大阪府情報公開審査会答申(平成23年度)

更新日:2011年5月31日

大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第206号)

〔特定協同組合決算関係書類等部分公開決定第三者異議申立事案〕

(答申日 平成23年5月31日)

 

第一 審査会の結論

  実施機関の決定は妥当である。

 

 

第二 異議申立ての経過

 

1 平成22年4月20日、大阪府知事(以下「実施機関」という。)に対し、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、「A事業協同組合の『中小企業等協同組合決算関係書類提出書(平成20年度以降分)』、『中小企業等協同組合定款変更認可申請書(平成17年度以降分)』、『中小企業等協同組合役員変更届出書(平成17年度以降分)』」についての行政文書公開請求(以下「本件請求」という。)が行われた。

 

2 同年4月26日、実施機関は、本件請求に対応する行政文書に異議申立人であるA事業協同組合(以下「異議申立人」という。)に関する情報が記録されていることから、条例第17条第1項の規定に基づき意見書提出の機会を付与するため、異議申立人に対して、第三者意見書提出機会通知書を送付した。

 

3 同年5月11日、異議申立人は、実施機関に対し、次のとおり、本件行政文書の公開に反対する旨の意見書を提出した。

(1)公開に反対する部分

 公開請求の対象となった行政文書の全ての文書

(2)公開に反対する理由

ア 組合の事業活動に支障をきたすため

イ 個人情報の保護のため

 

4 同年5月17日、実施機関は、本件請求に対応する行政文書として、異議申立人に係る、次の表に掲げる行政文書(以下「本件行政文書」という。)を特定の上、同表に掲げる公開しないことと決定した部分(以下「本件非公開部分」という。)を除いて公開するとの部分公開決定(以下「本件決定」という。)を行い、その旨を条例第13条第1項の規定により、請求者に通知した。

さらに、これと同時に、条例第17条第3項の規定により、公開決定をした理由を付して異議申立人に通知した。

 

文書名

公開しないことと決定した部分

中小企業等協同組合決算関係書類提出書(平成21年7月22日収受)

(1)団体の代表者の印影

(2)個人の印影

(3)財産目録(流動資産)における取引先金融機関名

(4)財産目録(流動負債)における借入先、未払先名

(5)議事録における役員以外の出席者の氏名

中小企業等協同組合定款変更認可申請書(平成21年7月8日収受)

(1)団体の代表者の印影

(2)個人の印影

(3)事業計画書における共同受注に関する事業の取扱量、取扱世帯数、単価、受注高、購買高、手数料率

(4)事業計画書における共同販売に関する事業の取扱量、単価、販売高、手数料率

(5)事業計画書における購買斡旋に関する事業の購買量、購買高、手数料率及び手数料高(合計欄は除く。)

(6)収支予算書における給料・賞与の内訳

中小企業等協同組合役員変更届書(平成21年4月28日収受)

(1)団体の代表者の印影

(2)個人の印影

(3)個人の住所(代表理事を除く)、電話番号

(4)議事録における役員以外の個人の氏名

中小企業等協同組合役員変更届書(平成19年5月17日収受)

(1)団体の代表者の印影

(2)個人の印影

(3)個人の住所(代表理事を除く)、電話番号

(4)議事録における役員以外の個人の氏名

 

【公開決定をした理由】

  本件行政文書(公開部分)に記録されている情報については、当該団体及びその事業の性質等を考慮すると、当該団体の競争上の地位、その他正当な利益を害するとは認められず、条例第8条第1項第1号に該当しない。

  また、当該団体の理事の氏名等の情報は、当該団体の社会的責任及び公益性の点から、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であるとは認められないため、条例第9条第1号には該当しない。

  そのほか、条例第8条第1項各号又は第9条各号(非公開情報)に該当しないため。

 

5 同年5月28日、異議申立人は、本件決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を行った。

  なお、本件決定のうち本件異議申立ての対象となった部分については、同日、異議申立人が、行政不服審査法第48条において準用する同法第34条第2項に基づき、執行の停止の申立てを行い、同年5月31日、実施機関が執行の停止を決定して、その旨を異議申立人及び請求者に通知している。

 

三 異議申立ての趣旨

  本件決定を取り消し、次の部分(以下「本件係争部分」という。)を非公開とすることを求める。

 ・ 代表理事以外の役員の氏名

 ・ 中小企業等協同組合決算関係書類提出書

 

 

第四 異議申立人の主張要旨

  異議申立人の主張は、概ね次のとおりである。

 

 1 異議申立書における主張

  本件行政文書の公開は、異議申立人の事業活動に支障をきたし、組合役員等の個人情報を保護できないおそれがあるため。

 

 2 反論書における主張

(1)事業協同組合の事業内容について

ア 実施機関の主張によれば、事業協同組合は、税率の優遇や行政の監督下に置かれている等の事情が存するところから、公益性の高い性格を有するものであるとし、事業協同組合があたかも公益法人と法的に同一であるとの前提で議論を展開している。

イ 確かに、事業協同組合は、一定の公益的な機能を担う場合はある。しかしながら、事業協同組合は、公益法人ではない。事業協同組合は、通常、営利法人としての側面が強い。

  また、公益性といっても、事業協同組合は、営利事業に関して共同化がなされているに過ぎないことから、副次的に公益的機能を担うものから、組織から業務まで概ね営利法人とかわらず、公益性が著しく稀薄または全く欠如したものまで様々ある。

