第6章 ソフト施策の取組
廃棄物の発生抑制、リサイクルの推進はもちろんのこと、リサイクル施設の整備を進めるためにも、住民の理解と協力は最も重要な要素のひとつである。ここでは、廃棄物リサイクルの普及・啓発のための府、府内市町村の取組事例及び他自治体におけるエコタウン事業の支援方策先行事例について整理した。
6−1 府及び府内市町村の取り組み事例
(1)大阪府の取組事例
1) ごみ減量化・リサイクルアクションプログラムの推進
大阪府が府民団体や事業者団体、市町村等と設置している大阪府廃棄物減量化・リサイクル推進会議では、府民や事業者にごみの減量化・リサイクルの実践行動を促し、環境に配慮したライフスタイルや事業活動の普及・定着を図るために、ごみの減量化目標や府民・事業者・行政が取り組む実践行動をとりまとめて「ごみ減量化・リサイクルアクションプログラム」を策定(平成12年6月に改定)した。このアクションプログラムの実践行動を府民や事業者に普及するため、簡易包装や買い物袋の持参を進めるためのノー包装キャンペーン(マイバッグ持参運動)や、子どもたちにごみ問題に関心と理解を深めてもらうための環境美化・ごみ減量化・リサイクルポスターコンクール事業等の実施、ペットボトルや食品トレー等の店頭回収や再生品の販売など小売店のごみ減量化・リサイクルの取組を促すためのエコショップ制度の普及などの運動を、府民団体や事業者団体、市町村等と協力しながら、推進している。
2) リサイクルフェアの開催
「エコ商品の展示・即売」「リサイクルマーケット」「環境美化・ごみ減量化・リサイクルポスター展」「優良エコショップ展」等を内容とするリサイクルフェアを年1回開催している。
3) 大阪グリーン産業創造ネットワーク
グリーン商品(環境配慮・省エネルギー型商品やサービス)の主要な調達者である大阪府内のISO14001認証取得企業・自治体などを会員とするネットワークで、平成12年度に設立された。(平成14年12月31日現在817事業所)省エネルギーサービスに関する講演会の開催など、グリーン産業の活性化に向けた様々な取組みを行うことにより、グリーン産業の創造・振興を図っている。
(2)府内市町村の取り組み事例
1) リサイクルフェア・フリーマーケット等の取組み
大阪府内の市町村が行っているリサイクルフェア等のごみ減量化・リサイクルに関する啓発活動の事例は下表のとおりである。各市町村において、リサイクル工房、リサイクルフェア、フリーマーケットなどごみ減量化・リサイクルの啓発に関する様々な催しが開催されている。
表6−1 府内市町村の取組事例
市町村名 | 事業名称 | 事業内容 | 対象者 |
大阪市 | リサイクルプラザの運営 | 不要品再生家具等の展示、提供、教室の開催 | 市民 |
| 地域に密着した減量化の取組 | ガレージセール、エコクッキングの開催等 | 市民等 |
堺市 | リサイクルマーケット | クリーンセンターにて、フリーマーケットの他、見学会や講演会を行う | 市民 |
| リフォーム教室 | リユースを中心とした活動を広めることで、ごみの減量を図る | 市民 |
豊中市 | リサイクル工房 | ごみとして排出される自転車、家具等を再生品として各種イベント等に出展し、物の大切さについて啓発を図る | イベント参加者 |
| ガレージセールIN豊中 | 廃棄物減量等推進員が主体となり、一般家庭の不要品を必要な人に流通させ、物品の有効利用を図る | 廃棄物減量等推進員 |
| ごみ減量を考える市民フォーラム | 事業者・市民から意見・提案を受け、一般廃棄物処理基本計画に反映させる | 市民、事業者 |
池田市 | ごみ減量化推進週間美化事業 | エコマーク商品の展示、一斉清掃等 | 市民 |
| 環境衛生週間美化事業 | リサイクル展、ポスター展等 | 市民 |
吹田市 | リサイクルフェアの実施 | フリーマーケット等の開催 | 市民 |
