政務調査費(報告書本文)

更新日:2023年3月6日

 

大阪府個別外部監査結果に関する報告

(平成16年度及び17年度に交付した政務調査費に係る住民監査請求)

 

平成19年6月8日

大阪府監査委員 御中

個別外部監査人  弁護士 播磨 政明

 

同補助者     弁護士 野田 貴浩

 

同補助者     弁護士 福居 和廣

 

同補助者     弁護士 西村  渡

 

 地方自治法(昭和22年法律第67号。平成14年改正後のもの。以下「法」という。)第252条の43第4項の規定に基づき、住民監査請求に係る個別外部監査の結果に関する報告を以下のとおり決定し、提出します。

 

第1 監査の概要

 1 監査の種類

 法第252条の43第2項に規定する住民監査請求に係る個別外部監査の請求(以下「住民監査請求に係る個別外部監査の請求」という。)に係る事項についての監査

 

 2 住民監査請求に係る個別外部監査に係る事項

    平成19年2月22日付けで府議会議員政務調査費返還請求に係る住民監査請求がされ、同年3月1日付けで監査委員より補正通知がなされたことを受け、同年3月23日付けで提出された「政務調査費住民監査請求補正書」を含む事項

  本件は、大阪府の住民である請求人が、大阪府議会の各会派並びに各議員に対して平成16年度及び平成17年度に交付した政務調査費について、大阪府政務調査費の交付に関する条例及び大阪府政務調査費の交付に関する規程で定められた使途基準に反し、目的外に使用したとして、知事が議員及び関係者に対して損害賠償請求あるいは不当利得の返還請求を行うなど必要な措置を講ずるよう、求めるものである。

3 個別外部監査の実施 

    本住民監査請求は、地方自治法第252条の43第1項に基づく個別外部監査による監査を求めたところ、平成19年4月9日付けで大阪府監査委員が個別外部監査契約に基づく監査によることが相当との決定をした。これを受け、同年4月23日に大阪府議会の議決を経て、同年4月24日から6月8日までの間、個別外部監査を実施し、その結果を大阪府監査委員に提出するものである。

 

4 請求人の陳述及び証拠の提出

(1) 請求人に対して、法第242条第6項の規定に基づき、平成19年4月26日に陳述及び証拠の提出の機会を設け、請求人から請求内容の補足説明があった。

  その際、法第252条の43第7項の規定に基づき、監査対象部局職員が立ち会った。

(2) 請求人の意見陳述の概要

ア 請求人陳述

・    政務調査費について、平成12年頃から全国の市民オンブズマンが取り組み、見張り番でも関心を持っていた。先行したのは仙台の市民オンブズマン。特に弁護士が熱心であった。

・    草分けは、大阪だったが、議員数が多く、なかなか手がつけられなかった。大阪府、大阪市とも透明度が低い。府議会にも陳情したが、取り上げてもらえなかった。

・    監査請求では、ほとんど棄却・却下となっているが、住民訴訟では認められた例もあり、一定の成果が出た。目黒区の例のように報道で取り上げられたものもある。

・    大阪府、大阪市とも収支報告書を見ただけではどう使われたのかわかりにくい。市は使途について全く説明がない。府の方は一定説明があるが、その使途の中身をみると議員の政務調査費に対する認識がない実体が明らかとなった。

・    全体のバランスで、会派10万円、議員49万円なので、議員に注目して調べたところ、事務費、事務所費、人件費で7割以上が支出され、本来の政務調査にはあまり使用されていないことがわかった。地方自治法や総務省のいう透明性がおざなりにされている。収支報告書だけだと、はっきりと違法とはわからない。しかし、汲み取り代、機器のリース代、メンテナンス代、駐車場借り上げ代などはっきり違法なものを特定して返還を求めた。

・    通常の議員活動と政務調査活動とが混同されている。全国1位、2位の高額な政務調査費を支給しているが、使い切って返還もほとんどされていない。

・    議員団総会費やホームページ代などは政務調査以前の問題で、明確に違法。

・    通常の議員活動と政策、条例立案、議案をより深めるための調査とは区別して、政務調査費は、後者の費用とすべき。

・    監査請求で返還を認められるのは珍しいが、新宿区の例がある。包括外部監査報告では徳島の例がある。住民監査請求できちんと見てもらった例はほとんどない。今回、個別外部監査請求が認められ、全国でも注目されている。議会選出の監査委員がいるので、このようになったと思う。

・    大阪府では、帳簿、領収書等が保管されているはずなので、調べるのに取っ掛かりがある。大阪で政務調査費に対する先進的な考え方を示してほしい。

・    青森地裁判決では議員活動と政務調査活動は按分すべきとされた。名古屋では、毎月5万円ずつ積み立てた共通費が違法と判決が出た。

・    政務調査は通常の議員活動とは違う。按分の考え方をみても、通常の議員活動とは区別すべきものである。

・    条例改正の提案はどこまでなされているのか。

・    資料の作成費関係は今回請求していないが、どのような調査・研究があったのか、府民への調査報告がない。どれだけの期間、政務調査で事務所を使ったのか示されていない。

・    請求段階では2分の1など按分していたが、今回の補正で、立法調査事務、政策立案等の事務に使われたという説明責任がはたされていないとして全額違法とした。

※印部分は交付された政務調査費総額を超えるのでその部分は交付額を違法とした。

・  今年の10月から請求書が添付されるのかと思っていたら、10人の事務所と自宅の住所が同じ府議会議員の政務調査費使用が新聞に出た。そこで、ホームページを繰って事務所と自宅の住所が同じ議員を調査した。

・    議員の資産報告なども見たが、雑費が掲げられており、事務所費分を収入にあげている議員はいないようだった。

・  ☆印部分は、費目が0の部分で監査請求しないが、違法ではないということではない。

・  住民からの相談、知事が提出した予算・議案の議決部分は普通の議員活動。

大和市の例で述べられているが、もともと国会議員に支給される立法事務費にと同様のものを地方議員に、会派を結成し補助金として支給し始めたものが政務調査費であったものが、立法事務の部分が抜け落ちてしまった。

