大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第98号)

更新日:2009年8月5日

第一 審査会の結論

実施機関は、本件異議申立てに係る部分公開決定において非公開とした部分のうち、「測定結果報告書」の各項目を公開すべきである。

実施機関のその余の判断は妥当である。

第二 本件異議申立てに至る経過

1 平成16年4月8日、異議申立人は、大阪府知事(以下「実施機関」という。)に対し、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、「株式会社A(以下「本件会社」という。)による一般廃棄物処理施設設置許可申請書に係る関係書類及び許可書の写し」の行政文書公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。

2 同年5月7日、実施機関は、本件請求に対応する行政文書として「本件会社による一般廃棄物処理施設設置許可申請書に係る関係書類及び許可書の写し」を特定の上、(1)を除いて公開するとの部分公開決定(以下「本件決定」という。)を行い、公開しない理由を(2)のとおり付して異議申立人に通知した。

(1)公開しないことと決定した部分

  法人及び団体の代表者の印影

  施設の設置・維持管理に要する資金額及びその内訳額

  施設の設置・維持管理に要する資金額の調達の内訳額

  個人及び法人役員の生年月日

  法人役員の住所(法人の代表者を除く。)、本籍地

  開発区域に含まれる地域の名称一覧表のうち所有者以外の権利者関係欄

  廃棄物処理技術管理者の認定番号及び年月日

  合計残高試算表(貸借対照表・損益計算書)の額

  容器包装リサイクル事業年次損益計算書(概算・内訳書)の額

  個人氏名(法人の役員、開発区域に含まれる地域の土地所有者を除く。)

  住民票

  測定結果報告書の所在地、依頼先、測定先

(2)公開しない理由

ア 条例第8条第1項第1号に該当する。

 本件行政文書(非公開部分)には、法人代表者の印影等が記載されており、これらを公にすることにより、取引の安全を害する等、当該事業者の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められる。

イ 条例第9条第1号に該当する。

 本件行政文書(非公開部分)には、個人の氏名、生年月日、住所等が記載されており、これらは個人のプライバシーに関する情報であって、特定個人が識別あるいは識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる。

3 同年7月6日、異議申立人は、本件決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に異議申立てを行った。

第三 異議申立ての趣旨

本件決定において公開しないことと決定した部分のうち、「施設の設置・維持管理に要する資金額及びその内訳額」、「施設の設置・維持管理に要する資金額の調達の内訳額」、「容器包装リサイクル事業年次損益計算書(概算・内訳書)の額」及び「測定結果報告書の所在地、依頼先、測定先」の部分について、本件決定を取り消し公開することを求める。

第四 異議申立人の主張要旨

異議申立人の主張は概ね次のとおりである。

1 本件請求を行った趣旨

条例によれば、「公開しないことができる行政文書」(法人等情報)(条例第8条第1項第1号、第2項第1号)として、「法人その他の団体または個人の事業に関する情報のうち、公にすることによりその競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの(生産技術上のノウハウ、経営上の秘密など。ただし、人の生命に危害を及ぼすおそれのある事業活動等に関するものを除く。)」とある。

本件の事業計画においては、一般ごみの多種多様な廃プラスチックを圧縮、こん包したモノを解砕、破砕、比重選別、乾燥、加熱、成形など機械的、熱的な処理をおこなってポリエチレン及びポリプロピレンからパレットを製造、ポリスチレンからインゴットを成形し、再商品化することが行われる。

本件工場の操業によって、杉並病で発生したような廃プラスチック起源の有害化学物質が発生するのかどうか、それが健康被害をもたらすのかどうか、環境汚染をひどくしないかという心配、不安が住民の間で高まり、短期間で8万5千筆の廃プラ処理工場建設反対の署名が行われた。