高槻市 | ガレージセール、エコ工作教室 | 市民団体と一般公募による出展者と協同してガレージセールを開催 | 市民 |
貝塚市 | ごみ減量推進事業 | リサイクルフェアの開催、小中学校への環境教育・体験学習、ケーブルテレビ放送 | 市民、事業者、近隣市民 |
守口市 | ごみ減量化啓発事業 | ごみ減量・リサイクル展の開催
| 市民 |
茨木市 | 環境フェア | ごみの減量・リサイクル等環境問題に関する各種展示コーナー
| 市民 |
八尾市 | リサイクルフェスティバル | 環境に関する展示、ガレージセールを実施 | 市民 |
富田林市 | リサイクルフェア | リサイクルフェアの開催 | 市民 |
寝屋川市 | エコフェスタ開催 | 環境問題を市民とともに考え環境に優しい暮らしの実践に努める | 市民、事業者 |
大東市 | 環境フェア | 環境問題を身近な問題としてとらえてもらい意識を高めてもらう | 市民 |
箕面市 | ごみ減量フェア等 | 講習会、ポスター展など | 市民 |
門真市 | ごみ展 | ごみ減量化・リサイクルについて写真、絵画、パネルの展示、講習、エコクッキング等の開催 | 市民 |
高石市 | ごみ減量リサイクルフェア | 市庁舎でのごみ減量リサイクルに関する資料・再生品の展示・掲示による啓発 | 市民 |
四條畷市 | 消費者の集い | ローカルデポジット・家具の再利用コーナー・ガレージセール等 | 市民 |
大阪狭山市 | 環境・リサイクルフェア | ごみとして回収した品物を展示し希望者には無料で再利用してもらう、また石鹸づくりの実演等を行う | 市民 |
柏羽藤環境事業組合 | 柏羽藤リサイクルフェア | ごみの減量化・リサイクルに関わる各種展示及び施設見学を通じ、リサイクル意識の向上 | 構成3市市民 |
2) ATCグリーンエコプラザ(大阪環境産業振興センター)
ATCグリーンエコプラザは、環境ビジネスの常設展示場として、
1)環境対応製品・商品・素材・技術・システム・ソフト・サービスに関する情報を集積し、さらに新たな情報として発信しながら環境産業の育 成、振興を図る。
2)消費者に環境関連情報を提供し環境保全を図るとともに、展示、セミナー、フォーラムなどを通じての企業と消費者とが協働・相互作用で環境問題について意見交換や情報交換をできる場を提供する。
ことを目的として設立された。
具体的な機能として、環境関連の企業出展やショールームの設置などの情報統合・集積機能、ISO14001認証取得に関するコンサルティング機能、啓発セミナーの開催や先進事例紹介などの啓発機能、メールマガジン(エコプラザ通信)の配信など情報発信機能などを有している。施設の概要は以下に示すとおりである。
設置者:アジア太平洋トレードセンター(株)、大阪市 会 場:ATC・ITM棟11階西側 面 積:4,500m2
6−2 他自治体におけるエコタウン事業の支援方策先行事例
(1)北九州エコタウン
エコタウン事業を総合的に支援するための中核的支援施設である「北九州市エコタウンセンター(平成13年6月開設)」を設置し、(1)エコタウンや環境・リサイクルに関する技術・製品の展示、(2)環境学習・研修、(3)研究活動支援などを行っている。
管理運営:ひびき灘開発(株)(第3セクター) 敷地面積:7,000m2 延床面積:1,535m2 主な施設:展示ホール、セミナールーム、実験室など
(2)大牟田エコタウン