    議案についてより深く調査する部分、大掛かりな調査などに使うのが政務調査費。

・     使途基準は、大阪府のものはまだましで、「調査研究」という文言がはいっている。なんのための調査研究かが書かれていない点が不備ではあるが、違法とまではいわない。

・      議員活動における行政事務とは、府政として一般的な予算、計画等行政から提案されるものに賛成か反対かだけの判断をするだけの部分。これは通常の議員活動にあたる。

・      通常の議員活動とは、ア本会議・委員会等に出された議案に賛否を示すだけ、イ地域住民の要望を取り上げて伝えるだけ等の部分をいう。政務調査はもっと深い調査をし、提案する部分。

・      議員の条例提案などは行政側の提案以上の調査が必要で、これは政務調査。

・      新聞の購読、六法全書の購入などは政務調査ではない。

・      政策立案に役立つ調査には政務調査費を使えるが、単に住民の要望を伝えるだけでは使えない。

・    議員団総会や幹事会は通常の議員活動で、政務調査費を使えない。

・      議員や会派が出す要望などは、通常の議員活動。単に意見を述べるだけの意見書もそうである。

・      按分の考え方を否定するものではないが、その程度が50パーセントなのか、75パーセントなのかは、内容がわからないから判断できない。

・      議長に措置は求めていないが、第一段階としては議長の責任。今回措置を求めるのは知事。

・      調査研究費にふさわしい議員活動が記載されている文章を本日提出したい。

イ 請求人から追加資料「政務調査費の生い立ち」の提出を受けた。

 5 監査対象部局の陳述及び調査

(1) 大阪府議会事務局に対し、平成19年5月1日に陳述を求めるとともに、管理保有する平成16年度及び平成17年度政務調査費に係る関係書類の調査等を行った。

なお、陳述の際は、法第252条の43第7項の規定に基づき、請求人の立ち会いを行った。

(2) 部局陳述の概要

ア 議会事務局陳述(局長) 

◆    政務調査費は、地方自治法第100条第13項に規定されているように、議員の調査研究に資するため、議会における会派及び議員に対して必要な経費の一部を交付するもの。

◆     自治体議会議員の活動は、大きく分けて、政治団体の活動や選挙運動などの政治活動と議員活動があり、広い意味の議員活動は、次に述べる三つに区分できると考えられている。

 第1に、「議会活動」、例えば議会の会議における審議を通じて団体意思(例えば条例)または機関意思(例えば意見書)の確定、議決をすること。

 第2に、「会派活動」、会派として議会を運営及び管理する活動や会派が議会活動に直接関連して行う調査研究活動。

 第3として、「狭義の議員活動」、議員が当該自治体の事務に関し、調査研究するための活動。

 政務調査費については、基本的にはこの狭義の議員活動及び会派活動の中の議会活動に直接関連する調査研究活動が対象。

 政務調査費の対象となる議員の職務は、都道府県議会制度研究会最終報告によると、イ.自治体の政策形成に関わる調査・企画・立案を行うこと、ロ.政策形成に必要な情報収集、意向調査、意見交換などの活動を行うこと、ハ.政策形成に関する調査研究の推進に資するため、議案調査、事務調査などの活動を行うことが考えられる。

 それが選挙活動とされるものでない限り、住民との意見交換など住民意思の把握・吸収のための活動も政務調査費の対象となる議員の職務と解すべきである、とされている。

◆   多様な民意を吸収し、その集約化を図っていくために、ますます議員の調査研究活動は重要となっており、政策立案機能や監視機能のさらなる充実とそのための自立的な議会運営の必要性が高まっている。

 平成12年4月の分権一括法の施行に伴い、地方議会の役割の増大を反映して、議員に求められている活動領域も拡大しており、自治体議会議員、特に都道府県議会議員は、その活動に生活時間の相当部分を割いており、常勤化している実態にある。

 このような状況の中で、政務調査費制度は、地方議会の活性化を図るためには、議会の議員及び会派の審議能力を強化していくことが必要不可欠であり、自治体議会議員の調査活動基盤の充実を図る観点から、地方自治法が改正され、平成13年4月から法制化施行されたもの。

◆    本府ではこの地方自治法の改正を受け、「大阪府政務調査費の交付に関する条例」及び「同規程」を制定し、政務調査費の使途基準の設定や収支報告書の閲覧などの透明性の確保策を図りつつ、制度本来の趣旨に沿った運営に努めてきた。

 その成果として、何件かの政策条例(案)の議員提案もなされ、平成18年2月議会では「大阪府の出資法人等への関与事項を定める条例」が制定された。また、直接府内市町村や府民等と意見交換しその効果性を調査検討し、施策に結びつけた事例も多くあり、最近では、AED(自動体外式除細動器)の普及促進事業、自動販売機を通じてのメセナ(文化)振興のための制度化などが実現されている。

 以上のように、府議会の政策形成機能と監視機能の強化が、政務調査費を活用することにより、図られているものと理解している。

◆    最後に、公費支給を受けている以上、議員活動を住民から見えるものとし、説明責任を果たしていく努力が求められるため、府議会においては、昨年10月から各会派の代表者で構成する議会運営委員会理事会の場で更なる透明性の向上を目指して協議が行われ、その結果、「政務調査費あり方協議会」を設置することを決定した。

 この協議会では、弁護士や公認会計士等の有識者の意見、更には、本外部監査の論議も踏まえながら、収支報告書に領収書を添付するなどの透明性の向上策、使途の具体化を図るための協議を行い、今年の9月定例府議会での条例改正、10月施行を目途としている。

イ 議会事務局陳述(総務課長)

◆   政務調査費とは、「議員の調査研究に資するため、議会における会派及び議員に対して必要な経費の一部を交付するもの」であり、この制度の根拠となる地方自治法が平成12年5月に改正され、平成13年4月から施行された。

法の規定を受け、本府では、「大阪府政務調査費の交付に関する条例」と使途基準や各種様式を定めた「大阪府政務調査費の交付に関する規程」を平成13年4月1日から施行している。

