人権問題に関する府民意識調査検討会委員
神戸学院大学文学部教授 神原文子
これまで作成した「排除問題意識」、「体罰問題意識」、「人権推進支持意識」、「被差別責任否定意識」、「差別容認否定意識」、「階層排除否定意識」、「同和地区・国籍等排除否定意識」、「離婚歴排除否定意識」、「経済力排除否定意識」、「宗教排除否定意識」、「障がい排除否定意識」、「ひとり親家庭排除否定意識」および「反忌避意識」それぞれの尺度によって測定した個々人の得点相互の関連を検討することにします。
図2-1は、これら13変数相互の関連について、偏相関係数※を求めて図示したものです。
※他の変数の影響を排除して2変数間の直接の関連を示す数値です。
図2-1
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偏相関係数の結果から、次のような知見を得ることができます。
【知見】
○「排除問題意識」、「人権推進支持意識」、「被差別責任否定意識」の間に比較的強い関連があり、いずれかの意識が高いと、他の2種の意識も高い傾向にある。
○「反忌避意識」は、「排除問題意識」、「被差別責任否定意識」、「差別容認否定意識」と比較的強い関連があり、これらの意識が高いと「反忌避意識」が高い傾向にある。
○「人権推進支持意識」が高いほど、「被差別責任否定意識」も「差別容認否定意識」も高い傾向にある。
○「階層排除否定意識」、「同和地区・国籍等排除否定意識」、「離婚歴排除否定意識」、「宗教排除否定意識」は相互に関連があり、「階層排除否定意識」は、「経済力排除否定意識」、「ひとり親家庭排除否定意識」とも関連が強く、また、「同和地区・国籍等排除否定意識」は「障がい排除否定意識」と関連が強いことから、これらは、「結婚排除否定意識」と解することができる。
○「体罰問題意識」は「被差別責任否定意識」とやや強い関連がみられるが、「排除問題意識」、「人権推進支持意識」との関連は強くない。
○「人権推進支持意識」は、「反忌避意識」と関連がみられない。また、「同和地区・国籍等排除否定意識」とは逆相関であり、「人権推進支持意識」が高い人ほど、「同和地区・国籍等排除否定意識」は低い、言い換えると、「同和地区・国籍等排除意識」が高い傾向にある。
以上の分析から、人権意識や差別意識相互の関連について、いくつか特徴的な傾向がみえてきました。
人権学習や人権啓発によって、「人権推進支持意識」が高くなると、「排除問題意識」、「差別容認否定意識」、「被差別責任否定意識」も高くなる傾向がみられます。しかし、「人権推進支持意識」が高くても、直接的には「反忌避意識」には影響がみられず、しかも、「同和地区・国籍等排除否定意識」はむしろ低い傾向がみられるということです。このことから、「人権推進支持意識」を高めるような学習や啓発と併せて、「反忌避意識」を高くしたり、「同和地区・国籍等排除否定意識」を高くしたりする学習や啓発を行う必要のあることが示唆されます。
「被差別責任否定意識」は、「排除問題意識」、「反忌避意識」、「差別容認否定意識」、「人権推進支持意識」と関連が高いことから、「被差別責任否定意識」を高くし、「差別は差別する側の問題であり、差別する人間が差別をやめることで差別をなくすことができる」という意識を高める取組みに力を入れることが、「人権推進支持意識」、「反忌避意識」、「排除問題意識」、「差別容認否定意識」を高めることに効果があることが示唆されます。同様に、「排除問題意識」、「被差別責任否定意識」、「差別容認否定意識」を高める取組みに力を注ぐことが、「人権推進支持意識」と「反忌避意識」とを高くする効果が期待できることがわかります。
しかし、これらの分析において強調しておきたいことは、「教師が子どもの指導のために、ときには体罰を加えることも必要だと考えること」、「保護者が子どものしつけのために、ときには体罰を加えることも必要だと考えること」という「体罰問題意識」は、「排除問題意識」や「人権推進支持意識」と弱い関連しかみられないことです。すなわち、「人権推進支持意識」や「排除問題意識」が高くなっても「体罰問題意識」が高くなる可能性は低いことから、「体罰問題意識」を高めるためには、独自の新たな学習や啓発の取組みが必要であることが示唆されます。
このページの作成所属
府民文化部 人権局人権企画課 教育・啓発グループ
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