大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第66号)

更新日:2009年8月5日

答申第66号公安委員会議事録等文書不存在決定事案 [PDFファイル/112KB]

(答申第66号) 公安委員会議事録等文書不存在事案(答申日 平成13年6月29日)

1 公開請求に係る行政文書(行政文書公開請求書の記載要旨)

   次の処分、決定、訴訟に対する公安委員会の開催、審査を示す議事録その他一切の資料

(1)大阪府公安委員会の名称でなされた次の処分、決定

イ 平成7年12月7日付 大阪府公安委員会指令(保一)第231号承認通知書

ロ 平成8年6月3日付 「A(パチンコ店)」から「B(パチンコ店)」に書換許可

   大阪府公安委員会指令(監)第32号

   平成8年10月9日付 決定書

ハ 平成8年6月5日付 大阪府公安委員会指令(保一)第71号

ニ 平成8年10月9日付 大阪府公安委員会指令(監)第32号決定書

(2)不承認処分取消訴訟

イ 平成8年(行ウ)第150号 相続不承認処分取消請求事件

   平成9年(ワ)第3927号 損害賠償請求事件

ロ 平成10年(行コ)第19号 相続不承認処分取消、損害賠償請求控訴事件

・ 上記各訴訟の応訴についての公安委員会の審議と対応の記録、各委員の意見。

・ 上記各訴訟について応訴委任についての内部審査記録の公開、および大阪府議会に対し応訴の審議、議決を求めたか否か、上記に関する議事録および関連文書の一切。

2 実施機関の決定

(1)実施機関

  大阪府知事(担当課 総務部財政課、総務部法制文書課)

(2)決定内容

  不存在による非公開決定(総務部財政課分と総務部法制文書課分の2件の決定)

イ 公開請求に係る行政文書を管理していない理由

(総務部財政課分)

   公開請求に係る行政文書については、公安委員会より受領していないため、管理していない。

(総務部法制文書課分)

   公安委員会所管事項に関連する訴訟事務を行っておらず、また、現実にも本件請求文書を受領していないことから、当該文書は管理していない。

3 異議申立て

(1)申立ての趣旨

   本件各決定を取り消し、公開するとの決定を求める。

(2)理由(理由)

   条例第2条第2項において、実施機関として公安委員会は掲記されていない。

   知事が実施機関であるのは規定上当然である。条例が府公安委員会に適用されるには、府公安委員会が実施機関でなければならない。この法令において実施機関とはという中で掲記された機関はもとより実施機関である。条例上実施機関は掲記したものに限定するとの記載はない。つまり例示である。条例解釈上、公安委員会も又実施機関である。

   異議申立人も知事が直接管理していないことは理解できる。ただ公安委員会に対して、府の機関として提出を指示してくれるものと期待したのである。公安委員会が知事から独立した機関であったとしても条例第16条により移送の措置を講ずべきである。

   異議申立人の件について公安委員会は招集も開催もされていない。公安委員会会議が開かれたとしても承認通知書が会議の審査資料とならず、警察本部長の報告内容となっていなければ公安委員会はこの矛盾を知るすべもない。判断を誤るのは当然である。異議申立人が行政文書の公開を求める理由もここにある。

4 大阪府情報公開審査会の答申

(1)審査会の結論

   実施機関は、本件異議申立ての対象となった不存在による非公開決定を取り消し、別紙に掲げる文書(警察本部において保管されている損害賠償請求訴訟関係文書)を行政文書として特定して公開決定(部分公開決定を含む。)又は非公開決定を行うべきである。

(2)理由(要旨)

   当審査会で確認した本件請求文書に対応する文書のうち、風営法に基づく行政処分など公安委員会の権限に属する事務に係る文書については、知事が管理する行政文書に該当するとは認められなかったが、知事の補助執行に係る別紙文書については、保管場所が警察本部であっても、知事が管理している行政文書に該当すると認められた。

ア 風営法に基づく行政処分等に関する文書(風営法に基づいて公安委員会が行った行政処分等に関する文書、風営法に基づいて公安委員会が行った行政処分に対する異議申立てに関する文書、公安委員会を当事者とする訴訟に関する文書)について

   公安委員会の権限に属する事務において公安委員会が作成し、又は取得した文書については、公安委員会が自らの権限と責任において管理すべきものであり、知事が何ら関与できる権限を有するものではない。また、現に、公安委員会が管理する文書については、公安委員会の権限に基づき、大阪府警察文書管理規程により、管理されていることが認められる。そして、条例における実施機関は、行政文書の公開請求があったときには、自らの責任において、自らの権限に基づき管理する文書の公開・非公開を決定しなければならないものであるが、知事は、公安委員会の権限に基づき管理されている文書については、何ら関与できる権限を有さず、公開・非公開の決定を行うことはできないのであるから、公安委員会が実施機関である知事に含まれるとは到底いえないものである。

   また、条例第2条第2項の実施機関が、独立して事務を管理執行する権限を有する機関として自治法上の執行機関等を個別に条例に規定していることについては、執行機関等が、自ら有する権限に基づき管理する文書について、自らの権限と責任により公開・非公開の判断を行うことが要請されているという観点から理解されるべきであり、条例第2条第2項に規定する実施機関は、例示として規定していると解されるものではなく、公安委員会は、他のいずれの実施機関にも属さず、実施機関である知事に含まれないものである。

イ 警察本部において保管されている本件損害賠償請求訴訟関係文書について

   大阪府においては、自治法第180条の2の規定により、知事が公安委員会との協議を経て、大阪府及び知事が当事者である訴訟のうち、その内容が公安委員会所管の事項に関するものについては、警察本部長に補助執行させている。そして、本件損害賠償請求訴訟は、大阪府を被告とする訴訟であり、その事務は知事の権限に属するが、その内容が公安委員会所管の風営法に基づく処分等に関するものであることから、知事が警察本部長に補助執行させているものである。補助執行とは、委任又は代理と異なり、権限を有するものの権限を内部的に補助し、執行させることをいい、対外的には、権限を有するものの名で執行されるものであることから、知事が警察本部長に補助執行させている事務に関連して作成又は取得された文書については、警察本部において保管されているということだけをもって、知事が利用・保存できる状態にないとまでは言い切れないものである。

   本件損害賠償請求訴訟については、知事が警察本部の職員5名を大阪府事務吏員に併任して、大阪府の指定代理人としての事務に従事させていることが認められ、別紙文書の起案者も全て大阪府事務吏員を併任している職員である。また、本件損害賠償請求訴訟の事務において、知事名による弁護士への委任状等の文書が作成されており、また、知事宛てに送付された裁判所からの文書が取得されていることが認められる。そうすると、知事は、大阪府事務吏員を併任する警察本部の職員を通じて、知事の名で本件損害賠償請求訴訟に係る事務を行ったといえるのであることから、これら併任職員は、知事の補助執行に係る事務に従事している際には、知事の指揮監督権限に属する大阪府事務吏員として職務を行い、文書を作成し、又は取得していると言わざるを得ない。よって、別紙文書は、「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書」に該当すると認められる。

   また、実施機関が管理しているものに該当するかどうかは、単にどの場所で保管されているかということだけでなく、知事が利用、保存している状態のものであるといえるかどうかにより判断されるべきである。

   本件損害賠償請求訴訟の係属中においては、大阪府事務吏員を併任した警察本部の職員が訴訟事務に従事しており、当該事務に従事している際には、併任職員が知事の指揮監督をうけて訴訟の遂行に係る文書を利用可能な状態で保管していることは明らかである。

   なお、本件損害賠償請求訴訟は既に終結して約一年経過している。しかしながら、現に警察本部において保管されているもとでは、知事は、訴訟終結後においても大阪府事務吏員を併任した警察本部の職員に対して必要な指揮監督を行いながら、別紙文書を利用可能な状態で保管しているものと解さざるを得ないものである。したがって、別紙文書は、知事が利用、保存している状態のものであるといえ、実施機関である知事が管理しているものに該当する。

大阪府情報公開審査会答申(全文)

第一 審査会の結論

   実施機関は、本件異議申立ての対象となった不存在による非公開決定を取り消し、別紙に掲げる文書(警察本部において保管されている損害賠償請求訴訟関係文書)を行政文書として特定して公開決定(部分公開決定を含む。)又は非公開決定を行うべきである。

第二 異議申立ての経過

1 異議申立人は、平成12年6月13日、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、大阪府知事(以下「実施機関」という。)に対し、次の2の文書(以下「本件請求文書」という。)について、行政文書公開請求書(以下「請求書」という。)の担当室・課(所)等の欄に「財政課」と記載した公開請求、及び同欄に「法制文書課」と記載した公開請求を行った。

