大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第90号)

更新日:2009年8月5日

第一 審査会の結論

本件異議申立ての対象となった部分公開決定は、その決定時において妥当であったが、現時点においては、実施機関は、非公開とした部分のうち、別表記載の部分を公開すべきである。

本件異議申立ての対象となった不存在による非公開決定に係る実施機関の判断は妥当である。

第二 異議申立ての経過

1 平成14年3月18日、異議申立人は、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定に基づき、大阪府知事(以下「実施機関」という。)に対し、樫井川改修工事(以下「本件改修工事」という。)に関して次の(1)から(6)の行政文書についての公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。

(1)本件請求に係る行政文書公開請求書(以下「本件請求書」という。)別紙第一

ア 本件の土地((平成14年1月21日府政情報センター受付番号第1041号(以下「前回請求」という。)に添付の土地登記簿謄本写記載の土地)に対する行政文書の公開を重ねて請求するのは、

本件土地が、近郊緑地法域内に所在していることから、近郊緑地法の9条1項2号「形質の変更」を禁止している条項に違反しているように考えられる。

大阪府土木部あるいは大阪岸和田土木事務所は、本件土地を樫井川件改修工事から排出される残土、土砂類の仮置き場として一時利用についての可否などに関し、同じ大阪府の機関である泉州自然保護事務所長および同、緑の環境整備室、または、建築都市部開発指導課などへ、問い合わせ、または協議を行い、さらには、指導、助言を求められたり、また、関係機関からは、指導、助言がなされたものと思われる。

イ 上記に関する一切の報告書、協議書など。

例えば、

a 岸和田土木事務所A建設課長らが、本件土地の使用は、ほ場整備の土砂の仮置き場であることなどを関係機関へ説明に出掛けた際の(協議)報告文書。

b 所管部署からは、公共事業の残土を仮置きしてきた経緯から、現状回復と緑化回復までの責任ある対応を求められるなどした関連文書とその対応に関する文書。

c 大阪府は、公知のとおり、近緑区域内での残土処分には、厳しく対応をして来られている。

そこで、本件土地への残土の搬入は、「残土処分ではなく、仮置き」であることを所管部署に対し、上申または、報告書などで、強く説明されて来られたものと思われる。

そこで、上記に関連する一切の文書類。

(2) 本件請求書別紙第二

ア 本件土地は、市街化調整区域内に所在するため、大阪府泉佐野市長への問い合わせや、泉佐野市との間で、本件残土、土砂類の仮置き場として利用することに関し、協議がなされたものと思われる。

そこで、上記に関連する一切の文書類。

イ 樫井川河川改修工事に当たり、本件土地を、残土、土砂類の仮置き場として利用するには、大阪府土木部(又は、大阪府岸和田土木事務所)が、

(ア) 特に、自由処分地として、許可(承認)された際、法令規制などを調査、検討されたものと思われる。

そこで、上記に関連する一切の文書。

例えば、近緑法との関係における規制の解除がない限り、大阪府は、一方では厳しく指導を行いながら、他方では、法規制を無視した行為をすることになって、府政全般にわたって、府民からの不信につながると考える。

そこで、上記に関連した報告書とか、その他、近緑区域からの解除交渉などが行われたものと、一応考えられる。

そこで、上記に関連する一切の文書。

(イ)また、仮置き場(受入地)として、許可(承認)を行うに先立ち、現地調査を実施されたものと思われる。

そこで、その際における現場写真および報告書を含む一切の文書。

ウ 樫井川河川改修工事が終了後、本件土地は、「あくまで、仮置き場」であったことから、その状況調査などが実施され、状況把握が行われたものと思われる。

そこで、残土、土砂類の処分地への搬出に関する協議内容など搬出関連の一切の文書。

エ 本件土地は、仮置き場、又は、中間処分地であるところから、当然、最終処分地が予定されていたものである。

そこで、最終処分地(所在地など受入先)に関連する一切の文書。

オ 異議申立人代理人弁護士B氏が、平成13年6月7日、本件土地に樫井川河川改修工事の残土、土砂類が搬入されたままの状態にあること、これらを早期に搬出のうえ、原状回復がなされることを申し入れた。

その後、大阪府土木部または大阪府岸和田土木事務所は、発注者として、本件土地へ搬入された残土、土砂類の最終処分地への搬出につき、遅まきながら、協議、検討がなされたものと思われる。そこで、上記に関連する一切の文書。

(3)本件請求書別紙第三

ア 前回請求の請求書に記載の各行政文書中、廃棄されたとされる文書毎の廃棄処理年月日を記載した文書綴りなどの一切。

イ 上記の各行政文書類の廃棄(保存期間)につき、各文書毎の廃棄根拠となったとされる各規定と保存期間の関係を示す文書。

(4)本件請求書別紙第四

先に、公開された行政文書(前回請求の請求書に基づくもの)には、文書の決裁欄の押印がなく、かつ、工事施工業者らから受領された文書についても公印としての受付印がない。

そこで、決裁印のあるもの、大阪府土木事務所が、工事施工業者らから受付受領した年月日入り公印のある「原本の公開」。

(5)本件請求書別紙第五

各工事施工業者から提出を受けた「工事竣工書類」の一切の原本。

(6)本件請求書別紙第六

本件土地を「自由地処分地」および「指定中間処分地」として許可(承認)の際に、施行業者から提出された、例えば、別紙添付文書のような、「(住所省略)。C氏」作成名義の「残土受入れ承諾書原本(年月日の記載されたもの)」。など一切の関係文書の原本。

2 平成14年4月16日、実施機関は、条例第13条第1項及び第2項の規定に基づき、次の(1)から(3)の決定を行い、それぞれ、理由を付して、異議申立人に通知した。

(1)上記1(4)(「決裁印のあるもの」)及び1(5)についての部分公開決定(以下「本件部分公開決定」という。)

ア 本件部分公開決定に係る行政文書(以下「本件部分公開文書」という。)

(ア)樫井川改修工事(56件)に係る設計書

(イ)樫井川改修工事(3件)に係る下記文書(各工事施工業者から受領した「工事竣工書類」)

a 施工計画書

b 出来高管理図書

c 品質管理図書

d 工事写真

e 実施工程表

f 工事打合せ簿

g 工事月報

h 材料確認書

i 納品書

j 段階確認書

k 立会請求書

l 工事材料承諾書

m 社内検査記録届

n 残土・残塊処分報告書

o 休日施工届

p 現場支給品

q 関係官庁届等

r 安全衛生環境関係図書

イ 公開しないことと決定した部分(以下「本件非公開部分」という。)

(ア)法人代表者の印影

(イ)法人従業員の氏名、電話番号、現住所(TEL)、職種、雇入年月日、経験年数、生年月日、年齢、家族連絡先(TEL)、最近の健康診断日、血圧、血液型、特殊健康診断日、種類、教育、資格、免許、入場年月日、退場年月日、新規入場教育、休暇期間及び印影(ただし、現場代理人の氏名を除く。)

(ウ)残土・残塊処分報告書に記載された個人の氏名、住所、印影及び電話番号(ただし、土地所有者の住所、氏名を除く。)

(エ)地権者の氏名

(オ)個人の肖像

ウ 公開しない理由

(ア)条例第8条第1項第1号に該当する。

本件行政文書(非公開部分)には、法人代表者の印影等が記載されており、これを公にすると法人の取引の安全を害するなど、当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められる。

(イ)条例第9条第1号に該当する。

本件行政文書(非公開部分)には、個人の住所、氏名、印影、電話番号等が記載されており、これらは個人のプライバシーに関する情報であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる。

(2)上記1(1)、1(2)、1(3)、1(4)(「決裁印のあるもの」は除く。)に対応する文書についての不存在による非公開決定(以下「本件不存在決定」という。)

(公開請求に係る行政文書を管理していない理由)

(ア)公開請求に係る行政文書のうち1(1)イから1(2)オについては、現に保有していないため管理していない。

(イ)公開請求に係る行政文書のうち1(3)アについては、作成していないため管理していない。

(ウ)公開請求に係る行政文書のうち1(3)イについては、「大阪府文書管理規程(昭和57年大阪府訓令第25号)」及び「文書分類表 文書の保存期間の基準(平成10年7月)」が存在するが、これらは府政情報センターなどで一般の閲覧に供するなど、府民の利用に供することを目的として管理していることから、条例第2条第1項第1号により行政文書に該当しない。

(エ)公開請求に係る行政文書のうち1(4)の「大阪府土木事務所が、工事施工業者らから受付受領した年月日入り公印のある原本」については、現に収受印を押印していなかったので管理していない。

(3)上記1(6)に対応する文書についての条例第12条の規定に基づく公開請求拒否決定(以下「本件請求拒否決定」という。)

(公開請求を拒否する理由)

当該公開請求に係る行政文書が存在するか否かを答えるだけで、条例第9条第1号に該当する情報を公開することとなるため。

3 平成14年6月12日、異議申立人は、本件部分公開決定及び本件不存在決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を行った。

なお、異議申立人は、平成14年7月9日に、「趣旨及び異議理由の追完」と題する書面を実施機関に提出し、当該書面において、本件請求拒否決定についても、これを不服として、行政不服審査法第6条の規定による異議申立てを行った(異議申立人の主張を立証するものとして、第1号証から第9号証まで計37枚の資料が添付されていた。)ものと認められるが、実施機関は、当該異議申立ては、行政不服審査法第45条に規定する異議申立て期間を徒過して提起されたものであり、不適法であるとして、却下する旨の決定を行い、平成14年8月8日に、異議申立人に通知しており、当該異議申立てについては、当審査会に諮問されていない。

