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大阪府「豊かな大阪湾」環境改善モデル事業 モニタリング実施状況
「豊かな大阪湾」の創出に向けては、湾奥部における栄養塩類の滞留による貧酸素水塊の発生や、生物の生息に適した場が少ないなどの課題や、プラスチックごみの流入等の新たに顕在化している環境事象の調査技術が確立されていないといった課題があります。
大阪府では、これらの課題を解決することを目的に、「大阪府環境保全基金」を活用し、環境改善モデル設備等(※)を試験的に設置する「『豊かな大阪湾』環境改善モデル事業」を民間事業者等への補助事業として実施しています。
※環境改善モデル設備等とは、大阪湾の湾奥部において水質の改善や生物の生息に適した場の創出に寄与する環境改善モデル設備又はプラスチックごみの流入等の新たに顕在化している環境事象を把握する調査技術等のことです。
設置・運用している設備等は、その効果を検証しており、以下の効果が確認されました。
実施事業一覧
アルガーベイARW-C(reef)型による藻場造成、生物生息空間の創出及び環境改善効果実証実験
事業概要
緩傾斜護岸にアルガーベイARW-C(reef)型のブロックを設置し、藻場造成、生物生息空間の創出を行う。
人工藻場・生物共生型構造物
アルガーベイ(ARW-C(Reef)型)
アルガーベイ イメージ図
事業者
広和株式会社
環境改善モデル設備等の種類
- 人工藻場
- 環境配慮・生物共生型構造物
設置年月
令和元年11月
設置場所
浜寺水路(大阪府堺市)
モニタリング実施状況
令和2年4月時点(設置後5か月)
- 設備の設置に伴い、アオサやアオノリといった有用海藻が設備に着生し、メバルやイシガニといった水産生物の蝟集が確認された。
アオサ属の繁茂
メバル属の幼魚
イシガニ
令和2年9月時点(設置後10か月)
- 基質周辺ではシマイサキ(幼魚)の群れが確認され、基質には魚類の餌となる多毛類(ゴカイ)等が棲みついていることが確認され、設備の設置により生物が集まりやすくなっていると考えられる。
- 同年4月、藻場造成のためにアカモクのスポアバックを取り付けていたが、生長は確認されなかった。
シマイサキ(幼魚の群れ)
マハゼ
令和3年8月時点(設置後1年9か月)
- アカモクの着生は見られず、貧酸素水塊及び硫化物の発生が原因と考えられる。
- クロダイが確認され、幼稚魚は基質表面で採餌するような行動が見られた。
- 巻貝類、二枚貝類、多毛類の付着が確認され、クロダイの増殖及び育成効果の一端をになっていると考えられる。
- 基質の設置による溶存酸素量(DO)、全窒素(T-N)、全りん(T-P)の含有量に変化は確認されなかった。
クロダイ
採餌の様子
令和4年1月時点(設置後2年4か月)
基質における藻類の着生状況では、アオサ属、イギス目等を確認した。
冬から春にかけて生育するワカメ及びマコンブの種苗ロープを設置し、人工藻場の造成試験を行った。
アオサ属の着生
イギス目の着生
令和4年4月時点(設置後2年7か月)
基質における藻類の着生状況では、令和4年1月に種苗ロープを設置した基質にマコンブの着生を確認した。
基質に着生したその他の藻類として、アオサ属、アオノリ属等を確認した。
付着生物の生息状況では、ホヤ網、ヒドロ虫網等を確認した。
マコンブの着生
アオサ属の着生
シロボヤの付着
ヒドロ虫網の付着
令和5年1月時点(設置後3年2か月)
令和4年4月に確認したマコンブは確認されず、2年目藻体に生長しなかったため、基質に新たにマコンブの種糸を設置した。
基質に着生した藻類として、アオサ属、アオノリ属、シオグサ属、ハネモ科、イギス目を確認した。
付着生物の生息状況では、二枚貝綱、多毛綱、顎脚鋼、ホヤ綱等を確認した。
溶存酸素量(DO)、光量子、濁度等を調査したところ、海面から海底まで安定していた。
アオノリ属の着生
イギス目の着生
イガイ科の付着
カンザシゴカイ科の付着
令和5年3月時点(設置後3年4か月)
令和5年1月に種糸を設置した基質に、マコンブを約1,300株、湿重量約900g確認した。
種糸を設置しなかった基質は、アオノリ属が着生被度50%で優占し、その他にアオサ属、シオグサ属、イギス科、藍藻類を確認した。
付着生物の生息状況では、ゴカイ科等の多毛網、ヒドロ虫綱、花虫綱、腹足綱、二枚貝綱、ホヤ綱を確認した。
本モデル事業の最終年度に伴い、浜寺水路での設置を終了し、撤去した。
基質の様子
アオノリ属の着生
マコンブの着生
ゴカイ科の付着
モニタリング調査結果一覧
貝殻ブロック及び貝殻基質ユニットを用いた生物生息空間の創出事業
事業概要
階段護岸に貝殻を利用した構造物を設置し、生物生息空間の創出を行う。