2 本件請求文書

   次の処分、決定、訴訟に対する公安委員会の開催、審査を示す議事録その他一切の資料

(1)大阪府公安委員会の名称でなされた次の処分が存する。

イ 平成7年12月7日付 大阪府公安委員会指令(保一)第231号承認通知書

    後記(2)の訴訟では甲第7号証になる。以下甲又は乙何号証として引用する。

ロ 平成8年6月3日付 「A(パチンコ店)」から「B(パチンコ店)」に書換許可

    大阪府公安委員会指令(監)第32号

    平成8年10月9日付 決定書 甲第2号証(表、裏)

ハ 平成8年6月5日付 大阪府公安委員会指令(保一)第71号

   不承認通知をするにあたって、聴聞と弁明の手続の要否について審理がなされたか否か。甲第1号証

ニ 平成8年10月9日付 大阪府公安委員会指令(監)第32号決定書

(2)不承認処分取消訴訟

イ 平成8年(行ウ)第150号 相続不承認処分取消請求事件

   平成9年(ワ)第3927号 損害賠償請求事件

ロ 平成10年(行コ)第19号 相続不承認処分取消、損害賠償請求控訴事件

・ 上記各訴訟の応訴についての公安委員会の審議と対応の記録、各委員の意見。

・ 上記各訴訟について応訴委任についての内部審査記録の公開、および大阪府議会に対し応訴の審議、議決を求めたか否か、上記に関する議事録および関連文書の一切。

3 実施機関は、平成12年6月27日、条例第13条第2項の規定により不存在による非公開決定(以下、財政課分を「本件処分1」、法制文書課分を「本件処分2」という。)を行い、本件請求文書を管理していない理由を次の4のとおり付して異議申立人に通知した。

4 本件請求文書を管理していない理由

(1)本件処分1における本件請求文書を管理していない理由

   公開請求に係る行政文書については、公安委員会より受領していないため、管理していない。

(2)本件処分2における本件請求文書を管理していない理由

   公安委員会所管事項に関連する訴訟事務を行っておらず、また、現実にも本件請求文書を受領していないことから、当該文書は管理していない。

5 異議申立人は、平成12年8月24日、本件処分1及び本件処分2(以下「本件処分」という。)を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、本件処分において不存在による非公開とした本件請求文書の公開を求める異議申立てを行った。

第三 異議申立ての趣旨

   本件処分を取り消し、公開するとの決定を求める。

第四 異議申立人の主張要旨

   異議申立人の主張を総合すると概ね次のとおりである。

1 非公開決定は、文書を管理していないから、公開しないということである。公開しないというより、公開できない。公開する立場にないということであろうか。門前払い、却下決定である。このようなことが許されてよいのか。

   請求に係る文書が、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)の適用を受けるか否かが明確にされなければならない。もともと、適用を受けない文書であるのならば、本条例に基づく判断をなすべきではない。条例の適用を受けないことを理由として、正当な申請機関に対する移送決定をなすべきである。申請機関の誤りを行政のプロでない異議申立人に是正させるべきではない。少なくとも異議申立人に正当な公開請求機関を説示し、その機関に受理を促すべき措置を講ずべきである(条例第16条)。本条例前文、第1条および第13条2項は、国民の情報公開請求権を府政で実現しようとしたものである。

   条例は、異議申立人の請求に適用されるものである。条例第2条2項において、実施機関の定めが存する。条例は実施機関に対して公開請求するものとし、実施機関が直接公開の有無を決定することとされている。実施機関の中に、大阪府公安委員会の名称がない。大阪府公安委員会は条例の実施機関でないから条例の適用を受けない、この考えが非公開決定の根底に存するように見えてならない。

   いやしくも大阪府の情報公開条例である。大阪府が所轄する全機関が本条例の適用を受ける。独立の実施機関として規定された機関以外の大阪府所轄機関のすべてが条例第2条第2項の「実施機関」として知事に属する。

   つまり「実施機関」知事、担当課大阪府公安委員会なのである。

   当代理人は当初から担当課大阪府公安委員会と主張し記載してきた。財政課とか法制文書課は府の指導によって記載しただけである。当代理人は記載によっても原理は変わらないと考え、妥協した。ともあれ、異議申立てに対し、府は条例の適用の有無を判断し、条例不適用の場合は該当官公署に移送するか、異議申立人に対し、文書公開の根拠と具体的方策が示されなければならない(条例第16条)。

   知事は条例上の「実施機関」として条例の規定に基づき、異議申立人の請求にかかる行政文書の公開の有無を決定しなければならない。本条例上公開しない場合と規定されている場合以外は公開されなければならない(第8条〜第12条)、異議申立人には条例上の非公開事由は存在せず、非公開決定の事由の中にも上記条例上の非公開事由は指摘されていない。

   本条例上大阪府公安委員会は実施機関知事の担当部であり、大阪府公安委員会に所在し、管理している一切の文書は、知事が管理している文書である。条例第13条2項は条例第8条ないし第12条により非公開とすべき場合にその事由を示して非公開決定をすることができる旨定めたものである。いずれにしても、本件非公開決定は本条例に違背し、本条例の適用を拒否したものである。知事は、直ちに公開に応じなければならない。

   公開を求める文書の所在は、大阪府知事の所轄の下にある大阪府公安委員会に存する。

   実施機関は大阪府知事である。それ以外に解釈はない。

   大阪府知事は大阪府公安委員会に対し、本公開請求に対応するよう適切な指示をして大阪府知事の責任において公開しなければならない。

   大阪府知事は、備置場所は大阪府公安委員会であっても、公開申請にかかる行政文書はもとより、大阪府公安委員会関係の全行政文書の適切な保存と迅速な検索に資するための行政文書の管理体制の整備を図らなければならない。そして管理体制が既に整備されているはずである。このように条例を解釈し、運用することにより行政文書の公開を求める権利が十分に保障されることになるからである。

   大阪府公安委員会は、知事部局総務部財政課に属する。つまりは、警察法第38条1項により大阪府知事の所轄の下に大阪府公安委員会がある。条例第2条の実施機関は知事・公安委員会であるとの明文上の根拠となる。

   非公開決定通知書(財政課) 「本件請求文書については、公安委員会より受領していないため管理していない。」。これは理由にならない。つまり、本件請求文書については知事が実施機関であり、保管管理場所が大阪府公安委員会を意味するに過ぎない。大阪府公安委員会に指示して知事の名前で知事の責任をもって提出させるべきものである。

   非公開決定通知書(法制文書課) 「公安委員会所管事項に関連する訴訟事務は行っておらず」。これは理由にならない。異議申立人は「不承認通知取消」の訴えと同時に大阪府に対して4億円の損害賠償請求訴訟を提起している。公安委員会が勝手に応訴したことで府は知らないような判決は無効である。府の対応如何によっては又訴える。府は府に対する訴訟関係の文書すら管理していないと受けとめる。この非公開決定通知も大阪府公安委員会に提出を求める意味で異議の申立をする。この決定も前記の意味で受け止めておく。

   異議申立人は、大阪府知事にかわって大阪府公安委員会に対して情報公開請求する。大阪府知事に対する情報公開請求についても、府は訴訟事務を行っておらず、文書を保管していないという。その文書は大阪府公安委員会に所在することになる。大阪府公安委員会に提出を求める。本件異議申立てにも関連するので、大阪府知事として、大阪府公安委員会に請求に対応するよう指示されたい。

   公安委員会にあるので大阪府知事は関係がないというのもおかしな結論である。対応する文書が存在しないのなら対応する官庁に移送すべきではないのか。異議申立人は行政の専門家ではない。救済を求める相手を間違っていれば、担当部署、担当機関に手を尽くすよう求めるのが申立てを受けた大阪府知事の責務である。

2 文書公開を求める事実関係

   異議申立人は、大阪府公安委員会に異議申立人のぱちんこ屋の設備改善を申請して、その申請のとおり設備改善をし、その申請に条件を付して設備の改善を承認されたのである。もちろん許可に公安委員会の新設許可にも等しい厳しい審査がなされたことはいうまでもない。異議申立人は、許可されたので公安委員会の許可条件に従い設備改善をし、その投資金額は3億8千万円を超える。

   設備改善許可と投資の後に同じ公安委員会が「ぱちんこ屋営業の不承認通知」ということで営業を禁止してきた。

   理由はただ一つ、相続承認申請書に添付されるべき同意書の追完不能が確定したから。同意書の存否自体異議申立人のぱちんこ屋とどんな関係があるのかわからない。しかも同意書は不承認通知以前に追完作成されているのである。公安委員会が審査の段階で同意書についてどのように調査したのかを異議申立人が知りたいのは当然である。

