでの取組みで、「行動」あるのみの姿勢には敬服を申し上げます。
- 学校と地域がつながる取組みの実践報告を聞き、学校のニーズに合わせた支援を学校の先生に聞いてみることも大切で、先生方に地域の方々に何をしてもらいたいかを考える機会を作ってみたいと思いました。地域の力を学校に!!
- 学校のニーズ、教職員のニーズ、地域のニーズをとらえて、それをつなげるコーディネーターの役割の重要性の再認識ができました。それぞれの情報発信の大切さもよくわかりました。コーディネーターが1人で仕事をするのでなく、チームとして機能していくことがキーポイントになっていることがわかりました。
- 新崎先生は、とても「切れ」のよいコーディネーターだと感心しました。皆さんの意見について、あれだけコンパクトに「芯」をはずさないコメントはすごいと思いました。
実演ブース・パフォーマンスについて
- ホール前のホワイエでの実演や展示等は、いいアイディアで良いと思いました。
- 実験がよかったです。
- 匠の技は非常に参考になりました。自分の地域でもやっていきたいと思います。
- 今日は本当に来させていただいて良かったです。ホールでの展示が特に良かったです。いっぱいお写真を撮らせていただきましたので、今後の参考にさせていただきます。展示の皆様、発言者の皆様、係の皆様、ありがとうございました。
- 摂津市の子ども達のパフォーマンス、ダンス甲子園は大変良かったです。
- 放課後の子どもたちの居場所づくりに参加していますので、今回の交流会は大変参考になりました。クラフト等もだんだんネタがなくなってきている中、新しい物も見せていただきましたので、早速実践できると思います。
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