大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第253号)

更新日:2016年2月18日

〔 犯罪事件受理簿部分公開決定審査請求事案 〕

 

(答申日:平成28年2月18日)

 

 第一 審査会の結論

  諮問実施機関(大阪府公安委員会)の判断は妥当である。

  

第二 審査請求に至る経過

1 平成25年10月2日、審査請求人は、大阪府警察本部長(以下「実施機関」という。)に対し、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、「犯罪捜査規範62条に定められた犯罪事件受理簿のうち、大阪府福島警察署(以下「福島警察署」という。)のもの、但し平成24年6月から25年9月末日までのもの」についての行政文書公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。

2 平成25年10月9日、実施機関は、本件請求に対応する行政文書を特定の上、条例第15条第1項の規定により、「公開請求に係る行政文書の情報量が著しく多く、30日以内にそのすべてについて内容を確認し、公開決定等をすることにより事務の遂行に著しい支障が生じるおそれがあるため。」として、特定した行政文書のうち、「本件請求内容のうち最初の2件受理分。」を公開請求があった日から30日以内に公開決定等を行うこととし、残りの行政文書について公開決定等を行う期限を平成26年3月31日とする決定を行い、審査請求人に通知した。

3 平成25年10月30日、実施機関は、条例第13条第1項の規定により、(1)の行政文書について、部分公開決定(以下「本件決定」という。)を行い、(2)のとおり公開しないことと決定した部分及び公開しない理由を付して審査請求人に通知した。
(1)本件行政文書
  犯罪事件受理簿(福島警察署平成24年6月1日受理のうち2件分)(以下「本件請求文書」という。)
(2)本件行政文書のうち公開しないことと決定した部分及び公開しない理由
 ア 受理番号
 (公開しない理由)
 条例第9条第1号に該当する。
 本件行政文書(非公開部分)には、被害者の受理番号が記録されており、これは特定の個人を識別できる個人のプライバシーに関する情報であって、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる。
 イ 罪名(犯罪手口)(以下「罪名」という。)、認知の端緒の別(告訴・告発・自首・届出・現行犯・緊逮・その他)(以下「認知の端緒の別」という。)、犯罪日時、犯罪場所、被害者、被疑者、被害程度、捜査主任官、指揮簿番号、送致年月日送致番号、送致先、事件処理簿番号、証拠品の有無、証拠物件保存簿番号、被害通報票の有無、時効年月日、他署移ちょうの状況及び備考欄記載内容(捜査情報の有無、進捗状況、検挙・解決区分及び被害届の有無)
 (公開しない理由)
 (ア)条例第8条第2項第2号に該当する。
  本件行政文書(非公開部分)には、特定の日に福島警察署が受理した犯罪に係る罪名等が記録されており、これらを公にすることにより、自らが犯した犯罪を警察が認知したことを知った当該犯罪の被疑者等が証拠隠滅を図るなど、当該捜査に支障を及ぼすおそれがある。
 (イ)条例第9条第1号に該当する。
  本件行政文書(非公開部分)には、罪名等が記録されており、これらは被害者及び被疑者など、特定の個人を識別できる個人のプライバシーに関する情報であって、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる。

4 平成25年11月17日、審査請求人は、本件決定を不服として、行政不服審査法第5条の規定により、実施機関の上級庁である大阪府公安委員会(以下「諮問実施機関」という。)に対して、審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。

三 審査請求の趣旨

 公開しないと決定した部分のうち、受理番号、罪名、認知の端緒の別及び検挙・解決区分の公開を求める。

第四 審査請求人の主張要旨

 受理番号に関し、名古屋地裁判決(平成13年1月12日)にあるように、「識別可能性は、当該文書から得られる情報のほかに、一般の住民が他から取得可能な資料を総合する事により、個人を識別特定」できることの例示があり、通常受理番号は、一般の住民が他からは取得できず、非公開は誤りである。
罪名、認知の端緒の別、検挙・解決区分に関しては、公開しない理由にあたらない。罪名だけから個人を識別できるはずもない。