  このような営利法人と公益法人の中間あるいはその一方に類似した団体の存在を法(中間法人法)が承認したうえで、事業協同組合は、中間法人法の特別法である中小企業等協同組合法(昭和24年法律第181号。以下「法」という。)によって規律される団体なのである。

  そして、事業協同組合は、中小の営利事業者を構成員(組合員)とするものである。組合員の事業を支援・援助するためのものならほとんどすべての分野の事業が実施でき、組合の設立も4人以上集まれば可能である。

  中小の営利事業者にとって、非常に設立しやすい組合として広く普及しているものである。

  このような団体に対して、国が税率の軽減等の保護助成をしているのは、あくまで中小の営利事業者の経済的地位の向上を図るためのものであり、他方、国の一定の監督下に置いているのは、国の保護助成の濫用を回避するためである。

  特に、中小の再資源卸売業は、いわゆる廃棄物をリサイクルする薄利事業である反面、設備に多大な資金がかかる業種である。

  技術的要素が比較的少ないので、競争が激化する可能性を秘めていることから、業者が共同して受注事業等を展開して、ようやく利益を確保できる業種であることから、共同事業化されているに過ぎない。共同事業と言っても、現実には、共同的に営利目的を増進実現するに過ぎず、その事業業務の公益性は著しく稀薄である。

  要するに、異議申立人のような中小の再資源卸売業を組合員とする事業協同組合は、営利法人と概ね変わらず、公益性が極めて稀薄なものである。

ウ 実施機関の主張は、異議申立人を公益法人と全く同じ前提で議論を展開しており、前提事実に誤認がある。

(2)本件係争部分が条例第8条又は第9条に該当することについて

ア 公開原則について

  条例は、「行政公開の原則」を定めている(条例第1条)。

  しかしながら、条例は、その公開の原則だけを杓子定規に適用して、あらゆる情報を公開すべしとしていないことは勿論である。

  そもそも、公開の原則を定めたのは、府民の府政への参加を一層推進すること、府政の公正な運営を確保すること、府民の生活の保護及び利便の増進を図ることを目的とし、これらの目的の達成は、ひいては、府民の府政への信頼を深め、府民の福祉の増進に寄与するためである。

  これらを一言で言えば、公開する公益上の必要があるからである。

  よって、行政公開の原則を適用するにあたっても、公開する公益上の必要性があるかどうかという観点を失念することは許されないというべきである。

イ 条例第8条該当性について

  上記のとおり、条例は行政公開の原則を定めているが、条例は、第8条第1項第1号所定の事由が存するときは、情報を公開しないことができるとしている。

  実施機関も認めるように、条例第8条第1項第1号所定の情報を公開しないことができるとした趣旨の一つに営業の自由の保障がある。

  そして、条例第8条第1項第1号は、行政公開の原則のもとで、営業の自由の保障を侵害してはならないとしているのであるが、ここでは、当該事業者の営業の自由をどの程度重視するかが問題とならざるを得ない。

  確かに、公開原則は府民の知る権利の拡充に資するものであるが、憲法第21条(又は同法第13条)から直接要請されているものでなく、個人の知る権利を実質化するものとして、その外延として導かれる原則であるに過ぎない。

  他方、事業協同組合の営業の自由は憲法第22条によってまさに直接保護されるべきものである。

  そして、上記のとおり、事業協同組合には、営利法人としての側面が強く、その営業の自由は強度に保護されるべき要請がある。

  よって、事業協同組合の情報につき、条例第8条第1項第1号の「公にすることにより、当該法人等の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められる」かどうかを判断するにあたっては、当該法人の営業の自由の確保につき慎重に配慮する必要がある。

(ア)代表理事以外の役員の氏名について

  実施機関によれば、役員は組合運営における実質的な経営者であり、その氏名の公表が生産技術又は営業上のノウハウや取引上、金融上、経営上の秘密等にあたるとはいえず、当該組合の競争上の地位を害するとは認められないとする。

  しかしながら、閲覧等の請求に係る情報が「競争上の地位その他正当な利益を害する」と認められる情報に該当するかどうかは、当該情報の内容だけでなく、当該事業者の性格、事業活動における当該情報の位置づけ等にも十分留意しつつ、慎重に判断する必要があるとされている(条例解釈運用基準)。

  この点、資源再生業は、薄利事業であることから、業者間の競業牽制、特に業者間の力関係の均衡があり、さらに、一般住民にとって廃棄物としか扱われない物品を対象とすることから、地域住民との関係維持等微妙な力の均衡のもとで成立している。

  異議申立人の役員であるものは、通常、自ら組合員である法人の役員または個人事業主を兼任しており、広く異議申立人の役員を開示することは、当該組合員の競業他社との関係等において、上記均衡に亀裂をもたらす蓋然性が高い。

  そして、異議申立人は、あくまで個別の中小の事業者の共同体であり、その構成員の取引関係の存続、経営の安定等経営上の利益は、そのまま異議申立人の経営上の利益に直結する関係にある。

  要するに、異議申立人には、その役員が誰であるかの秘匿につき、重要な経営上の利益を有しているのであって、それを公開することは、当該組合員を構成員とする異議申立人自身の公正な競争が侵害される蓋然性が高い。

  実施機関は、当該事業者の性格を十分慎重に検討したうえで、事業活動の当該情報の位置づけを完全に無視している。

  そもそも、事業協同組合の代表理事については、登記簿により公開が予定されているものであるが、その他の役員については、登記することが求められていないが、これは公開する公益上の必要が全く認められないからである。