   本件相続不承認通知に対し、異議申立人は異議の申立てをしたが棄却され、続いて一・二審の訴えにも敗訴した。事実の認定は裁判官の自由心証による。裁判官は公安委員会の会議による判断を重くみて、事の当否に目をつぶり、すべて公安委員会の自由裁量に属するものとしたものである。続いて、最高裁は、事実誤認は上告理由にあたらないとした。そこで判決は確定した。確定判決に既判力があることは、充分に承知している。しかし、公安委員会が開かれておらず、審理がなされていないとしたら別論である。

3 文書公開を求める理由

(1)異議申立人の上記の各処分をなすについて、公安委員会そのものが開かれたのであろうか。開かれたのであれば、何回、何月何日何時から何時まで、会議に列席したものは誰か。

(2)大阪府警察本部長は、どのような資料をもって公安委員の誰に配布し、どのような報告をしたのか。

(3)異議申立人の議案に対し、出席公安委員の一人一人どのような発言をし、本部長はそれにどのように対応したか。

(4)決議内容、決議報告。

(5)その他、既に異議申立人が指摘した事項。

   以上は、大阪府公安委員会会議規則に基づくものであり、会議録および関連記録として備置されているものである。かつ、異議申立人が知りたいとする事項を証明するため当然異議申立人に開示されるべきものである。大阪府公安委員会として審議の存否、審議の公正、ひいては処分の正当性を証明する唯一の資料である。異議申立人は、公安委員会において適正な審議がなされておらず、不承認処分が不存在ないし無効であると考えている。そのための重要な資料としてただ一つなければならないものである。

4 審査会に求める答申

   大阪府情報公開条例第16条により、(1)大阪府知事は大阪府公安委員会と協議の上、大阪府公安委員会に対し、異議申立人が大阪府知事に請求のあった公開請求事案を大阪府公安委員会に移送する(条例第16条第1項)。(2)大阪府知事は事案を移送した旨を異議申立人に通知する(同条同項)。(3)大阪府公安委員会は異議申立人より請求のあった全文書について公開決定しなければならない(同条第2項)。(4)移送前に大阪府知事がなした「大阪府知事は当該文書を管理していない(管理しているのは大阪府公安委員会である)。」との決定および大阪府知事の弁明書は移送を受けた大阪府公安委員会がしたものとみなされる。大阪府公安委員会はこれに従い、これに反する主張をしてはならない(同条第2項)。(5)大阪府知事、大阪府公安委員会は直ちに公開手続をとると共に、異議申立人が公開を求めた理由を検討し、すみやかに対処することを要望する。

   大阪府知事・大阪府公安委員会が条例第2条の「実施機関」である。

   条例は大阪府の全機関に適用される。

(1)府の保有する情報の公開は府の府民に対する基礎的な条件責務である。条例前文、第1条はこのことを明記する。

(2)警察法第38条第1項により、大阪府知事所轄のもとに府公安委員会がおかれている。

(3)地方自治法第180条の5第2項は、府公安委員会は大阪府に置かなければならない委員会である。

(4)条例は大阪府の所轄ないしは大阪府に置かなければならない。すべての機関に適用されるものである。大阪府の条例である以上例外となる機関があってはならない。府公安委員会を除外するとの規定は条例上に存しない。逆に条例第3条により、大阪府公安委員会を実施機関とすることが、行政文書の公開を求める権利の保障上不可欠であり、そのように条例を解釈し、運用しなければならない。

(5)言うまでもなく条例は府議会の議決を得て制定される。府公安委員会を条例の適用外とすることはありえない。

5 知事と公安委員会の関係

(1)条例第2条第2項

   この条例において、「実施機関」とは、知事、教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会、監査委員、地方労働委員会、収用委員会、海区漁業調整委員会、内水面漁場管理委員会及び水道企業管理者をいう。

(2)上記のとおり、実施機関として府公安委員会は掲記されていない。

   条例第2条第2項中知事が実施機関とされているので府条例が適用される以上知事が実施機関として解釈運用されるべきである。

   異議申立人の異議申立書はこの視点から作成された。基本的にこの主張に誤りはない。検討されたい。

(3)ただ府知事が実施機関であるのは規定上当然である。府公安委員会はどうか、条例が府公安委員会に適用されるには、府公安委員会が実施機関でなければならない。この法令において実施機関とはという中で掲記された機関はもとより実施機関である。条例上実施機関は掲記したものに限定するとの記載はない。つまり例示である。条例解釈上、大阪府公安委員会も又実施機関なのである。

(4)異議申立人は府知事のみが実施機関であると考え、府知事に本件異議の申立てをした。府知事は条例第13条第2項により請求にかかる行政文書を管理していないことを理由として、本件非公開決定をした。

(5)異議申立人も府知事が直接管理していないことは理解できる。ただ府は公安委員会に対して、府の機関として提出を指示してくれるものと期待したのである。府公安委員会が知事から独立した機関であったとしても条例第16条により移送の措置を講ずべきと主張している。

(6)ただ条例の適用を受けない文書であるならば、と記載したがこれは誤りである。条例第16条によって条例上の実施機関である府公安委員会に移送すべきであると主張したものである。それが府知事のとるべき唯一の道であり、審査会に答申を求める理由である。

(7)知事の弁明書そのものには、異議申立ての理由と本反論書に記載したことを正当とし、その限度において異論はある。しかし以上の視点からすればその他の点において反論するほどのこともない。

6 公安委員会

(1)府公安委員会会議は開かれておらず、会議録は存在しない。主体である公安委員会は全く開かれていない。審理がなされていない。それで出すことが出来ないのである。

(2)会議録は府警本部が保管する。その会議録が処分を受けたものに公開されていないのである。会議が開かれ審議がなされたことを証明する素材は会議録だけである。

(3)異議申立人の件について府公安委員会は招集も開催もされていない。府公安委員会会議が開かれたとしても承認通知書が会議の審査資料とならず、府警本部長の報告内容となっていなければ府公安委員会はこの矛盾を知るすべもない。判断を誤るのは当然である。異議申立人が行政文書の公開を求める理由もここにある。

第五 実施機関の主張要旨

   実施機関の主張を総合すると概ね次のとおりである。

1 都道府県の執行機関について

(1)執行機関の相互関係

   「執行機関」は、法人において議決機関又は意思決定機関に対し、その議決又は意思決定を直接執行する機関をいい、一般には、国又は地方公共団体の行政事務を管理執行する機関及び法人の業務を執行する理事等を指す。

   都道府県の執行機関には、都道府県の代表者であり統括者である知事(地方自治法(以下「自治法」という。)第147条)の外に、教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会、収用委員会等行政委員会(以下「他の執行機関」という。)を置かなければならず(自治法第180条の5)、それぞれの執行機関は、議会の議決及び法令等に基づく事務を自らの判断と責任において、誠実に管理し及び執行する義務を負う(自治法第138条の2)とされている。

   このように、他の執行機関は、知事から独立してその権限に属する事務を行うものであり、知事は他の執行機関が所掌する事務に関しては、特に法の定めた事項(自治法第180条の4、第180条の6など)に限り、一定の権限を有するのみである。なお、自治法第138条の3は、普通地方公共団体の執行機関の組織を「普通地方公共団体の長の所轄の下にそれぞれ明確な範囲の所掌事務と権限を有する執行機関によって系統的にこれを構成しなければならない」と規定するが、この「所轄」の意味は、「通常二つの機関の間において、一方が上級機関であることを認めながらも、他方は相当程度上級機関から独立した機関であることを表す意味に用いられている」(長野士郎著「逐条地方自治法第12次改定新版」398頁)ものであり、この規定をもって、「普通地方公共団体の長に、他の執行機関に対する指揮監督権のような何か具体的な権限が認められたものと解すべきものでない」(同399頁)のである。

(2)知事と公安委員会の関係

   公安委員会は、執行機関として都道府県に置かなければならない委員会であり(自治法第180条の5第2項)、その所掌する事務は、都道府県警察を管理する(警察法第38条第3項)こと及び風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営法」という。)や火薬類取締法などの法律又は条例の規定に基づきその権限に属させられた事務をつかさどる(同条第4項)ことである。

   (1)で述べたように、知事は、自治法上他の執行機関に対して有する権限(警察に関する条例及び予算案の議会への提出、予算の調製及び執行など)や公安委員会の委員の任免権(警察法第39条及び第41条)を有するのを除き、公安委員会の権限に属する事務について公安委員会を指揮監督する権限を有していない。なお、警察法第38条第1項において、「都道府県知事の所轄の下に、都道府県公安委員会を置く。」と規定されているが、(1)で述べたように「所轄」という規定があることによって知事の公安委員会に対する具体的な指揮監督権が認められるものではない。

