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大阪府内のPM2.5測定結果の考察
大阪府の微小粒子状物質(PM2.5)測定結果のまとめや考察などを順次掲載します。
(新しい順に掲載し、古いものほど下に掲載します。)
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- 新型コロナウイルス感染症による大阪府の大気環境への影響(令和2年(2020年)12月掲載)
- 高濃度時期・低濃度時期のPM2.5濃度の比較(平成30年(2018年)3月掲載)
- 平成23年度(2011年度)からのPM2.5測定結果の考察(平成26年(2014年)2月掲載)
新型コロナウイルス感染症による大阪府の大気環境への影響
背景
2019年12月から中国を発端として新型コロナウイルス感染症(以下「コロナ」)が流行しました。
中国の主要都市では、2020年1月23日から4月7日まで都市封鎖(中国ロックダウン)がありました。
国内では政府が4月7日から5月25日まで緊急事態宣言を発令し、大阪府は4月14日から5月31日まで自粛・休業要請(国内自粛期間)を発表しました。
これらを踏まえコロナの影響が、大阪府の大気環境にどのような影響があったのかを調査しました。
調査の方法
調査の期間はコロナの影響を把握するため、PM2.5と二酸化窒素(NO2)の月別日平均値について、2020年1月から6月(※)と過去3年平均(2017年から2019年の1月から6月)を比較しました。
併せて、それぞれの期間における減少率についても比較しました。
なお、値は大阪府の大気情報ページ(外部サイトへリンク)にあるデータベースを利用しています。
調査結果
PM2.5について
PM2.5の2020年の1月から5月の月別日平均値は、過去3年平均に比べ低い値でした。6月は過去3年平均と同程度になりました。
減少率は1月から5月にかけて上昇しました。6月になると0に近くなりました。
NO2について
NO2の2020年の1月から6月の月別日平均値は、過去3年平均の月別日平均値に比べ低い値でした。
減少率は4月から5月にかけて上昇しました。6月になると低下しました。
考察
2020年1月から5月にかけて府内の大気環境は改善しました。理由として以下のことが考えられます。
- 1月から4月は中国の社会経済活動の縮小(中国ロックダウン)に伴い、季節風によって日本に移流する大気汚染物質の減少
- 5月はコロナの影響による府内の社会経済活動の縮小
なお、6月にはPM2.5及びNO2はともに過去3年平均に近い値になりました。これは国内自粛期間が終了し社会経済活動が再開し始めたことが影響したと考えられます。
高濃度時期・低濃度時期のPM2.5濃度の比較
(平成30年(2018年)3月掲載)
11月から5月にかけては、PM2.5濃度が高濃度になりやすい時期です。比較的高い時期(3月)と、低い時期(9月)の濃度について比較しました。
どちらのグラフも各地域でそれほど差は無く、同じように変化しています。
赤い点線は日平均値の環境基準値(35μg/立方メートル)を表しており、高濃度時期(11月から5月)はそれを超える日もあります。
大阪府では国の暫定指針値(日平均値70μg/立方メートル)を超えることが予測されると判断した場合に注意喚起を行っています。
なお、注意喚起時の行動の目安は次のとおりです。
- 屋外での長時間の激しい運動や外出をできるだけ減らす。
- 換気や窓の開閉を必要最小限にするなど、外気の屋内への侵入をできるだけ少なくする。
- 呼吸器系や循環器系疾患のある方、小児、高齢の方は体調に応じて、より慎重に行動する。
(大阪府の大気情報のページ(外部サイトへリンク)で現在のPM2.5濃度が確認できます。1時間値が環境基準値(35μg/立方メートル)を超えた場合、赤色で表示しています)
平成23年度(2011年度)からのPM2.5測定結果の考察
(平成26年(2014年)2月掲載)
大阪府域においてPM2.5の常時監視を本格的に開始した2011(平成23)年度以降の測定結果を中心に、季節変動などの基本的な解析をおこないました。