第五 諮問実施機関の主張要旨

1 理由説明書における主張
  諮問実施機関の主張は概ね次のとおりである。
(1)本件行政文書について
  犯罪事件受理簿とは、犯罪捜査規範(昭和32年国家公安委員会規則第2号)第62条に基づき、警察署等が犯罪事件を受理した時に、特定の事件ごとに被害者の氏名や被害の状況等を記載し、さらにその後の捜査の進展により、送致や逮捕の事実等を書き加えることによって捜査の進捗状況を明らかにしていくものである。本件対象文書への登載は、警察が事件を認知したときになされるもので、本件対象文書によって、犯罪事件の受理が明らかになる。
(2)本件係争部分について
  審査請求人が審査請求書において公開を求めているのは、本件対象文書のうち受理番号、罪名、認知の端緒の別及び検挙・解決区分である。
(3)本件処分の妥当性について
 ア 条例第9条第1号について
  条例は、その前文で、大阪府の保有する情報は公開を原則とし、併せて、個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護する旨を宣言している。また、第5条において、個人のプライバシーに関する情報をみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなけらばならない旨規定している。
  本号は、このような規定を受けて個人のプライバシーに関する情報の公開禁止について定めたものである。
  同号は、
 (ア)個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、
 (イ)特定の個人が識別され得るもののうち、
 (ウ)一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる
情報が記録された行政文書については公開してはならないと定めている。
  そして、「個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報」とは、個人のプライバシーに関する情報を例示したものであり、「特定の個人が識別され得る」情報とは、当該情報のみによって直接特定の個人が識別される場合に加えて、他の情報と結びつけることによって間接的に特定の個人が識別され得る場合を含むと解される。
  また、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる情報」とは、社会通念上、他人に知られることを望まないものをいうと解される。
 イ 条例第9条第1号に該当することついて
  本件行政文書は、警察署等で受理した犯罪事件の内容等、特定の犯罪事件に係る個人に関する情報が個々具体的に記録されている。
本件係争部分をみると、受理番号は、警察署等で犯罪事件を受理し、本件行政文書に登載した際に、それぞれの特定事件ごとに付する固有の番号で、犯罪被害者等が自己の被害の回復等を目的に利用しているものであり、罪名、認知の端緒の別及び検挙・解決区分(以下「罪名等」という。)は、特定の日に特定の警察署等において、特定の罪名の事件に関し、被害者等が提出した被害届等の受理を端緒に行った捜査の進捗状況及び結果等を具体的に記載し、特定の犯罪事件の顛末を明らかにするものである。
このような情報は、個人に関する情報であり、個人がどのような犯罪被害を受けたかを特定し得るものであるから、ア(ア)、(イ)及び(ウ)の要件に該当し、条例第9条第1号に該当するものである。
 ウ 条例第8条第2項第2号について
  公共の安全と秩序を維持することは、府民の基本的な利益を擁護するため、府に課せられた重要な責務であり、情報公開制度においても、これらの利益は十分に保護する必要がある。特に、警察が保有している情報のうち、公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査等の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれのあるものについては、公開・非公開の判断において、高度な政策的判断を伴う場合があり、また、その性質上、犯罪等に関する将来予測としての専門的、技術的な判断を要するという特殊性が認められる。
  さらに、その性質上、犯罪の捜査等に関する情報については、他の都道府県警察と共有するものが多く、その取扱いには、全国的な斉一性が求められることとなる。
  こうした理由から、「公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある」情報に関して、これに該当するかどうかについての実施機関の第一次的な判断を尊重することとしたのが条例第8条第2項第2号の趣旨であり、「公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると公安委員会又は警察本部長が認めることにつき相当の理由がある情報」については公開しないことができると規定されているものである。
 エ 条例第8条第2項第2号に該当することについて
  本件係争部分である罪名等は、特定の日において警察がどのような犯罪事件を認知したか、そして当該犯罪捜査の進捗状況及び結果を明らかにするものであることはイに同じである。
  これらを公にすると、福島警察署管内で犯罪を犯した者、犯罪を企てる者及びその関係者にとっては、警察からの捜査逃れのための情報収集手段となるおそれがあり、また、犯罪被害者や情報提供者などにとっては、これらの人々が特定されることになり、その結果これらの人々の生命、身体、財産などに不法な侵害が加えられるおそれがあることから、犯罪の予防、鎮圧又は捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあるとして、条例第8条第2項第2号に該当するものである。
(4)結論
  以上のとおり、本件処分は条例の趣旨を踏まえて行われたものであり、何ら違法、不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。