また、この制度の内容を説明した「政務調査費のしおり」を作成し、会派及び議員へ説明の上、配布している。

◆    交付については、会派及び議員に交付しており、会派に対しては、月額10万円に会派の所属人数を乗じた額を、議員に対しては1人当り月額49万円を、毎月交付している。

◆    使途基準については、条例第9条で「会派及び議員は、政務調査費を議長が規程で定める使途基準に従い使用しなければならない。」と規定され、規程第5条により、会派については別表第一、議員については別表第二にそれぞれ規定されている。

会派、議員分ともに「調査研究費」、「研修費」、「会議費」、「資料作成費」、「資料購入費」、「広報費」、「事務所費」、「事務費」、「人件費」の9項目に分けてそれぞれについて具体的に内容を定めている。

◆    使途基準の運用については、政務調査費制度の発足時に全国都道府県議会議長会が取りまとめた「政務調査費の使途の基本的な考え方」に例示や考え方が示されており、これが政務調査費の使途基準の運用に際しての判断材料となるものであり、「政務調査費のしおり」とともに会派及び議員へ説明の上、配布している。

   収支報告については、会派の代表者及び議員は政務調査費の交付を受けた翌年度の4月30日までに、また、会派が消滅した場合や議員が退職した場合はその翌日から起算して30日以内に議長に収支報告書を提出しなければならないこととなっている。

◆    政務調査費が法制化された地方自治法改正の際の平成12年5月31日付け自治省通知において、透明性の確保に関して、「政務調査費については、情報公開を促進し、その使途の透明性を確保することも重要であるとされていることから、条例の制定にあたっては、例えば、政務調査費に係る収入及び支出の報告書等の書類を情報公開や閲覧の対象とすることを検討するなど透明性確保に十分意を用いること」とされている。大阪府では、この通知にあるように、政務調査費の透明性の確保について、条例で何人も収支報告書を閲覧できる規定を設け、府議会情報公開コーナーで常時閲覧しており、情報公開の促進及び透明性の確保策を講じている。

   今後、「政務調査費あり方協議会」を設置し、更なる透明性の向上を図るため、収支報告書に領収書の写しを添付することなどの検討を行うこととしているところである。

◆    提出された収支報告書の審査については、議会事務局において収入額、項目毎の支出額、その項目毎の主たる支出の内訳の記載内容、支出の合計額及び残余額を確認している。

 領収書等の証拠書類については、会派の政務調査費経理責任者及び議員において、5年間の保存義務を課しており、条例上、収支報告書への添付義務は課していない。

 証拠書類等の保存について、会派の政務調査費経理責任者及び議員は、政務調査費の支出に係る会計帳簿を調製するとともに証拠書類等を整理保管の上、5年間保存しなければならないこととなっている。

議長の調査については、議長は収支報告書が提出されたときは、必要に応じて調査を行うこととされており、調査権の運用としては、収支報告書の内容に明らかに使途基準と合致しないなどの疑義が生じた場合に限って、調査を行うこととしている。

   また、知事の損害賠償請求又は不当利得返還請求については、知事は、議員活動の自主性を尊重するという観点からも、収支報告書から一見して使途基準に合致しないことが判明した場合に調査することができるものであると考えられる。

   交付した政務調査費に残余額が生じた場合は、知事は返還を命じることができるとされており、毎年度、会派及び議員から残余額について返還されている。

◆    次に、使途基準等について説明する。

議員活動における固定的・日常的な経費について、政務調査費の制度は、地方議員の調査活動基盤の充実を図るため、平成12年5月の地方自治法の改正により平成13年度から法制化されたものである。

この改正は、現代の地方議員は住民との意見交換など住民意思の把握・吸収のための活動などその勤務実態が常勤化、専業化しつつあり、更に、地方分権時代にあって、地方議会が住民の負託に応え、その役割を十分に発揮していくためには、議会を構成する議員の活動基盤の強化が必要不可欠である、とする全国都道府県議会議長会の強い要望等により改正がなされたものである。

◆    地方議員、特に都道府県議会議員の調査研究活動は、多様な民意を吸収し、その集約化を図り、施策として実現するための日常的な活動であり、政務調査費は固定的・日常的な経費、例えば事務費、人件費、事務所費なども対象となるものである。

 事務費について、調査研究に係る事務の遂行に必要な経費を対象とし、調査研究活動のために使用する備品の購入、パソコン、コピー機など事務機器のリースや電話、ファックスなどの通信費は対象になるものである。

人件費について、調査研究を補助する職員を雇用する経費を対象とし、議員は年間を通じて日常的に調査研究活動を行っており、それに必要な人件費は年間を通じて発生するものであり、雇用している職員が政務調査の補助以外の業務も行っている場合は、按分すべきと考えられる。

  事務所費について、自宅兼用の事務所の場合、調査研究に必要な事務所部分に係る光熱水費等その管理に要する経費の支出は対象となり、その所有者が生計を一にする親族以外である場合は、その調査研究に必要な事務所部分の賃貸料も対象となり、後援会事務所との兼用など調査研究以外にも使用している場合、経費を按分すべきであると考えられる

なお、府政相談所、府政事務所、相談事務所など事務所にこのような名称が付されている場合でも、そこで府民から相談を受けたり、その意見を聞き、府政に反映することは政務調査活動と考えられ、事務所費は政務調査費の対象となる。

広報費について、議会活動及び府政に関する政策等の広報活動に要する経費を政務調査費の対象としており、政党活動や後援会活動の広報は対象としていないが、議会での質疑や府政に関する広報は、会派や議員の政務調査活動の成果を府民に報告し、また、それを基に府民から府政に関する公聴や意見を吸収し、それらを府政へ反映するための手段となり、政務調査活動の一環となるものである。また、会派や議員のホームページも、インターネットで議会活動や府政に関する政策等を幅広く紹介し、府民の意見を求めることは府政の推進にあたって有効な手段であり、その管理に要する経費は対象となるものである。

   資料購入費について、調査研究のために必要な図書、資料等の購入に要する経費を対象とし、調査研究活動のために利用する資料や書籍は対象となるものであり、また、法令集についても、施策の検討や協議のためには必要なものである。

