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専門家のコラム(8月12日配信)
新型コロナウイルス感染症の重症者の現状と治療
地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所理事長 朝野 和典 氏
重症者の現状
新型コロナウイルスの感染者が急増しています。亡くなる人のほとんどは高齢者です。これは新型コロナウイルスに限らず、肺炎になった場合、亡くなる人の97%は65歳以上の高齢者ですので、新型コロナウイルス感染症が特別というわけではありません。
重症化する人も高齢者の方が多いのですが、ワクチンの接種が進んできて、高齢者の感染者が減ってきて、最近は、50代、40代の人の重症者が増えてきています。下の図は各月ごとの年齢別重症者数ですが、7月と8月は50代の重症者が最も多くなっています。
重症者の治療
それでは、重症になったらどうなるのか、ということをお話します。重症になるということは、肺炎がひどくなることがほとんどです。肺は酸素を取り入れる臓器です。例えば水の中で息をこらえると苦しくなります。それと同じことが肺炎になると起こるのです。空気中の酸素を吸っても、息を止めているような苦しさを感じます。その場合、空気よりも濃い濃度の酸素(空気中の酸素濃度は21%)を吸ってもらいます。それでも酸素が足りないときには口から管を入れてもっと高濃度(~100%)の酸素を機械で肺に入れます。これが人工呼吸器の働きです。このとき、のどに管が入っているので話すことはできませんし、起きていると苦しいので多くの場合麻酔で寝てもらいます。肺からの高濃度の酸素の取入れだけでは十分でないときには、ECMO(エクモ)という機械で、体の外に取り出した血液に直接酸素を入れるようにします。それでもよくならずに、目を覚ますことなくそのまま亡くなられることもあります。
また、人工呼吸器による治療はとても体に負担がかかりますし、他の細菌による肺炎や敗血症という感染症を起こしやすくなります。そのため、人工呼吸器による治療ができないこともあり、特にご高齢の方では、酸素の投与までしかできないこともあります。大阪府では、人工呼吸器などの治療を受けられる方よりも、そのような治療を受けられずに亡くなる人の数が3倍に上ります。
あなたへのお願い
もしかしたら、あなたの感染がうつっていって、知らない誰かが亡くなっているかもしれません。その知らない誰かは、その人の家族や友人にとってはかけがえのない人なのです。そのことを一度想像してみてください。「感染しない、感染させない」というのは、あなたのためでもあり、あなたの知らない大切な誰かのためでもあるのです。
本コラム内の各関連情報
- 新型コロナウイルス感染症に関する感染予防対策等に関する情報は「新型コロナウイルス感染症・その他の感染症について」のページ
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