また、最近わかったこととして、本件の工場の立地は、都市計画法上市街化調整区域であり、市街化を抑えるべき地域として指定されており、廃棄物施設(1日取扱量5トン以上)に至っては、大阪府が市町村から廃棄物の処理を委託される場合の基準として建設が許されないということに準じ寝屋川市の「都市計画法第34条第10号ロ及び同法施行令第36条第1項第3号ホに関する判断基準」の「提案基準11 容器包装の選別施設等の建築を目的とする開発行為等の取り扱い」の第二(適用の範囲)には、「この基準に係る選別施設等は、市町村から委託を受けて、容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(平成7年法律第112号)に基づき容器包装の選別、圧縮、粉砕、保管等の処理を行う施設で、処理能力が1日5トン未満の施設とする」としているとのことである。本件施設の1日処理能力102トンは寝屋川市が自ら決めている5トン未満の20倍以上であり、まったく違反していると言わねばならない。

2 公開を求める理由

(1)「施設の設置・維持管理に要する資金額及びその内訳額」「施設の維持管理に要する資金額の調達の内訳額」「容器包装リサイクル事業年次損益計算書(概算・内訳書)の額」の部分について

本件施設は、申請書に添付された生活環境影響調査書によれば、「日本初」の施設とされているにもかかわらず、工程の詳細がわからず、とりわけ排気塔、換気塔など通常化学物質製造工場等に設置されている公害等の安全環境対策施設の設置状況が明らかにされておらず周辺住民として不安であること、及び昨年7月に設立された会社であり、その実績について、ほとんど有しないと考えられ、市街化調整区域に日量48トンもの一般廃棄物である廃プラスチックを処理し、リサイクル製品を製造する事業を行うことが信用に足る会社であるかどうかにつき、本会社の工場建設により環境悪化に不安を持つ周辺住民として判断の材料にするため、上記部分の公開を求める。

 また、1の状況の中で、実施機関が行った一般廃棄物処理施設の設置許可は、事前に化学物質の発生と健康被害の恐れがほとんど調査されないまま、事業の許可が行われたことに対し、住民が条例にいう「人の生命に危害を及ぼすおそれのある事業活動」の場合、条例が非公開にしても良いとされている「法人その他の団体又は個人の事業に関する情報のうち、公にすることによりその競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの。」であっても情報公開すべきことを示しており、本件請求もそのことに該当するものである。

(2)「測定結果報告書の所在地、依頼先、測定先」の部分について

ポリスチレンを扱うインゴット機からの悪臭調査についての「測定結果報告書」のうち、「ご依頼先 所在地」「依頼先」「測定先」について、3月、本件会社が市民の代表である寝屋川市会議員の求めに応じて情報提供している同一文書を、私が一市民であるからという理由で、実施機関が情報公開を拒否し、該当部分を黒塗りにしている点は、まったく納得いかない。「業者が市会議員に提供した資料だから、府民に提供できない」というのは、市会議員と府民の知る権利を府自らが差別的に扱っているという点で、まったく理解できない。ちなみに、市会議員に業者が提供した際、市会議員に対し、ほかの市民に見せることや、提供することを禁じた言動、文書等はまったくなく、実施機関の非公開決定は府民の知る権利を踏みにじり、条例に反し、かつ民主主義に反する行為である。

第五 実施機関の主張要旨

実施機関の主張を総合すると概ね次のとおりである。

1 一般廃棄物処理施設設置の許可事務について

(1)一般廃棄物処理施設設置の許可事務の概要

 一般廃棄物処理施設を設置しようとする者は、当該一般廃棄物処理施設を設置しようとする地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない旨、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)により義務付けられている。

 また、都道府県知事は、一般廃棄物処理施設のうち焼却施設及び最終処分場の設置許可申請があった場合には、申請等に関する告示、関係市町村長への通知と意見聴取等を法により義務付けられているが、それ以外の施設については義務付けられていない。