第三 異議申立ての趣旨

本件部分公開決定及び本件不存在決定を取り消し、全部公開を求める。

第四 異議申立人の主張要旨

異議申立人の主張は、概ね次のとおりである。

1 本件土地への残土搬入と関係文書の管理についての総括的主張 

本件部分公開決定に基づいて開示された金抜き設計書を見ると、近郊緑地保全区域内に所在する本件土地内に、大阪府発注の公共事業から排出される土砂類の「運搬処分地」、「残土の処分地」、「指定地処分」と位置付けている。

実施機関は、弁明書において、「実施機関は、ほ場整備事業のために泉佐野市D土地改良区が仮置き場として確保した本件土地等へ残土を搬入し、土地改良区へ引き渡しを行った。」というが、実施機関は、これまで、本件土地への残土搬入は、最終処分地として搬入したと強弁して来ている。このことは、資料によって明らかなところである。

実施機関は、自ら発注した樫井川改修工事という公共工事から排出された土砂類を、近郊緑地保全地域内の本件土地内から搬出し、原状に回復させる責任がある。

本件土地内へ樫井川河川改修工事から排出した残土を搬入するには、近畿圏の保全区域の整備に関する法律(異議申立人は、「近緑法」と記載しているが、「近畿圏の保全区域の整備に関する法律」を指しているものと解される。以下「整備法」という。)上も許された文書の存在が必要であり、その文書は、重要保管文書として管理されていると思われる。

仮に、廃棄されたとすれば、その文書の廃棄年月日を明らかにできる文書(廃棄簿)の保管は行われているものと考える。

本件土地を、残土類の仮置き場として一時使用するに際しての関係文書の作成について、大阪府下の岸和田土木事務所以外の土木事務所に電話で問い合わせを行った。その話によると、私有の土地を、一時的な仮置き場として使用する場合、その土地へ搬入される土砂類の成分検査や、受入場所の調査、土地所有者との面接調査などが慎重に行われねばならないことになっていることが分かった。大阪府は、府下土木事務所に対し、一律的な指導を行っているものと考えて間違いないものと考える。

また、国土交通省近畿地方整備局へ出向き、話を伺った。河川改修工事から排出される残土類の処理には、極めて慎重であり、私有地を中間地としての仮置き場として使用し、そこへの搬入に対しても、土砂類の検査、現地の調査、土地所有者との面接などが行われていることが分かった。

2 本件不存在決定についての主張

(1)残土搬入に関する重要文書の不存在についての主張

樫井川改修工事から排出される残土類の搬出先が、公有地以外の私有地を最終処分地、あるいは、中間処分地としての仮置き場とする場合について、大阪府下の土木事務所へ電話問い合わせを行ったところ、以下の手続のもとで、厳格に、行われていることが確認できた。

a 搬入先の土地の状況調査

b 搬入土砂類の土質の分析検査

c 土砂類搬出先の土地所有者との面接調査

d 土地所有者との詳細な契約の締結(契約書の作成)

e 搬入に際しては、

・ 土砂類搬入者(工事現場からの搬出者)は、受入業者作成の受入証明書の交付を受けて、当該土木事務所へ提出する。

・ 土木事務所は、受入証明書記載の内容を見たうえ、受入承認を行い、搬入者に交付する。

・ 搬入者は、土木事務所から受入証明書への承認を受けたその文書を、受入業者に提出する。

・ 受入業者は、搬入土砂類を受け入れた際、その種類と数量を記載した搬入受入証明書を作成する。

・ 搬入業者は、上記搬入受入証明書を土木事務所へ提出する。

f 土木事務所は、上記受入証明書、搬入受入証明書を保管管理しなければならない。

しかるに、岸和田土木事務所には、かかる文書が保管管理されていないという。加えて、廃棄云々というけれど、廃棄に関する規定その他からすると、私有地への河川工事からの排出土書類に当たっての受入証明承認、搬入証明の受領については、公開された金抜き設計書同様に保管されるべき文書と考える。

しかも、それら文書が、仮に、廃棄されているのであれば、その廃棄年月日と、廃棄文書名が記載

された廃棄簿の開示を求めているのである。

大阪府法制文書課に問い合わせたところ、大阪府には、

ア 文書の保管期間、さらには、文書の廃棄並びに廃棄手続には、それぞれ規定があること

イ 廃棄については、少なくとも、いかなる文書を、いつ廃棄したかの文書だけは残されていること

のようである。

少なくとも、法制文書課のいうとおりの適法な廃棄手続がとられているものであれば、上記各行政文書は残存しており、文書の公開はできるものと思われる。

(2)前回請求時に公開された行政文書との相違についての主張

異議申立人は、本件請求に先立ち平成14年1月21日にも行政文書公開請求を行ったが、その際公開されなかった文書が今回は公開されている。

例を挙げると、

ア 工事名、二級河川樫井川改修工事(箇所名省略)に関する文書

イ 別紙添付の2「決済印のある設計書(変更)」

また、実施機関は、前回請求に対しては、決裁印のない設計書(変更)を公開しながら、今回の請求に対しては、決裁印のある設計書(変更)を公開している。前回請求時の公開文書は、設計書(変更・金抜)、今回の公開文書は、設計書(変更)の表題になっているが、それであれば、両者を開示すべきであると考える。

(3)異議申立人代理人と間で交わされた文書の不存在について

異議申立書に添付した異議申立人代理人の手紙や岸和田土木事務所の回答書で明らかなとおり、岸和田土木と異議申立人代理人との間で交わされた文書の保管、管理、異議申立人代理人と接触後の残土処分に対する対応などの報告書などが、行政機関として、当然に作成保存されているものと思われる。

それに関わる文書が存在していないとすることが不可思議である。まさに、その秘匿を図っているとしか考えられない。そうでなければ、本件残土の撤去問題への意識の欠落、ひいては、府職員として府民への奉仕の精神の欠如と職務の怠慢を物語ることになる。

(4)関係行政機関との協議に係る文書の不存在について

異議申立人が公開を受けた文書によると、岸和田土木事務所A建設課長らが、本件土地が整備法での保全区域内にあることを熟知していたことから、大阪府発注の樫井川改修工事により排出される土砂類の仮置き場とすることについて疑義をいだき、泉州自然保護事務所(現「泉州農と緑の総合事務所」)と協議を行い「近緑解除OK」ということのようである。

しかしながら、同じ大阪府部署間の事柄であったとしても、取り扱い事務が異なること、行政行為の透明化、法遵守の立場からは、少なくとも、整備法の「区域指定解除決定」とか、「解除通知」という公的文書での確認ができない限り、近郊緑地保全区域内の本件土地内への残土搬入行為が、違法なことは、熟知されていたはずである。となれば、本件土地内へ樫井川河川改修工事からの排出残土を搬入することが、整備法上も許されることに関する文書は、重要保管文書として管理保管されていると思われるし、仮に、廃棄されたとすれば、その文書の廃棄何月日を明らかにできる文書の保管は行われていると考えるのが一般的である。

さらに、仮に、本件土地を残土の仮置き場として一時使用するに際しても、大阪府下の他の土木事務所に電話問い合わせを行ったところ、仮置き場となる土地への搬入に当たっては、土砂類の成分検査や受入場所の調査、土地所有者との面接調査などを慎重に行った上で行っていることが分かった。大阪府は、府下土木事務所に対しては、一律的な指導を行っているものと考える。

また、国土交通省近畿地方整備局に出向き、話を伺ったところ、河川改修工事から排出される残土処理には、極めて慎重であり、先ず、土砂類の検査、現地の調査、土地所有者との面接などが行われていることが分かった。大阪府も国も同じように慎重に対応されていることが分かった。

本件土地は、近郊緑地保全区域内であり、市街化調整区域内にも該当することは、府政の一環を担う岸和田土木事務所(長)として、熟知されながら、岸和田土木事務所、府の各部署における法規範軽視の態度が明らかであり、かかる行政態度は、到底、許されるべきものではない。

岸和田土木事務所は、大阪府の一部署として、市街化調整区域内である本件土地所在地の泉佐野市長との間で、樫井川残土仮置き場としての使用に関し協議を行う義務があるのに、協議が行われたことを窺わせる文書が開示されていない。

仮に、岸和田土木事務所の回答のように、かかる法的にも、重要な問題をかかえ、「違法行為だとしての謗り」と「刑事訴追を免れない」問題に関し、大阪府の関係部署を含め、他の役所との協議が行われていなければ、岸和田土木事務所だけの問題でなく、大阪府知事を筆頭に関係者の指導監督責任が厳しく追及されなければならないと考える。    

3 本件部分公開決定についての主張

異議申立人が公開を受けた平成11年11月18日付け及び平成12年6月28日付けの「残土受け入れ承諾書」の作成者は、泉佐野市D改良区のC氏個人であることが窺えるのに、なぜ、受入者の住所、氏名を黒塗りにし、部分公開として事実関係を秘匿する必要があるのか。

C氏とは反対に、土地所有者に関しては、個人、法人を問わず、その住所、氏名が全て開示される。

前回及び今回の請求において公開された文書中には、個人の作成者など氏名が明らかになる文書が公開されている。また、他の部署における行政文書公開請求においても公開されてきている。

実施機関は、C氏については、公開請求者である異議申立人が、手持ちの黒塗りつぶし部分が潰されていないC氏作成の承諾書を添付しているのに、部分公開としておきながら、土地所有者個人に関しては、その住所氏名まで公開を行っており、運用の公平さが問われる。