  以上のとおり、実施機関の主張には、条例第8条第1項第1号の解釈、適用に誤りがある。

(イ)決算報告書の公開部分について

  実施機関は、

a 事業協同組合の決算報告書は、法第40条の規定により組合事務所に備え置かなければならず、組合員及び組合の債権者は、何時でも、理事に対しこれらの書類の閲覧又は謄写を求めるとされている。

b 財産目録等の財務諸表に記載されている各勘定科目の金額から、当該組合の経営規模はどの程度であるか、収入と支出とのバランスがとれているかなど、当該組合のおおよその経営内容の分析や把握は可能であったとしても、主要簿や補助簿その他多くの会計帳簿などの細目的資料の提出や組合の経理担当者からのヒアリングを受けない限り、「競争上の地位を害すると認められるもの」というまでの経営上の秘密やノウハウに属するような情報まで得られない。

等を理由に、決算報告書を開示しても、「競争上の地位を害すると認められるもの」とは言えないとする。

  しかしながら、上記aについては、法第40条は、組合員や組合債権者等組合と法的利害関係を有している者の私的経済的利益保護のために組合自身に公開を義務づけている規定であり、協同組合と法的利害関係を有しない一般市民に公開を義務づけている規定ではない。これに反して、条例に基づく情報公開制度は、法第40条とその趣旨、目的を異にしていることが明らかである。法に上記規定があることから、条例に基づく実施機関による公文書の公開事務の運用上、公益性を有する事業者の収益事業に関する決算報告書を公開する公益上の必要性がある等とは認められない。むしろ、収益事業を営む以上、競業他社の存在を無視できないところ、収益事業の規模、形態を競業他社にも開示させることにつながりかねず、競争上の地位を害する蓋然性が極めて高い。

  また、上記bについては、当該組合のおよその経営内容の分析や把握は可能であることを認めながら、その他の経理担当者からのヒアリング等の捕捉手段を得ない限り経営上の秘密に属する情報は得られないとする。

  しかしながら、「財産目録」は異議申立人の資産の内容を示す文書、「貸借対照表」は、異議申立人の資産・負債・正味財産の状態を示す文書、「損益計算書」は異議申立人の一事業年度の損益を示す文書、「剰余金の処分または損失の処理の方法を記載した書面」は、異議申立人の利益または損失の処理を示す文書、「監査意見書」は、異議申立人の監事が会計監査の結果に意見を付して理事に提出する文書である。

  これらの文書の性質上、これらの文書に記載した情報を開示するときは、異議申立人が、その行う営業活動のうち、いかなる営業活動に重点を置いているか、あるいは財産の状況、信用能力、収入支出の実態などを開示することに他ならず、営利性を強く有する事業協同組合にとっては、競業他社または取引先等との関係で、経営方針、ノウハウとして、その秘匿を死守しなければならない情報である。

  また、主要簿や補助簿その他多くの会計帳簿などの細目的資料の提出や組合の経理担当者からのヒアリングを受けなくとも、税務関係、業界情報等に精通した者にとっては、決算報告書を解読すれば、当該事業者の財産状況、信用状況の全貌を概ね把握しうることは公知の事実である。

  以上のとおり、異議申立人には、決算報告書の秘匿につき、重要な経営上の利益を有しているのであって、それを公開することは、異議申立人自身の公正な競争が侵害される具体的な危険性がある。

  以上のとおり、実施機関の主張には、条例第8条第1項第1号の解釈、適用に誤りがある。

  (ウ)以上のとおり、実施機関の主張は、異議申立人の事業内容、特にその特殊性、事業活動における当該情報の位置づけを十分に検討することなく、かつ、条例の趣旨を踏まえた解釈をしていない誤りがある。

ウ 条例第9条該当性について

  上記のとおり、条例は行政公開の原則を定めているが、条例は、第9条第1号所定の事由が存するときは、情報を公開してはならないとしている。

  実施機関も認めるように、条例第9条第1号所定の情報を公開してはならないとした趣旨は、個人のプライバシーを保護する点にある。

  個人のプライバシー情報の保護の根拠については、争いあるも、憲法第13条によるとする見解が多数である。

  ただ、そのプライバシー情報についても、そこに何を含めるか争いのあるところであるが、個人の尊厳を確保するという憲法第13条の趣旨からすれば、個人の人格の核に該当するような情報、いわゆるプライバシー固有情報については、個人の自律存在に直接関係することから、制約を伴わない強度の保護が要請され、その周辺を形成する情報、いわゆるプライバシー外延情報については、悪用され、または集積利用されるときには、個人の自律存在に影響し、取り返しのつかない損害が発生するおそれがあることから、強度の保護が要請されるとされている。

  そして、最近の社会の動向として、個人のプライバシーは、個人情報保護法制定の経緯から明らかなとおり、いわゆるプライバシー固有情報だけでなく、憲法第13条の趣旨を考慮して、当該個人の生活情報等プライバシー外延情報についても可及的に保護される必要がある。

  そこで、条例は、個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成等のプライバシー固有情報だけでなく、個人の学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関するプライバシー外延情報についても、広く原則的に公開を禁止している。

  もっとも、条例は、「当該情報が一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの」を公開禁止にするとして、一定の絞りをかけている。

  しかしながら、上記のとおり、情報の内容により、憲法的保障の程度が異なることを踏まえて、プライバシーの範囲を可及的に拡大しようとする社会の動向に応じて条例が個人のプライバシー保護の観点からあらゆる情報のうち一定の事項だけを列挙した趣旨を考慮して、個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成等のプライバシー固有情報は、反証のない限り、一般に他人に知られたくないと望まれることが正当であると認めるべきであり、個人の学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等は、いわゆる人格の核、あるいはプライバシー固有情報とは言えなくとも、その周辺を形成し、その人の自律的存在を推認させる重要な情報として、当該情報は、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると推定すべきである。