(2)一般廃棄物処理施設設置許可申請書

一般廃棄物処理施設設置許可申請書には、

ア 当該一般廃棄物処理施設の構造を明らかにする設計計算書

イ 最終処分場にあっては、周囲の地形、地質及び地下水の状況を明らかにする書類及び図面

ウ 最終処分場以外の一般廃棄物にあっては、処理工程図

エ 当該一般廃棄物処理施設の付近の見取り図

オ 当該一般廃棄物処理施設の設置及び維持管理に関する技術的能力を説明する書類

カ 当該一般廃棄物処理施設の設置及び維持管理に要する資金の総額及びその資金の調達方法を記載した書類

キ 申請者が法人である場合には、直前3年の各事業年度における貸借対照表、損益計算書並びに法人税の納付すべき額及び納付済額を証する書類

ク 申請者が個人である場合には、資産に関する調書並びに直前3年の所得税の納付すべき額及び納付済額を証する書類

ケ 申請者が法人である場合には、定款又は寄付行為及び登記簿の謄本

コ 申請者が個人である場合には、住民票の写し(本籍の記載のあるものに限るものとし、外国人にあっては外国人登録証明書の写しとする。)

サ 申請者が法で定める事項に該当しない旨を記載した書類

シ 申請者が法に規定する未成年者である場合には、その法定代理人の住民票の写し

ス 申請者が法人である場合には、法に規定する役員の住民票の写し

セ 申請者が法人である場合において、発行済株式総数の100分の5以上の株式を有する株主又は出資の額の100分の5以上の額に相当する出資をしている者があるときは、これらの者の住民票の写し若しくは登記簿の謄本

ソ 申請者に政令に規定する使用人がある場合には、その者の住民票の写し

を添付し、併せて、次の事項を記載した生活環境に及ぼす影響についての調査の結果を記載した書類を添付することとされている。

タ 設置しようとする一般廃棄物処理施設の種類及び規模並びに処理する一般廃棄物の種類を勘案し、当該一般廃棄物処理施設を設置することに伴い生ずる大気汚染、水質汚濁、騒音、振動又は悪臭に係る事項のうち、周辺地域の生活環境に影響を及ぼすおそれがあるものとして調査を行ったもの(以下「一般廃棄物処理施設生活環境影響調査項目」という。)

チ 一般廃棄物処理施設生活環境影響調査項目の現況及びその把握の方法

ツ 当該一般廃棄物処理施設を設置することが周辺地域の生活環境に及ぼす影響の程度を予測するために把握した水象、気象その他自然的条件及び人口、土地利用その他社会的条件の現況並びにその把握の方法

テ 当該一般廃棄物処理施設を設置することにより予測される一般廃棄物処理施設生活環境影響調査項目に係る変化の程度及び当該変化の及ぶ範囲並びにその予測の方法

ト 当該一般廃棄物処理施設を設置することが周辺地域の生活環境に及ぼす影響の程度を分析した結果

ナ 大気汚染、水質汚濁、騒音、振動又は悪臭のうち、これらに係る事項を一般廃棄物処理施設生活環境影響調査項目に含めなかったもの及びその理由

ニ その他当該一般廃棄物処理施設を設置することが周辺地域の生活環境に及ぼす影響についての調査に関して参考となる事項

2 一般廃棄物処理施設設置許可手続及びその状況等

(1)許可等について

本件会社は、平成15年12月26日、実施機関に対して、1(2)に記載されている必要な書類を添えて一般廃棄物処理施設設置許可申請書を提出し、平成16年2月27日に施設の設置許可を受けた。また、工事は、平成16年3月12日に着工(同9月完成予定)された。

(2)他の許可等について

本件会社は、平成16年2月27日、寝屋川市長の開発許可と建築確認及び大阪府農業委員会の農地転用許可を受けた。

(3)実施機関に対する一般廃棄物処理施設設置許可処分の異議申立て

平成16年4月26日、地元住民から実施機関に対し、本件会社に対する一般廃棄物処理施設設置許可の処分の取り消しを求める異議申立てが行われた。

平成16年6月17日、申立人適格欠如のため却下された。

(4)寝屋川市開発審査会及び寝屋川市建築審査会に対する審査請求について

平成16年4月26日、地元住民から寝屋川市開発審査会に対し開発許可の取り消しについて、寝屋川市建築審査会に対し建築許可の取り消しについて、それぞれ審査請求を行われたが、いずれも審査中である。