2 諮問実施機関説明における主張
  犯罪事件受理簿の受理番号により特定の個人が識別され得ることについての合理的かつ具体的な説明として諮問実施機関が主張した概要は次のとおりである。
(1)犯罪事件受理簿の受理番号について
  大阪府警察では、犯罪事件受理簿の受理番号は、犯罪被害者から被害届を受理した際に、犯罪被害場所を管轄する警察署において事件ごとに割り当てられ、被害者本人にしか教示されない事件固有の番号であり、受理番号を知っている者は被害者本人、又は被害者本人から聞き伝えられた被害者の家族、被害者の代理人弁護士等、被害者に近い者であるという認識であることから、受理番号は、正に被害者が保有する個人情報であると判断している。
  また、受理番号は、前述のように事件ごとに付される番号であることから、事件受理の件数が少なければ少ないほど、受理番号が明らかになった場合、特定の個人が認識され得る可能性は高まる。
  受理番号は、被害者本人又は被害者の依頼を受けた被害者に近い者が、事件捜査、訴訟、被害回復等に必要があって利用しているものであり、受理番号が明らかになった場合に個人に生じる不利益としては、(2)のようなものが想定される。
(2)受理番号から個人を特定される虞のある事例
 ア 犯罪事件の被疑者が被害者の名を騙り、当該犯罪事件の受理番号や犯罪の詳細を警察署に申告し、被害者のプライバシー情報や捜査の進捗状況を聞き出す。
 イ 犯罪事件の発生を見聞きした第三者が、好奇心から、被害者の名を騙り、当該犯罪事件の受理番号や犯罪の詳細を警察署に申告し、被害者のプライバシー情報を聞き出す。
(3)受理番号の条例第9条第1号の該当性について
  条例前文及び条例第9条第1号には、個人のプライバシーに関する最大級の保護について規定しており、条例第5条において、個人に関する情報への配慮について規定している趣旨に鑑み、仮に公になれば個人に回復困難な不利益が生じ得るなど、「他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報については、プライバシーに係る情報そのものではなくても、条例第9条第1号の「個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報」に含まれると考えられる。
  本件において、受理番号が明らかになった場合に個人に生じ得る不利益が前述のように想定される以上、条例の趣旨に鑑み、受理番号は条例第9条第1号にいう「個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報」であり、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる情報と解される。 

 

第六 審査会の判断

1 条例の基本的な考え方について
  行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。
  このように「知る権利」を保障するという理念のもとにあっても、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。
  このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第2条第1項に規定する行政文書に記録されている場合には、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。