   また、異議申立人は、公安委員会の文書の管理体制についても、知事が整備を図る必要がある旨主張するが、公安委員会が所掌する事務に関して作成又は取得した文書の管理も、公安委員会の権限に属する事務であるから、その事務処理は公安委員会の管理に服する大阪府警察本部長(警察法第47条及び第48条)が定める「大阪府警察文書管理規程」に基づいて行われている。

(3)大阪府における訴訟に関する事務

   大阪府又は大阪府の機関(知事、府税事務所長等の行政庁)を当事者として提起された訴訟の事務処理は、訴訟の原因となった事務を所管する執行機関が実施することとしている。具体的には、知事の権限に属する事務に関する訴訟は知事において、他の執行機関の権限に関する訴訟については、当該事務を所掌する執行機関において、訴訟に関する事務を処理している。したがって、公安委員会の行なった行政処分の取消を求める訴訟は、公安委員会で事務の処理を行なっているのをはじめ、損害賠償請求訴訟のように、大阪府を被告とする訴訟であっても、公安委員会の権限に属する事務が原因となっているものについては、自治法第180条の2の協議を経て、公安委員会(事務は警察本部長)が処理しているのであり、この事務の処理に知事が関与することはない。

2 本件請求文書が不存在であることについて

   本件請求文書は、請求書の記載内容からすると、(1)「公安委員会が異議申立人に対して行った風営法等に基づく行政処分に関する公安委員会の開催、審査を示す議事録その他一切の資料」、(2)「同行政処分に関連して異議申立人が提起した訴訟に関する各訴訟の応訴についての公安委員会の審議、対応の記録、各委員の意見、訴訟に関する応訴委任に関する内部審査記録その他一切の資料」及び(3)「大阪府議会に対して応訴の審議、議決を求めたか否かに関する公安委員会の議事録及び関連文書その他一切の資料」の公開を求めるものであると整理されるが、本件請求文書が情報公開請求の対象となる行政文書であるためには、これらの文書が「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得したもの」であり、「実施機関の職員が組織的に用いるものとして実施機関が管理しているもの」でなければならない(条例第2条第1項)。しかし、本件請求文書は、以下述べるようにいずれも条例第2条第1項の要件を満たさない。

(1)風営法等に基づく行政処分に関する公安委員会の開催、審査を示す議事録その他一切の資料

   風営法においては、ぱちんこ屋などの風俗営業を営もうとする者は、都道府県公安委員会の許可を受けなければならず(風営法第3条)、営業所の名称等に変更があるときは、公安委員会に届け出て許可証の書換えを受けなければならない(同法第9条第4項)旨が規定されている。また、相続人が被相続人の営んでいた風俗営業を引き続き営もうとするとき及び営業所の構造・設備を変更するときは、都道府県公安委員会の承認を受けなければならない(同法第7条及び第9条)こととされている。

   本件請求文書に関連して存在すると異議申立人が主張する行政処分は、請求書及び異議申立書の記載内容等から、風営法及び関係規則等の規定に基づく上記許可及び承認並びにこれらに関する異議申立てに対する決定等(以下「本件関連処分」という。)であると推測されるが、この本件関連処分は、風営法により公安委員会の権限に属する事務であることは明らかである。

   公安委員会は、これまで述べてきたとおり、知事とは独立した執行機関であることから、本件関連処分に関する公安委員会の開催、審査を示す議事録その他の資料は公安委員会において作成されるものであり、これらの文書の作成に知事は全く関与していないし、取得・管理していない。

(2)異議申立人が提起した訴訟に関する各訴訟の応訴についての公安委員会の審議、対応の記録、各委員の 意見、訴訟に関する応訴委任に関する内部審査記録その他一切の資料

   異議申立人が提起したとする各訴訟は、請求書及び異議申立書の記載内容等からすると、本件関連処分についての取消訴訟及びこれに関連する損害賠償請求訴訟(以下「本件関連訴訟」という。)であるものと推測される。

   本件関連訴訟については、訴訟の原因となった事務が公安委員会の権限に属する事務に関するものであることから、先に1(3)で述べたように、公安委員会及び警察本部長が、応訴の意思決定を行なった上で訴訟事務を処理しているものである。

   したがって、本件関連訴訟に関する応訴についての公安委員会の審議、対応の記録、各委員の意見、訴訟に関する応訴委任に関する内部審査記録等の文書の作成について、知事は全く関与していないし、取得・管理していない。

(3)大阪府議会に対して応訴の審議、議決を求めたか否かに関する公安委員会の議事録その他関連文書の一切

   同様の理由から、当該文書を知事が作成、又は取得・管理している事実はない。

   なお、参考までに申し添えると、大阪府又は大阪府の機関が被告として提起された訴訟に応訴するか否かは執行機関の権限に属する事項であり、議会の議決を経ることは必要でないことから、知事の権限に属する事務に関し提起された訴訟について、知事部局においてはこのような文書を通常作成していないところである。

(4)総務部財政課及び法制文書課と本件請求文書の関係

   以上のとおり、知事は、本件請求文書を作成又は取得しておらず、現に管理もしていないが、請求書において、担当室・課(所)等として財政課及び法制文書課が記載されているため、財政課及び法制文書課と本件請求文書の関係についても付記しておく。

   財政課及び法制文書課は、知事の権限に属する事務を分掌させるために知事のもとに置かれた組織であり、その事務内容は、大阪府処務規程(以下「処務規程」という。)に規定されている。このうち、財政課については、処務規程第4条第1項第5号において、「監査委員、公安委員会及び教育委員会に関すること。」が事務分担として規定されているが、これは、知事が他の執行機関に対して、自治法上有する権限(予算調製及び執行等の権限のうち、他課分掌の事務を除いたもの)を行使する際の窓口としての役割を財政課が担うことを意味するにすぎず、もとより、自治法第138条の2の例外を規定しているものではない。

   すなわち、財政課は、公安委員会に関する事務は行なっているが、それは知事が有する予算調製及び執行等の権限のうち、他課分掌の事務を除く事務について関与するということであり、公安委員会が所掌する事務全般について関与する権限を有するものではない。

   また、公安委員会は、前述のとおり、知事とは別の執行機関であり、知事から独立して事務を行う執行機関であるから、異議申立人が主張するように知事部局の総務部財政課に属するものではない。

   次に、法制文書課については、処務規程第4条第6項第2号において「訴訟事務の調整に関すること。」が事務分担として規定されているが、これは同様に、知事の権限に属する事務に関する訴訟については、法制文書課が訴訟事務の調整を行うというものであり、知事とは別の執行機関である公安委員会の権限に属する事務に関する訴訟に法制文書課が関与することはない。

   以上のとおり、本件請求文書は、いずれも知事部局の職員が作成又は取得したものではなく、現に管理もしていないことから、条例第2条第1項に規定する行政文書には該当しないものとして条例第13条第2項の規定により、不存在による非公開決定を行ったものである。

   さらに、条例第2条第1項の「実施機関」とは、独立して事務を管理執行する権限を有する機関であり、知事、教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会等が同条第2項において規定されているが、公安委員会及び警察本部長は含まれていないことからも、本件請求文書は、条例第2条第1項に規定する実施機関が管理する行政文書には該当しない。

3 結論

   以上のとおり、本件処分は、条例に基づき適正に行われたものであり、何ら違法不当な点はなく、適法、かつ妥当なものである。

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

   行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

   このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、公開することにより、個人・法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

   このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。

   また、条例においては、不存在による非公開決定に対する不服申立てについても、実施機関は、原則として当審査会に諮問しなければならないこととしている。こうした諮問が行われた場合も、当審査会は、条例第23条に規定する調査権限を適切に行使して調査審議を行い、公正かつ簡易・迅速な救済の実現に努めることとなる。

2 本件請求文書について

   本件請求文書は、第二「異議申立ての経過」の2に記載した処分、決定、訴訟についての大阪府公安委員会の開催、審査を示す議事録その他一切の資料である(訴訟の応訴について大阪府議会に対して応訴の審議、議決を求めた資料を含む。)。

   当審査会において、上記の処分、決定及び訴訟に関する事実並びにこれらの事実についての公安委員会の開催、審査を示す議事録その他の資料を調査したところ、次のア、イに示す事実が確認され、これらの事実に関して本件請求文書に対応する文書が大阪府警察本部(以下「警察本部」という。)において保管されていることが認められた。そして、これらの事実に関して本件請求文書に対応する文書は、概ね「風営法に基づく行政処分等に関する文書」及び「風営法に基づく行政処分等に関連する訴訟に関する文書」に大別され、さらに、以下のとおり細別することができた。そして、それぞれについて、次のことが認められた。

