3.障がい種別の特性・配慮(4)知的障がい者
「知的障がい」って、こんな特性をもっています。
- 言葉を使ったり、記憶したり、抽象的なことを考えたりすることが苦手です。
- 他の人との関わりをもつことが苦手な人もいます。人を避けたり、目が合わなかったりします。
- 周囲に関心が向きにくいことがあります。危ないことに気づかなかったり、社会のルール(順番に並んだり)が分からなかったりすることがあります。
- コミュニケーションをとることがむずかしいことがあります。一方的に話をしたり、言われた言葉を繰り返すことがあります。
- 周囲の人にわかりにくいやり方で、感情を表現することがあります。かんしゃくをおこしたり、一人で笑ったり、ぴょんぴょん飛び跳ねたり、急に泣き出したり、様々です。
- もの、形、場所、順番などにこだわりを持ち、変更を嫌うことがあります。好きな順番にものをならべたり、決まったやり方で行動しようとすることがあります。
でも・・
- 知的障がいだからといって、全くできなない、全く分からない、ということではありません。
- 一人ひとりの行動には、その場その場で意味があります。
- 一人ひとりにちがいがあります。
外来における配慮
- 受付
- 診察券や保険証の提出など、必要なことを分かりやすく伝えます。言葉で分かりにくければ、実物を見せながら話すと、分かりやすいでしょう。
- 病院内で、どんな順番で何をするのか、全体の流れを伝えます。
- 院内移動
- どこに行けばいいのか、言葉だけでは分かりにくいこともあります。目印となるマークなどがあると便利です。
- トイレの場所なども説明に付け加えます。
- 待合室
- 見通しがつかないまま静かに待つことが苦手なことがあります。「あと3人です」「10分待ってください」「時計の長い針が上まで来るまで待ってください」など、具体的に伝えます。
- 周囲に人が多くて落ち着かない人に対しては、人が少なくて静かなところや気分転換ができる場所があれば案内します。順番になれば呼びに行きます。
- 診察室
- 症状を的確に説明することが苦手で、言われたままの言葉を繰り返すこともあります。ゆっくりと症状を聞き取ります。
- 言葉だけでなく、絵や文字に書きながら話をすると、伝わりやすいでしょう。
- 注意事項などがあれば、メモにして持ち帰ってもらうと、家族や日々の生活の支援者にもきちんと伝わり、日常生活の支援にいかすことができます。
- 検査室
- 初めてのことが苦手な場合があります。どんなことをするのかを、ゆっくりと説明します。
- 差し支えのない範囲で、前の人が検査している場面を見せます。気持ちの準備ができることがあります。
- 支払い
- 金額が分かりにくいときには、文字で書いたり、コミュニケーションボードを使うと便利です。
- お金を出すのに時間がかかる場合もありますので、ゆっくり待ちます。
- 薬剤受け取り
- 服薬時間や注意事項など、言葉だけでなく絵や文字を見せながら伝えます。
- 注意事項などをメモにして持ち帰ってもらうと、家族や日々の生活の支援者にもきちんと伝わります。
入院における配慮
- 入院初日
- 日常生活で配慮することや好きなこと・苦手なこと、普段の生活パターンなどを、家族などから聞き取ります。
- 病棟での過ごし方やルールなどを分かりやすく伝えます。
- 食事や診察、点滴の時間など、一日のスケジュールを絵や文字で見えやすいところに貼ります。
- 初めての場面に非常に不安になる患者もいるため、こまめに声をかけます。
- 治療開始
- 検査結果や治療方針について、本人にも具体的に分かりやすく説明します。文字や絵などを用いるとよいでしょう。
- 痛いことや我慢しなければならないことなども、気持ちの準備ができるように具体的に伝えます。ただし、強調しすぎると不安を強めてしまうので、前もって家族等と相談し、伝え方に配慮が必要です。
- 治療の日程などが分かっていれば、カレンダーにして病室に貼ります。見通しがついて気持ちの準備もしやすいでしょう。
- 入院生活
- 食事やトイレ、入浴などのどんな場面でどんな支援が必要か家族等から前もって聞きとっておきます。
- 支援するときにも、できるところはなるべく自分でやってもらうようにします。
