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中部スマート農業取組概要(令和2年度)
中部農と緑の総合事務所 令和2年度 スマート農業の取組概要について
大阪府は、ぶどう栽培全国第8位、デラウェアでは第3位の収穫量を誇り、その中で柏原市は府内2位の栽培面積をもつ有数のぶどう産地。「柏原ぶどう」として親しまれています。
品種については、80%がデラウェアですが、最近ではピオーネ、シャインマスカット等の大粒系品が増えています。
今回の「スマート農業技術の開発・普及」という取組みについては3つの背景があります。1つ目は「温暖化による果実品質の低下」です。気温が上がるとぶどうの着色に影響があります。
波状型ハウスの例です。天井のビニール被覆とぶどうの枝がある棚面までは50cm程度しかなく、熱がこもりやすいことが写真からもご覧いただけると思います。
2つ目は高収益品種の導入です。柏原市の概況として、経営面積が1haを超え、家族労力で栽培管理を行うため、デラウェア8割、大粒系品種2割の品種構成となっており、8割のデラウェアについても作型を加温、無加温、雨よけ、露地と細かく分けることで労力分散し家族経営が成り立っています。大粒品種については面積あたりの収益性は高いものの、摘粒(粒まびき)など、一時期に作業が集中するため、大粒の構成比率を増やすためには労力的な余地が少ない状態です。
高齢化の進展により、作れなくなってきている園が増えつつあります。専業農家は労力不足で受け入れる余地がありません。1年放棄するとぶどうの樹が弱って、そのまま遊休化してしまいます。
デラウェア栽培管理作業時間の削減による省力化と大粒品種割合の増大とぶどうそのものの品質を向上することによる品質・収量の向上でぶどう農家の収益を向上することを目指しています。
これまでの取組は、新たな換気方法(自動開閉装置)の技術確立と、大阪版認定農業者支援事業等を通じた技術導入・普及です。
令和2年度については、自動換気装置等のさらなる導入促進と同時に、スマート農業技術の実証を行うために「スマート農業加速化実証プロジェクト」に応募し、事業を実施しているところです。
「スマート農業加速化実証プロジェクト」については令和2年度、3年度の2か年で課題名「スマート農業技術によるデラウェア栽培の省力化・高品質化と大粒ブドウ品種導入拡大」で実施しているところです。
この事業では次のようなスマート技術を実証することになっています。
自動換気装置及び温度遠隔監視システムについては大阪版認定農業者支援事業に加えて、今年度はコロナ対策として新設された経営継続補助金なども活用して導入を進めています。
ドローンを用いて上空からブドウ園を撮影し、生育状況を画像で示しています。
大阪のぶどう栽培はビニールハウスでの栽培もあり、夏でも被覆されているため、上からドローンで撮影することができません。
そこで、ドローンに代えて地上を走行するローバー機を用意し、下から見上げるように撮影を行う手法を開発・実証しています。
画面のようなカメラと照明がついたラジコン車両のような形のものを使用しました。
地上からの生育調査については太陽光線の影響を避けるため、夜間に実施します。地上を走るローバー機から光を照射しながら一定速度で画像を撮影し、写真を合成して園全体のマップを作って、その画像から葉色の異常などを発見する技術です。葉色の異常に応じて施肥などを行い、収量や品質向上につなげます。
生育診断結果に基づき、ドローンで必要箇所に肥料散布が可能かどうかを実証しました。葉のない状態で散布したところ、園の状況により、均一な散布が難しいことが分かりました。令和3年度は葉のある状況での試験を実施します。
労力負担軽減試験についてはコロナの影響で、スマート機器の納品が遅れ、令和2年度については試験実施となりました。来年度本格的に実証を行います。
令和2度の成果としては、自動開閉装置、温度遠隔監視システムともに目標を上回って導入が進んでいます。
スマート農業技術の実証については、令和3年度を中心に実施する予定です。
今後の課題ですが、(1)新たな換気方法の普及、(2)自動開閉装置の導入に伴う温度遠隔監視システムの導入については、農家も省力効果を実感しており、今後とも市・JAと連携して導入を図ります。
(3)省力化機器の導入検討は引き続き行っていきます。
省力化や収益の増大を実現できるスマート農業技術を見極め、ぶどう産地の活性化を図っていきたいと思います。