平成12年1月、エコタウン事業の総合的・効率的推進を図り、(1)環境・リサイクル産業の企業化に向けての支援、(2)市民の環境学習・リサイクル実践の支援を行うための組織として「(財)大牟田市地域活性化センター」を設立した。地域活性化センターでは事業として、(1)環境・リサイクルに関する技術研究開発、産業交流事業の実施及び支援、(2)インターネットの活用などによる環境・リサイクルに関する情報提供、環境教室など市民啓発事業の実施を行っている。また、これらの諸事業を効率的に推進するため、「大牟田市エコサンクセンター(平成14年春供用開始)」を設置し、その管理運営を行っている。エコサンクセンターは、「市民交流・学習センター」と「環境技術研究センター」を一体的に整備する施設である。市民交流・学習センターでは常設展示ホール、AV研修ホール、再生工房などを備え、環境学習・リサイクル活動・市民交流・情報交換等の支援が行われる。環境技術研究センターでは賃貸実験研究室を提供するインキュベート機能、再資源化技術の研究・開発を行う研究開発機能、セミナーの開催や人材の育成・交流を行う支援機能、計画地や周辺の環境モニタリング機能などを有し、企業・団体・大学等の連携や環境リサイクル関連技術開発と企業化の支援が行われる。また、計画地全体の管理と、大牟田エコタウンのインフォメーション的な機能も担っている。
(3)広島エコタウン
平成13年度に、「びんごエコタウン構想推進委員会」を設置し、「びんごエコタウン実行計画」(エコタウンソフト補助対象)、「環境関連産業プロジェクトチーム」の推進など、エコタウン事業の推進方策と新たな施策の検討を行っている。 「びんごエコタウン実行計画」は、びんごエコタウン構想の中で重要地域として位置付けられるモデル地区に、環境産業振興拠点となる環境産業団地、研究・実証機能及び環境学習機能の整備を具体的に推進する実施計画である。 「環境関連産業プロジェクトチーム」は、環境関連産業の事業化を図るため、公募方式により、テーマごとに民間企業を主体とした自主的な研究会である。チームごとに技術面、環境資源の需給動向、再生品のマーケティング、事業採算性などの調査検討を行い、事業化の可能性のあるプランについて、「びんごエコタウン実行計画」の中で立地を進めるプランとして位置付けることとしている。
(4)山口県エコタウン
平成13年度においては、以下の施策を展開している。
○エコタウン事業推進委員会
県民、事業者、大学、行政で構成する委員会を設置し、やまぐちエコタウン事業の推進や進行管理及び新たな事業展開などについて協議・検討を行う。
○やまぐちエコタウン2001シンポジウム
エコタウン事業推進に向けて県内外へ情報発信を行う。
○やまぐちゼロエミッションサロン
オープン参加による産官学の交流の場として、環境関連技術やリサイクル情報の交換等を行う。
○やまぐちエコ・テクノスクール
県内の環境関連産業の育成・創出のため、技術開発や製品開発に資する研修会を開催。
○やまぐちゼロエミッションネットワーク
山口県の地域・産業特性を活かしたプロジェクトの発掘・実現を図るため、事業者、大学、行政等によるネットワークの構築について検討を行う。
また、県民、事業者、大学、行政等により構成する「やまぐち環境ビジネス協議会(仮称)」を設立し、具体的な事業展開が望めるよう、各種研究会、事例報告会、講演会などの活動を行う予定。
6−3 大阪府の今後の取組
大阪府は、本構想に基づき整備が図られるリサイクル施設の立地想定市とともに大阪エコエリア構想推進協議会(仮称)を設立し、事業者に対する立地支援に努めることとしている。 いわゆるソフト施策による支援としては、循環型社会のあり方、リサイクル施設の役割・必要性等といった内容の公開セミナーの開催等により、リサイクル施設整備に対する府民意識の醸成を図る。
第7章 リサイクル施設整備の事業化に向けた課題と対応
7−1 支援方策の整理
(1)支援についての考え方