- 何もせずに「安静にする」ことが苦手です。本人が好きなことで、ベッドでもできそうなことなどを、家族等と相談して退屈にならないような工夫が必要です。
- 消灯の時間や自動販売機や電話の使い方などのルールをその都度伝える必要がある場合もあります。同じことを、何度も繰り返して伝えなければならないこともあります。絵や文字で伝えると、伝わりやすいこともあります。
- 自分の病室が分からなくなる場合もあります。部屋の入り口に目印をつけるなどの工夫をすると分かりやすいでしょう。
- 他の患者さんと、うまくコミュニケーションがとれない場合は、間に入って会話の仲立ちをしたり、障がいの特性を他の患者さんに伝えて、温かく見守っていただくように働きかけます。
- 退院
- 退院後の注意事項は絵や文字なども使って具体的に伝えると分かりやすいでしょう。
- 注意事項をメモにして持ち帰ってもらうと、家族や日々の生活の支援者にもきちんと伝わり、日常生活の支援に活かすことができます。
その他
- 《緊急時の対応》
- 現況がわからず、不安な気持ちやパニックになってしまうこともあります。大きな音や声が苦手な人もいます。心配いらないことを、伝えます。
- 説明や質問をするときには、ゆっくりと簡潔な言葉で話します。
参考資料
- 《コミュニケーションツール(平成18年度大阪府作成)について》
- 障がい者の中には、コミュニケーションを取ることが苦手で、大切な情報をうまく伝えられないため、円滑で適切な診療に至らなかったり、自分の状態を良くわかってもらっている医療機関で診てもらいたいために、わざわざ遠方の専門医療機関に出かける方もいます。また、本人を良く知らない医療機関のスタッフは本人の障がい・病歴・主訴等がわかりにくく、診療に困難を伴うことがあります。
- そこで、コミュニケーションを取ることが苦手な障がい者でも安心して医療を受けられるように2つのコミュニケーションツールを作成いたしました。
- 「( )の医療サポート手帳」は、( )の中に使用者の名前を入れて使ってもらいます。大阪府障がい者自立相談支援センターや(社福)大阪知的障害者育成会等を通じて知的障がい者に配布します。「医療サポート絵カード」は、知的障がい者支援施設の協力医療機関等に配布します。
- <医療サポート手帳>
- 医療サポート手帳 [Wordファイル/334KB]
- 患者が持ってきた手帳には、医療機関に伝えておきたいこと(うまく伝え合う方法、好きなこと・嫌いなこと、パニック時の対応方法、配慮して欲しいこと等)が記入されていますので、その情報を踏まえて、あらかじめ配慮すべき点を知り、対応します。
- 健康情報(主治医、アレルギー、既往歴、服薬内容等)を正しく伝えられない障がい者もいますので、手帳の内容を確認します。手帳の中の「問診票」を記入して持ってくる場合もあるので、確認します。
- 診察終了後、特に大切なことは「医師・看護師からあなたへ」の欄に記入しておきます。記入したことを本人や付き添い者に伝えます。
- <医療サポート絵カード>
- 医療サポート絵カード [PDFファイル/2.32MB]
- 「採血します」「CTを撮ります」といった言葉では、これから行われる処置等について理解を得られない人、またこれから行われることの見通しがたたないと強い不安を感じる人がいます。
- 言葉での理解が難しい知的障がい者や発達障がい者の中には「医療サポート絵カード」等の視覚的な情報による説明が有効な人がいます。見通しが立つと、安心して医療を受けられるようになります。
- 問診、診察、採血、レントゲン、心電図、CT等の場面のカードがあります。あらかじめ診察室や検査室に用意しておき、これから行う処置等について説明する際に使用します(使い方の詳細は「医療サポート絵カード」に添付しています)。
- 患者の中には、自分の体の不調を言葉で訴えることが苦手な人がいます。何枚かの訴えに関するカードを提示し、本人に一番近い状態のカードを選んでもらうことでスムーズな診療につながることがあります。ただし患者によっては、気に入ったカードを選んでいる場合もあるので、付き添い者の意見も傾聴します。
- カードはこれに限らず、各医療機関で作成したカードや写真が有効なこともあるので、工夫し作成していただきたいと思います。
このページの作成所属
福祉部 障がい福祉室地域生活支援課 地域生活推進グループ