ア 風営法に基づく行政処分等に関する文書

(ア)風俗営業の相続不承認の決定に関する文書

   風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営法」という。)は、同法第2条第1項に規定する「風俗営業」を営もうとする者は、風俗営業の種別に応じて、営業所ごとに、当該営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会(以下「管轄公安委員会」という。)の許可を受けなければならない旨を規定している(第3条第1項)。そして、風営法第3条第1項の許可を受けた風俗営業者が死亡した場合において、相続人が被相続人の営んでいた風俗営業を引き続き営もうとするときは、その相続人は、国家公安委員会規則で定めるところにより、被相続人の死亡後60日以内に管轄公安委員会に申請して、その承認を受けなければならない(第7条第1項)こととされている。また、相続人が第7条第1項の相続承認の申請をした場合においては、被相続人の死亡の日からその承認を受ける日又は承認をしない旨の通知を受ける日までは、被相続人に対してした風俗営業の許可は、その相続人に対してしたものとみなす(第7条第2項)こととされている。

   当審査会で確認した事実は、異議申立人が風営法第7条第1項の規定に基づき、大阪府公安委員会(以下「公安委員会」という。)に対して風営法第2条第7号のぱちんこ屋の営業につき相続承認申請を行ったところ、公安委員会は、これについて相続不承認を決定し、異議申立人に通知したというものである。

   そして、上記事実に関して本件請求文書に対応する文書について当審査会で調査したところ、当該不承認決定について、公安委員会において意思決定された決裁文書及びこれに係る公安委員会会議録が、警察本部において保管されていることが確認された。

(イ)営業所の構造設備等変更承認に関する文書

   風俗営業者は、増築、改築その他の行為による営業所の構造又は設備の変更をしようとするときは、国家公安委員会規則で定めるところにより、あらかじめ管轄公安委員会の承認を受けなければならない(風営法第9条第1項)。

   当審査会で確認した事実は、異議申立人が風営法第9条第1項の規定に基づき、ぱちんこ屋の営業所の構造設備変更承認申請を公安委員会に対して行ったところ、公安委員会はこれを承認決定し、異議申立人に通知したというものである。

   そして、上記事実に関して本件請求文書に対応する文書について当審査会で調査したところ、当該承認について意思決定された文書が、警察本部において保管されていることが確認された。

(ウ)営業所の名称の変更の届出に関する文書

   風俗営業者は、営業所の名称に変更があったときは、管轄公安委員会に、総理府令で定める事項を記載した届出書を提出しなければならない(風営法第9条第3項第1号)。また、営業所の名称の変更の届出書を提出する場合は、許可証の書換えを受けなければならず(同条第4項)、許可証の書換えを受けようとする者は、風営法施行規則第19条において準用する同規則第15条で定める許可証書換え申請書及び当該許可証を管轄公安委員会に提出しなければならない。

   当審査会で確認した事実は、異議申立人が風営法第9条第3項第1号及び同条第4項の規定に基づき、営業所の名称の変更届出書、許可証書換え申請書及び当該許可証を公安委員会に提出したところ、公安委員会は、風俗営業許可証の書換えを行ったというものである。

   そして、上記事実に関して本件請求文書に対応する文書について当審査会で調査したところ、当該変更届出書、許可証書換え申請書及び当該許可証を公安委員会が受領し、許可証の書換えを行った旨を示す文書が、警察本部において保管されていることが確認された。

(エ)相続不承認決定に係る異議申立ての棄却決定に関する文書

   当審査会で確認した事実は、異議申立人が、上記(ア)の相続不承認決定を取り消し、相続承認を求める旨の異議申立てを行政不服審査法第6条の規定により公安委員会に対して行ったところ、公安委員会は、これについて棄却決定を行ったというものである。

   そして、上記事実に関して本件請求文書に対応する文書について当審査会で調査したところ、当該異議申立てについて、公安委員会において棄却の意思決定がなされた決裁文書及びこれに係る公安委員会会議録が、警察本部において保管されていることが確認された。

イ 風営法に基づく行政処分等に関連する訴訟に関する文書

(ア)相続不承認処分取消請求事件(第一審)に関する文書

   当審査会で確認した事実は、上記ア(ア)の風俗営業の相続不承認処分の取り消し及び承認処分を求める訴訟が、異議申立人を原告、公安委員会を被告として大阪地方裁判所において提起されたところ、下記(イ)の損害賠償請求事件と併合審理され、判決において、異議申立人の請求及び訴えは、棄却及び却下されたというものである。

   そして、上記事実に関して本件請求文書に対応する文書について当審査会で調査したところ、当該訴訟の応訴、関係機関への報告等に関して、公安委員会の決裁を経た文書が、警察本部において保管されていることが確認された。

(イ)損害賠償請求事件(第一審)に関する文書

   当審査会が確認した事実は、国家賠償法第1条第1項に基づき、上記ア(ア)の風俗営業の相続不承認処分により被った損害の賠償を求める訴訟が、異議申立人を原告、大阪府を被告として大阪地方裁判所において提起されたところ、上記(ア)の相続不承認処分取消請求事件と併合審理され、判決において、原告の請求は棄却されたというものである。

   上記事実に関して本件請求文書に対応する文書について当審査会で調査したところ、当該訴訟の応訴、関係機関への報告等に関して、警察本部長の決裁を経た文書が、警察本部において保管されていることが確認された。

(ウ)相続不承認処分取消、損害賠償請求事件(控訴審)に関する文書

   当審査会で確認した事実は、上記(ア)の相続不承認処分取消請求事件(第一審)及び(イ)の損害賠償請求事件(第一審)について、異議申立人を控訴人、公安委員会及び大阪府を被控訴人として大阪高等裁判所に控訴が提起されたところ、併合審理されたうえで、判決において、控訴はいずれも棄却されたものである。

   上記事実に関して本件請求文書に対応する文書について当審査会で調査したところ、当該両訴訟の応訴、関係機関への報告等に関して、公安委員会等の決裁を経た文書が、警察本部において保管されていることが確認された。

(エ)相続不承認処分取消、損害賠償請求事件(上告審)に関する文書

   当審査会で確認した事実は、上記(ウ)の相続不承認処分取消、損害賠償請求控訴事件(控訴審)について、異議申立人を上告人兼申立人、公安委員会及び大阪府を被上告人兼相手方として、最高裁判所に上告及び上告受理の申立てがなされたところ、最高裁判所において、上告棄却及び上告審として受理しない旨の決定がなされたというものである。

   上記事実に関して本件請求文書に対応する文書について当審査会で調査したところ、当該上告及び上告受理の申立てに係る関係機関への報告等に関して、公安委員会等の決裁を経た文書が、警察本部において保管されていることが確認された。

   なお、大阪府においては、大阪府及び知事を当事者とする訴訟であって、その内容が公安委員会の所管の事項に関するものについては、地方自治法第180条の2の規定により、知事が公安委員会と協議して、大阪府警察本部長(以下「警察本部長」という。)に補助執行させることとしており、上記(イ)、(ウ)及び(エ)の中には、知事が警察本部長に補助執行させている損害賠償請求訴訟に係る事務に関する文書が含まれていることが認められた。

3 本件処分に係る具体的な判断及びその理由について

(1)行政文書に該当する要件について

ア 本件処分は、本件請求文書に対応する行政文書を管理していないことを理由とする非公開決定処分であるので、当審査会として本件処分に係る具体的な判断を行うにあたっては、本件請求文書に対応する行政文書が存在するか否かについての検討を行う必要がある。

   そこで、まず、当審査会で確認した本件請求文書に対応する文書の行政文書該当性について検討し、その上で、その他に本件請求文書に対応する行政文書が存在する余地について検討する。

イ 条例において公開請求の対象となる行政文書は、条例第2条第1項により、「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画、写真及びスライド並びに電磁的記録」であって、「当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が管理しているもの」である(条例第2条第1項但し書きに該当するものを除く。)。

ウ 「実施機関」とは、独立して事務を管理執行する権限を有する機関をいい、地方自治法(以下「自治法」という。)上の執行機関等を個別に条例に規定している。実施機関は、条例に基づく事務について、自らの判断と責任において、誠実に管理し、執行する義務を負うものであって、現在、条例に規定している実施機関は、知事、教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会、監査委員、公安委員会、地方労働委員会、収用委員会、海区漁業調整委員会、内水面漁場管理委員会、水道企業管理者及び警察本部長である。なお、公安委員会及び警察本部長については、条例改正により、新たに実施機関に加えられた(平成12年10月27日公布)が、この改正部分は、知事の規則で定める日から施行することととされており、現在は、まだ施行されていない。