(ア)代表理事以外の役員の氏名について

  実施機関は、

a 本件情報は、法人の機関における地位を表示するものであり、他から知り得ないという理由のみをもって、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当である」とは認められない。

b 他の法令に基づく法人の役員については、公益法人については、理事全員の住所及び氏名が、また、営利法人である株式会社については代表取締役の住所、氏名、取締役及び監査役の氏名がそれぞれ登記事項として定められている。

c 事業協同組合の公益性が高い。

d 事業協同組合の役員は、対外的にも責任を負う職責がある。したがって、本件情報は、公益法人の役員と同様もともと公示的な性格を持つものである。

として、本件情報は、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当である」と認められないとする。

  しかしながら、上記aについては、異議申立人が本件情報の開示を拒否している状況において、本件情報が法人の機関における地位を表示するものであり、他から知り得ないという理由をもって、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当」であるとは考えられないという思考は、憲法第13条の趣旨を全く理解していない議論であると言わざるを得ない。

  上記bについても、前述のとおり、異議申立人は、そもそも、法的には公益法人でも、営利法人でもない。

  実施機関は、営利法人については、役員が登記事項として開示されていることから、異議申立人も同じように開示すべきとの議論を展開しているが、これは、まさに実施機関が異議申立人の事業内容、その性格等を正確に分析しないばかりか、理論的に破綻していることを雄弁に物語る暴論である。

  実施機関は、ある種の情報については、異議申立人と公益法人とは同じであるかのような議論を展開して開示が妥当であると主張し、別の種類の情報では、営利法人と同じように考えるべきと主張している。ご都合主義的な態度というべきである。

  また、上記cについても、税率の優遇や行政の監督化がなぜなされているのかの論証を欠き、これらの事情から直ちに公益性を導くことができないことは前述のとおりであるし、また、再資源卸売業の共同体である事業協同組合は、営利事業に軸を置いた共同化であって、公益性が希薄で、営利性が強いことも前述のとおりである。

さらに、上記dについても、実施機関は、法において、理事等が任務を怠ったときに、組合に対して損害賠償責任を負担し、あるいは、理事等が任務懈怠につき悪意・重過失があったときに、第三者に対しても損害賠償責任を負担する旨規定することも開示の根拠としている。

  しかしながら、法により組合やその債権者等の私的経済的利益保護のために組合または理事等に一定の責任を義務づけているのは、この組合が営利法人としての側面が強いため、債権者等の保護規定を置いているのである。これに対して、条例に基づく情報公開制度と法とは、その趣旨、目的を全く異にしているものであって、法に上記規定があることから、公開する公益上の必要性がある等とは認められない。

もっとも、実施機関は、単に法に上記規定があるから直ちに開示すべきとしているのではなく、理事等が経営者であり、その責任が内外においても重大な関心になるから、公益法人の役員と同様もともと公示的な性格をもつと認定している。

  しかしながら、公益法人または営利法人については、各利害関係者の利害調整を踏まえて、各関係諸法により役員等の開示が義務づけられているが、事業協同組合の役員等は開示することを義務づけていない。

  にもかかわらず、条例の解釈によって、法律によって開示が義務づけられていない事業協同組合の役員につき、公益法人と同様もともと公示的な性格を持つという理由でもって、開示を認めることになれば、結局、法律の下位規範である条例が、法律を侵害若しくは改廃し、または法創設機能を有することになる。

  実施機関の議論は、完全に国法秩序を破壊または無視する議論である。

  以上のとおり、実施機関の主張には、憲法第13条、条例第9条第1号の解釈、適用に誤りがある。

(3)結論

  以上のとおり、実施機関の主張は、事実認定に誤認があるばかりか、憲法及び条例の解釈にも誤りがある。

本件係争部分は、全て非公開とすべきである。

 

 

第五 実施機関の主張要旨

   実施機関の主張は概ね次のとおりである。

 

1 事業協同組合について

  事業協同組合は、法に基づく協同組合の中で最も代表的かつ一般的な組合の形態であり、組合員である中小企業者が行う事業に関して、共同購買や共同受注・市場開拓等のいわゆる共同経済事業や組合員のための福利厚生事業などの共同事業を行うことにより、中小企業者の経営の合理化、企業体質の強化や対外信用力の増大等を図るものである。

  事業協同組合の機関としては、組合の基本的事項を決定する最高意思決定機関としての「総会」と、具体的な業務の執行を決定する「理事会」がある。

  また、組合の役員として「理事」と「監事」があり、いずれも総会で選任される。そして、理事の中から代表理事(多くの組合では理事長と呼称)が理事会で選任されるが、それ以外に、副理事長・専務理事・常務理事の職をおく組合も少なくない。

  事業協同組合は、法人税率が公益法人並みに軽減されるなどの税制上の優遇措置とともに、業界団体としての側面から行政の各種補助金の交付、公的施設の運営委託や公共工事などの受け皿となることも多く、民間法人のなかでは公益性の高い性格を有する法人である。

  法は、事業協同組合の公益性に着目し、その設立にあたっては業を所管する行政庁(異議申立人については実施機関)の認可を必要とし、設立後においても定款変更認可や決算関係書類提出・役員変更届などの諸手続きを通じて行政の監督下においた。

  事業協同組合設立後、その運営にあたって所管行政庁に提出すべき書類は次のとおりである。

 