個人情報の保護を盾に部分開示を行うことが、岸和田土木の行政姿勢であり、また、本件事実の全貌が明らかになることを恐れての姑息な抵抗であると考えられ、情報公開制度の本趣に反する不当な態度だといえる。

実施機関は、弁明書において、「私人間の委任、受任の関係は、公にされることを前提とした情報ではなく、一般に、他人に知られたくないと望むことが正当であると認められることから非公開とした。」という。

実施機関のような考えに立つ場合、委任状における委任者の立場においても、さらには、「承諾書」についても、同じように、お互いの関係を公にされることを前提とした情報ではないことは、明らかであるのに、その間に、どんな理由により開示と非開示の差異が生じるのであろうか。

実施機関は、部分開示の理由として、条例第8条第1項第1号を挙げる。 

しかし、本件は、大阪府が発注し、既に、完成した工事に絡んでのものであり、また、泉佐野市D土地改良区という大阪府知事が認可した団体に関連する文書の開示を含むものであり、かつまた、同土地改良区理事長が、残土搬入一時仮置料の徴収に絡み、個人的に作成した文書も存することから、「競争上の地位その他正当な利益を害するもの」には、全く該当しない。

また、同条の公にすることにより、個人の生命、身体、財産等の保護に支障を及ぼすおそれがある情報にも該当しないものである。

加えて、同条例第9条第1号にいう「特定個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの」にも該当しないことは、その文書自体の性格からも明らかである。

C氏は、泉佐野市D土地改良区理事長C氏と、また、その地位を利用しての個人C氏として、近郊緑地保全区域内の本件土地に対し、大阪府発注の樫井川改修工事から排出の残土の仮置き場としての有料搬入を企てたものであり、土地所有者との残土搬出、原状回復の約束を不履行していることから見ても、条例第8条及び第9条に全く該当しない。

大阪府の近郊緑地保全区域への違反行為への取り締まり、行政指導は、法の趣旨に従い、厳しいものがある。

環境問題、行政の指導監督を含む責任を考えるとき、当然のことと考える。

しかるに、なにゆえか、本件土地に対する岸和田土木事務所及び泉佐野市D土地改良区、さらには、C氏個人に対する違反行為への行政指導には、全く、府行政の無力と無策、さらには、これらの者達との結託すら感じ、各部署の法無視を互いに容認する大阪府政の痴部を見せたというのが、本件残土搬入行為であり、大山の一角が覗き見られたといえるのかも知れない。

異議申立人が公開を受けた「残土受入れ承諾書」(平成11年11月18日付け)の受入者の住所・氏名(C氏と推測できる。)は、黒塗り潰されているのにかかわらず、同じ「残土受入れ承諾書」に添付の「承諾書」の承諾者欄及び「委任状」の委任者欄については、その住所・氏名がそのまま公開され、単に押印部分のみが黒塗り潰されているに過ぎず、その間の取り扱いが全く異なる。

さらに、異議申立人が公開を受けた「残土受入れ承諾書」(平成12年2月28日付け)の受入者の住所・氏名・押印が黒塗り潰されながら、添付の「承諾書」及び「委任状」中の土地所有者の住所・氏名は、そのまま公開されているという異なる取り扱いがなされている。

全く、恣意的な取り扱いであり、大阪府公文書の公開そのものの恣意的な運用の実態を覗かせている。

大阪府個人情報保護条例第14条第1項は、開示しないことができる個人情報を規定しているが、部分開示の文書は、同項が規定する「開示することにより、当該法人等又は当該個人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの」にも該当しないものが部分開示になっている。 

4 異議申立人が公開を受けた行政文書の真偽等についての主張

大阪府法制文書課に問い合わせたところ、「大阪府内各部署で作成される文書には、内部規定により、その文書作成者および決裁者の氏名と押印が求められている。」、「各部署に、外部から、承認、許可を求める文書が提出された場合には、受理年月日と受付番号が、それぞれ付される規定になっている。」とのことであった。

しかしながら、異議申立人が前回及び今回の公開請求により公開を受けた行政文書の大多数は、作成者の氏名・押印など一切ないもの、第三者からの承認、許可文書として提出されたものを受領しながら、受理年月日、受理番号の記載の存在が確認できないのである。となれば、異議申立人が受けた行政文書自体の真偽が疑わしいものとなる。

また、異議申立人が公開を受けた行政文書の一部に関しては、土木事務所の承認印を含めた受付印がなく、加えて、「搬入受入証明書」の提出を受けていないようにも受けとめられる。

これらの文書の真偽性と土木事務所のいい加減な行政姿勢をかいま見るような感じがしてならない。

第五 実施機関の主張要旨

 実施機関の主張は概ね次のとおりである。

1 本件改修工事

(1)本件改修工事の概要

昭和27年7月の集中豪雨を契機として、実施機関は、樫井川の治水対策について検討を進め、同年より災害復旧助成事業に着手したのを始めとして、護岸工事等を施工してきた。そして、昭和57年度には、抜本的な河川改修を図るため、河口から中流域の前川橋(泉佐野市土丸)までの9.3km区間について改修計画を策定した。この河川改修計画では、下流部の泉南市岡田地点における計画高水流量を700m3/sと定め、同市岡田から上流部の泉佐野市土丸間の沿川地域を洪水から防御するため、河道について築堤工事や掘削工事を施工して河川の断面積を増大するとともに護岸工事を施工し、平成12年度には、一時間当たり50mmの降雨量への対策が概成した。

(2)本件改修工事と残土処分

本件改修工事では、従前の河川断面積が狭小であったことから、河川断面積を拡大することによって安全な流下を図ることとし、河床の切下げ及び河幅の拡大を主とした改修を行ったため、工事に伴いコンクリート殻などの残塊及び大量の掘削土が発生することとなった。

このうちコンクリート殻などの残塊については、産業廃棄物として処理する必要があるので、実施機関が各工事区間の工事発注時までに処分先を選定・指定する指定地処分として「堺7−3区埋立処分場」、「泉大津沖埋立処分場」等の最終処分場又は民間中間処理業者へ搬入し処分を行った。また、掘削土については、当該工事において堤防の盛土等に利用することとし、残った掘削土は、残土として搬出処分を行った。そして、残った掘削土の搬出処分は、原則として実施機関が処分先を選定・指定する指定地処分とし、工事発注時までに処分先の決まらない場合には、工事請負業者が処分先を選定する自由処分とした。

他方、同時期に樫井川の近くの泉佐野市○○地区及び泉南市□□地区において、○○・□□地区ほ場整備事業(以下「ほ場整備事業」という。)が計画され、当該区域は文化財の埋蔵地のため、土地の掘削ができないことから、盛土により地盤を嵩上げしてほ場整備を行うこととなり、大量の盛土材が必要となった。そこで、実施機関は、本件改修工事から発生する残土を当該ほ場整備事業の盛土材として提供することによって残土の有効利用を図ることができること、残土の運搬経費の削減を図ることができること、さらに残土のリサイクルを図ることができること等の理由から、残土を可能な範囲で提供することとした。

実施機関は、ほ場整備事業のために泉佐野市D土地改良区(以下「土地改良区」という。)が仮置き場として確保した泉佐野(地名地番省略)の土地(本件土地)等へ残土を搬入し、土地改良区への引き渡しを行った。

なお、本件改修工事により発生する残土の本件土地への搬入は本件改修工事が完成する平成12年8月まで行われた。

2 本件部分公開決定について

(1)本件部分公開文書について

ア 第二の2(1)ア(ア)の文書(本件改修工事(56件)に係る設計書)について

本件改修工事に係る設計書は、実施機関が、本件改修工事の入札のために設定する予定価格を算出するために作成したものであり、「設計書」及び「仕様書」からなるものである。

「設計書」には、年度、支出科目、事務所の名称、契約番号、工事場所、河川名、工事名、竣工期限、設計大要、設計金額、請負対象額、支給材料費、積算内訳書(数量、単価、金額)が、「仕様書」には、竣工期限、準拠すべき土木工事共通仕様書名、コンクリート使用に際しての注意点、残土等の処分、再資源利用計画、安全・訓練、工事カルテの登録、建設業退職金共済制度等が、それぞれ記載されている。そして、実施機関は、これらの内容について決裁手続を経て意思決定を行ったものである。

なお、本件部分公開決定においては当該文書の全部を公開した。

イ 第二の2(1)ア(イ)の文書(本件改修工事(3件)に係る「工事竣工書類」)について

工事竣工書類とは、工事完了後、実施機関が行う工事竣工検査において、実施機関が適正に工事が行われたかどうかを確認するための写真及び書類等であり、工事請負業者から実施機関に対して提出されたものである。

具体的には、a 施工計画書、b 出来高管理図書、c 品質管理図書、d 工事写真、e 実施工程表、f 工事打合せ簿、g 工事月報、h 材料確認書、i 納品書、j 段階確認書、k 立会請求書、l 工事材料承諾書、m 社内検査記録届、n 残土・残塊処分報告書、o 休日施工届、p 現場支給品、q 関係官庁届等、r 安全衛生環境関係図書である。

(2)本件非公開部分について

本件非公開部分は、次のとおりである。

ア a 施行計画書のうち「表紙」に記載された現場代理人の印影、「現場組織表」に記載された現場代理人の住所、電話番号、法人従業員の氏名、「緊急時の体制及び対応」に記載された法人従業員の氏名(ただし、現場代理人を除く。)及び電話番号

