大阪府同和対策審議会答申(平成13年9月) 前文

更新日:2023年6月21日

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  本審議会は、平成12(2000)年6月に、知事から「大阪府における今後の同和行政のあり方について」の諮問を受け、平成12(2000)年度に府と関係市町において実施した「同和問題の解決に向けた実態等調査」(以下「実態等調査」という。)の結果や人権教育・啓発、人権擁護に関する国の動向等を踏まえ、精力的に審議を行った。

  府においては、昭和22(1947)年から、同和対策として、共同作業所等の整備を行う地区環境改善事業など、先進的な取組みを行ってきた。その後、昭和40(1965)年の国の同和対策審議会答申(以下「国同対審答申」という。)および昭和44(1969)年の「同和対策事業特別措置法」に基づき、同和問題解決のための施策を本格的に実施するとともに、以後2度にわたる特別措置法(「地域改善対策特別措置法」、「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」(以下「地対財特法」という。))や昭和44(1969)年の答申をはじめとする数次の本審議会答申(以下「府同対審答申」という。)等を踏まえ、積極的な事業展開を図ってきたところである。

  そして、平成13(2001)年度末には「地対財特法」が失効し、30年以上にわたり実施されてきた財政法上の特別措置による「同和対策事業」は、いよいよ終焉を迎えようとしている。

  地域改善対策協議会においては、平成8(1996)年、「地対財特法」の期限後の方策に関し、「特別対策については、事業の緊急性等に応じて講じられるものであり、従来の対策を漫然と継続していたのでは同和問題の早期解決に至ることは困難である。これまでの特別対策については、おおむねその目的を達成できる状況になったことから、現行法の期限である平成9年3月末をもって終了することとし、教育、就労、産業等のなお残された課題については、その解決のため、工夫を一般対策に加えつつ対応するという基本姿勢に立つべきである」とし、「国同対審答申は、部落差別が現存するかぎり同和行政は積極的に推進されなければならないと指摘しており、特別対策の終了、すなわち一般対策への移行が、同和問題の早期解決を目指す取組みの放棄を意味するものではない」旨の意見が示された(以下、「地対協意見具申」という。)。

  こうした提言に基づき、国においては、「一般対策」への円滑な移行を前提に、住宅地区改良事業や道路事業などの物的事業や高等学校等進学奨励費補助事業など15の「特別対策」について、平成9(1997)年3月、経過措置として平成13(2001)年度末まで期限を延長する旨の「地対財特法」の改正が行われた。

 本審議会においても、平成8(1996)年に、「同和地区の生活環境施設の整備をはじめとして各分野で成果が認められるが、なお、不安定就労の問題、進学率の格差などの生活実態における課題が残されており、また、部落差別事象が跡を絶たないなど、府民の差別意識の解消が十分に進んでいない状況も明らかになっている」と示した上で、「国同対審答申が指摘し、また、地対協意見具申でも指摘しているように、部落差別が現存するかぎり同和行政は積極的に推進されなければならないものであるが、今後は、新たな時代を的確にみすえて事業の検討を積極的に行い、一般施策を有効かつ適切に活用して推進することが必要である」とし、「なお、同和行政の基本目標に照らして、直ちに一般施策によりがたい特段の事情がある場合には、特別措置も含めて一般施策のあり方について検討する必要がある」旨答申したところである。

  一方、「人権の世紀」といわれる21世紀に向けて、「人権教育のための国連10年」などの国際的な人権尊重の潮流の中、平成13(2001)年3月、国連の「人種差別の撤廃に関する委員会」は、日本に対し、同和地区の人びとを含め、差別からの保護ならびに市民的、政治的、経済的、社会的および文化的権利の完全な享受を確保するよう勧告したところであり、同和問題などさまざまな人権問題を一日も早く解決するよう努力することは、国際的な責務となっている。

  国においては、地対協意見具申を踏まえて平成9(1997)年3月に制定された「人権擁護施策推進法」に基づく「人権擁護推進審議会」において、平成11(1999)年7月に、「人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項について」の答申が出され、その趣旨を踏まえ、平成12(2000)年11月に、人権教育および人権啓発に関する施策の推進について、国、地方公共団体および国民の責務を明らかにした「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が制定された。また、平成13(2001)年5月には「人権救済制度の在り方について」の答申が出され、人権救済機関の整備等その具体化に向けての検討が進められているところである。

  府においても、平成10(1998)年10月に制定された「大阪府人権尊重の社会づくり条例」(以下「人権条例」という。)に基づき、平成13(2001)年3月に、同和問題解決をはじめとするさまざまな人権問題に取り組んでいくため、人権意識の高揚を図るための施策や人権擁護に資する施策を進めていくことを目的とした「大阪府人権施策推進基本方針」(以下、「府人権施策基本方針」という。)を策定した。また、平成9(1997)年3月には、全国に先駆け「人権教育のための国連10年大阪府行動画」を策定し、平成13(2001)年3月に、より実践的なものとするよう計画を見直し、「府人権施策基本方針」の人権意識の高揚を図る施策を具体化するための計画として位置づけた「後期行動計画」を策定した。

このような状況の中、本審議会においては、人権条例の目的である「すべての人の人権が尊重される豊かな社会」を実現していくために、国同対審答申の精神を受け継ぎ、「地対財特法」失効後、新たな世紀における府の同和行政のあり方について答申するものである。府においては、同和問題解決のため、危機的な財政状況のもと、施策の効率的、効果的な再構築に努め、国同対審答申で初めてともされた同和問題の解決のための施策の灯を、人権問題という本質からとらえて「人権施策の灯」として「人権の世紀」である21世紀に受け継ぎ、同和問題が一刻も早く解決されるよう、より一層の努力を払われたい。

 

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府民文化部 人権局人権擁護課 人権・同和企画G

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