(5)仮処分申請について

平成16年7月1日、地元住民が、大阪地方裁判所に本件会社に対する操業差し止めの仮処分申請を申し立てている。

3 本件行政文書について

(1)本件行政文書は、本件会社が一般廃棄物処理施設(ごみ処理施設(破砕・選別・圧縮施設))の設置について実施機関に対して提出した一般廃棄物処理施設設置許可申請書及びその添付書類

ア 施設配置平面図

イ 施設配置立面図

ウ 車両動線計画図

エ 工場配置図

オ 処理フロー図

カ 解砕機構造図

キ ロールスクリーン構造図

ク インゴット機構造図

ケ 圧縮機構造図

コ 粉砕機構造図

サ フレクションウォッシャー構造図

シ 比重分離装置構造図

ス ヒーター構造図

セ メカニカルドライヤー構造図

ソ 粉砕機能力計算書

タ 解砕機能力計算書

チ 事業計画地位置図

ツ 開発区域に含まれる地域の名称一覧表

テ 地籍図

ト 技術管理士認定証

ナ 技術管理者認定講習終了証

ニ 雇用証明書

ヌ 施設の設置及び維持管理に要する資金及びその調達方法

ネ 貸借対照表

ノ 損益計算書

ハ 容器包装リサイクル事業年次損益計算書(概算)

ヒ 容器包装リサイクル事業年次損益計算書(内訳書)

フ 定款

ヘ 履歴事項全部証明書

ホ 誓約書

マ 法に規定する役員の住民票の写し

ミ 現在事項全部証明書

ム 生活環境影響調査書

並びに実施機関が当該申請の一般廃棄物処理施設の設置を許可することについての決裁文書と許可証の写しである。

(2)条例第8条第1項第1号に該当することから公開しないことと決定した部分

・法人及び団体の代表者の印影

決裁文中の許可書の受領印及び生活環境影響調査の訂正についての提出文の申請者印、申請書の申請者印、(1)ニの雇用証明書の印、(1)ハの容器包装リサイクル事業年次損益計算書の印、(1)フの定款の割印及び印、(1)ホの誓約書の印

・(1)ヌの施設の設置・維持管理に要する資金額及びその内訳額

・決裁文中の一般廃棄物処理施設を設置しようとする者の能力の審査結果中の施設の設置及び維持管理費及び(1)ヌの施設の設置・維持管理に要する資金額の調達の内訳額

・(1)ネ及びノの合計残高試算表(貸借対照表・損益計算書)の額

・(1)ハ及びヒの容器包装リサイクル事業年次損益計算書(概算・内訳書)の額

・(1)ムに添付されている測定結果報告書の所在地、依頼先、測定先

 (3)条例第9条第1号に該当することから公開しないことと決定した部分

・申請書の個人及び法人役員の生年月日

・申請書の法人役員の住所(法人の代表者を除く。)、本籍地

・(1)ツの開発区域に含まれる地域の名称一覧表のうち所有者以外の権利者関係欄

・(1)ト及びナの廃棄物処理技術管理者の認定番号及び年月日

・(1)ト及びナの個人氏名(法人の役員、開発区域に含まれる地域の土地所有者を除く。)

・(1)マの住民票の写し

4 本件決定の適法性について

(1)条例第8条第1項について

条例第8条第1項においては、第1号で、法人(国及び地方公共団体その他の公共団体を除く。)その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの(人の生命、身体若しくは健康に対し危害を及ぼす違法な若しくは著しく不当な事業活動に関する情報を除く。)に該当する情報が記録されている行政文書を公開しないことができる旨が規定されている。