イ b 出来高管理図書のうち「出来高図」及び「出来高成果表」に記載された現場代理人の印影

ウ c 品質管理図書に記載された法人従業員の氏名(ただし、現場代理人の氏名を除く。)、年齢、資格、免許、印影及び個人の肖像

エ d 工事写真に記載された個人の肖像

オ  e 実施工程表に記載された現場代理人の印影

カ f 工事打合せ簿のうち「工事打合簿」に記載された指示・承諾・協議・提出・報告・通知・その他の事項欄に記載された地権者の氏名及び現場代理人欄の印影、「年末・年始休暇期間中の保安計画書」及び「5月連休中の保安計画書」に記載された休暇予定期間、現場職員の氏名(ただし、現場代理人の氏名を除く。)並びに自宅電話番号及び携帯電話番号、「建設廃棄物処理委託契約書」に記載された法人代表者の印影、「再生資源利用計画書」に記載された工事責任者及び調査票記入者欄の印影、「安全パトロール報告書」に記載された現場代理人の印影、「就業資格証書台帳」に記載された資格、免許

キ g 工事月報に記載された監督職員及び現場代理人の押印欄に記載された現場代理人の印影

ク h 材料確認書に記載された現場代理人の印影

ケ  i 納品書のうち「納品伝票」に記載された法人従業員の氏名、印影及び氏名の自署

コ j 段階確認書に記載された現場代理人の印影

サ k 立会請求書に記載された現場代理人の印影

シ l 工事材料承諾書のうち、現場代理人の印影、法人従業員の氏名及び印影並びに法人代表者の印影

ス m 社内検査記録届のうち「社内検査記録届」及び「出来高成果表」に記載された現場代理人の印影、「社内検査記録届」に記載された法人従業員の氏名及び個人の肖像

セ n 残土・残塊処分報告書のうち「報告書」に記載された現場代理人の印影、「残土受入れ承諾書」及び「残土受入れ証明書」に記載された願出者である法人の代表者の印影、受入者である個人の住所、氏名、電話番号及び印影、「承諾書」に記載された土地所有者である法人の代表者の印影及び同じく土地所有者である個人の印影、「委任状」に記載された受任者である個人の住所、氏名、委任者である法人の代表者の印影及び同じく土地所有者である個人の印影、「建設廃棄物処理委託契約書」に記載された法人の代表者の印影、「建設廃棄物マニフェスト伝票」に記載された法人従業員の氏名及び印影

ソ o 休日施行届に記載された現場代理人の印影

タ p 現場支給品のうち、「支給品受領書」、「支給品精算書」、「写真」に記載の現場代理人の印影

チ q 関係官庁届出等のうち、「施工体制台帳」、「工事作業所災害防止協議会兼施工体系図」、「建退共掛金収納書」、「共済証紙受払簿」、「工事カルテ」に記載された法人従業員氏名(ただし、現場代理人を除く。)、資格、生年月日、監理技術者証番号、国家資格合格番号及び法人代表者の印影

ツ r 安全衛生環境関係図書のうち、「施工体制台帳」及び「工事作業所災害防止協議会兼施工体系図」に記載された現場職員の氏名及び印影、「安全衛生管理計画表」に記載された現場職員の印影、「安全集会記録」に記載された現場職員の印影及び出席者の氏名、「労務及び安全衛生管理に関する誓約書」に記載された法人の代表者の印影、「作業員名簿」に記載された作業員の氏名、職種、雇入年月日、経験年数、生年月日、年齢、現住所(TEL)、家族連絡先(TEL)、最近の健康診断日、血圧、血液型、特殊健康診断日、教育・資格・免許、入場年月日、退場年月日及び新規入場教育

(3)条例第8条第1項第1号に該当することについて

本件非公開部分のうち、本号に該当するものとして非公開としたのは「残土受入れ承諾書」、「残土受入れ証明書」、「承諾書」、「委任状」等に記載された法人代表者の印影である。当該印影は、事業者である法人が取引に用いるものであり、これらの印影を公にすることにより当該印影から印鑑を偽造された場合等には当該法人の取引の安全が害されるおそれがある。このような情報は、一般的にはいわゆる内部管理情報として秘密にしておくことが是認されるものであり、このような内部管理情報について、事業者は、公開の可否及びその範囲を自ら決定できる権利ないしはそれを自己の意思によらないでみだりに他に公開、公表されない利益を有しているというべきである。

したがって、事業者の意思によらないでその内部管理情報が公表されることは、当該事業者の正当な意思、期待に反するというべきであり、本件非公開部分を公開することにより当該事業者の正当な利益が損なわれるとみるのが相当である。

(4)条例第9条第1号に該当することについて

本件非公開部分のうち、本号に該当するものとして非公開としたのは、要約すると、1.法人従業員の氏名(ただし、現場代理人の氏名を除く。)、電話番号、職種、雇入年月日、経験年数、生年月日、年齢、現住所(TEL)、家族連絡先(TEL)、最近の健康診断日、血圧、血液型、特殊健康診断日・種類、教育、資格、免許、入場年月日、退場年月日、新規入場教育、休暇期間及び印影、2.残土・残塊処分報告書に記載された個人の氏名、住所、印影及び電話番号(ただし、土地所有者の住所及び氏名を除く。)、3.地権者の氏名、4.個人の肖像である。

上記1.の情報は、工事竣工書類に記載された法人の従業員である個人の健康状態、職業、学歴、住所等に関する情報であって、特定の個人が識別され得るものであり、一般に他人に知られたくないと望むことが正当と認められるものである。現場代理人については、工事現場においてその氏名の表示が義務付けられているものであり、誰もが知り得る状態にあったものであることから本件部分公開決定においても現場代理人の氏名を公にしたところであり、現場代理人の電話番号、休暇期間等に関する情報は、特定の個人が識別され得るプライバシー情報に該当し、非公開としたものである。また、現場代理人以外の従業員については、その氏名を公にすると、本件部分公開決定において公にした法人の名称等と結びつけることにより、当該個人がどのような職業に就いていたかが明らかになってしまうことから非公開としたものであり、氏名以外の情報についても、本件改修工事の工事現場で一緒に作業に従事していた者等の関係者にとっては、容易に当該個人を特定することが可能であることから非公開としたものである。

なお、印影については、特定の個人を直接識別し得る情報であり、どのような印鑑を使用しているかは一般に他人に知られたくないものであること、また、印影を公開することにより当該印影から印鑑を偽造された場合には、不測の損害を当該個人に与えるおそれがあること等から非公開としたものである。

上記2.の情報は、工事竣工書類のうち残土・残塊処分報告書に記載された土地所有者である個人の印影並びに当該土地所有者から本件土地の使用等に関する権限について委任を受けた個人(以下「受任者」という。)の氏名、住所、印影及び電話番号である。受任者の氏名等は特定の個人を直接識別し得る情報であり、私人間の委任・受任の関係は、公にされることを前提とした性質の情報ではなく、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められることから非公開としたものである。

また、印影を非公開とした理由は、上記のとおりである。

なお、土地所有者の住所・氏名については、土地登記簿を閲覧することにより何人でも知ることのできる情報であることから、本件部分公開決定において非公開としなかったものである。

上記3.の情報は、工事竣工書類のうち工事打合せ簿に記載された地権者の氏名である。当該地権者は、本件改修工事の施工区域に隣接する土地の所有者等であり、実施機関及び工事請負業者は、工事施工に先立って当該地権者との間で土地の境界確認、工事に対する要望事項の協議等を行い、当該地権者から工事着手の承諾を得たものである。

一般に、実施機関は、協議を行った相手方である地権者の氏名を公表しておらず、また、当該地権者にとって、いつ実施機関と協議を行い、その結果実施機関が工事に着手することに承諾した事実は、当該地権者のプライバシーに関する情報であって、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められることから当該地権者の氏名を非公開としたものである。

上記4.の情報は、工事竣工書類のうち現場写真に写った個人の肖像である。個人の肖像は、特定の個人を直接識別し得る情報であり、当該写真に写った個人の身体的特徴が明らかになるものであること等から、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められ、非公開としたものである。

4 本件不存在決定について

(1)第二−1(1)イの各文書について

ア 「岸和田土木事務所A建設課長らが、本件土地の利用は、ほ場整備の土砂の仮置き場であることなどを関係機関に説明に出掛けた際の(協議)報告文書」について

実施機関においては、工事施工に伴い生じる諸問題に関し、関係機関との間で適宜協議等を行っているが、協議等のすべての場合において文書の作成・保存が義務付けられているものでなく、その内容が軽微なものについては、特段、報告書等の文書を作成していないものであり、本事例においても、実施機関は、該当文書を作成・保存していなかったものである。

イ 「所管部署からは、公共事業の残土を仮置きしてきた経緯から、現状回復と緑化回復まで責任ある対応等を求められるなどした関連文書とその対応に関する文書」について

本件土地に土砂を仮置きしているのは、土地改良区であり、実施機関としては、本件土地に係る原状回復と緑化回復の責務は、土地改良区にあるものと考えるものであり、現に、所管部署から、本件土地に係る原状回復と緑化回復について求められた事実はなく、該当文書を作成又は取得したことはない。

ウ 「大阪府は、公知のとおり、近緑区域内での残土処分には、厳しく対応をして来られている。そこで、本件土地への残土の搬入は、「残土処分でなく、仮置き」であることを所管部署に対し、上申または、報告書などで、強く説明されて来られたものと思われる。そこで、上記に関する一切の文書類」について