(1)中小企業等協同組合定款変更認可申請書

  法第51条第2項では、「定款の変更は、行政庁の認可を受けなければ、その効力を生じない。」とされ、定款変更認可書に添付しなければならない書類として、中小企業等協同組合法施行規則(以下「規則」という。)第136条第1項において次の書類が定められている。

ア  変更理由書

イ  定款中の変更しようとする箇所を記載した書面

ウ  定款の変更を議決した総会または総代会の議事録又はその謄本

  さらに、同条第2項において「定款の変更が事業計画又は収支予算に係るものであるときは、前項の書類のほか、定款変更後の事業計画書又は収支予算書を提出しなければならない。」とされている。

(2)中小企業等協同組合決算関係書類提出書

  法第105条の2第1項では、「組合は、毎事業年度、通常総会の終了の日から二週間以内に、事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書及び剰余金の処分又は損失の処理の方法を記載した書面を行政庁に提出しなければならない。」とされ、届出の際に提出書に添付しなければならない書類として、規則第187条第1項において次の書類が定められている。

ア  事業報告書

イ  財産目録

ウ  貸借対照表

エ  損益計算書

オ  剰余金の処分または損失の処理の方法を記載した書面

カ  上記ア〜オの書類を提出した通常総会または通常総代会の議事録またはその謄本

  また、法第40条第5項に規定されている監事の監査がなされているかどうかを確認するため、監査報告の写しを「中小企業等協同組合決算関係書類提出書」に添付するよう求めている。

(3)中小企業等協同組合役員変更届書

  法第35条の2では、「組合は、役員の氏名又は住所に変更があつたときは、その変更の日から2週間以内に、行政庁にその旨を届け出なければならない。」とされ、届出の際に提出書に添付しなければならない書類として、規則第61条において次の書類が定められている。

ア 変更した事項を記載した書面

イ 変更の年月日及び理由を記載した書面

  また、役員の変更が総会並びに理事会での選挙又は選任にかかるものであるときは、次の書類を役員変更届書に添付するよう求めている。

ウ 総会議事録

エ 理事会議事録

 

2 本件係争部分について

 本件行政文書のうち、異議申立ての対象である本件係争部分は、以下のとおりである。

(1)代表理事以外の役員の氏名について

  「代表理事以外の役員の氏名」が記載されている書類は、別紙のとおりである。

  実施機関は、本件行政文書に記載されている「代表理事以外の役員の氏名」は、非公開事由にあたらないとし、公開すると決定した。しかし、異議申立人は、「代表理事以外の役員の氏名」について公開しないことを求めている。

(2)中小企業等協同組合決算関係書類提出書について

  中小企業等協同組合決算関係書類提出書は、事業報告書、決算報告書及び総会議事録で構成される。

  実施機関は、これらの行政文書のうち本件非公開部分を除いて、公開すると決定した。しかし、異議申立人は、中小企業等協同組合決算関係書類提出書の全体の情報について公開しないことを求めていると考えられる。

 

3 本件係争部分が条例第8条第1項各号及び第9条各号に該当しないことについて

(1)条例における公開原則について

  条例においては、その前文及び第1条にあるように、「府の保有する情報は公開を原則」、「個人のプライバシー情報の最大限の保護」、「府が自ら進んで情報の公開を推進」を制度運営の基本的姿勢としている。

  よって、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報を公開しなければならないものである。

  本件異議申立てにおいては、異議申立人が本件係争部分を公開しないことを求めているため、本件係争部分が、条例第8条及び第9条に該当しないことを、以下において説明する。

(2)条例第8条第1項第1号に該当しないことについて

  事業を営む者の適正な活動は、社会の維持存続と発展のために尊重・保護されなければならないという見地から、社会通念に基づき判断して、競争上の地位を害すると認められる情報、その他事業を営む者の正当な利益を害すると認められる情報は、営業の自由の保障、公正な競争秩序の維持等のため、公開しないことができるとするのが条例第8条第1項第1号の趣旨である。

同号では、

a 法人等に関する情報であって、

b 公にすることにより、当該法人等の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるものは、公開しないことができると規定している。

  また、一般に、「競争上の地位を害すると認められるもの」とは、生産技術上又は営業上のノウハウや取引上、金融上、経営上の秘密等公開されることにより、公正な競争の原理を侵害すると認められるものをいうと解されており、「その他正当な利益を害すると認められるもの」とは、事業を営む者に対する名誉侵害、社会的評価の低下となる情報及び公開により団体の自治に対する不当な干渉となる情報等必ずしも競争の概念でとらわれないものをいうと解されている。

  そして、「競争上の地位を害すると認められるもの」とは、当該文書に記録された情報が明らかとなることにより、当該法人等に具体的な不利益が及んだり、社会的評価の低下につながるなどの事実が存在し、それが社会通念に照らして「競争上の地位その他正当な利益」を害すると認められる程度のものである必要があると解すべきである。

  これを本件係争部分についてみると、本件行政文書は全て当該組合の事業内容、役員、財務内容等に関する文書であり、aの要件に該当することは明らかである。

そこで、本件係争部分に記録された情報が、bの要件に該当するか否かを検討した結果は以下のとおりであり、いずれもbの要件に該当しないと判断した。

ア 代表理事以外の役員の氏名について

  組合における役員には、理事と監事があるが、理事は理事会を構成して組合の業務執行の意思を決定するとともに、代表理事を選出して業務を執行させ、それを監督する。また、監事は組合の会計に不正や誤りがないかどうかを監査するとともに、組合の業務及び財産の状況を調査することを職務とする。