(1)PM2.5の経月変化及び他項目との比較
図1は、大阪府域におけるPM2.5等大気汚染物質の月平均濃度の推移です。
図1 PM2.5等の月平均濃度の推移
※集計は、各項目とも有効測定局の月平均濃度の全局平均値。但し、2013年度は年度途中のため全局集計とし、年度途中廃止局を含めた。
(PM2.5の集計対象局は2011年度10局、12年度36局、13年度45局(各年度、非認定機種3局を含む)。)
それによると、
- PM2.5濃度は、概ね3から5月にピークが見られ、次いで10から11月に高く、夏季に比較的低くなっています。
しかし2013年の7から8月(速報値)は過去2年に比べ高い濃度となりました。 - PM2.5濃度は浮遊粒子状物質(SPM)濃度と近い傾向で推移していました。
※PM2.5とSPMは共に大気中に浮遊する粒子状物質であり、粒径2.5μm(マイクロメートル)以下の粒子をPM2.5、粒径10μm以下の粒子をSPMといいます。 - PM2.5の発生要因としては、地域汚染に加えて、黄砂などの広域移流、光化学反応による二次生成などが知られていますが、図1のPM2.5濃度の季節変動は、他の大気汚染物質と同様に大気が安定な状態が多い秋から春に濃度が上昇することに加えて、黄砂などの広域移流や、夏季の大気が安定した条件における強い光化学反応の影響が複合したものと考えられます。
(2)PM2.5の経日変化
図2は、上記の経月変化の傾向が近いPM2.5とSPMの2項目について、PM2.5の月平均濃度が最も高かった2013年(平成25年)3月の経日変化を示したものです。
また、SPMに占めるPM2.5の割合(以下、「PM2.5/SPM比」とする)を示しています。
図2 PM2.5とSPMの日平均濃度の推移(2013年3月)
※集計は、各項目とも日平均濃度の全局平均値。
(集計対象局は2013年3月を含む年度(2012年度)内に測定したPM2.5測定局全局(41局)(それらの局全てでSPMも測定)。)
それによると、
- 2013年3月においては、黄砂または煙霧(視程は悪いが、霧やもやではない天気。視程10km未満かつ湿度75%未満のとき。)が多く観測され、それらの日はPM2.5、SPMとも日平均値が比較的高濃度でした。
- 3月1日と21日に濃度が大きく低下しましたが、11日は前日に4.0mm、21日は前日に12.5mmの降雨がありました。一方、18日には36.5mmの降雨がありましたが、19から20日は黄砂が観測され濃度は低下しませんでした。
- 黄砂観測日をはじめ、比較的高濃度の日にはPM2.5/SPM比が低い傾向にありました。
(3)PM2.5の経時変化
※環境省によって、PM2.5の1時間値は参考値(環境基準の評価にそのまま使うことはできない値)と位置付けられています。
(大気汚染物質の環境基準の評価を行う場合は、その測定値が標準測定法で測定した値と等価(同じ)であることが示されなければいけませんが、
PM2.5の自動測定機は、等価性評価が日平均値で行なわれ、時間値については行なわれていないためです。)
しかし、PM2.5への社会的関心が高まるなか、環境省の「注意喚起のための暫定的な指針」の運用や、発生源対策に資するデータ解析など、1時間値の活用の必要性が高まっています。
そこで、今回は経時変化についても考察を行いました。
図3は、PM2.5とSPMの2012年度の経時変化を示しています。
図3 PM2.5とSPMの時間平均濃度の推移(2012年度)
※集計は、各項目とも、各時間の測定データの年間平均値
(集計対象局は2012年度内に測定したPM2.5測定局全局(41局)(それらの局全てでSPMも測定)。)
それによると、
- PM2.5は昼間にピークが存在するが、SPMは朝と夕に緩やかな濃度上昇が見られ、経時変化は異なる傾向を示しました。
PM2.5の経時変化については測定機種間での測定精度の差が報告されており、大阪府としては今後も調査を進めたいと考えています。
なお、日平均濃度においては測定機種間での差異は見られていません。