調査研究費について、「府の事務及び行財政に関する調査研究並びに調査委託に要する経費」を対象としており、立法事務、政策立案のみではなく、府の事務及び行財政に関する全ての調査研究並びに調査委託が対象となるものである。

「政務調査のしおり」については、平成13年4月の政務調査費が法制化された際に作成したもので、作成と同時に各会派及び議員へ配布の上、会派ごとに説明会を開催している。また、平成15年の改選の際には、新人議員に配布の上、説明を行い、その後も補欠選挙で新たに議員となった者にはその都度配布、説明を行った。

    また、「政務調査費の使途の基本的な考え方」についても同様に配布、説明した。

◆    会派は法令で義務付けしているのではなく、当該議会で同じ政策を持つ議員の集団をいい、原則2人以上で結成するものだが、運用上は1人会派も認められている。

 政党とは、政治資金規正法第3条第2項において定義されている。

 会派の組織としては、会派の最高意思決定機関である議員団総会があり、その下に執行機関である幹事会、会派の施策の企画・立案、代表質問、知事提言等の協議機関である政務調査会がある。この政務調査会の下では府政のそれぞれの分野ごとに部会が設置されている。

幹事会では、政務調査会で作成された施策案等について議員団総会に諮るための協議等を行い、議員団総会では、幹事会や政務調査会等で検討された施策について協議を行い、会派としての意思決定をしており、議員団総会で決定された会派の政策は、これを府政に反映させるために府議会の代表質問や府政に関する知事への要望という形で実行され、いわば、政務調査活動の成果となる。

このように、政務調査会、幹事会及び議員団総会は一体となって政務調査活動を行っている。

◆    都道府県議会制度研究会での議論の状況と到達点については、報酬は、地方自治法上、一定の役務の対価として与えられる反対給付であり、地方公共団体の議会の議員や非常勤職員が行う勤務に対する反対給付であると解され、一方、政務調査費は、会派及び議員の調査研究に資するために必要な経費である。

政務調査費は、実費弁償的なものと考えられ、地方自治法にその交付が保障されているものである。

都道府県議会制度研究会の最終報告書では、議員の報酬は、月額で支給されており、期末手当が支給されていることから、非常勤職を前提とした名称としては相応しくないと指摘され、職務実態に相応しく地方歳費(仮称)に改めるべきであると提言されている。

政務調査費については、「議員の行う議案等の審査に資するための調査研究活動はもとより、住民との意見交換会など住民意思の把握・吸収のための活動も、それが自己の後援会活動の一環として行われるなど特定の住民を対象とするなどの、いわゆる選挙活動とされるものでない限り、公費助成(即ち政務調査費)の対象となる議員の職務と解すべきである」とされている。

◆    要望書とは、会派として府内市町村から要望を受け、また、議員の日常の住民との意見交換や府政相談による住民意思の把握・吸収などにより、府の様々な施策に関して、会派として意思決定したものを府に要望したり、会派としての見解や提言を行うものである。

   その内容は、府政全般にわたり、様々な課題に対して広範かつ具体的な要望や提言が盛り込まれ、この要望や提言が府政に反映されることにより、府民福祉の向上につながるものであり、これらは、会派や議員の政務調査活動の成果の一つ。

◆    政務調査費の使途については、それぞれの会派や議員が「基準」に基づき適正に処理されているものと認識しているが、明らかな記載誤りや錯誤がある場合は、適切に措置すべきものと考えており、特に条例や規程で定められていないが、(5年間の)保存閲覧期間中、会派や議員の届出によって訂正できる。

(3) その後、平成19年5月23日付で府議会事務局から、同月31日付で府議会事務局長から、大阪府政務調査費に係る住民監査請求についての基本的な考え方(メモ)による補足説明がなされ、同年6月1日付で大阪府議会議長、副議長、会派幹事長6名連名で大阪府政務調査費についての基本見解が提出された。

  6 関係人の調査

(1)大阪府議会会派

 平成16年度又は平成17年度に大阪府政務調査費の交付を受けた次の会派に対し、平成19年5月8日から5月11日までの間(以下のアからカまで)、法第252条の43第6項で準用する法252条の38第1項の規定に基づき、出席及び会派会計帳簿等記録の提出を求めたところ、経理責任議員等が出席し、併せて会計帳簿等記録を提出して本件に係る事実関係の説明等に応じた。

ア 自由民主党大阪府議会議員団(以下「自民党」という。)

イ 民主党・無所属ネット大阪府議会議員団(以下「民主党」という。)

ウ 公明党大阪府議会議員団(以下「公明党」という。)

エ 日本共産党大阪府議会議員団(以下「共産党」という。)

オ 大阪府議会主権おおさか(以下「主権おおさか」という。)

カ 無所属府民クラブ大阪府議会議員団(以下「府民クラブ」という。)(平成16年度分のみ)

キ 社会民主党大阪府議会議員団(以下「社民党」という。)

ク 大阪府議会富田林市民クラブ(以下「富田林クラブ」という。)

   なお、社民党は平成19年5月21日、富田林クラブについては、平成19年5月23日に、代表者が出席し、併せて会計帳簿等記録を提出して本件に係る事実関係の説明等に応じた。

  (2)大阪府議会議員

   平成16年度又は平成17年度に大阪府政務調査費の交付を受けた議員(現時点で議員でない者も含む。)に対し、平成19年5月14日から5月25日までの間、法第252条の43第6項で準用する法第252条の38第1項の規定に基づき、出席及び会計帳簿等記録の提出を求めたところ、関係人等が出席し、併せて会計帳簿等記録を提出して本件に係る事実関係の説明等に応じた。

第2 監査の結果

1 法令等の定め

(1)     法第100条第13項の規定によれば、地方公共団体は、条例の定めるところにより、その議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として、その議会における会派又は議員に対し、政務調査費を交付することができるとされている。