整備法第5条第1項の規定により国土交通大臣が指定する近郊緑地保全区域内における土砂の仮置きは、整備法第9条第1項第2号の制限に抵触しないものと一般に解されているところである。そして、本件土地への残土の搬入は、土地改良区がほ場整備事業用の盛土材を仮置きするためのものであることについては、本件土地の所有者が代理人に対して「1.本件土地使用に関する件、2.本件土地内において、土砂等の仮置、仮置においての証明書作成及び発行に関する権限」を委任する旨が記載された委任状(年月日の記載なし)及び本件土地の所有者が土地改良区に対して「ほ場整備の用土仮置について、本件土地の使用を承諾」する旨が記載された承諾書(年月日記載なし)によって、実施機関は確認したところである。

したがって、本件土地への残土の搬入が整備法の制限に抵触しないことから、実施機関が、所管部署に対し、上申又は報告書などを提出した事実はなく、該当文書を作成又は取得したことはない。

また、これら以外にも、上記ア、イ、ウに関連する文書で実施機関が作成・取得したものはなく、実施機関が管理しているものはない。

(2)第二−1(2)アの文書について

本件土地への残土の仮置きは、ほ場整備事業のために土地改良区が行っているものであり、実施機関が行うものではないため、実施機関と泉佐野市長との間で協議が行われた事実はなく、該当文書を作成又は取得したことはない。

なお、実施機関としては、市街化調整区域における残土の仮置きについては、都市計画法上何ら問題ないものと解しているところである。

(3)第二−1(2)イの各文書について

実施機関としては、ほ場整備事業のために土地改良区が残土を仮置きすることについては問題ないものと解しており、本件土地に係る整備法による制限の解除交渉などを行ったことはなく、また、本件土地を工事請負業者が処分先として選定することに対する承認に先立って現地調査等を行ったことはなく、該当文書を作成又は取得したことはない。

(4)第二−1(2)ウの文書について

本件土地上の残土は、土地改良区が最終的に処分するものであり、実施機関において、当該残土の本件土地からの搬出に関する協議等を行ったことはなく、該当文書を作成又は取得したことはない。

(5)第二−1(2)エの文書について

本件土地上の残土は、土地改良区が最終的に処分するものであり、実施機関において、当該残土の本件土地からの搬出に関する協議等を行ったことはなく、該当文書を作成又は取得したことはない。

(6)第二−1(2)オの文書について

公開請求書に記載された内容からすると、異議申立人が公開を求めているのは、異議申立人が実施機関に対して行った申し入れを受け、実施機関が行った協議・検討に関する文書であると解されるものであり、このような文書は作成・取得しておらず、実施機関は管理していないことから不存在による非公開決定を行ったものである。

(7)第二−1(3)アの文書について

平成10年度以前に発注された本件改修工事に係る工事竣工書類については、「大阪府文書管理規程(昭和57年大阪府訓令第25号。以下「旧管理規程」という。)」、「文書分類表及び文書の保存期間の基準」に基づき保存及び廃棄を行ってきたが、当該廃棄決定に当たって、書面による起案・決裁の手続を経なかったため、該当文書について作成していなかったものである。

(8)第二−1(3)イの文書について

実施機関は、「旧管理規程」、「文書分類表及び文書の保存期間の基準」に基づき文書管理を行っていたものであるが、これらは府政情報センターなどで一般の閲覧に供されるなど、府民の利用に供することを目的として管理されていることから、条例第2条第1項第1号により行政文書に該当しないものである。

(9)第二−1(4)の文書(「決裁印のあるもの」を除く。)について

実施機関は、本件改修工事に係る工事竣工書類を工事請負業者から受領し、現に管理しているが、受領の際、当該文書に収受印を押印していなかったものである。

このように、実施機関が工事請負業者から受領した本件改修工事に係る工事竣工書類を管理しているにもかかわらず、当該文書を不存在としたのは、受領した工事竣工書類に「収受印を押印していなかった」ために、「受付受領した年月日入り公印のある」ものという公開請求の趣旨に合致する行政文書が存在しないこととなったためである。

5 結論

以上のとおり、本件部分公開決定及び本件不存在決定は、いずれも条例の規定に基づき適正に行われたものであり、何ら違法、不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、公開することにより、個人・法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第2条第1項に規定する行政文書に記録されている場合には、その情報が条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならないのである。

2 本件改修工事について

本件部分公開文書の内容及び実施機関の説明等によれば、次のとおり認められる。

本件改修工事は、泉佐野・泉南両市域を流れる2級河川である樫井川について、昭和57年度に大阪府が作成した改修計画に基づき行われたものである。工事は、泉南市岡田から上流部の泉佐野市土丸間の沿岸地域を洪水から防御するため、河道について築堤工事や掘削工事を施工して河川の断面積を増大するとともに護岸工事を施工するなどである。本件改修工事は、発注年度が平成4年度から平成11年度にわたる56件の工事からなっており、平成12年に最終の工事が完成している。

本件改修工事により発生した残土の一部は、本件土地に搬入されており、この搬入は、本件改修工事が完成する平成12年8月まで行われている。

 3 本件部分公開決定についての具体的な判断及び理由

本件部分公開決定においては、本件部分公開文書のうち、「樫井川改修工事(56件)に係る設計書」は全部公開されており、本件非公開部分は、「樫井川改修工事(3件)に関し各工事施工業者から受領した『工事竣工書類』」の一部である。実施機関は、本件非公開部分に記録された情報が条例第8条第1項第1号及び第9条第1号に該当すると主張するので、以下これを検討する。

(1)条例第8条第1項第1号該当性について

事業を営む者の適正な活動は、社会の維持存続と発展のために尊重、保護されなければならないという見地から、社会通念に照らし、公にすることにより競争上の地位を害すると認められる情報その他当該事業者の正当な利益を害すると認められる情報は、公開しないことができるとするのが条例第8条第1項第1号の趣旨である。

同号は、

ア 法人(国及び地方公共団体その他の公共団体(以下「国等」という。)を除く。)その他の団体(以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、

イ 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの(人の生命、身体若しくは健康に対し危害を及ぼすおそれのある事業活動又は人の生活若しくは財産に対し重大な影響を及ぼす違法な若しくは著しく不当な事業活動に関する情報を除く。)

が記録された行政文書を公開しないことができると規定している。

これを本件についてみるに、本件非公開部分のうち、実施機関が第8条第1項第1号に該当するとして非公開としたのは、本件改修工事に関係した業務を行った法人や土地所有者である法人の代表者の印影である。

法人代表者の印影は、法人が対外的な活動を行うに際し作成した文書の責任を明らかにするものとして重要な意義を有しており、上記アの要件に該当することは明らかである。

また、法人代表者の印影は、商業登記法第12条第1項の規定が印鑑証明書の交付を請求できる者を制限していることからしても、当該印影が現に公表され、又は公表することが慣行となっているなど特段の事情がない限り、一般的には専ら当該法人が自ら管理すべき情報である。これを公開することにより、印章偽造等の不正使用を誘発し、虚偽の契約書等の作成が容易になるなど、当該法人の正当な利益を害するおそれがあると認められるところ、本件法人の代表者の印影についても、当該印影が現に公表され、又は公表することが慣行となっているなど特段の事情は認められないから、上記イの要件にも該当する。

以上のことから、本件法人の代表者の印影は、条例第8条第1項第1号に該当し、公開しないことができる情報であると認められる。

(2)条例第9条第1号の該当性について

条例は、その前文で、府の保有する情報は公開を原則としつつ、併せて、個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護する旨を宣言している。また、第5条において、個人のプライバシーに関する情報をみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなければならない旨規定している。

このような趣旨をうけて、個人のプライバシーに関する情報の公開禁止について定めたのが条例第9条第1号である。

同号は、

ア 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、

イ 特定の個人が識別され得るもののうち、

ウ 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる

情報が記録された行政文書については公開してはならないと定めている。

そして、「特定個人が識別され得る」情報とは、当該情報のみによって直接特定の個人が識別される場合に加えて、容易に入手し得る他の情報と結びつけることによって特定の個人が識別され得る場合を含むと解される。

また、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報とは、社会通念上、他人に知られることを望まないものをいうと解される。

これを本件についてみるに、本件非公開部分のうち、実施機関が、条例第9条第1号に該当するとして非公開とした情報を整理すると、

(ア)本件改修工事に関係する業務を行った法人従業員の氏名(現場代理人を除く。)、電話番号、職種、雇入年月日、経験年数、生年月日、年齢、現住所(TEL)、家族連絡先(TEL)、最近の健康診断日、血圧、血液型、特殊健康診断日・種類、教育、資格、免許、入場年月日、退場年月日、新規入場教育、休暇期間、印影及び肖像

(イ)地権者、受入者等関係者の氏名、住所、印影及び電話番号(土地所有者の住所及び氏名を除く。)

に区分されるが、これらの情報は、いずれも上記アの要件に該当することが明らかである。

次に、これらの情報について、上記イ及びウの要件に該当するか否かを検討する。

(ア)の情報のうち、工事竣工書類等に記載された法人従業員の氏名(現場代理人を除く。)、肖像、電話番号、現住所(TEL)、家族連絡先(TEL)及び印影は、当該情報のみによって、直接特定の個人が識別され得る情報であり、公にすることにより、特定個人の勤務先、住所、使用している印章等が明らかになる情報であって、これらの情報を公にする制度や慣行もなく、社会通念上、他人に知られることを望まない情報であると認められる。

また、職種、雇入年月日、経験年数、生年月日、年齢、最近の健康診断日、血圧、血液型、特殊健康診断日・種類、教育、資格、免許、入場年月日、退場年月日、新規入場教育、休暇期間については、いずれも個人の身体的特徴、健康状態、職業、学歴等に関する情報であり、当該情報のみによって直接特定の個人が識別され得る情報ではないものの、本件部分公開決定によって公開することとされた法人名等の情報と相俟って、特定個人が識別され得る情報であって、これらの情報を公にする制度や慣行もなく、社会通念上、他人に知られることを望まない情報であると認められる。

