大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第95号)

更新日:2009年8月5日

第一 審査会の結論

実施機関の判断は、妥当である。

第二 本件異議申立てに至る経過

1 平成16年4月23日、異議申立人は、大阪府知事(以下「実施機関」という。)に対し、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、「大阪府社会福祉審議会委員名、住所及、身体障害者福祉専門分科会内部障害審査部会委員名、住所」についての公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。

2 平成16年5月7日、実施機関は、本件請求のうち、社会福祉審議会にかかる部分に対応する行政文書として、「支出内訳(債権者)(大阪府社会福祉審議会総会の委員報酬 15年8、9月分)」及び「略歴書又は履歴書(支出内訳に記載のない委員分)」(以下合わせて「本件行政文書1」という。)を特定の上、支出内訳のうち、「委員の住所、金融機関名及び口座に関する情報」並びに略歴書、履歴書のうち、「委員の生年月日、住所、郵便番号、電話番号、職歴等(公職、大学の教員、団体代表者、及び現職を除く。)」を除いて公開するとの部分公開決定(以下「本件決定1」という。)を行い、公開しない理由を次のとおり付して、異議申立人に通知した。

 (公開しない理由)

 大阪府情報公開条例第9条第1号に該当する。

 本件行政文書(非公開部分)には個人の住所、金融機関名及び口座に関する情報、郵便番号、電話番号、略歴(公職等を除く。)が記載されており、これらの情報は個人のプライバシーに関する情報であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる。

3 平成16年5月6日、実施機関は、本件請求のうち、身体障害者福祉専門分科会内部障害審査部会にかかる部分に対応する行政文書として、「支出内訳(債権者)(大阪府社会福祉審議会身体障害者専門分科会内部障害審査部会委員の委員報酬 平成16年1月分)」及び「略歴書(大阪府社会福祉審議会身体障害者専門分科会内部障害審査部会委員のうち、府の経済に属する委員分)」(以下合わせて「本件行政文書2」という。)を特定の上、支出内訳のうち、「委員の住所、金融機関名及び口座に関する情報」並びに略歴書のうち、「委員の生年月日、住所、郵便番号、電話番号、略歴等(公職歴を除く。)」を除いて公開するとの部分公開決定(以下「本件決定2」という。)を行い、公開しない理由を次のとおり付して、異議申立人に通知した。

(公開しない理由)

大阪府情報公開条例第9条第1号に該当する。

 本件行政文書(非公開部分)には個人の住所、金融機関名及び口座に関する情報、郵便番号、電話番号、略歴等(公職歴を除く。)が記載されており、これらの情報は個人のプライバシーに関する情報であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる。

4 平成16年5月21日、異議申立人は、本件決定1及び本件決定2(以下合わせて「本件各決定」という。)を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、異議申立てを行った。

第三 異議申立ての趣旨

本件請求に係る行政文書中の審査部会委員住所及び審議会委員住所の公開を求める。

第四 異議申立人の主張要旨

異議申立人の主張は、概ね次のとおりである。

1 委員の住所を公開すべきであることについての主張

本件請求は、大阪府社会福祉審議会の各委員及び同審査部会委員に対し、その審議及び審査に関わって、文書送付する目的で、担当課のアドバイスに従い、各委員の住所を知る目的で行ったものである。従って、請求は各委員の氏名及び住所(その他の情報は今回、特に求めていない。)の公開を求めたものである。

先般、大阪地裁は、門真市の住民が、門真市が補助金交付している市内公益法人の役員の住所・氏名を、門真市に公開するよう求めたにも関わらず、公開しなかったのは不当であるとして、慰謝料を求めた訴訟について、これを認め、門真市に対し、慰謝料の支払いを命じた。

この判決からも明らかなように、実施機関が、特別公務員である審議会委員及び審査部会委員の住所を公開しないのは不当である。

異議申立人は、別途、実施機関が行っている身体障害者手帳交付手続きに関わり異議申立てを行っているが、これらの経緯について、一方の当事者である大阪府社会福祉審議会の各委員に、異議申立人の意見を伝えるための手紙を送付するため、各委員の住所の公開を求めたものである。

一般論としてプライバシーの保護、住所の非公開に異議を持つものではないが、府民を代表し、かつ重大な行政決定権を持つ審議会委員の住所は公開されるべきである。さもないと、被決定者(審議会の決定により不利をこうむる手帳申請者等)が、その意見を述べる機会が与えられないこととなる。