大阪府では条例第2条により大阪府議会の会派(所属議員が一人の場合も含む。)及び議員の職にある者に対して政務調査費を交付することになっている。

会派及び議員は政務調査費を議長が規程で定める使途基準に従い使用しなければならず(条例第9条)、政務調査費は主たる支出として

イ.調査研究費、ロ.研修費、ハ.会議費、ニ.資料作成費、ホ.資料購入費、ヘ.広報費、ト.事務所費、チ.事務費、リ.人件費

の9項目に支出されるべきものとされている(条例第10条第1項)。

その使途基準は大阪府政務調査費の交付に関する規程第5条により、会派の場合と議員の場合に分けて定められている(別表第一、別表第二)。

(2)   会派に対する政務調査費の額は、月額十万円に当該会派の所属議員の数を乗じて得た額とするとされ(条例第3条第1項)、所属議員の数は、月の初日における各会派の所属議員数によるとされている(条例第3条第2項)。

(3)   議員に対する政務調査費の額は、月額四十九万円とするとされている(条例第4条第1項)。

  2 議会政務調査費の内容(会派)

(1)   平成16年度

    平成16年度政務調査費の各会派別の交付申請額、支出額、返還額は、平成16年度大阪府議会政務調査費収支報告書に記載のとおりである。

    平成16年度の交付総額は133,300,000円である。支出総額は158,463,139円、返還額は2会派から399,958円である。

(2)    平成17年度

    平成17年度政務調査費の各会派別の交付申請額、支出額、返還額は、平成17年度大阪府議会政務調査費収支報告書に記載のとおりである。

    平成17年度の交付総額は131,700,000円である。支出総額は156,994,205円、返還額は1会派から148,390円である。

  3 議会政務調査費の内容(議員)

(1)    平成16年度

    平成16年度政務調査費の各議員別の交付申請額、支出額、返還額は、平成16年度大阪府議会政務調査費収支報告書に記載のとおりである。

    平成16年度の交付総額は議員114名に対し、653,170,000円である。

    返還額は11名から5,191,557円である。

(2)    平成17年度

    平成17年度政務調査費の各議員別の交付申請額、支出額、返還額は、平成17年度大阪府議会政務調査費収支報告書に記載のとおりである。

    平成17年度の交付総額は議員111名に対し、645,330,000円である。

    返還額は7名から2,008,895円である。

  4 判断

   A 監査対象

(1)      会派

ア     請求人が会派の違法支出と主張しているのは使途基準別表第一所定の9項目のうち、ハ.会議費、ニ.資料作成費、ホ.資料購入費、ヘ.広報費、チ.事務費、リ.人件費の6項目である。

イ     平成16年度分は別紙A-1-1平成16年度政務調査費監査対象額一覧会派分のとおり、8会派に対する合計98,788,721円の支出を違法と主張している。

ウ     平成17年度分は別紙A-2-1平成17年度政務調査費監査対象額一覧会派分のとおり、7会派に対する合計97,284,958円の支出を違法と主張している。

(2)      議員

ア     請求人が議員の違法支出と主張しているのは、使途基準別表第二所定の9項目のうち、イ.調査研究費、ハ.広報費、ト.事務所費、チ.事務費、リ.人件費の5項目の支出である。

イ     平成16年度分は、別紙B-1-1平成16年度政務調査費監査対象額一覧議員分のとおり114名に対する合計342,935,417円の支出が違法であると主張している。

ウ     平成17年度分は、別紙B-2-1平成17年度政務調査費監査対象額一覧議員分のとおり111名に対する合計286,064,010円の支出が違法であると主張している。

    B 本件監査における判断基準

1.基準

(1) 大阪府議会事務局では平成13年4月政務調査費の交付が開始されるに当り、「政務調査費のしおり」(以下「しおり」という。)を作成、配布し、会派及び議員に政務調査費の制度と経緯、使途基準等、収支報告書の記入方法、会計帳簿の調製方法、課税等について説明するとともに各種届出様式を添付し、条例、規程についても掲載し、制度の趣旨について周知徹底を図った。「しおり」では制度の意義として、議会の活性化を図るためには議員の調査活動基盤の充実強化が不可欠であり、この観点から、法に政務調査費の交付の制度が設けられたと説明している。その後、平成15年度の選挙の際には初当選議員説明会においても初当選議員に対し、補欠選挙で新たに議員になった者にはその都度、政務調査費のしおりと共に下記都道府県議会議長会が作成した「政務調査費の使途の基本的な考え方について」も配布説明し、一層の周知徹底を図ってきた。

(2) 法の一部改正により全都道府県において各条例が制定され、平成13年4月1日から政務調査費の交付がなされるようになったが、同年5月開催の全国事務局長会において具体的な使途について一定の基準作成を検討すべきとの決定がなされた。その結果、同年10月16日付で全国都道府県議会議長会から「政務調査費の使途の基本的な考え方について」(以下「考え方」という。)がまとめられ、報告された。

この「考え方」は全国一律の基準を設定することは無理があり、逆にそのことにより本制度の趣旨にそぐわないこととなる恐れがあるため、具体的問題事例についての基本的な考え方を示すにとどめ、あくまでも各県議会における運用に際しての一つの判断材料を提供するというのであるが、次のとおりの内容となっている。