一方、(イ)の情報は、いずれも当該情報のみによって直接特定の個人が識別され得る情報であり、公にすることにより、特定個人の社会的活動、使用している印章等が明らかになる情報であって、これらの情報を公にする制度や慣行もなく、社会通念上、他人に知られることを望まない情報であると認められる。

なお、この点に関して、異議申立人は、「土地所有者を開示しているにもかかわらず、委任状の受任者の氏名及び残土受入れ承諾書中の受入者の住所、氏名部分を開示しないことは、運用の公平さが問われる」旨主張するが、土地所有者の氏名及び住所が、何人も閲覧できる登記簿に記載されるべき情報であるのに対し、受任者や受入者の氏名等の情報については、これらの情報を一般に公開する制度や慣行もないのであるから、その取扱いが異なるのは、やむを得ない。

また、異議申立人は、残土・残塊処分に関する文書について、委任状発行時における土地所有者の状況、委任状での年月日の未記載、土地所有者である法人の住所地の食い違い等を指摘し、条例第11条に規定する公益上の理由により公開することができる場合に該当すると主張しているものと解されるが、異議申立人代理人が指摘する事実をもって、個人のプライバシー情報を保護する必要性を上回る公益上の必要性があるとは認められない。

さらに、異議申立人は、「個人の作成者などの氏名が明らかになる文書が、既に、公開されている。また、他の部署における行政文書開示請求においても公開されて来ている。」旨指摘している。そこで、当審査会において調査したところ、異議申立人が実施機関に対して行った過去の行政文書公開請求に係る部分公開の実施に際して、本件部分公開決定により非公開とした個人の氏名が開示された事実が確認された。当該個人の氏名が開示されたのは、当該個人の氏名を非公開として部分公開決定を行ったものの、公開実施の段階において当該非公開部分について黒塗りして公開すべきところを塗り漏れしたため、本来非公開とすべき情報について誤って公開したまま写しを交付したことによるものであることが関係文書の内容及び実施機関の説明により認められる。当該個人の氏名については、実態としては、いったん異議申立人に対して公開された情報ではあるものの、条例が第5条において規定する個人のプライバシー情報の最大限の保護の趣旨を踏まえると、かかる事情で公開されたという事実をもって、本件部分公開決定においても、当該個人の氏名を公開すべきであるということはできない。

なお、このような形で個人のプライバシー情報が公開されたことは、誠に遺憾であり、実施機関においては、二度とこのようなことがないように取り組まれたい。

(3)事情変更により公開すべき部分について

以上により、本件部分公開決定は、その決定時において妥当であったと認められるが、審査会において調査したところ、本件部分公開決定の対象となった行政文書中、樫井川改修工事(箇所名省略)及び樫井川改修工事(箇所名省略)に係る「残土・残塊処分報告書」に含まれている別表記載の書面等を、実施機関が、本件異議申立て後に、関連する訴訟の証拠書類として裁判所に提出しており、現時点では、その全部が、民事訴訟法第91条第1項の規定に基づき、何人も閲覧ができる状態になっていることが確認された。このような何人も閲覧できる状態になっている情報については、基本的には、これを公にしても、当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害したり、個人が一般に他人に知られたくないと望むことが正当と認められる情報を明らかにすることにはならないが、印影については、裁判所において民事訴訟法第91条第3項の規定に基づく訴訟記録の謄写申請等ができる者が限定されていることを考慮すると、現時点においても、これを公にすることにより、当該法人又は個人の取引の安全を害するなど当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害したり、個人が一般に他人に知られたくないと望むことが正当と認められる情報を明らかにすることになるおそれがある。

以上のことからすると、別表記載の部分については、現時点においては、条例第8条第1項第1号及び第9条第1号には該当せず、これを公開すべきである。

4 本件不存在決定についての具体的な判断及び理由

(1)整備法に基づく指導等の状況について

ア 近郊緑地保全区域内における行為の届出義務について

整備法は、「近畿圏の建設とその秩序ある発展に寄与するため、近郊緑地の保全その他保全区域の整備に関し特別の措置を定め、保全区域内における文化財の保存、緑地の保全又は観光資源の保全若しくは開発に資すること」(第1条)を目的として、近郊緑地保全区域内における一定の行為について、あらかじめ府県知事に届け出ることを求めており、府県知事は、届出があった場合において、当該近郊緑地の保全のため必要があると認めるときは、届出をした者に対して、必要な助言又は勧告をすることができることとされている(整備法第9条第1項及び第2項)。

届出を要する一定の行為としては、1.建築物その他の工作物の新築、改築又は増築、2.宅地の造成、土地の開墾、土石の採取、鉱物の掘採その他の土地の形質の変更、3.木竹の伐採、4.当該近郊緑地の保全に影響を及ぼすおそれのある行為で政令で定めるものが規定されている。4.については、整備法施行令により、「水面の埋立て又は干拓」と「屋外における土石、廃棄物(廃棄物の処理及び清掃に関する法律第二条第一項に規定する廃棄物)又は再生資源(資源の有効な利用の促進に関する法律第二条第四項に規定する再生資源)の堆積」が定められており、このうち後者は、平成13年8月の整備法施行令の改正により追加された際の経過措置として、改正施行令の施行前に既に着手していたものについては、整備法第9条第1項の届出義務は適用されないこととされている。

イ 本件土地に係る指導経過について

本件土地への残土搬入に係る整備法に基づく指導経過については、実施機関の説明等により、概ね以下のとおりであることが認められる。

(ア)平成4年12月25日、本件改修工事が開始(工事は平成12年8月まで継続)された。

実施機関は、この前後に、本件土地を土地改良区のほ場整備の用土の仮置き場として使用することについて、土地所有者の同意を得ていたとしているが、承諾書、委任状には日付の記入がなく、具体的な日付は不明である。

(イ)平成6年9月13日、泉州自然保護事務所の職員が、残土処分工事をしていた工事請負業者に対して聞き取り調査を行った。

その際、工事請負業者の施工管理者は、土を入れているのは土地改良区であること、及び土は岸和田土木事務所発注の本件改修工事に伴い発生した残土である旨説明した。

(ウ)平成6年9月19日、泉州自然保護事務所の職員がほ場整備事業に関して土地改良区理事長宅を訪問した際、土地改良区理事長は、本件改修工事に伴う残土処分は、土地改良区が平成9年度から予定しているほ場整備事業に必要な用土を仮置きしているものであること、搬入元は、樫井川の工事残土で、当初、岸和田土木事務所も処分地について相談に訪れて、当該地での処分で話がまとまったこと、土地改良区の監督機関である泉州耕地事務所にも相談していたことなどを述べた。

これに対し、泉州自然保護事務所の職員は、本件土地が近郊緑地保全区域内であり、事前相談があるべきものであること、産業廃棄物は絶対搬入しないこと、排水施設等を整備することなどを同理事長に対し指示した。

(エ)平成6年9月28日、泉州耕地事務所の職員と泉州自然保護事務所の職員が協議し、近郊緑地保全区域との関係により、本件残土処分が土地改良事業に該当するか否かについても確認する必要があること、森林法上開発規模が1haを超えるか否かについて調べる必要があること等を確認し、事業計画、開発規模等の提出を土地改良区に対して指示することとした。

(オ)平成6年9月29日、泉州自然保護事務所の職員及び岸和田土木事務所の職員が協議し、岸和田土木事務所側から、本件残土処分について、残土搬出先を土木事務所において検討する中で土地改良区代表者の紹介でほ場整備の土の仮置き場ということで本件土地を残土処分地とした旨、決定に当たっては耕地事務所に問い合わせをし所長の了解を得た旨等の説明があった。

(カ)平成6年10月6日、泉州耕地事務所の職員と泉州自然保護事務所の職員が協議し、本件残土処分の整備法、森林法での位置付けを明確にするため土地改良区に対し上申書を提出させ、残土搬入の終期、現場の管理計画を明確にするよう指導することとした。

(キ)平成6年11月15日、土地改良区代表者より実施機関に対し、「事業計画」、「防災計画」、「搬入計画」、「維持管理計画」を内容とする上申書が提出され、本件土地において土地改良法に基づくほ場整備事業に必要な用土の仮置きを計画したこと、用土の搬入元は本件改修工事に伴う発生土砂であり、搬入の終期を平成7年10月とすることなどが明らかにされた。

(ク)平成6年11月21日、泉州自然保護事務所長から緑の環境整備室長に対し、上記上申書と泉州自然保護事務所長の意見書が提出された。

同意見書では、事務所意見として、近郊緑地保全区域内では、取扱方針(「近郊緑地保全区域内における届出を要する行為に関する指導指針」)により残土処分は認められていないが、土地改良事業に必要な用土の仮置きであり、用土搬出後は森林復旧する旨の確約を得ていること、河川改修場所、本件土地及びほ場整備予定地は半径1kmの範囲内で○○地区に集中しており、車両運行等の周辺環境への影響を最小限に留めるものと判断されることなどにより近郊緑地保全区域内行為としてやむを得ないとしている。

