ここから本文です。
80831(未利用野菜を活用した野菜缶の製造販売:八尾市)
現在の事業を起こしたきっかけ 
私は、行政職員として農家の皆さんと関わる中で、野菜は十分にあるのに、販売や加工の仕組みが整わず、生産者がなかなか報われていない現実を目の当たりにしてきました。
泉州地域へ異動した際、担当者は数年で異動となり業務は引き継ぐものの、農家さんの「想い」までは引き継げないと強く感じました。だからこそ、「地域にずっと寄り添い、農家の声や思いを理解して事業につなげる存在が必要だ」と考えるようになりました。
また、大和川より南の地域では、農家が自ら販売先を探し、栽培からマーケティングまで一貫して担うことが一般的です。有機野菜の市場はまだ小さいですが、ここには成長の余地があると感じ、「需給をつなげ、マーケットを広げる役割を果たしたい」という思いが明確になっていきました。
事業のスタート
行政機関を退職後、最初は八尾市内の企業で社内ベンチャーとして始めましたが、半年ほどで独立しました。独立すると、身の入れようがまったく違うと実感しました。
独立後は市のインキュベートルームに入居し、月1回のコーディネーターの面談に支えられながら、事業を拡大してきました。起業当初は不安が9割でしたが、家族と話し合い、「3年で結果を出す」という覚悟で挑みました。
1年目は大赤字
2年目は帳簿上は黒字(生活費は含まず)
3年目はさらに改善し、事業は現在、着実に成長しています。
資金繰りにも不安が生じ、日本政策金融公庫の融資も活用しました。販売収入が柱のため、集荷・配達用の軽バンや倉庫など固定費もかかりますが、天候によるロスは「ロス野菜セット」や飲食店への卸などで極力出さない仕組みを整えています。野菜の販売価格は急激に変動させないようにしているため、野菜価格が高騰する時期には、商品が飛ぶように売れることもある一方、価格が下落したときは全く売れないなど、不安定な一面もあります。
今後は、生鮮を扱う“根本の思想”を大切にしながら、加工品の増産、ギフト需要の開拓、備蓄用商品の展開にも力を入れていきます。
起業の中で得た学び 
私が一番学んだのは、「行政の論理」と「ビジネスの論理」は別物だということです。行政の計画は“誰もが喜ぶ”ことを前提にしますが、ビジネスの計画は“ターゲットを絞ること”が不可欠です。最初に出した事業計画書に「なんか違う」と言われ、考え方を大きく転換しました。
コーディネーターから言われた、「事業計画は“やること”を書く。やりたいことを書くな。」
この言葉をきっかけに、想いを分解し、ビジネスとして成立する仕組みへ落とし込むことに注力しました。
また、「藤原さんが集めた野菜だから買う」と言ってくださるお客さまが増えたことは、私にとって最大の励みであり、起業してよかったと最も強く感じる瞬間です。取り組みを応援してくださる方が自然と集まってきたことも、大きな支えになっています。
起業に必要な支援 
行政支援の中では、市のインキュベートルームの存在や、月1回のコーディネーター面談が大きな助けになりました。
起業後もしばらくは、商工会議所やサポートセンターを「相談したいときにうまく使う」距離感で活用しています。外部の視点を得られる環境は、独立後こそ重要だと感じています。
さらに、ビジネスプランコンテストのような場に挑戦することも、とても意味があります。
自分のビジネスプランや想いを外に発信すると、志の近いビジネスパートナーや応援してくれる支援者とつながるきっかけが生まれます。事業の純度も高まり、より強い軸にもなります。
また、起業を考えていた時期に「公共からいきなり独立すると失敗しやすい。一度事業会社で経験を積んだ方がいい」という助言を受けました。
実際に一度事業会社に身を置いた経験は、今の事業に大きく役立っています。現場感覚や売上の作り方、意思決定のスピードなど、行政では得られない学びが、独立後の事業運営に直結しました。
兼業・副業に取組みたいと考える人へのアドバイス 
私が一番お伝えしたいのは、「外の世界と早くつながってほしい」ということです。組織の中にいると、自分の可能性に気づけなかったり、組織文化に染まりすぎて動きづらくなることがあります。
だからこそ、まずは早い段階で“外”とつながってください。
趣味でも、社内プロジェクトでも、外部イベントでも構いません。閉じた環境にいると視野が狭くなりがちですが、外に出ることで、自分が業務で培ってきた IT・DX・産業振興支援などのスキルが、実は外の世界でも十分に武器になることに気づけます。
また、行政職員としての経験は、起業後の現場で確実に生きてきます。
人の話を丁寧に聞く姿勢は、農家さんとの関係づくりに役立ち、移動販売で高齢者の方々のお話を伺う時間は、そのまま地域のセーフティーネットにもつながっていました。こうした 「公共の視点」は、民間の事業者にはなかなか持ちにくい、大きな強みです。
そして、起業準備で大切なのは、想いだけで突っ走らず、まず“ビジネスとして成立する仕組み”をつくることです。
興味のない人に無理に届けようとするのではなく、「少し興味のある層」に向けて届ける発想に切り替えると、前に進みやすくなります。
想いを一度ビジネスに分解し、仕組みとして成立させる—その先に、初めて想いが実現していきます。
関連リンク
企業HP:どっこい市場~生産者と消費者、市民と事業者、地域と地域が出会い、つながるどっこいしょのポータルサイト
代表 藤原 亮介 様