(2)異議申立人が本件決定の取り消しと公開を求めている部分について

ア 3(1)ヌに記載されている「施設の設置・維持管理に要する資金額及びその内訳額」には事業用不動産の取得に要する金額、メインプラント及び環境対策設備を設置するのに要する金額、維持管理に必要な金額が記載されていることから、当該部分は取引上の秘密であると考えられ公正な競争の原理を侵害すると認められるものであり、当該法人の競争上の地位を害すると認められる。

なお、本件会社は株式上場企業でなく、財務関係の書類の公開の義務付けはない。  

イ 3(1)ヌに記載されている「施設の設置・維持管理に要する資金額の調達の内訳額」については、金融機関からの借入金額が記載されていることから、当該部分は取引上・金融上の秘密であると考えられ公正な競争の原理を侵害すると認められるものであり、当該法人の競争上の地位を害すると認められる。

なお、本件会社は株式上場企業でなく、財務関係の書類の公開の義務付けはない。  

  3(1)ハ及びヒに記載されている「容器包装リサイクル事業年次損益計算書(概算・内訳書)の額」については、運営後3年間の売上高及びその内訳、売上原価・販売管理費およびその内訳、営業利益及びその内訳の記載があり、本件会社の経営計画であることから、当該部分は取引上の秘密であると考えられ公正な競争の原理を侵害すると認められるものであり、当該法人の競争上の地位を害すると認められる。

エ 「測定結果報告書の所在地、依頼先、測定先」については、3(1)ムの生活環境影響調査書に記載されているもので、本件会社が同調査に使用した他の企業が有する類似施設の測定結果の報告書に記載されたものであり、当該企業の営業上のノウハウ、経営上の秘密に該当し、競争上の地位を害するものと認められる。

以上のとおり、異議申立人が本件決定の取り消しと公開を求めているアからエについては、条例第8条第1項第1号に該当する。また、当該施設は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づく許可基準に則して安全性を確認しており、操業に際しては同法に基づく使用前検査を実施して安全性等を確保するものであることから、条例第8条第1項第1号括弧書きの例外公開情報にはあたらない。したがって、本件決定において、非公開としたことは、妥当である。

5 その他の主張について

異議申立人は、「測定結果報告書の所在地、依頼先、測定先」について、既に寝屋川市議会議員に公表されており、市議会議員には公表するが一般府民には公開しないという合理的理由を有さないと主張しているが、本件会社に確認したところ、当該議員に対して情報提供したものであり、公に公表することを前提に提供したものでないとの返答があった。したがって、当該部分を非公開とすることには合理的理由がないとはいえない。

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより、「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、一方では、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならないのである。

2 本件係争文書について

(1)本件行政文書は、本件会社が寝屋川市内に一般廃棄物処理施設を設置するに当たり、その許可を受けるために、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)に基づき、実施機関に提出した一般廃棄物処理施設設置許可申請に係る一件書類及び許可証の写しである。この文書は、許可に係る決裁文書、一般廃棄物処理施設設置許可証の写し、ごみ処理施設の技術上の基準とその適否、ごみ処理施設の維持管理の技術上の基準とその適否、施設を設置しようとする者の能力の審査結果、一般廃棄物処理施設設置許可申請書、生活環境影響調査書及び生活環境影響調査書審査結果で構成される。

これらのうち、本件異議申立てにおいて、異議申立人が公開を求めている部分を含む文書は、次のとおりである。

ア 「施設の設置及び維持管理に要する資金及びその調達方法」

本件会社が一般廃棄物処理施設を設置し、維持管理を行うのに必要な資金額について、その総額と調達の方法について記載されており、調達の内訳として、自己資金、金融機関等からの借入金、その他のそれぞれの金額が記録されている。資金額の内訳として、(ア)事業用不動産の取得に要する資金額、(イ)設備、機械、器具等のうちメインプラント、環境対策設備のそれぞれの金額、(ウ)維持管理費として光熱費、修繕費のそれぞれの金額について記録されている。

イ 「容器包装リサイクル事業 年次損益計算書(概算)」

  本件会社の代表者が作成し押印した文書で、許可申請に係る事業の平成17年度から19年度の損益の予定について、売上高、売上原価、減価償却、販売管理費、営業利益、税引後当期利益の項目ごとの金額が記録されている。