(ケ)平成11年11月22日及び平成12年3月1日付けで、工事請負業者より岸和田土木事務所長に対し、それぞれ担当する工事に関する残土受入れ承諾書が提出された。

(コ)平成13年6月9日、異議申立人代理人から岸和田土木事務所に対し、本件土地に仮置きされた土砂を早急に搬出すること求める文書が提出された。

(サ)平成13年6月25日、異議申立人代理人から岸和田土木事務所に対し、本件改修工事に関する経緯等に関する照会文書が提出された。

(シ)平成13年7月13日、異議申立人代理人から岸和田土木事務所に対し、本件改修工事に関する照会がFAXにより行われた。

(ス)平成13年7月17日、上記(コ)〜(シ)の文書に関し、岸和田土木事務所から異議申立人代理人に対し文書回答がされた。

(セ)平成14年4月30日及び同年5月19日、異議申立人代理人から岸和田土木事務所に対し、「確認と問い合わせ」と題した文書が提出された。

(ソ)平成14年5月28日、異議申立人代理人から岸和田土木事務所に対し、「再再度確認と問い合わせ」と題した「確認と問い合わせ」に対する回答を求める内容の文書が提出された。

(タ)平成14年6月5日、上記(セ)及び(ソ)の文書に関し、岸和田土木事務所から異議申立人代理人に対し文書回答がなされた。

(2)土木事務所において工事に関し通常作成又は取得される文書とその保存等について

実施機関の説明等により、次のことが認められた。

ア 土木事務所が発注する土木工事については、通常、まず初めに工事の施工を意思決定するために、項目ごとの施工内容、見積金額等が記載された「設計書」を起案・決裁して作成し、次に、これをもとに、入札を実施するための文書として、個々の見積金額欄を抜いた設計書(金抜き設計書)を作成している。

イ 入札で落札業者が決定すると、工事請負契約書を作成する。

ウ 工事が始まると開始から竣工に至るまでの各段階において、本件部分公開文書のような「工事竣工書類」を工事請負業者から受け取る。

一方、実施機関における文書管理は、平成12年5月までは、「旧管理規程」に基づいて行われており、文書の分類及び文書の保存期間については、「文書分類表及び文書の保存期間の基準」(副知事通達)に従い、室・課長又は出先機関の長が定めなければならないとされていた(「旧管理規程」第15条)。

同基準によれば、工事関係書類の保存期間は、「工事完了完成図面等で重要な文書」は長期保存、「工事請負契約一般」(設計書を含む。)の書類については10年保存とすべきものと解されるが、一連の工事の過程で工事の進捗状況の把握や検査等のため作成又は取得される「工事竣工書類」については、具体的な保存期間の基準が示されておらず、各土木事務所において、独自に基準を定めて運用していた。岸和田土木事務所においては、工事竣工書類については、工事竣工後1年間を保存期間とし、それ以降は廃棄しているが、具体的に明文化された規程等に基づくものではなかった。 

また、文書の廃棄について、「旧管理規程」によれば、課長又は出先機関の長は「法制文書課長と協議の上、廃棄の決定をし、及び処分をしなければならない。」とされていた(「旧管理規程」第32条)が、岸和田土木事務所においては、工事請負契約関係書類については、法制文書課長に協議の上、文書により廃棄の決定を行い、廃棄処分を行っているものの、工事竣工書類については、法制文書課長への協議や文書による廃棄決定は行われていなかった。

なお、実施機関においては、平成12年6月以降、大阪府行政文書管理規則(平成12年大阪府規則第229号)に基づいて文書管理が行われているが、岸和田土木事務所における工事関係書類の保存と廃棄に関しては、廃棄時の法制文書課長への協議が不要となったことを除き、概ね従来どおりの管理がなされている。

(3)本件不存在決定の妥当性について

ア 第二−1(1)イの文書について

本件請求書の該当部分の記載により、異議申立人は、「本件改修工事に係る残土の本件土地への搬入に関して、岸和田土木事務所又は大阪府土木部と大阪府泉州自然保護事務所長、大阪府環境農林水産部緑の環境整備室、大阪府建築都市部開発指導課などとの間で行われた問い合わせ、協議、指導、助言などに関する報告書、協議書など関連する行政文書全て」を公開請求したものと解される。

これに対して、第二−1(1)イの文書に該当する行政文書が既に異議申立人に公開されているもの(異議申立人が異議申立書に資料7として添付している「来訪者整理表」など)以外に存在しないことについての実施機関の説明は、概ね「実施機関においては、工事施工に伴い生じる諸問題に関して、関係機関との間で適宜協議等を行っているが、その内容が軽微なものについては、特段、報告書等の文書を作成しておらず、本件土地をほ場整備の土の仮置き場ということで残土処分地とするに当たって、岸和田土木事務所の担当者が耕地事務所に問い合わせを行った際も、特段、報告書等の文書を作成していない。」、「本件土地に土砂を仮置きしているのは土地改良区であり、本件土地に係る原状回復と緑化回復の責務は土地改良区にある。現に、岸和田土木事務所が、所管部署から本件土地に係る原状回復と緑化回復について求められた事実はない。」、「近郊緑地保全区域内における土砂の仮置きは、整備法第9条第1項第2号の制限に抵触しないものであり、本件土地への残土の搬入は、土地改良区がほ場整備事業用の盛土材を仮置きするためのものであることは、本件土地の所有者が『1.本件土地使用に関する件、2.本件土地内において、土砂等の仮置、仮置においての証明書作成及び発行に関する権限』を代理人に委任する旨が記載された委任状(年月日の記載なし)及び本件土地の所有者が土地改良区に対して『ほ場整備の用土仮置について、本件土地の使用を承諾』する旨が記載された承諾書(年月日記載なし)によって確認したところである。よって、本件土地への残土の搬入が整備法の制限に抵触しないことから、岸和田土木事務所が、所管部署に対し、上申又は報告書などを提出した事実はなく、該当の文書を作成又は取得したことはない。」、「また、これら以外にも、上記に関連する文書で実施機関が作成・取得したものはなく、実施機関が管理しているものはない。」というものである。

これらの説明については、平成13年に届出対象行為が追加された整備法施行令の改正経過を見ても、本件改修工事に伴う残土搬入は、当時は、法の規制対象外であったこと、当該残土はほ場整備のために使用されるものであり、土地改良区の所有であったこと、土地改良区からは実施機関あてに本件処分に関する上申書が提出されており、本件土地への残土の搬入があくまでの仮置きであることを確認していること、等を総合的に勘案すると、特段不自然な点は認められない。

以上のことから、第二−1(1)イの文書について、該当する行政文書は存在しないとの実施機関の判断は妥当であると認められる。

イ 第二−1(2)アの文書について

本件請求書の該当部分の記載により、異議申立人は、「本件改修工事に係る残土の本件土地への搬入に関して、岸和田土木事務所又は大阪府土木部と泉佐野市との間で行われた問い合わせや協議に関連する行政文書全て」を公開請求したものと解される。

これに対して、第二−1(2)アの文書に該当する行政文書が存在しないことについての実施機関の説明は、概ね「本件土地への残土の仮置きは、ほ場整備事業のために土地改良区が行っているものであり、実施機関が行うものではないため、実施機関と泉佐野市長との間で協議が行われた事実はなく、該当の文書を作成又は取得したことはない。なお、実施機関としては、市街化調整区域における残土の仮置きについては、都市計画法上何ら問題ないものと解しているところである。」というものであり、これらの説明については、特段不自然・不合理な点は認められなかった。

以上のことから、第二−1(2)アの文書について、該当する行政文書は存在しないとの実施機関の判断は妥当であると認められる。

ウ 第二−1(2)イの文書について

本件請求書の該当部分の記載により、異議申立人は、「本件改修工事に係る残土の本件土地への搬入を認めるに先立って、大阪府土木部(又は、大阪府岸和田土木事務所)が行ったと思われる『法令規制などの調査、検討に関連する行政文書全て』、『整備法の規制解除に関連する報告書や規制解除交渉に関連する行政文書全て』、『現地調査の際の現場写真や報告書を含む行政文書全て』」を公開請求したものと解される。

これに対して、第二−1(2)イの文書に該当する行政文書が存在しないことについての実施機関の説明は、概ね「実施機関としては、ほ場整備事業のために土地改良区が残土を仮置きすることについては問題ないものと解しており、本件土地に係る整備法による制限の解除交渉などを行ったことはなく、また、本件土地を工事請負業者が処分先として選定することに対する承認に先立って現地調査等を行ったことはなく、該当の文書を作成又は取得したことはない。」というものであり、これらの説明については、(1) イで述べた本件土地に係る指導経過から見ても、特段不自然・不合理な点は認められなかった。

なお、異議申立人は、本件土地内へ本件改修工事から排出した残土を搬入するには、整備法上も許された文書の存在が必要であり、その文書は、重要保管文書として管理されていると思われると主張するが、

(ア)本件改修工事に係る残土の本件土地への搬入の整備法との関係については、上述のとおり、岸和田土木事務所、泉州耕地事務所、泉州自然保護事務所が協議等を行っており、関係機関の間で、本件残土搬入行為については、近郊緑地保全区域内における届出行為には、該当しないということで認識が一致していること、

(イ)実施機関の説明等により本件土地における残土仮置きについては、非常に長期間現在のような状況にあることから、泉州自然保護事務所が土地改良区に対し、上申書に基づいた指導を行ったことが認められること、

(ウ)平成13年の整備法施行令の改正による届出対象行為追加時の経過措置の内容等に照らし、本件改修工事に伴う残土搬入は、整備法による規制の対象外であったと認められること、

(エ)本件土地に搬入された残土は、本件改修工事から生じたものではあるが、搬入時点では、ほ場整備に使用するため、土地改良区に譲渡されており、土地改良区の所有であったと認められること(この点については、土地改良区から実施機関あてに本件土地への残土搬入に関して上申書が提出されている)、