2 異議申立てで求めることについて

 社会福祉審議会委員の住所を公開すること、これが出来ないのであれば、信書の授受が確実に行える連絡場所の公開、又は審議会委員に対し被決定者の意思表示が可能な方法を提示することを求める。

第五 実施機関の主張要旨

実施機関の主張は、概ね次のとおりである。

1 大阪府社会福祉審議会について

(1)大阪府社会福祉審議会について

社会福祉法(昭和26年法律第45号。以下、「法」という。)では、第7条において、「社会福祉に関する事項〜(中略)〜を調査審議するため、都道府県〜(中略)〜に社会福祉に関する審議会その他の合議制の機関(以下「地方社会福祉審議会」という。)を置くものとする。」とし、同法第11条において、「地方社会福祉審議会に、〜(中略)〜身体障害者の福祉に関する事項を調査審議するため、身体障害者福祉専門分科会を置く。」とされている。

大阪府では、大阪府社会福祉審議会条例(平成12年条例第9号)に基づき大阪府社会福祉審議会を、大阪府社会福祉審議会規則(平成12年規則第136号)に基づき身体障害者福祉専門分科会を設置している。

(2)身体障害者福祉専門分科会審査部会について

身体障害者手帳交付にかかる手続きについては、身体障害者福祉法施行令に定められているが、同施行令第5条において、都道府県知事は、申請者の障害が「身体障害者福祉法別表に掲げるものに該当しないと認めるには、地方社会福祉審議会に諮問しなければならない」とされている。

身体障害者の障害程度の審査に関する調査審議については、「身体障害者福祉専門分科会に審査部会を設けるものとする」(社会福祉法施行令第3条第1項)とされており、大阪府においては、大阪府社会福祉審議会内規(平成12年委員長決定)により、身体障害者専門分科会に、障害認定並びに身体障害者福祉法第15条に規定する医師の指定等に関する事項等を審査するため、審査部会(肢体不自由審査部会、聴覚障害審査部会、視覚障害審査部会、内部障害審査部会等)を設置している。

2 委員住所を非公開とすることについて

大阪府情報公開条例は、第5条において、「実施機関は、この条例の解釈及び運用に当たっては、個人に関する情報であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるものをみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなければならない。」として、個人のプライバシーに関する情報の取扱いについて実施機関の責務を定めている。また、同条例第9条第1号において、「個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの」は公開してはならないと定めている。

異議申立人が公開を求めている大阪府社会福祉審議会委員及び身体障害者福祉専門分科会内部障害審査部会委員の住所(以下「委員住所」という。)については、委員個人の私生活の本拠たる住所に関する情報であって、これを公表する慣行もなく、特定の個人が識別され得る個人情報のうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるものに該当することから、実施機関は公開することができない。

なお、異議申立人が指摘している、門真市の公益法人の役員の氏名及び住所の開示請求に関する裁判事例については、以下に述べるとおり、本件の事例とは異なるものである。

すなわち、公益法人の理事及び監事の氏名及び住所は、法人登記における登記事項であり、「公益法人の設立許可及び指導監督基準」においても、当該情報を法人の主たる事務所に備え付け、一般の閲覧に供することとされていることから、慣行として既に一般に公表されている情報であると解するのが相当であるとして、開示対象としなかった門真市長の決定に過失があったと大阪地裁は判断したものである。

一方、大阪府社会福祉審議会委員については、氏名は「大阪府会議要覧」に掲載されるなど一般に公表されることが慣例となっているが、住所については、公益法人の理事等のように登記されたり、一般の閲覧に供されているものではないから、公益法人の役員に関するものとは同列に論じられるものではなく、個人のプライバシーに関する情報として非公開とすべきものである。

3 結論

以上のとおり、本件各決定は条例に基づき適正に行われたものであり、何ら違法、不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。

第六 審査会の判断

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、公開することにより、個人・法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。

2 本件決定に係る具体的な判断及びその理由について

(1)本件行政文書(係争部分)について

  本件行政文書1は、本件請求のうち「大阪府社会福祉審議会委員名及び住所」に、本件行政文書2は、「身体障害者福祉専門分科会内部障害審査部会委員名及び住所」に対応する行政文書として実施機関が特定したものである。実施機関は、委員住所が記入された委員名簿等を作成しておらず、それに代わるものとして社会福祉審議会及び身体障害者福祉専門部会内部障害審査部会(以下「社会福祉審議会等」という。)の委員の氏名及び住所の情報が記載されている支出内訳及び略歴書(履歴書)を特定したものである。