ア 政務調査費を充当するのに適しない例

 ◇ 政党活動への支出

 ◇ 選挙活動への支出

 ◇ 後援会活動への支出

 ◇ 私的経費への支出

 《科目別》

  〈調査研究費〉

   ・ 挨拶、会食やテープカットだけの出席

   ・ 飲食を主目的とする懇談会

   ・ 議員が他の団体の役職を兼ねていて、その団体の理事会、役員会や総会の出席

  〈事務所費〉

   ・ 事務所購入費

  〈会議費〉

   ・ 公職選挙法の制限や社会通念上の妥当性を超えた飲食、その他、法令等の制限に抵触する事項

イ 会費として支出するのに適しない例

 ・ 団体の活動総体が政務調査活動に寄与しない場合、その団体に対して収める年会費、月会費の支出

 ・ 個人の立場で加入している団体などに対する会費等

 ・ 政党(県連)本来の活動にともなう党大会、党費、党大会賛助金等

 ・ 議会内の親睦団体の会費

 ・ 他の議員の後援会や祝賀会に出席する会費

 ・ 宗教団体の会費

 ・ 冠婚葬祭の経費

 ・ 親睦または飲食を目的とする会合の会費

 ・ 意見交換を伴わない会合の参加費

ウ 人件費・事務所費等の按分の考え方

 〈事務所費(光熱水費を含む)〉

〇 議員名義の単独の事務所の場合

    賃借料、光熱水費等は政務調査従事時間数(概数)により按分する。

〇 他(後援会等)の事務所と兼ねている場合

   ・ 議員の事務所として使用されている実態が必要

   ・ 実績で按分すべきと考えるが、政務調査費での負担割合を2分の1以内とする考えもある。

   ・ 自宅(家族名義を含む)を事務所としている場合、賃借料を支払うことは不適当である。

 〈事務費(通信費)〉

  政務調査に係る通話時間(概数)、使用頻度で按分する。

 〈人件費〉

〇 事務所職員を政務調査活動に従事させている場合、調査研究に従事する平均時間、日数等で按分する。負担割合を2分の1以内とする考えもある。

〇 政務調査活動専従職員

  議員個人が調査研究のために雇用した職員は全額充当できる。

 〈交通費〉(自動車使用の場合)

  使用キロ数(記録をとっておくことが必要)及び主な用務で区分する。

 この「考え方」は「政務調査費は調査研究に資するため必要な経費の一部として交付されることから、その具体的な使途については、調査研究活動として一般的に認定される事業あるいは諸経費である限り、その範囲内で充当することができるものである」とし、「政務調査費の活性化の趣旨から、今後使途の透明化を図ることを強く要求されている」としている。

(3) 都道府県における政務調査費の交付が始まるとともに全国各地において政務調査費について使途基準に反する違法な支出が行われているとして、支出者に対し支給を受けた会派、議員に対する不当利得返還ないし損害賠償請求を提起することを請求する訴訟が提起され、各支出項目についての裁判所の一定の判断が示されてきた。

 弘前市長に対する青森地裁平成16年2月24日判決、同地裁平成18年10月20日判決、同仙台高裁平成19年2月20日判決、自民党品川区議団に対する東京地裁平成16年4月13日判決、同事務局長に対する平成18年4月14日判決、寝屋川市長に対する大阪地裁平成18年7月19日判決、愛知県知事に対する名古屋地裁平成17年5月30日判決、同名古屋高裁平成18年2月15日判決等多くの事例が集積している。

(4) 政務調査費については長野県、徳島県でも包括外部監査により問題点が指摘され、改善に踏み出しているが、近時墨田区で平成17年度に交付した政務調査費に係る住民監査請求に関し、本件同様に個別外部監査が実施され、結果が報告されている。

(5) 本件は、大阪府議会各会派及び各議員に交付された政務調査費の使途内容についての監査であるが、「しおり」「考え方」を基本とするとともにすでに集積されてきた各地の裁判所の判決例の基準、包括、個別外部監査の基準は参考とすべきものである。

 そして、これらの基準は制度の趣旨に鑑み、その使途について、透明性が確保されていることを当然の前提とし、使途基準に沿った支出であることについては会派ないしは議員に説明責任があることを指摘し、具体的、合理的な説明がなされない場合には目的外支出と推認されるべきであるとする立場に立っているものと思われる。また政務調査費は支出した実費を弁償するものであり、使用残額については返還することを要するため、特に非課税とされている。

(6) 以上の「しおり」、「考え方」、各種判決例、監査結果を参考に本件の会派及び議員に対し、政務調査費は議会の公式活動としての公務には充てられるものではないと考えられること、政務調査費は、定額報酬ではなく、実費弁償であること、精算が必要であり、残金は年度末に収支報告書を提出して府知事に返還すべきものであることを監査の基本的な考え方とし、原則として以下の基準を適用して判断した。

2.会派

(1)   会議費

ア     会議における昼食、夜食は府庁の所在地に飲食店が少ないことを勘案し、各会派の支給実績を検討して以下のとおりとした。

昼食弁当は1,500円まで、夜食弁当は3,000円までとする。

イ    飲食を伴う会合

調査研究を伴うものは1人5,000円までとする。

調査研究よりも飲食を主とすると認められるものは支出は認められない。

ウ    会派会合に参加するための費用弁償は原則実費とし、公共交通機関を利用するものとする。タクシー利用はやむをえない事情がある場合に限られる。定額の場合は、今回、資料を提供された3会派の議員の交通費の平均額に照らし、墨田区と同様1,000円とする。

エ    飲料水は必要であるが、余りにも多額は1/2までとする

(2)   資料作成費

 議会審議のために必要な資料であることを要する。

(3)   資料購入費

ア    新聞は原則1部とする。特別に必要が認められる場合、複数部も認める。

イ    職員録も1部

(4)   広報費

所属議員を通じる会派の広報活動は、実費弁償とする。

定額支給で、精算不要とする扱いは認められない。

議会手帳、府政ノートの配布は使途基準にいう会派の広報活動とは認められない。

(5)   事務費

ア    会派控室の制服代は問題あるが、支給されてきた経緯に鑑み、今回は目的外支出とはしない。

イ    機器の複数購入は必要性を吟味する。

ウ    事務用品の注文の中に日常生活用品がある場合には原則として認めない。

エ    来客用と認められる飲料水以外に事務費中に大量の飲料水が含まれている場合は必要性を吟味する。

オ    事務費の中に弁当代が含まれているときは会議費の基準に従って判断する。

(6)   人件費

政務調査に従事する割合に応じて勘案する。

3.議員

(1)   調査研究費

ア    調査旅費

イ.   金額が大きく、個別に調査研究目的が記載されているものは目的との関連で具体的に必要性を判断する。

ロ.   日常の交通費(タクシー代、高速代、駐車場代を含む)を計上し、当該支出と個別の政務調査目的との関連が具体的に認定されず、日常の議員活動と区別がつかないものは、本来公共交通機関を利用すべきであること、管外調査旅費は、イ.で別途個別に認めていること、タクシーの利用はやむをえない場合にのみ認められるべきであること、ガソリン代は、ハ.において別途認めていること、議会活動の際には別途費用弁償が認められていること等から精算を要しない支出としては、1ヶ月10,000円、年間で120,000円を限度として認める(寝屋川市議会判決)。広報費、事務費中に交通費が分散して計上されている場合は一括して120,000円の範囲内とする。