大阪エコエリア構想に位置付けられたリサイクル施設の整備事業は、民間事業者が主体となって事業化が図られるものであるが、施設の着工に至るまでには1企業には相当の負担となる課題も多い。このため、本構想の策定に向け、事業提案の募集以来、民間事業者による研究会活動や大阪エコエリア構想検討委員会における検討を通じて、事業者間での共同事業化や既存の環境関連事業者との連携強化が進められてきたところである。しかし、府域に先駆的に循環型社会を形成していくためには、廃棄物の適正処理・リサイクルのための施設整備は必要・不可欠であることから、それらの事業がこの目的のために有効な役割を果たすものであり、地域に受け入れられるものであるならば、その課題の克服に行政として可能な支援を積極的に講じていく必要がある。今後、着工までの事業者の課題は、大きく分けると、立地場所の確保、立地場所の地元合意、事業費の確保、再生品の用途拡大などが考えられる。府は、これらの課題のそれぞれにつき、次に示すような支援策を講じていくものとする。なお、民間事業者においても、事業計画の実現と円滑な施設運営のためには、住民へのリサイクル施設の公開や安全対策等に関する情報公開などに積極的に取組むなど、地域に根ざしたリサイクル施設を実現していくとの姿勢が重要である。
(2)支援方策の整理
1) 立地場所の確保についての支援
自社所有地を中心とした民間遊休地の活用と併せて、廃棄物最終処分場跡地などの公有地を立地場所として活用されるよう支援を図る。
(堺第7−3区最終処分場跡地の活用)
・ 昭和49年から産業廃棄物の最終処分場として運営してきた堺第7−3区最終処分場が、平成15年度末で廃棄物の受入を終了することから、その跡地の一部をリサイクル施設用地として活用することにより、大阪府における循環型社会のモデル地区として、また、大阪エコエリア構想のシンボル地区として整備を図る。対象エリアは、平成6年竣工した1次処分地とりわけ地盤の安定した6.5haを中心とし、この地区に立地する施設群では、相互に廃棄物の焼却等により生じるエネルギー等の利用が図られるようリサイクル施設の立地誘導を図る。なお、その整備の具体的な手法・条件などについては、今後、整理・検討を行う。また、この際には、並行して検討されている2次処分地における「共生の森」構想との連携・整合を図る。
(フェニックス泉大津沖処分場跡地の活用)
・ 平成4年から広域の廃棄物最終処分場として運営されてきたフェニックス泉大津沖処分場は、平成14年に管理型区画の受入を終了し、安定型区画は平成21年度までに終了する計画となっている。このため、地域の活性化に寄与し、有効な跡地利用を図るため、その一部へのリサイクル施設の立地について検討を行い、企業ニーズに応じて部分的に土地利用を進める。
2) 地元の合意形成についての支援
・ 廃棄物処理・リサイクル施設の立地に当たっては、一定の地元合意が不可欠であるため、立地想定市とともに大阪エコエリア構想推進協議会を設置し、合意形成のための課題整理や、住民説明に向けた技術的助言等を行う。
3) 事業費の確保についての支援
・ 経済産業省及び環境省が所管するエコタウン事業のハード補助金の導入のため、大阪府エコタウン計画を策定するとともに、その承認後の、個別事業ごと申請・承認を支援する。
・ これ以外の国の補助金についても情報の提供に努めるとともに、必要に応じ、国に新たな補助制度の創設について要望するものとする。
4) 再生品の用途拡大等についての支援
(再生品の認定)
・ 廃棄物を資源として利用し、生産されるリサイクル製品の用途拡大への支援については、リサイクル製品を認定するとともに、その普及への必要な措置を講ずるよう努めていく。
(同種の廃棄物を対象とする施設間の調整)
・ 提案された事業計画には同種の廃棄物を対象とする施設があり、廃棄物の確保面で競合することによる経営面への支障を回避するため、必要な調整を行う。
(環境ビジネス振興のための技術支援)
・ 環境関連産業に対する技術支援や技術情報の提供を行うなど、リサイクルに関する技術開発を支援する。
このページの作成所属
環境農林水産部 循環型社会推進室資源循環課 施設整備グループ
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