ウ 「容器包装リサイクル事業 年次損益計算書(内訳書)」

   許可申請に係る事業の2006年3月期から2008年3月期までの損益の予定について、売上高、売上原価、減価償却費、売上総利益、販売管理費、営業利益、営業外損益、経常利益、法人税等、税引後当期利益の各項目について内訳も含めた金額が記録されている。

エ 測定結果報告書

 本件会社が平成15年12月に「北河内地区における容器包装プラスチックのマテリアルリサイクル事業−生活環境影響調査書−」としてまとめた資料に添付された文書である。一般廃棄物処理施設に設置される予定の機械の製品名、その製品を使用して実施した臭気成分等の測定結果、測定を依頼した依頼先の所在地、依頼先の会社名、測定先の事業所名が記録されている。

(2)これらのうち、実施機関が非公開としたのは、

ア (1)アのうち、「施設の設置及び維持管理に要する資金額」(総額)、調達の方法(「自己資金」、「金融機関等からの借入金」)別の内訳、資金額の内訳(使途別)の各欄に記録された金額(「事業用不動産の取得に要する資金額」、「設備、機械、器具等の金額」、「維持管理費」)

イ (1)イ及びウのうち、本件会社代表者の印影、売上高、売上原価、減価償却、販売管理費、営業利益、税引後当期利益の金額及びこれらの内訳の金額

ウ (1)エのうち、測定を依頼した依頼先の「所在地」、「依頼先」及び「測定先」の各項目

であり、本件異議申立てにおいて、異議申立人は、これらの非公開部分のうち、本件会社代表者の印影を除く部分(以下「本件係争部分」という。)について公開を求めている。

3 本件決定に係る具体的な判断及びその理由について

実施機関は、本件係争部分に記録された情報が条例第8条第1項第1号に該当すると主張するので、以下、この点について検討する。

(1)条例第8条第1項第1号の趣旨について

事業を営む者の適正な活動は、社会の維持存続と発展のために尊重、保護されなければならないという見地から、社会通念に照らし、競争上の地位を害すると認められる情報その他事業を営む者の正当な利益を害すると認められる情報は、営業の自由の保障、公正な競争秩序の維持等のため、公開しないことができるとするのが、条例第8条第1項第1号の趣旨である。

同号は、

ア 法人(国及び地方公共団体その他の公共団体を除く。)その他の団体(以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該情報に関する情報であって、

イ 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められる(人の生命、身体若しくは健康に対し危害を及ぼすおそれのある事業活動又は人の生活若しくは財産に対し重大な影響を及ぼす違法な若しくは著しく不当な事業活動に関する情報を除く。)情報が記録された行政文書を公開しないことができる。

と定めている。

なお、本号の「競争上の地位を害すると認められるもの」とは、生産技術上又は営業上のノウハウや取引上、金融上、経営上の秘密等公開されることにより、公正な競争の原理に反する結果となると認められるものをいい、「その他正当な利益を害すると認められるもの」とは、公開されることにより、事業を営む者に対する名誉侵害、社会的評価の低下となる情報及び団体の自治に対する不当な干渉となる情報等必ずしも競争の概念でとらえられないものをいうと解されるが、これらの具体的な判断に当たっては、当該情報の内容のみでなく、当該事業を営む者の性格や事業活動における当該情報の位置づけ等も考慮して、総合的に判断すべきものである。

また、かっこ書きの「人の生命、身体若しくは健康に対し危害を及ぼすおそれのある事業活動に関する情報」とは、法人等の事業活動が原因となって、現在、人の生命、身体、健康への危害が発生したり、将来発生する蓋然性のある人の生命、身体、健康への危害の未然防止のため、公開することが必要な情報をいうと解される。