エ 「実施機関の職員」とは、実施機関の指揮監督権限に属するすべての職員をいう。

オ 「職務上」とは、実施機関の職員が、法令、条例、規則、規程、訓令、通達等により、与えられた任務又は権限を、その範囲内において処理することをいう。

カ 「組織的に用いる」とは、作成又は取得に関与した職員個人の段階のものではなく、組織としての共用文書の実質を備えた状態、すなわち、当該実施機関において、業務上必要なものとして利用又は保存されている状態のものを意味する。

キ 「実施機関が管理しているもの」とは、実施機関の職員が組織的に用いるものとして、実施機関が利用、保存している状態のものを意味する。

(2)知事と公安委員会との関係について

ア 異議申立人は、警察法第38条第1項により、知事の所轄の下に公安委員会が置かれているのであるから、公安委員会は、条例第2条第2項の実施機関である知事に含まれ、条例上、公安委員会は実施機関知事の担当課であり、公安委員会に所在し、管理している一切の文書は、知事が管理している文書であると主張する。また、異議申立人は、条例は大阪府の全機関に適用されるものであり、条例上の実施機関の記載は例示に過ぎず、公安委員会が実施機関として記載されていないもとでは、公安委員会は実施機関である知事に含まれると主張する。そこで、これらの点について検討する。

イ 知事と公安委員会は、いずれも普通地方公共団体の執行機関である。普通地方公共団体の執行機関とは、法律の定めるところにより普通地方公共団体に置かれるものであって、自治法においては、当該団体を統括し、代表する知事(自治法第147条)のほかに、教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会、監査委員、公安委員会、地方労働委員会、収用委員会、海区漁業調整委員会及び内水面漁場調整委員会(自治法第180条の5)が都道府県の執行機関として定められている。それぞれの執行機関は、当該団体の条例、予算その他の議会の議決に基づく事務及び法令、規則その他の規程に基づく当該団体の事務を、自らの判断と責任において、誠実に管理し及び執行する義務を負う(自治法第138条の2)こととされ、それぞれ独自の執行権限をもち、その所掌事務について、当該団体の意思を自ら決定し、表示することができるものである。そして、知事以外の他の執行機関の所掌事務のうち、知事が権限を有するものは、予算の調製及び執行、議会の議決を経べき事件についての議案提出、地方税の賦課徴収、決算を議会の認定に付すること等(自治法第180条の6他)に限定されているのである。

   こうした点を踏まえると、自治法において、「普通地方公共団体の執行機関の組織は、普通地方公共団体の長の所轄の下に、それぞれ明確な範囲の所掌事務と権限を有する執行機関によつて、系統的にこれを構成しなければならない。」(自治法第138条の3第1項)、「普通地方公共団体の執行機関は、普通地方公共団体の長の所轄の下に、執行機関相互の連絡を図り、すべて、一体として、行政機能を発揮するようにしなければならない。」(同条第2項)と規定しているのは、それぞれの執行機関が独自の執行権限を有することを前提としながら、行政機能の一体性確保の観点から、地方公共団体の長についてその地方公共団体の統括代表者としての地位を示しているものと解される。また、自治法が憲法第92条に基づく地方自治制度の基本法であることから、警察法に規定する知事と公安委員会との関係についても、同様の解釈がなされるべきものである。よって、自治法及び警察法でいう知事と公安委員会との「所轄」の関係とは、最も弱い所属の関係を示すものであって、これら二つの機関の間において、一方が上級の機関であることを認めながらも、他方は相当程度当該上級機関から独立した機関であることを意味するものと解される。すなわち、知事は、公安委員会と所轄の関係にあることをもって、公安委員会の権限に属する事務について公安委員会を指揮監督する権限を有するといえるものではなく、知事が公安委員会に対して有する権限は、公安委員の任免(警察法第39条)のほか、公安委員会に関する条例案の大阪府議会(以下「府議会」という。)への提出及び予算の調製・執行など自治法や警察法において個別に定められた権限に限られているのである。

ウ 以上からすると、公安委員会の権限に属する事務において公安委員会が作成し、又は取得した文書については、公安委員会が自らの権限と責任において管理すべきものであり、知事が何ら関与できる権限を有するものではない。また、現に、公安委員会が管理する文書については、公安委員会の権限に基づき、大阪府警察文書管理規程により、管理されていることが認められる。そして、条例における実施機関は、行政文書の公開請求があったときには、自らの責任において、自らの権限に基づき管理する文書の公開・非公開を決定しなければならないものであるが、知事は、公安委員会の権限に基づき管理されている文書については、何ら関与できる権限を有さず、公開・非公開の決定を行うことはできないのであるから、公安委員会が実施機関である知事に含まれるとは到底いえないものである。

   また、条例第2条第2項の実施機関が、独立して事務を管理執行する権限を有する機関として自治法上の執行機関等を個別に条例に規定していることについては、上記のとおり、執行機関等が、自ら有する権限に基づき管理する文書について、自らの権限と責任により公開・非公開の判断を行うことが要請されているという観点から理解されるべきであり、条例第2条第2項に規定する実施機関は、例示として規定していると解されるものではなく、公安委員会は、他のいずれの実施機関にも属さず、実施機関である知事に含まれないものである。

エ なお、大阪府処務規程(以下「処務規程」という。)第4条第1項第5号において、財政課の分掌事務として「監査委員、公安委員会及び教育委員会に関すること」と規定されているが、財政課が知事の権限を分掌させるために設置された課の一つであり、上記の知事と公安委員会との関係からして、この規定の趣旨が、法令上知事が公安委員会に対して有する限定的な権限の範囲内で事務を分掌しているものであることは明らかである。よって、この規定をもって、公安委員会が知事部局の総務部財政課に属すると解したり、予算の調製など知事が法令上有する限定的な権限以外に財政課が公安委員会に対して何らかの権限を有すると解することはできないものである。

オ また、本件異議申立てが行われた時点においては、公安委員会が条例第2条第2項の実施機関として規定されていなかったが、先に述べたとおり、その後条例が改正され、現在は、知事とは別に公安委員会及び警察本部長が実施機関として規定されている(平成12年10月27日公布。施行日は規則で定める日とされており、現在は未施行。)ことからも、これまで公安委員会が実施機関である知事に含まれていなかったことは明らかである。

カ 以上のことから、公安委員会が実施機関である知事に含まれるものではない。

(3)本件請求文書に対応する文書の行政文書該当性について

   当審査会において本件請求文書に対応する文書について調査したところ、上記2のア、イに記載した文書が警察本部において保管されていることが確認され、また、これらの文書には、知事が警察本部長に補助執行させている損害賠償請求訴訟に係る事務に関する文書が含まれていることが確認された。

   そこで、当審査会で確認した本件請求文書に対応する文書が行政文書に該当するか否かの検討にあたっては、これらの文書を、知事が警察本部長に補助執行させている損害賠償請求訴訟に係る事務に関する文書(以下「損害賠償請求訴訟関係文書」という。)及び損害賠償請求訴訟関係文書を除く文書(以下「処分等関係文書」という。)に大別し、まず、警察本部において保管されている処分等関係文書の行政文書該当性について検討し、次に、警察本部において保管されている損害賠償請求訴訟関係文書の行政文書該当性について検討する。その上で、さらに、警察本部において保管されている文書の他に本件請求文書に対応する行政文書が存在する余地について検討する。

   文書が実施機関である知事の管理する行政文書に該当する要件は、先に上記(1)で述べたとおり、「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書」であって、「実施機関の職員が、組織的に用いるものとして実施機関が管理しているもの」である。この要件の該当性について、以下検討する。

ア 警察本部において保管されている処分等関係文書について

(ア)処分等関係文書をその内容から分類すると、(a) 「風俗営業の相続不承認の決定に関する文書」(以下「文書a 」という。)、(b) 「営業所の構造設備等変更承認に関する文書」(以下「文書(b) 」という。)、(c) 「営業所の名称の変更の届出に関する文書」(以下「文書(c) 」という。)、(d) 「相続不承認決定に係る異議申立ての棄却決定に関する文書」(以下「文書(d) 」という。)、(e) 「相続不承認処分取消請求事件(第一審)に関する文書」(以下「文書e 」という。)、(f) 「相続不承認処分取消請求事件(控訴審)に関する文書」(以下「文書(f) 」という。)及び(g) 「相続不承認処分取消請求事件(上告審)に関する文書」(以下「文書(g) 」という。)である。