ハ.   ガソリン代はキロ数を取り、実費精算するのが「考え方」であるが、明らかではない場合には、原則として私用(一般議員用)、後援会、政務調査費の割合を1/2、1/4、1/4で按分する。後援会活動をしていないと主張し、合理性がある場合には、私用部分と1/2で按分する。

イ     調査委託費

イ.    委託契約書と毎月の業務報告書の存在と毎月の実績による精算が必要であり、その業務内容が委託料と見合うか判断する(名古屋地裁、高裁基準)。

ロ.    契約書もなく、毎月の実績報告による精算がなされない調査委託は認められない。

 但し、共産党については、会派の実態と全額否認することによる影響を配慮し、本件監査では1/2の限度で認める。

(2)    広報費 

ア     広報活動と交通費とは関連性が一般的に希薄であり、議員から個別に説明はなく、広報活動に使用されたのか詳細不明がほとんどで、本来認めることは困難であるが、今回については、3つの費目を合算して年120,000円を限度として認める。ガソリン代は調査旅費と同一の基準による。

イ     レタックスは慶弔用に使用されており、目的外支出である。

ウ     名刺は議員活動のために必要な事務用品ではあっても、政務調査活動のために通常必要な経費とは認められない(青森地裁、墨田区基準)。

エ     議会手帳、府政ノートは支持者への配布用であり、議員の交際活動である。議員の政務調査に通常必要な経費とは認められず、目的外支出である。

オ     看板は使途基準に定める広報活動のために通常必要な経費とは認められず、目的外支出である。

(3)    事務所費

ア     賃料

イ.    第三者所有物件で賃料が毎月支払われていることを原則とし、後援会がある場合には1/2で按分する。政党事務所を兼ねている場合には1/3とする。

ロ.    自己所有物件の賃料ないし使用料、分担金の支払は認められな い。親族、その関連会社との間の実質的にこれを回避する趣旨の賃貸借契約は認められない(考え方)。維持運営のための光熱水費を私用部分、後援会部分と按分して1/4が限度である。

ハ.    親族との賃貸借ないし使用料も原則として認められない(考え方)。但し、契約書があり、銀行振り込みにより毎月の支払いが客観的に認められ、後日当事者間において支払い資料が作出されるおそれがない場合に限り認める(寝屋川市議会判決)。

ニ.    自己もしくは親族と実質的に同視できる第三者もしくは会社との間の賃貸借は同様に契約書と客観的な支払いの事実が認められる場合に限り認める。現金での支払ないし口座への現金入金の主張は、支出者を特定できない上、透明性がなく認められない。

ホ.    以上の使用形態であっても、事務所の実態がある場合には維持運営のために光熱水費が必要であるから、別途光熱水費が計上されていない場合には、他の議員の使用状況を勘案し1ヶ月20,000円として240,000円の限度で認める。

イ      駐車場

イ.     自己使用のための駐車場は、自動車そのものが本来政務調査のために一般通念上必要なものとは認められないので、支出は認められない。

ロ.     来客専用ないし来客兼用の場合に限り按分して10/10ないし1/2の限度で認める。

ウ      光熱水費は自宅の場合、自宅、後援会と按分し、政務調査費は1/4とする。賃借の場合、後援会との兼用は1/2、さらに政党事務所を兼ねている場合は1/3とする。

(4)     事務費

ア      通信費

イ.     固定電話、FAXは、自宅、後援会との兼用により1/4もしくは1/2とする。

ロ.     携帯電話は本来政務調査に通常必要なものとは認められず(青森地裁)、その機器購入や買い替え費用は認められないが、自動車と同じく使用料については、認められる。通話明細による立証が具体的になされない限り、私用、後援会と按分して1/4、後援会がない場合は私用と1/2に按分して認める。

イ      事務機器のリース料

  原則として、後援会と1/2に按分する。

ウ      備品

  同様に1/2に按分する。

エ      スーパー、コンビニ等での購入で1点ずつが細かく、政務調査との関連を個々に証明できない事務費は1ヶ月10,000円、年120,000円の限度で認める。

オ     名刺代、洗車代、薬品、化粧品、慶弔費等は目的外支出である。

カ      車の購入は、資産の取得に当り、実費弁償を原則とする政務調査費からの支出になじまない上、車が調査研究に通常必要であるとは認められない。しかも4年間の議員任期を前提とすると支出が高額であり、不適切な支出である。「考え方」において、ガソリン代の実費使用を認めながら、購入について認めていないのもこの趣旨と思われる。従って、車の購入費用及びこれを前提とする車検、保険、修理費用、税金等の維持運営費は政務調査費からの支出を認めることは困難である。議員の地位との関係で必要であれば、報酬から購入されるべきものである。

キ     車のリース料は実質的に購入と変わらず、通常高額であり、4年間を超えるリース期間が通常である。どこにでも移動でき、私用、後援会等にも使いうるので、資産の取得には当らないことを考慮し、1/2の限度で認める。

ク     事務費の中のガソリン代は、走行距離で計算されている場合は別として政務調査の関係による使用か否か通常不明であるので、後援会の有無により1/4ないし1/2を原則とする。

ケ     事務費の中の地下鉄代、カード、タクシー、高速料金等も同様に個々具体的に政務調査のために使用されたか証明されず、関連が通常不明であり、高額になりがちであるので、詳細不明の場合は、全項目を通じて、年間120,000円の限度で認める。

(5)    人件費 

イ.    政務調査補助は通常専門的な分野であるので、常時固定雇用も認める。

ロ.    補助者に後援会活動も担当させている場合原則1/2で按分する。但し、議員が業務実態に照らし、適宜按分している場合には原則としてこれを尊重する。

ハ.    勤務実態と毎月の客観的な支払いが必要であり、事務員の毎月の領収証や源泉徴収票が必要である。

ニ.    妻子や親戚の場合には内助の功等として議員の活動を支えていることは認められるが、それが調査研究を補助することに当るか疑問であるうえに、支払いの実態につき誤解を受けやすく、妻子等に手伝ってもらっていても政務調査費から支出していない議員もあることとのバランスも考慮し、客観的に毎月の支払いが認められる場合に限り認める。