小型貝殻ブロック
貝殻基質ユニット
実施事業者
海洋建設株式会社
環境改善モデル設備等の種類
環境配慮・生物共生型構造物
設置年月
令和元年11月
設置場所
泉大津旧港(大阪府泉大津市)
モニタリング実施状況
令和2年6月時点(設置後7か月)
- メバルやウミタナゴの幼魚の群れ、マダコなどが確認された。
メバル(幼魚)
ウミタナゴ
令和2年9月時点(設置後10か月)
- クロダイ、ボラ、メバル幼魚が確認された。
- 設備に出現が確認できたゴカイ類や貝類などの小型生物はクロダイ、ボラ、メバルなどの餌となるため、本施設は魚類の集魚機能のみならず、餌場機能が発揮されていることが考えられる。
クロダイ
ボラ
メバル(幼魚)
令和3年6月(設置後1年7か月)
- メバルやウミタナゴ(幼魚)の群れ、クロダイなどが確認でき、設備だけでなく、周辺にも魚類の分布が確認された。
- 設備にはナマコ類、アサリ稚貝が出現し、抱卵している小型のオオギガニ科が確認された。
- 設備は、魚介類の集魚機能に加え、餌場機能が発揮されており、食物連鎖による系外除去(物質循環機能)にも資すると考えられる。
アサリ
カニ類
ウミタナゴ
令和4年7月時点(設置後2年8か月)
設備の周辺でメバル、ウミタナゴ、イシダイ、カワハギ、タケノコメバル、クジメ等を確認した。
付着生物の生息状況では、マナマコ、イシガニ、アサリ等が確認された。
潜水観察では、ウミタナゴ、イシダイ等が着生生物をついばみ、メバルの幼魚が設備に隠れる様子が確認されたため、魚の餌場や隠れ場としての機能が発揮されていると考えられる。
本モデル事業の最終年度に伴い、泉大津旧港での設置を終了し、撤去した。
イシダイ・メバル
ナマコ類
事業成果動画
事業の成果は、以下の動画でもご覧いただけます。
- 大阪湾に貝殻魚礁を置いたらお魚パラダイスになった!(外部サイトへリンク)(別ウィンドウで開きます)
- 大阪湾に貝殻魚礁を置いたらお魚パラダイスになった!パート2(外部サイトへリンク)(別ウィンドウで開きます)
- 大阪湾に貝殻魚礁を置いたらお魚パラダイスになった!パート3(外部サイトへリンク)(別ウィンドウで開きます)
低コストで実現できる藻場造成
事業概要
護岸に設置されている既設のテトラポットに海藻着生基質のセラミックスポーラスブロック(セラポラ基質)を取り付け、低コストで戦略的に海藻群落「藻場」を造るとともに、生物の生息空間の創出を行い、豊かな環境の大阪湾へと導く。
セラミックスポーラスブロック
(セラポラ基質)
実施事業者
日本リーフ株式会社
環境改善モデル設備等の種類
- 人工藻場
- 環境配慮・生物共生型構造物
設置年月
令和3年12月
設置場所
大阪港(大阪府大阪市)
モニタリング実施状況
令和3年11月(事前調査)
- 設置予定場所は、多項目水質計により水深DL-2m程度までは塩分濃度が低いことが確認され、近隣河川から淡水の流入等が考えられる。
- 設置予定場所の周辺では、既設テトラポットの一部で小型海藻類が観察されたが、ワカメ等の大型褐藻類は観察されなかった。
令和3年12月時点(設置時)
- セラポラ基質は、塩分濃度が安定していたDL-2.5mから3.0mの位置に設置した。
- 事前調査時にワカメ等の大型褐藻類が観察されなかったため、一部のセラポラ基質にワカメの種苗を取り付けて設置し、基質周辺には、同様にワカメの種苗を取り付けたロープを設置した。
令和4年3月時点(設置後4か月)
- セラポラ基質とロープに取り付けたワカメの種苗はどちらも順調に生育していたが、一部で魚類と思われる食害痕が観察された。
令和4年4月時点(設置後5か月)
- セラポラ基質、ロープとも、ワカメの種苗は30cmから150cm程度まで生育していた。
- ワカメが生育するにあたって、大きな食害は無かったと考えられる。
令和5年3月時点(設置後1年4か月)
- セラポラ基質、ロープともワカメが生育していたが、食害痕が確認された。
令和5年4月時点(設置後1年5か月)
- ワカメが生育していた既設セラポラ基質と新規のセラポラ基質を既設地点から南へ約100メートル移設した。
- 令和5年3月時点で食害痕が確認されたことから、ワカメのスポアバッグを併せて取り付けたほか、ワカメが捕食されないよう食害対策を設置した。
令和6年3月時点(設置後2年4か月)
既設地点:セラポラ基質にのみワカメが生育していたが、食害痕が確認された。セラポラ基質が無い場所には紅藻類のみ確認された。 食害対策用設置物にはイガイ類やホヤ類が付着していた。
移設地点(令和5年4月移設):セラポラ基質にのみワカメが生育していたが、食害痕が確認された。セラポラ基質が無い場所には紅藻類のみ確認された。