   文書(a) 、文書(b) 及び文書(c) は、風営法に基づいて公安委員会が行った行政処分等に関する文書である。これらの行政処分等は、いずれも、風営法において都道府県公安委員会が行う旨が規定されていることから、明らかに公安委員会の権限に属する事務であり、また、現に風営法及び風営法に基づく関係法令により、公安委員会が行った処分等であることを当審査会で確認した。

   文書(d) は、風営法に基づいて公安委員会が行った行政処分に対する異議申立てに関する文書である。この異議申立ては、公安委員会が行った処分に関して公安委員会に対してなされたものであり、その事務は、明らかに公安委員会の権限に属する事務である。また、現に公安委員会が当該異議申立てに対する棄却決定を行っていることが当審査会において確認されている。

   文書(e) 、文書(f)  及び文書(g) は、いずれも公安委員会を当事者とする訴訟に関する文書である。自治法上の執行機関を当事者とする訴訟の遂行に関する事務は、当該執行機関の権限に属する事務であり、現に公安委員会が訴訟の遂行を行ったことが当審査会において確認されている。

   なお、先に上記2で述べたとおり、上記の文書(a) 、文書(d) 、文書(e) 及び文書(g) については、それぞれ公安委員会会議録が含まれ、これらの会議録が警察本部において保管されていることを当審査会で確認した。

   公安委員会会議録は、大阪府公安委員会会議規則第8条により、公安委員会委員長が、職員をして調製させなければならない旨が定められていることから、公安委員会会議録の作成は、明らかに公安委員会の権限に属する事務である。

   また、先に述べたとおり、上記の文書(a)から文書(g)に該当する文書については、いずれも、警察本部において保管されていることが確認されている。このことは、警察本部が、公安委員会の管理の下に、法律の規定に基づき公安委員会の権限に属させられた事務について公安委員会を補佐する(警察法第47条第2項)こととされており、また、警察本部長は、公安委員会の管理に服し、警察本部の事務を統括し、警察所属の警察職員を指揮監督する(警察法第48条第2項)こととされているため、警察本部においては、警察本部長の指揮監督により、公安委員会の権限に属させられた事務に係る文書管理についても、公安委員会を補佐していることによるものである。

   (イ)上記(ア)において確認した内容を踏まえ、処分等関係文書が知事の管理する行政文書に該当するかどうかについて検討する。

   まず、処分等関係文書は、いずれも公安委員会の権限に属する事務に係るものであり、公安委員会の権限に基づき、公安委員会を補佐する警察本部の職員により作成し、又は取得されたものである。知事は、これらの文書の作成又は取得に関与することはできず、また、現に関与していない。よって、「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書」に該当しない。

   また、公安委員会の権限に属する事務において作成又は取得され、現に警察本部において保管されている文書については、知事が利用、保存している状態のものであるとはいえないことから、「実施機関の職員が、組織的に用いるものとして実施機関が管理しているもの」にも該当しない。

   以上のことから、警察本部において保管されている処分等関係文書は、知事が管理する行政文書に該当しないことが認められる。

イ 警察本部において保管されている損害賠償請求訴訟関係文書について

(ア)先に述べたとおり、警察本部において保管されている本件請求文書に対応する文書の中に、知事が警察本部長に補助執行させている事務に関する文書が含まれていることが確認された。

   自治法においては、普通地方公共団体の執行機関は、それぞれ明確な範囲の所掌事務と権限を有する(自治法第138条の3第1項)ものであるが、経費の節減と行政能率の向上を図る見地から、普通地方公共団体の長は、その権限に属する事務の一部を、当該普通地方公共団体の他の執行機関と協議して、当該他の執行機関又はこれらの執行機関の事務を補助する職員若しくはこれらの執行機関の管理に属する機関の職員に委任し、又はこれらの執行機関の事務を補助する職員若しくはこれらの執行機関の管理に属する機関の職員をして補助執行させることができる(自治法第180条の2)旨が規定されている。

   当審査会で確認したところ、大阪府においては、自治法第180条の2の規定により、知事が公安委員会との協議を経て、大阪府及び知事が当事者である訴訟のうち、その内容が公安委員会所管の事項に関するものについては、警察本部長に補助執行させている。そして、本件請求文書に係る損害賠償請求訴訟(以下「本件損害賠償請求訴訟」という。)は、大阪府を被告とする訴訟であり、その事務は知事の権限に属するが、その内容が公安委員会所管の風営法に基づく処分等に関するものであることから、知事が警察本部長に補助執行させているものである。補助執行とは、委任又は代理と異なり、権限を有するものの権限を内部的に補助し、執行させることをいい、対外的には、権限を有するものの名で執行されるものであることから、知事が警察本部長に補助執行させている事務に関連して作成又は取得された文書については、警察本部において保管されているということだけをもって、知事が利用・保存できる状態にないとまでは言い切れないものである。

(イ)そこで、当審査会では、実施機関である知事(損害賠償請求訴訟に係る事務を補助執行している警察本部長)に対して条例第23条に基づき、本件請求文書のうち、損害賠償請求訴訟関係文書及びこれに関連する文書の提示を求め、これらを見分して検討することとした。

   提示された文書の内容を確認したところ、同一の決裁手続において作成された文書のうち、警察本部から警察庁など国の関係機関への報告に関する文書及び公安委員会の指定代理人の指定書の案など公安委員会を当事者とする訴訟のみに関する文書は、知事の補助執行に係る文書でないことが明らかであるので、検討対象から除外した。また、訴状、大阪地裁判決文、控訴状、大阪高裁判決文、上告状兼上告受理申立書、上告の趣旨訂正及び最高裁決定書については、当審査会で確認したところ、異議申立人より、請求にかかる行政文書に合致しない旨の意思表示がなされたので、これらについても、検討対象から除外した。

   そして、提示された文書から上記文書を除外した別紙に掲げる文書(以下「別紙文書」という。)についてさらに内容を確認して検討したところ、以下のことが認められた。

(ウ)別紙文書について、内容が共通する文書を整理すると、(a) 起案文書、(b) 事件概要、(c) 口頭弁論期日呼出・答弁書催告状、(d) 書面提出命令、(e) 期日呼出状、(f) 上告提起通知書・上告受理申立通知書、(g) 訴訟委任契約書、(h) 弁護士に対する委任状、(i) 指定代理人に対する指定書及びj 訴訟の発生等についての通知文に分類される。

   そこで、当審査会において、共通する各文書に記載された情報をみると、(a) の起案文書は、同一の決裁手続において応訴の意思決定を行う内容等が列挙されており、起案者は、大阪府事務吏員を併任している警察本部の職員である。(b) は、各訴訟に係る事案の概要が記載されている。(c) から(f) は、いずれも裁判所からの通知文書であるが、名宛人は、(c) については「大阪府」、(d) から(f) については「大阪府 代表者知事」である。(g) は、弁護士との訴訟委任契約書の案である。(h) は、弁護士に対する委任状の案で、委任者名が「大阪府 代表者大阪府知事」である。(i) の指定代理人に対する指定書の案で、知事が大阪府事務吏員5名を訴訟代理人に指定しているものである。なお、この大阪府事務吏員5名は、知事が警察本部の職員を大阪府事務吏員に併任しているものであることが確認された。(j) は、訴訟の発生・応訴及び終結についての警察の担当課等への通知文の案である。

(エ)上記において確認した内容を踏まえ、別紙文書が知事の管理する行政文書に該当するかどうかについて検討する。

 a  実施機関の職員が作成・取得したもの

   まず、「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書」に該当するかどうかについて検討する。

   上記のとおり、知事が警察本部の職員5名を大阪府事務吏員に併任して、大阪府の指定代理人として本件損害賠償請求訴訟の事務に従事させていることが認められ、別紙文書の起案者も全て大阪府事務吏員を併任している職員である。また、本件損害賠償請求訴訟の事務において、知事名による弁護士への委任状等の文書が作成されており、また、知事宛てに送付された裁判所からの文書が取得されていることが認められる。そうすると、知事は、大阪府事務吏員を併任する警察本部の職員を通じて、知事の名で本件損害賠償請求訴訟に係る事務を行ったといえるのであることから、これら併任職員は、知事の補助執行に係る事務に従事している際には、知事の指揮監督権限に属する大阪府事務吏員として職務を行い、文書を作成し、又は取得していると言わざるを得ない。よって、別紙文書は、「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書」に該当すると認められる。

b 実施機関が管理しているもの

   次に、「実施機関の職員が、組織的に用いるものとして実施機関が管理しているもの」に該当するかどうかについて検討する。

   実施機関は、警察本部において大阪府警察文書管理規程に基づいて管理されているから、知事が管理している文書ではないと主張するが、実施機関が管理しているものに該当するかどうかは、単にどの場所で保管されているかということだけでなく、知事が利用、保存している状態のものであるといえるかどうかにより判断されるべきである。