(2)条例第8条第1項第1号本文該当性について

ア 2(2)ア及びイに係る係争部分について

本項の係争部分に記録されている情報は、本件会社が設置許可を申請した一般廃棄物処理施設の設置や維持管理に当たり必要となる資金額と調達方法の内訳などの金額(「施設の設置及び維持管理に要する資金及びその調達方法」)、並びに平成17年度から19年度までの損益の予定についての売上高、売上原価、減価償却、販売管理費、営業利益、税引後当期利益の金額、及びこれらの内訳の金額(「容器包装リサイクル事業 年次損益計算書(概算)」及び「同(内訳書)」)である。

これらの情報は、本件会社が設置許可を申請したが、未だ操業に至っていない一般廃棄物処理施設に係る資金の調達や損益の予定を将来にわたって数値で示したものであり、公にすることにより、本件会社の当該施設に係る経営方針が将来にわたって具体的に明らかとなる。

このような個別事業の具体的な資金調達や損益の予定に関する情報については、通常、専ら当該事業者の内部において管理され、経営方針の検討などに利用されているものであり、商法等の関係法令においても、このような情報を公表する義務はなく、実際に、本件会社が、本項の非公開部分に記録されている情報を自ら公表している事実も認められない。

また、審査会において確認したところ、本件会社は、資本の額が1億円以下であり、このような小株式会社(株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(昭和49年4月2日法律第22号)第1条の2第2項及び商法施行規則(平成14年3月29日法務省令第22号)第2条参照)は、決算の公表についても、資産の部を流動資産、固定資産及び繰延資産の各部に、負債の部を流動資産及び固定資産等の各部に、資本の部を資本金、資本剰余金及び利益剰余金等に区分して、各部につきその合計額を記録し、資本剰余金の部に資本準備金を、利益剰余金の部に利益準備金及び当期純利益又は当期純損失を付記した貸借対照表の要旨を公告すれば足りるのである。(商法施行規則第2条及び第110条参照)。

以上のことからすると、本項の係争部分に記録されている情報は、公にすることにより、本件会社の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められ、条例第8条第1項第1号本文に該当する。

また、異議申立人は、本件会社の事業活動は、条例第8条第1項第1号かっこ書きの「人の生命、身体若しくは健康に対し危害を及ぼすおそれのある事業活動」に該当する旨主張しているが、本項の係争部分に記録されている情報は、本件会社の事業活動に係る資金調達や損益の予定に係る情報であり、その性質上、危害の未然防止のため公開することが必要な情報となるものではなく、条例第8条第1項第1号かっこ書きに該当することはない。

したがって、本項の係争部分に記録されている情報は、条例第8条第1項第1号の規定により、公開しないことができるものである。

イ 2(2)ウに係る係争部分について

本項の係争部分である「ご依頼先」欄の「所在地」、「依頼先」及び「測定先」の部分の記録内容について、審査会において確認したところ、測定の対象となった減容機のメーカーであり、測定の依頼者でもある事業所の本店所在地(「所在地」)、会社名(「依頼先」)及び測定の対象となったテストプラントの設置場所である当該事業者の事業所の名称(「測定先」)がそれぞれ記録されていることが判明した。

また、本件決定において全部公開されている本報告書の裏面には、測定の対象となった減容機の品名及び品番が記録されているが、これらの情報を用いてインターネット上で情報検索することにより、当該減容機のメーカーである事業者を容易に特定することができることも判明した。

以上のことからすると、本項の係争部分に記録されている情報については、これらを公にしたとしても、本件会社が設置を予定している減容機のメーカーが自らの特定の事業所において、当該減容機についての測定を依頼したという事実が明らかになるだけであり、本件会社等を含め関係の法人等の競争上の地位その他正当な利益を害するものではないと認められるから、条例第8条第1項第1号には該当せず、公開しなければならないものである。

4 結 論

以上のとおりであるから、本件異議申立ては、本件非公開部分のうち「測定結果報告書」の各項目の公開を求める部分について理由があり、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

このページの作成所属
府民文化部 府政情報室情報公開課 情報公開グループ

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