このような理事や監事に誰が就任しているかという情報は、当該組合が経済活動を行う中で、取引を行おうとする第三者がその信用を判断するための重要な要素となるべき情報であって、公にすることにより、社会一般の取引の安全や公正な競争秩序の維持に資することがありこそすれ、公正な競争の原理に反する結果となるとは認められない。

また、役員は組合運営における実質的な経営者であり、その氏名の公表が生産技術上又は営業上のノウハウや取引上、金融上、経営上の秘密等に当たるとはいえず、当該組合の競争上の地位を害するとは認められない。

  さらに、氏名の公表が、事業を営む者に対する名誉侵害、社会的評価の低下となる情報及び公開により団体の自治に対する不当な干渉となる情報等であるとも認められない。

  以上のことから、bの要件に該当しない。

イ 決算報告書の公開部分について

  「決算報告書」は、理事の責任において作成され、監査報告とともに総会に付議され、承認される。

  「決算報告書」とは、「財産目録」、「貸借対照表」、「損益計算書」、「剰余金の処分または損失の処理の方法を記載した書面」を指し、これらの書類は「監査報告」とともに「中小企業等協同組合決算関係書類提出書」に添付され、毎年度、事業協同組合の代表者から知事に対し提出されるものである。また、これら決算報告書は、組合の定款等とともに、法第40条第10項の規定により主たる事務所に備え置かなければならず、組合員及び組合の債権者は、組合に対して、同条第12項の規定により、これら書類の閲覧又は謄写を求めることができるとされている。

  異議申立人が異議申立ての理由としている「組合の事業活動に支障をきたす」ため非公開とするためには、当該文書に経営上の秘密やノウハウに属するような情報が存在しそれが明らかとなることにより当該組合等に具体的な不利益が及んだり、社会的評価の低下に繋がるのが明白であり「競争上の地位その他正当な利益を害する」ことが必要である。

  本件の「決算報告書」の内訳についてみると、「財産目録」は、資産の部と負債の部に分けられ、資産から負債を差し引くことによって正味財産を表示している。「貸借対照表」は、一定の月日における組合の財政状態を明らかにするためのものであり、すべての資産、負債、資本を記載したものである。「損益計算書」は、一事業年度の損益を、その発生源泉別に全ての収益とこれに対応する費用とを記載して経常利益を表示し、これに特別損益を加減して当期純利益を表示することにより、組合の経営成績を明らかにするものである。「監査意見書」は、理事から提出を受けた決算関係書類を監事が会計監査を行い、その結果について意見を付して理事に提出するものである。これら「決算報告書」に係る様式については中小企業庁が定める中小企業等協同組合会計基準に定める様式に従い作成することが望ましいとされている。

  したがって、「決算報告書」の内容は、組合の会計年度末の一時点の資産・負債の状況並びに会計年度内の収入・支出の状況を概括的に示しているものにすぎない。

  以上からすれば、財産目録等の財務諸表に記載されている各勘定科目の金額から、当該組合の経営規模はどの程度であるか、収入と支出とのバランスがとれているかなど、当該組合のおおよその経営内容の分析や把握は可能であったとしても、主要簿や補助簿その他多くの会計帳簿などの細目的資料の提出や組合の経理担当者からのヒアリングを受けない限り、「競争上の地位を害すると認められるもの」というまでの経営上の秘密やノウハウに属するような情報までは得られない。これは、株式会社等の営利法人や公益法人においても同様である。

  また、「決算報告書」は、汎用性のある共通ルールに従って作成され、その経営状況を組合内外に客観的に示すためのものであり、法でも組合の債権者に閲覧や謄写を認めているところであるとともに、実施機関への提出義務が課されていることから、その情報は、府民の正当な関心の対象となるべきものでもある。

  さらに、「その他正当な利益を害すると認められるもの」というまでの情報までは得られない。

  以上のことから、bの要件に該当しない。

ウ 事業報告書及び総会議事録(アを除く。)の公開部分について

  事業報告書は、法第40条第2項の規定により、平成20年2月1日から平成21年1月31日までの間の本件事業協同組合の事業活動の概況等を記録したものである。

  また、総会議事録は、通常総会における事業報告等の各議題についての議事経過と結果をまとめた記録である。

  これらの内容は定型的で、公にすることにより、異議申立人の競争上の地位その他正当な利益を害するものとは認めらない。

以上のことから、bの要件には該当しない。

(3)条例第9条第1号に該当しないことについて

  個人の尊厳の確保、基本的人権の尊重のため、個人のプライバシーは最大限に保護されなければならない。特にプライバシーは、一旦侵害されると、当該個人に回復困難な損害を及ぼすことに鑑み、条例は、その前文において、「個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護」することを明記し、条例第5条において「実施機関は、この条例の解釈及び運用に当たっては、個人に関する情報であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるものをみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなければならない。」ことを定めている。そして、条例第9条においては、

a 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、

b 特定の個人が識別され得るもののうち、

c 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの

については、「公開してはならない情報」として定められている。

  これを本件係争部分についてみると、「代表理事以外の役員の氏名」を除く中小企業等協同組合決算関係書類提出書については、専ら法人としての事業協同組合に関する情報であり、aの要件に該当しないことは明らかである。

  そこで、「代表理事以外の役員の氏名」の情報について検討した結果、以下のとおり、cの要件に該当しないと判断した。

ア 代表理事以外の役員の氏名について

  本件情報は、公表することにより、特定の個人が特定の事業協同組合の役員に就任していたという事実が明らかとなる情報であり、a及びbの要件に該当すると認められる。

  事業協同組合の法人登記の際の登記事項としては、法第84条第2項第7号の規定により「代表権を有する者の氏名、住所及び資格」となっており、当該組合の代表権を有している者は定款の定めにより理事長のみである。