2 本件決定に係る具体的な判断及びその理由について
  諮問実施機関は、本件決定による非公開部分のうち、受理番号については条例第9条第1号に該当し、罪名等については条例第8条第2項第2号及び条例第9条第1号に該当すると主張していることから、以下において検討する。
(1)条例第8条第2項第2号について
  公共の安全と秩序を維持することは、府民の基本的な利益を擁護するため、府に課せられた重要な責務であり、情報公開制度においても、これらの利益は十分に保護する必要がある。
  特に、警察が保有している情報のうち、公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査等の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれのあるものについては、公開・非公開の判断において、高度な政策的判断を伴う場合があり、また、その性質上、犯罪等に関する将来予測としての専門的、技術的な判断を要するという特殊性が認められる。さらに、その性質上、犯罪の捜査等に関する情報については、他の都道府県警察と共有するものが多く、その取扱いには、全国的な斉一性が求められることとなる。
  こうした理由から、「公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある」情報に関して、これに該当するかどうかについての実施機関の第一次的な判断を尊重することとしたのが条例第8条第2項第2号の趣旨であり、「公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると公安委員会又は警察本部長が認めることにつき相当の理由がある情報」については公開しないことができると規定されているものである。
(2)条例第8条第2項第2号該当性について
  審査請求人は、罪名等について、条例第8条第2項第2号には該当せず、公開しない理由にはあたらないと主張しているものと解される。
  しかし、審査請求人が警察署及び事件の受理期間を特定して本件請求を行い、それに対し、実施機関が本件決定で受理月日を公開している状況において、罪名等の情報は、特定の日に特定の警察署がどのような犯罪事件を何により認知したのかということ、捜査の進捗の状況及びその結果を明らかにするものであり、公開すると、当該警察署管内で罪を犯した者、犯罪を企てる者及びその関係者が、警察の捜査を逃れるための情報収集の手段とするおそれがあり、また、犯罪被害者や情報提供者が特定され、その結果これらの人々の生命、身体、財産等に不法な侵害が加えられるおそれがあるとする諮問実施機関の主張には理由があると認められる。
  よって、これらの情報は、公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると認め、条例第8条第2項第2号に該当するとした諮問実施機関の主張は妥当である。
(3)条例第9条第1号について
  条例は、その前文で、府の保有する情報は公開を原則としつつ、併せて、個人のプライバシーに関する情報は最大限保護する旨を宣言している。また、第5条において、個人のプライバシーに関する情報をみだりに公にすることのないように最大限の配慮をしなければならない旨規定している。
  本号はこのような趣旨を受けて、個人のプライバシーに関する情報の公開禁止について定めたものである。
  同号は、
 ア 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、
 イ 特定の個人が識別され得るもののうち、
 ウ 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる
情報が記載されている行政文書を公開してはならない旨定めている。
  そして、「個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報」とは、個人のプライバシーに関する情報を例示したものであり、「特定の個人が識別され得る」情報とは、当該情報のみによって直接特定の個人が識別される場合に加えて、他の情報と結びつけることによって間接的に特定の個人が識別され得る場合を含むと解される。
  また、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる情報」とは、社会通念上、他人に知られることを望まないものをいうと解される。
(4)条例第9条第1号該当性について
 ア 受理番号
  諮問実施機関の説明によると、犯罪被害者が警察署に被害を届け出て受理された場合には、受理番号は被害者本人にだけ教示されることとなっており、これを知っているのは被害者本人又は被害者本人からこれを聴取した被害者の家族や代理人弁護士等(以下「被害関係者」という。)に限られ、それゆえ、警察署においては、被害者本人又は被害関係者から事件の捜査状況の照会や、訴訟や被害回復等のための相談があった際に、被害者本人又は被害関係者であることを確認する手段として利用しているとのことである。つまり、受理番号は、警察署においては特定の個人を識別するための番号として扱われているのが実態であると言うことができる。
  これが公表された場合、犯罪事件の被疑者や、犯罪事件のことを知る第三者が被害者の名を騙り、警察から被害者の被害程度などの個人情報を不正に入手するおそれがあるという諮問実施機関の主張は理解できる。
  このことから、受理番号は、それが明らかになることにより、特定の個人の犯罪被害にかかる極めて機微性の高い情報が他人に知られることが懸念されるため、条例第9条第1号に該当し、非公開とすることは妥当である。
  また、審査請求人は、名古屋地裁判決(平成13年1月12日)の「識別可能性は、当該文書から得られる情報のほかに、一般の住民が他から取得可能な資料を総合する事により、個人を識別特定」できることの例示を引用し、通常受理番号は、一般の住民が他からは取得できず、非公開は誤りであると主張しているが、上記で述べたとおり、特定の個人を識別するための番号として扱われている実態に鑑みると、審査請求人の主張には理由がない。
  なお、受理番号は、実態として、個人の犯罪被害に関する情報と結びついており、それが悪用された場合には、個人のプライバシーに関して深刻な被害をもたらすことが懸念されることから、実施機関における利用にあたっては、事務処理上の運用を厳格にし、慎重を期すべきことが望まれる。
 イ 罪名等
  審査請求人は、罪名等を公表しても特定の個人が識別されるはずがないと主張している。確かに、これらの情報から事件に関係する特定の個人が直ちに識別されるわけではない。
  しかしながら、(2)でも述べたように、審査請求人が警察署及び事件の受理期間を特定して本件請求を行い、それに対し、実施機関が本件決定で受理月日を公開している状況において、当該警察署管内で、ある特定の日に発生した事件に関する報道、伝聞又は自ら見聞きした情報と組み合わせることにより、特定の犯罪事件と、事件に関係する個人の情報が結びつけられ、その結果、特定の個人が識別される可能性があると考えられる。
  このように、罪名等を公開すれば、被害者に関する、極めてプライバシー性が高く、一般に他人に知られたくないと望むことが正当である情報が明らかになってしまうことから、条例第9条第1号に該当すると考えられる。

3 その他
  審査請求人から、平成26年7月4日付け口頭意見陳述申出書により、審査会での口頭による意見陳述の申出がなされたが、当審査会は、(1)から(3)までの理由をもって、条例第24条第1項の規定により、口頭意見陳述を行わないことと決定した。
(1)当審査会において、本件決定の妥当性を判断する資料が得られたこと。
(2)審査請求人から提出された口頭意見陳述申出書には、代理人による意見陳述を希望する記載がなかったこと。
(3)平成26年6月20日付け大公審第13号、同年7月11日付け大公審第23号、同年8月11日付け大公審第30号及び同年11月18日付け大公審第44号により意見書の提出を求めたが提出がなく、また、平成27年1月27日付け大公審第64号により、同年2月17日までに意見書の提出がない場合は提出する意思がないものとして判断すると通知したが、提出がなかったこと。

4 結論
  以上のとおりであるから、本件審査請求は、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。


(主に調査審議を行った委員の氏名)
  北村 和生、小原 正敏、尾形 健、三成 美保

  

このページの作成所属
府民文化部 府政情報室情報公開課 情報公開グループ

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