   本件損害賠償請求訴訟の係属中においては、大阪府事務吏員を併任した警察本部の職員が訴訟事務に従事しており、当該事務に従事している際には、併任職員が知事の指揮監督をうけて訴訟の遂行に係る文書を利用可能な状態で保管していることは明らかである。

   なお、本件損害賠償請求訴訟は既に終結して約一年経過している。しかしながら、大阪府を当事者とする損害賠償請求訴訟に関する文書は、通常、大阪府と第三者との間の権利義務関係等に密接な係わりをもつものであるから、訴訟終結後においても、必要に応じて知事が利用可能なものとして保管することが求められていることは言うまでもない。また、知事が管理する行政文書の管理に関し必要な事項を定めた大阪府行政文書管理規則の別表第二(第27条関係)において、「争訟に関する起案文書」の保存期間の基準が「長期」(十年を超える保存期間)と規定されている。そして、別紙文書は、本件損害賠償請求訴訟に関する起案文書など意思決定に係る文書である。こうしたことからすると、現に警察本部において保管されているもとでは、知事は、訴訟終結後においても大阪府事務吏員を併任した警察本部の職員に対して必要な指揮監督を行いながら、別紙文書を利用可能な状態で保管しているものと解さざるを得ないものである。したがって、別紙文書は、知事が利用、保存している状態のものであるといえ、実施機関である知事が管理しているものに該当すると認められる。

   以上のことから、警察本部において保管されている損害賠償請求訴訟関係文書については、別紙文書が実施機関である知事が管理する行政文書であると認められる。

ウ その他に行政文書が存在する余地について

   上記のとおり、当審査会において調査したところ、本件請求文書に対応する文書が警察本部において保管されており、そのうち、別紙文書については、知事が管理する行政文書に該当すると認められたところである。そして、当審査会において、異議申立人に対し、本件請求の趣旨を確認したところ、現実に文書が保管されている場所が知事部局内であるのか、警察本部・公安委員会であるのかは問わないというものであったことから、当審査会においては、本件異議申立てが、行政文書の不存在を理由とした非公開決定に対して行われたものであることに鑑み、別紙文書以外に本件請求文書に対応する行政文書が存在する余地について検討する。

(ア)上記2で確認した本件請求文書に関する事実のうち、「風俗営業の相続不承認の決定」、「営業所の構造設備等変更承認」、「営業所の名称の変更の届出」、「風営法に基づく相続不承認の決定」、「営業所の名称の変更の届出」、「相続不承認決定に係る異議申立の棄却決定」、「相続不承認取消請求事件(第一審)」、「同事件(控訴審)」及び「同事件(上告審)」に関する事務は、いずれも公安委員会の権限に属する事務である。したがって、これら処分等の審査の過程においても他の執行機関である知事等と協議等を行う必要がなく、また、行った事実も確認されておらず、これらに関して知事が本件請求文書に対応する行政文書を作成し、又は取得して現に管理しているという事実は認められなかった。

   なお、処務規程第4条第6項第2号において、知事の総務部法制文書課の分掌事務として「訴訟事務の調整に関すること」が規定されているが、これは、先に述べた財政課と同様、法制文書課は知事の権限を分掌させるために設置された課の一つであり、知事は公安委員会の権限に属する訴訟の遂行については権限を有しないことから、この規定の趣旨は、知事の権限の範囲内で事務を分掌しているものであることは明らかである。よって、この規定をもって、法制文書課が公安委員会の権限に属する訴訟について調整する権限を有するとはいえないものであり、現に法制文書課が関与している事実は認められなかった。

   また、上記2で確認した本件請求文書に関する事実のうち、「損害賠償請求事件(第一審)」、「同(控訴審)」及び「同(上告審)」に関して本件請求文書に対応する行政文書については、警察本部において保管されている別紙文書以外に、知事が作成し、又は取得して現に管理しているものが存在するという事実は認められなかった。

(イ)訴訟の応訴についての府議会の議決について

   異議申立人は、本件請求文書において、本件請求に関連する訴訟への応訴について府議会の審議を求めたか否かに関する公安委員会の議事録その他関連文書の一切を求めているが、当審査会で調査したところ、存在が確認できなかったので、ここで、訴訟の応訴についての府議会の議決に関する文書について検討する。

   普通地方公共団体の議会の議決すべき事項については、自治法第96条第1項に15項目が列挙されており、これら以外の事項についての普通地方公共団体の団体意思の決定は、執行機関が、自己の権限内の事項について行うこととされている。訴訟については、同条第1項第12号において、「普通地方公共団体がその当事者である訴えの提起に関すること」が規定されているのみであることから、本件の場合のように、公安委員会及び大阪府が被告となって応訴する場合は、議会の議決を要する場合に含まれないものである。

   よって、公安委員会及び大阪府を被告として提起された訴訟への応訴については、それぞれ、公安委員会及び大阪府知事の権限に属する事項であり、議会の議決を経る必要はない。また、先に述べたとおり、本件処分に関連する訴訟のうち、公安委員会の権限に属する訴訟については、公安委員会において応訴の意思決定が行われており、知事の権限に属する訴訟については、知事の補助執行者である警察本部長において応訴の意思決定が行われていることが確認された。

   以上のことから、府議会への提案、議決に関する文書については、実施機関において作成しておらず、現に管理していないことが認められる。

エ 事案の移送について

   なお、異議申立人は、本件請求文書に対応する文書が公安委員会にあるのであれば、条例第16条第1項の規定により、知事は公安委員会と協議の上、公安委員会に対し、事案を移送すべきと主張するので、この点につき検討する。

   条例第16条第1項では、「実施機関は、公開請求に係る行政文書が他の実施機関により作成されたものであるときは、当該公開請求の趣旨に反しない限りにおいて、当該他の実施機関と協議の上、当該他の実施機関に対し、事案を移送することができる」旨を規定している。しかしながら、この規定は、行政文書の公開請求を受けた実施機関が請求に係る行政文書を管理しており、かつ、他の実施機関が当該行政文書を作成した場合において適用されるものである。したがって、本件においては、公安委員会を実施機関とする条例の規定がまだ施行されていないことから、現時点においては、知事から公安委員会に対する事案の移送の適用がないことはもとより、本件請求文書に対応する文書のうち、実施機関である知事が管理していないものについては、知事は、事案の移送を行うことはできないものである。

   以上のことから、本件請求文書については、別紙文書が行政文書に該当し、それ以外には、本件請求文書に対応する行政文書が存在しないことが認められる。

4 結論

   以上を総合すると、次のとおりである。

   本件異議申立てに係る事案について当審査会で調査審議を行ったところ、当審査会で確認した本件請求文書に対応する文書のうち、風営法に基づく行政処分など公安委員会の権限に属する事務に係る文書については、知事が管理する行政文書に該当するとは認められなかったが、知事の補助執行に係る別紙文書については、保管場所が警察本部であっても、知事が管理している行政文書に該当すると認められた。

   そこで、上記に照らすと、実施機関は、本件処分を行うにあたり、知事の補助執行に係る文書を本件請求文書に対応する行政文書として特定し、公開・非公開の決定を行うという判断をすべきであったにもかかわらず、これを行わなかったということとなる。

   したがって、実施機関の判断のうち、本件請求文書に対応する行政文書として、公安委員会の権限に属する事務に係る文書を管理していないとした判断は妥当であったが、知事の補助執行に係る別紙文書を管理していないとした判断については妥当とはいえず、この部分については、異議申立てに理由があるということになる。よって、実施機関は、知事の補助執行に係る別紙文書を管理していないとする判断を行った本件処分を取り消し、別紙文書を本件請求文書に対応する行政文書として特定して、公開・非公開の判断をすべきである。

   なお、当審査会において、実施機関である知事(損害賠償請求訴訟に係る事務を補助執行している警察本部長)に対して、別紙文書を公開することについての意見を求めたところ、別段の意見はないとの回答が得られたところであるので、当審査会としては、実施機関が適正に公開(部分公開決定を含む。)又は非公開の決定を行うことを期待する。

   以上のとおりであるから、本件請求文書のうち、別紙文書については、異議申立てに理由があり、「第一 審査会の結論」のとおり答申する。

   別紙

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府民文化部 府政情報室情報公開課 情報公開グループ

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