  社会福祉審議会等委員の報酬に関する支出内訳は、社会福祉審議会等の委員が当該社会福祉審議会等に出席したことに対する役務の対価の支出内容を示す書類であり、報酬を受ける者(債権者)毎に支出負担番号、支出命令番号、債権者番号、債権者名・住所・金融機関名・預金種目・口座番号・口座名義人、支出命令金額、控除額、差引支払額が記載されている。このうち、非公開とされたのは、委員の住所、金融機関名及び口座に関する情報である。

  また、略歴書(履歴書)は、通常委員委嘱時に提出を求める書類であり、形式は統一されていないが、委員の氏名、生年月日、現住所、郵便番号、電話番号、学歴、職歴等が記載されている。このうち、非公開とされたのは、委員の生年月日、住所、郵便番号、電話番号、職歴等(公職、大学の教員、団体代表者及び現職を除く。)である。

  これらの非公開部分のうち、異議申立人が公開を求めているのは、社会福祉審議会等の委員の住所を記載した部分(以下「本件係争部分」という。)のみであり、その他の部分を非公開とすることについては、争いがない。

(2)本件係争部分の条例第9条第1号該当性について

  実施機関は、本件係争部分に記載されている情報について、条例第9条第1号に該当すると主張するので、この点について検討する。

ア 条例第9条第1号について

  条例は、その前文で、府の保有する情報は公開を原則としつつ、併せて、個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護する旨を宣言している。また、第5条においては、個人のプライバシーに関する情報をみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなければならない旨を規定している。

条例第9条第1号においては、

(ア)個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、

(イ)特定の個人が識別され得るもののうち、

(ウ)一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの

に該当する情報が記載されている行政文書を公開してはならない旨が規定されている。

イ 条例第9条第1号該当性について

 本件係争部分記載された社会福祉審議会等の委員の住所は、「個人の住所に関する情報であって」、「特定の個人が識別され得るもの」であり、上記(ア)及び(イ)の要件に該当することはいうまでもない。

 次に、本件係争部分に記載された社会福祉審議会等の委員の住所が上記(ウ)の要件に該当するか否か検討するに、社会福祉審議会等の委員の住所は、委員個人の生活の本拠たる所であり、委員としての職務の遂行に何ら関連するものではない。このような個人の住所の情報は、公開することにより第三者による私生活への介入を容易にするものであって、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当である」と認められるものであり、また、社会福祉審議会等の委員の住所については、法令の規定等により何人も閲覧できる情報でも、慣行上公表されている情報でもないから、本件係争部分に記載された情報は、上記(ウ)の要件にも該当する。

以上のことから、本件係争部分に記載された情報は、条例第9条第1号に該当し、公開してはならない情報である。

(3)異議申立人の主張について

なお、異議申立人は、「府民を代表し、かつ重大な行政決定権を持つ審議会委員の住所は公開されるべきである。さもないと、被決定者(審議会の決定により不利をこうむる手帳申請者等)が、その意見を述べる機会が与えられないこととなる。」と主張しているが、審議会の委員といえども、私生活に関する情報は、個人のプライバシー情報として保護されるべきであり、そのことと被決定者の意見を委員に伝達することとは、別個に考慮されるべきものである。

 また、異議申立人は、大阪地裁の判決を紹介し、門真市内の公益法人の役員の住所・氏名の公開が認められたので、社会福祉審議会等委員の住所も公開すべき旨主張している。しかしながら、当該判決において公益法人役員の住所・氏名の公開が認められたのは、役員の氏名・住所が登記事項であること及び公益法人の主たる事務所及び所管官庁に役員名簿(住所も記載)が備え置かれるものであるということから、公益法人の役員名簿は行政指導により、慣行として、既に一般に公表されている情報であるという理由によるものであり、そのような慣行のない社会福祉審議会等の委員の住所とは明らかに事情が異なる。

 よって、公益法人役員の住所と社会福祉審議会等委員の住所を同様に扱うことはできず、異議申立人の主張を採用することはできない。

さらに、異議申立人は、「社会福祉審議会委員の住所を公開」「できないのであれば、信書の授受が確実に行える連絡場所の公開、又は審議会委員に対し被決定者の意思表示が可能な方法を提示すること」を求めている。行政文書公開請求に対する公開決定等についての不服申立てにおいて、かかる事項を求めることができないことは明らかである。

3 結論

以上のとおりであるから、本件異議申立てには理由がなく、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

このページの作成所属
府民文化部 府政情報室情報公開課 情報公開グループ

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