  したがって、理事長を除く役員の氏名等は、組合が積極的に公表しない限りは、一般には知り得ない情報といえる。

  しかしながら、本件情報は法人の機関における地位を表示するものであり、他から知り得ないという理由のみをもって「一般に他人に知られたくないと望むことが正当である」とは認められない。

  一方、他の法令に基づく法人の役員については、公益法人については理事全員の住所及び氏名が、また営利法人である株式会社については代表取締役の住所及び氏名並びに取締役及び監査役の氏名が、それぞれ登記事項として定められている。また、公益法人については、「公益法人の設立許可及び指導監督基準」において、役員名簿を含む法人の主な資料を法人の事務所と所轄官庁に備え置き、原則として一般の閲覧に供することとしている。

  次に事業協同組合の公益性について検討すると、事業協同組合に対する税制上の優遇措置として、法人税率が公益法人と同様になることや、事業税・事業所税・印紙税・登録免許税の減免などがある。また、異議申立人もそうであるように、行政からの業務委託等の対象となることも多く、経営に自主性が確保されるべき民間法人のなかでは、経営の透明性を確保する必要性が特に高いものと考えられる。

  ここで、役員の職責について検討すると、事業協同組合の理事で構成する理事会は、組合の業務の執行を決定する権限を有する(法第36条の5)。その理事会が決定した事項を執行するのが、代表理事である。したがって、理事は、理事会を通じて組合の業務執行を決定する立場にある。

  理事の責任に関して、法第38条の2第1項には「役員は、その任務を怠ったときは、組合に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」とある。

  また、第2項では「(その)任務を怠ってされた行為が理事会の決議に基づき行われたときは、その決議に賛成した理事は、その行為をしたものとみなす。」として、連帯責任を負うことになり、さらに第3項で「決議に参加した理事であって議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する。」とされている。

  一方、監事の責任に関して、法第36条の3第2項の規定により理事の職務の執行を監査する立場にあるが、法第38条の2第1項により、「役員は、その任務を怠つたときは、組合に対し、これによつて生じた損害を賠償する責任を負う。」と規定している。

  また、法第38条の4により、役員が組合又は第三者に対して損害賠償責任を負う場合に、他の役員も当該損害を賠償する責任を負うときは、その監事及び理事は連帯債務者となる旨が定められている。

  以上のように、事業協同組合の理事と監事は組合の実質的な経営者であり、その権限と責任は組合の内外においても重大な関心事となる。

  したがって、本件情報は、法の規定により行政庁に対し提出すべき情報であり、また、公益法人の役員と同様もともと公示的な性格を持つものである。

  本件情報の開示によって、当事者の個人の尊厳が傷つけられたり、人格的利益が損なわれたりすることは、社会通念上考えられないことから、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当である」とは認められないものであり、cの要件に該当しない。

(4)条例第8条第1項第2号から第5号まで及び条例第9条第2号に該当しないことについて 

  本件係争部分に記載されている情報が、条例第8条第1項第2号から第5号まで及び条例第9条第2号に該当するかについて検討した結果、本件係争部分には、公にすることにより認可事務に著しい支障を及ぼすおそれもなく、また法令の規定により公にすることができない情報や公にすることにより公共の安全に支障を及ぼすような情報等も含まれていないのは明らかである。

 

4 結論

  以上のとおり、実施機関による本件部分公開決定処分は条例に基づき適正に行われたものであり、適法かつ妥当なものである。

 

 

第六 審査会の判断理由

 

1 条例の基本的な考え方について

  行政文書公開についての条例の基本的な理念は、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより、「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

  このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

  このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第2条第1項に規定する行政文書に記録されている場合には、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならないのである。

 

2 事業協同組合について

  事業協同組合は、中小規模の商業、工業、鉱業、運送業、サービス業その他の事業を行う事業者等が、相互扶助の精神に基き協同して事業を行うために、法に基づき設立される法人である(法第1条、第3条、第4条、第5条及び第8条第1項)。

  事業協同組合の設立にあたっては、組合員になろうとする4人以上の者が発起人となり(法第24条)、組合員たる資格を有する者で創立総会の日までに発起人に対し設立の同意を申し出たものの半数以上が出席して創立総会を開催し、その議決権の3分の2以上で設立に必要な事項を決定した上(法第27条)で、創立総会終了後遅滞なく、定款並びに事業計画、役員の氏名及び住所その他必要な事項を記載した書面を、業を所管する行政庁(異議申立人については実施機関)の認可を受けなければならないとされている(法第27条の2第1項)。

  また、設立後は、定款変更について、行政庁の認可を受けなければその効力を生じないとされている(法第51条第2項)ほか、役員の氏名又は住所の変更を行政庁に届け出ること(法第35条の2)、及び事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書及び剰余金の処分又は損失の処理の方法を記載した書面を行政庁に提出すること(法第105条の2第1項)が義務づけられている。

  事業協同組合は、中小規模の事業者等が相互扶助の精神に基き協同して事業を行うことを目的とし、組合自体は営利を目的としないことから、法人税が公益法人等と同等の税率に軽減されている(法人税法第66条第3項)ほか、中小企業振興施策や公共事業の担い手となることが多いなど一定の公益性が認められている法人である。異議申立人についても、特定の地方公共団体の区域における一般廃棄物からの資源の回収と再資源化という公共性の高い事業を担っていることが認められる。