 但し、一定額を計上しており、勤務の実態があると認められる場合には通常の議員活動分、後援会活動分を勘案し、1/2ないし1/4の限度で認める。

  5 結論

調査結果

1 本件監査基準を適用し、会派、議員ごとにヒヤリングを行い調査した結果は別紙の会派及び議員別の各調査結果のとおりである。これを一覧表にまとめると、会派については別紙目的外支出額一覧表A-1-2、A-2-2、議員についてはB-1-2、B-2-2のとおりとなる。

各会派及び議員に対し、損害賠償請求あるいは不当利得の返還請求を行うなど必要な措置を講ずるよう求める請求人の請求は、これら一覧表の認定合計額記載の限度において理由があるから、これらについては大阪府知事に対し、当該金額返還のために必要な措置を速やかに講ずることを勧告するべきである。

なお、本件監査の経過において会派及び議員から減額修正をしたいとの申し出もなされているので、まず、一定の期間を定め、自主的に修正と返還を促した上で、返還に応じない会派、議員に対し、措置を講じることが望ましい。

2 その他の請求人の請求については、理由がないから棄却するべきである。

第3 利害関係

   個別監査の対象とした事項について、法第252条の29の規定による利害関係はない。

第4 意見

 各会派、各議員全員の協力を得て本件監査を円滑に実施することができ、各会派、各議員からの説明も誠実になされたと評価されるが、今般府議会において「政務調査費あり方協議会」(以下「あり方協議会」という。)が設置され、本年9月定例会において条例改正を行うことを全会一致で確認し、誰にでも分かりやすい基準を制定し、その説明責任を果たそうとして、あり方について自主的な協議がされていることに鑑み、今回の監査結果に基づき意見を申し上げておきたい。

  1 制度全般について

ア 条例により証拠書類等の保管が義務付けられているが、廃棄、紛失した議員が散見された。条例に基づき適正に保管されることが周知徹底されるとともに、より一層具体的かつ正確な収支報告書を作成することにより、説明責任を果たされることを期待する。

イ 「しおり」、「考え方」では費目の一例等が示されているにすぎず、具体的な支出がどの項目に該当し、どこまで計上できるのか等の具体的な基準は示されていない。そのためもあってか、支出項目の区分が各会派及び議員の間で統一されていなかったので、議会事務局においては、各支出項目の区分とその内容について、会派及び議員に対して周知徹底を図り、収支報告書受理時の内容確認を厳密に行われたい。

ウ 「あり方協議会」においては、その具体的な基準策定に際し、今回の報告書を斟酌され、最大限活用していただけたらと思っている。

また、一定金額以上の領収書の添付を義務づけられるなどの改善措置を検討されたい。

2 個別の支出項目について

以下の課題について考慮すること。

(会派)

ア 会議費又は事務費における飲食費については、本報告書を踏まえてその取扱いと限度額を定めること。

イ 会派広報については、実績報告書に基づく費用弁償とすること。

ウ 資料購入については、政務調査との関連が認められるようにすること。

(議員)

ア 事務費については、政務調査との関連が認められるようにすること。

イ 事務所費については、本人、親族、関連会社等所有の区分に応じて契約及び賃料等の支払い関係を書類で明確にするとともに按分の考え方を明らかにすること。

ウ 人件費については、政務調査に係る雇用の実態及び毎月の給与の支払関係を書類で明確にすること。

以上

 

別表第一

項目

内容

調査研究費

会派が行う府の事務及び行財政に関する調査研究並びに調査委託に要する経費

(調査委託費、交通費、宿泊費等)

研修費

会派が行う研修会、講演会の実施に必要な経費並びに他団体が開催する研修会、講演会等への所属議員及び会派の雇用する職員の参加に要する経費

(会場費、機材借上料、講師謝金、会費、交通費、宿泊費等)

会議費

会派における会議に要する経費

(会場費、機材借上料、資料印刷費等)

資料作成費

会派が議会審議に必要な資料を作成するために要する経費

(印刷・製本費、原稿料等)

資料購入費

会派が行う調査研究のために必要な図書、資料等の購入に要する経費

(書籍購入費、新聞雑誌購読料等)

広報費

会派が行う議会活動及び府政に関する政策等の広報活動に要する経費

(広報紙・報告書等印刷費、送料、交通費等)

事務所費

会派が行う調査研究活動のために必要な事務所の設置、管理に要する経費

(事務所の賃借料、管理運営費等)

事務費

会派が行う調査研究に係る事務の遂行に必要な経費

(事務用品・備品購入費、通信費等)

人件費

会派が行う調査研究を補助する職員を雇用する経費

(給料、手当、社会保険料、賃金等)

( )内は、費用の一例

別表第二

項目

内容

調査研究費

議員が行う府の事務及び行財政に関する調査研究並びに調査委託に要する経費

(調査委託費、交通費、宿泊費等)

研修費

団体等が行う研修会、講演会等への議員及び議員の雇用する秘書等の参加に要する経費

(会費、交通費、宿泊費等)

会議費

議員が行う住民の府政に関する要望、意見を吸収するための会議に要する経費

(会場費、機材借上料、資料印刷費等)

資料作成費

議員が議会審議に必要な資料を作成するために必要な経費

(印刷・製本費、原稿料等)

資料購入費

議員が行う調査研究のために必要な図書、資料等の購入に要する経費

(書籍購入費、新聞雑誌購読料等)

広報費

議員が行う議会活動及び府政に関する政策等の広報活動に要する経費

(広報紙・報告書等印刷費、送料、交通費等)

事務所費

議員が行う調査研究活動のために必要な事務所の設置、管理に要する経費

(事務所の賃借料、管理運営費等)

事務費

議員が行う調査研究に係る事務の遂行に必要な経費

(事務用品・備品購入費、通信費等)

人件費

議員が行う調査研究を補助する職員を雇用する経費

(給料、手当、社会保険料、賃金等)

( )内は、費用の一例

 注・表記の都合上、一部記号を変更しています。

このページの作成所属
監査委員事務局 監査委員事務局総務課 企画グループ

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