からすると、本件土地への残土の搬入に際して、本件改修工事の実施主体としての実施機関が、当該搬入が整備法上許されることについて、関係機関の許可を受けたり、届出を行う必要がないのであり、上記異議申立人の主張は当を得ないものである。

以上のことから、第二−1(2)イの文書について該当する行政文書は存在しないとの実施機関の判断は妥当であると認められる。

エ 第二−1(2)ウ及びエの文書について

本件請求書の該当部分の記載により、異議申立人は、「本件改修工事終了後における残土、土砂類の処分地への搬出に関する協議内容など搬出関連の行政文書全て」及び「予定されていたと思われる最終処分地(所在地など受入先)に関連する行政文書全て」を公開請求したものと解される。

これに対して、第二−1(2)ウ及びエの文書に該当する行政文書が存在しないことについての実施機関の説明は、概ね「本件土地上の残土は、土?改良区が最終的に処分するものであり、実施機関において、当該残土の本件土地からの搬出に関する協議等を行ったことはなく、該当文書を作成又は取得したことはない。」というものであり、上記のとおり、本件土地の残土が土地改良区の所有であることからすれば、これらの説明については、特段不自然・不合理な点は認められなかった。

以上のことから、第二−1(2)ウ及びエの文書について、該当する行政文書は存在しないとの実施機関の判断は妥当であると認められる。

オ 第二―1(2)オの文書について

本件請求書の該当部分の記載により、異議申立人は、「異議申立人の代理人である弁護士が、平成13年6月9日(異議申立人は「平成13年6月7日」としているが、「平成13年6月9日」の文書と解される。)に行った、本件土地からの残土の早期搬出と原状回復の申入れに対応して大阪府土木部又は岸和田土木事務所が行ったと思われる最終処分地への搬出について協議、検討に関連する行政文書全て」を公開請求したものと解される。

これに対して、第二−1(2)オの文書に該当する行政文書が存在しないことについての実施機関の説明は、概ね「公開請求書に記載された文言から、異議申立人が公開を求めているのは、異議申立人が実施機関に対して行った申し入れを受け、実施機関が行った協議・検討に関する文書と解されるものであり、このような文書は、作成・取得していない。」というものであり、これらの説明について、特段不自然・不合理な点は認められなかった。

なお、異議申立人は、本件異議申立書において、異議申立人代理人である弁護士が実施機関に対して行った申入れに係る文書を添付するとともに、「岸和田土木事務所と異議申立人代理人との間で交わされた文書、異議申立人代理人との接触後の対応に関する報告書などが、当然に保存されている。」と主張しており、異議申立人の代理人である弁護士が提出した申入れの文書についても、公開を求める趣旨であったと主張するものとも考えられないではないが、本件請求書の該当部分から読み取れる公開請求の趣旨は上述のとおりであり、実施機関が、異議申立人の代理人である弁護士が提出した申入れの文書を公開請求に係る行政文書として特定しなかったことはやむを得ないものである。

以上のことから、第二−1(2)オの文書について、該当する行政文書は存在しないとの実施機関の判断は妥当であると認められる。

カ 第二−1(3)の文書について  

本件請求書の該当部分の記載により、異議申立人は、「前回請求に係る各行政文書中、廃棄されたとされる文書(本件改修工事に係る「土木事務所作成の各受注者への各工事名毎の、残土、搬出土砂類等の種別、数量及び処分地指定の有無に関する文書」)毎の廃棄処理年月日を記載した行政文書全て」(第二−1(3)ア)及び「同文書の廃棄(保存期間)につき、各文書毎の廃棄根拠となったとされる各規定と保存期間の関係を示す行政文書」(第二−1(3)イ)を公開請求したものと解される。

これに対して、第二−1(3)アに該当する行政文書が存在しないことについての実施機関の説明は、概ね「平成10年度以前に発注された本件改修工事に係る工事竣工書類については、『旧管理規程』、『文書分類表及び文書の保存期間の基準』に基づき保存及び廃棄を行ってきたが、当該廃棄決定に当たって、書面による起案・決裁の手続を経なかったため、該当文書については作成していなかった。」というものであり、これらの説明について、特段不自然な点は認められなかった。

また、同イに該当する行政文書が存在しないことについての実施機関の説明は、「実施機関は、『旧管理規程』、『文書分類表及び文書の保存期間の基準』に基づき文書管理を行っていたものであるが、これらは府政情報センターなどで一般の閲覧に供されるなど、府民の利用に供することを目的として管理されていることから、条例第2条第1項第1号により行政文書に該当しないものである。」というものであり、これらの説明について、特段不自然な点は認められなかった。

以上のことから、第二−1(3)ア及びイの文書について、該当する行政文書は存在しないとの実施機関の判断は妥当であると認められる。

しかしながら、実施機関においては、「旧管理規程」に基づき文書の保存及び廃棄を行わなければならなかったのであり、文書の廃棄については、「課長又は出先機関の長は、その保存する保存文書のうち保存期間の終了した文書について、文書廃棄票を添えて法制文書課長に協議の上、廃棄の決定をし、及び処分をしなければならない。」(「旧管理規程」第32条)と規定されていたにもかかわらず、岸和田土木事務所においては、文書による起案・決裁等の手続を経ないまま、廃棄が行われていることが認められた。

条例は、第3条において、「行政文書の公開を求める権利が十分保障されるように、行政文書の適切な保存と迅速な検索に資するための管理体制の整備を図る」ことを実施機関の責務としている。  規程・規則に基づく適切な文書管理は、この条例の趣旨を実現する上においては不可欠なものであり、上記のような実施機関の文書管理の実態は、遺憾であるといわざるを得ない。実施機関においては、条例の趣旨を踏まえ、適切な文書管理を図るよう申し添えるものである。

キ 第二−1(4)の文書(「決裁印のあるもの」を除く。)について

本件請求の該当部分の記載により、異議申立人は、「前回請求において公開された行政文書中、実施機関が工事施工業者らから受付受領したものの年月日入り公印のある『原本の公開』」を求めたものと解される。

これに対して、第二−1(4)の文書(同上)に該当する行政文書が存在しないことについての実施機関の説明は、概ね「実施機関が工事請負業者から受領した本件改修工事に係る工事竣工書類を管理しているにもかかわらず、当該文書を不存在としたのは、当該受領した工事竣工書類には現に収受印を押印しておらず、『受付受領した年月日入り公印のある』ものという公開請求の趣旨に合致する行政文書が存在しないこととなったためである。」というものであり、これらの説明について、特段不自然・不合理な点は認められなかった。

以上のことから、第二−1(4)の文書(同上)について、該当する行政文書は存在しないとの実施機関の判断は妥当であると認められる。

なお、大阪府の機関が、文書等を収受した場合には、「旧管理規程」においても、「文書主任が、文書を点検の上、収受すべき文書等はこれに収受印を押印し、」(第9条第1項第1号及び第2項)と規定されており、本件改修工事竣工書類に収受印が押印されていないことは、この規定に反するものであり、遺憾である。

(4)その余の異議申立人の主張について

上記のほか、異議申立人は、「前回請求では公開されなかった文書が今回は公開されている」旨主張し、その例として「工事名、二級河川樫井川改修工事(箇所名省略)に関する文書」及び「決裁印のある設計書(変更)」をあげている。

このうち「工事名、二級河川樫井川改修工事(箇所名省略)に関する文書」については、前回請求に対する決定においても行政文書として特定していることが確認された。

また、「決裁印のある設計書(変更)」について、異議申立人は、「前回の請求に対しては、決裁印のない設計書(変更)を公開している。本件請求に対しては、両者を開示すべきである」旨主張している。設計書は、(2)で述べたとおり、まず、見積金額入りの設計書(金入り設計書)で起案・決裁された後に、これをもとに、入札用に、金入り設計書の金額部分を削除した金抜き設計書が作成されるものである。審査会において確認したところ、前回請求の請求内容は、「設計書(金抜き)」と明記して請求されており、決裁印のない金抜き設計書が公開決定されたのに対して、本件請求は「決裁印のあるもの」と記載して請求されており、決裁印のある金入り設計書が公開決定されている。異議申立人は、「両方開示すべき」と主張するが、金抜き設計書が金入り設計書の情報の一部を削除したものに過ぎないこと、すでに異議申立人には金抜き設計書の公開決定がされていること、及び、本件請求が、特段、金抜きであることを明示して公開請求したものではないことからすれば、通常の金入り設計書を対象行政文書として特定した実施機関の判断は妥当である。

5 結 論

以上のとおりであり、本件異議申立てに係る各決定は、その決定時においては、妥当であったが、現時点においては、本件部分公開決定において非公開とした部分のうち別表記載の部分を公開すべきであるので、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。


別表

部分公開決定通知書に記載された行政文書の名称

左のうち、公開すべき部分のある書面の名称

公開すべき部分

残土・残塊処分報告書(樫井川改修工事(箇所名省略)に係るもの)

残土受入れ承諾書(平成11年11月22日付け、大阪府岸和田土木事務所長あて)

受入者の住所及び氏名

残土受入れ証明書(平成12年6月29日付け、大阪府岸和田土木事務所長あて)

受入者の住所及び氏名

残土・残塊処分報告書(樫井川改修工事(箇所名省略)に係るもの)

残土受入れ承諾書(平成12年3月1日付け、大阪府岸和田土木事務所長あて)

受入者の住所、氏名及び電話番号

残土受入れ証明書(平成12年8月30日付け、大阪府岸和田土木事務所長あて)

受入者の住所、氏名及び電話番号

このページの作成所属
府民文化部 府政情報室情報公開課 情報公開グループ

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