 

 

3 本件行政文書について

  本件行政文書は、法に基づき、異議申立人から実施機関に提出された、次の(1)〜(3)であり、そのうち、本件係争部分は、(1)の全体並びに(2)及び(3)中の「代表理事以外の役員の氏名」である。

(1) 中小企業等協同組合決算関係書類提出書

  法第105条の2第1項の規定により、平成21年7月22日に、異議申立人から実施機関に提出されたもので、その内容は次のとおりである。

ア 中小企業等協同組合決算関係書類提出書(かがみ文)

  異議申立人の住所、名称、電話番号及び組合を代表する理事の氏名及び代表者の印影が記載された文書で、決算関係書類を提出する旨を記載したものである。代表者の印影は非公開とされている。

イ 事業報告書

  事業報告書は、平成20年2月1日から平成21年1月31日までの間の異議申立人の活動状況等を報告するものであり、「1.概況」、「2.庶務事項」及び「3.事業の状況」の項目に分かれている。

ウ 決算報告書

  平成20年2月1日から平成21年1月31日までの間の決算報告書であり、貸借対照表、損益計算書、販売費及び一般管理費の計算内訳、製造原価報告書、財産目録及び監査意見書が添付されている。財産目録中の異議申立人の取引金融機関の名称、異議申立人の借入先(短期借入金及び未払金の債権者)の名称及び監査意見書中の監事の印影が非公開とされている。

エ 総会議事録

  平成21年4月17日に開催された第9回通常総会における、平成20年度の組合加入者・脱退者報告、会計報告、会計監査報告、役員選挙、平成21年度の事業計画(案)、予算(案)の承認等議題についての議事経過と結果をまとめた記録である。ここには、役員(議長理事、出席理事、監事)及び選考委員の氏名並びに議長理事及び出席理事の印影が記載されている。そのうち、選考委員の氏名並びに議長理事及び出席理事の印影が非公開とされている。

(2)中小企業等協同組合定款変更認可申請書

  定款の変更について認可を得るため、平成21年7月8日に、法第51条第2項の規定により、異議申立人から実施機関に提出されたもので、その内容は次のとおりである。

 ア 中小企業等協同組合定款変更認可申請書(かがみ文)

  異議申立人の住所、名称、電話番号及び組合を代表する理事の氏名及び代表者の印影が記載された文書で、定款変更認可申請を行う旨を記載したものである。代表者の印影は非公開とされている。

 イ 変更理由書及び変更箇所対照表

  定款の変更理由、変更内容、組合を代表する理事の氏名及び代表者の印影が記載された文書である。代表者の印影は非公開とされている。

 ウ 事業計画書

  平成21年2月1日から平成22年1月31日までの間の事業計画書と代表者の印影が記載されている。代表者の印影及び事業計画における次の情報は非公開とされている。

・共同受注に関する事業の取扱量、取扱世帯数、単価、受注高、購買高、手数料率

・共同販売に関する事業の取扱量、単価、販売高、手数料率

・購買斡旋に関する事業の購買量、購買高、手数料率及び手数料高(合計欄は除く。)

 エ 収支予算書

  平成21年2月1日から平成22年1月31日までの間の収支予算書及び代表者の印影が記載されている。代表者の印影及び予算書における給料・賞与の内訳は非公開とされている。

 オ 総会議事録

  平成20年12月22日に開催された平成20年度第1回臨時総会における、平成21年度の事業計画(案)及び定款内容に係る一部変更承認の議題についての議事経過と結果をまとめた記録である。ここには、役員(議長理事、出席理事)の氏名並びに法人代表者及び出席理事の印影が記載されている。そのうち、法人代表者及び出席理事の印影が非公開とされている。

 カ 遅延理由書

  認可申請手続の遅延に係る理由及び代表者の印影が記載されている。代表者の印影は非公開とされている。

(3)「中小企業等協同組合役員変更届書」

  役員の変更について届け出るため、平成19年5月17日及び平成21年4月28日に、法第35条の2の規定により、提出された2件の書面で、その内容は次のとおりである。

  ア 中小企業等協同組合役員変更届書(かがみ文)

  異議申立人の住所、名称、電話番号及び組合を代表する理事の氏名及び代表者の印影が記載された文書で、組合役員の変更を届け出る旨を記載したものである。代表者の印影は非公開とされている。

  イ 新役員名簿及び旧役員名簿

  新役員及び旧役員の役職名、氏名、郵便番号、住所及び電話番号が記載されている。理事長(代表理事)を除く新旧役員の郵便番号及び住所並びに全ての役員の電話番号は非公開とされている。

  ウ 総会議事録

  平成19年4月19日に開催された第7回通常総会の議事録及び平成21年4月17日に開催された第9回通常総会の議事録である。

  第7回通常総会議事録は、平成18年度の組合加入者・脱退者報告、事業報告、会計報告、会計監査報告、役員選挙、平成19年度の事業計画(案)、予算(案)の承認等議題についての議事経過と結果をまとめた記録である。ここには、役員(議長理事、出席理事、監事)、選考委員及び組合員の氏名並びに代表者、議長理事及び出席理事の印影が記載されている。そのうち、選考委員及び組合員の氏名並びに代表者、議長理事及び出席理事の印影が非公開とされている。

  第9回通常総会議事録は、平成20年度の組合加入者・脱退者報告、会計報告、会計監査報告、役員選挙、平成21年度の事業計画(案)、予算(案)の承認等議題についての議事経過と結果をまとめた記録である。ここには、役員(議長理事、出席理事、監事)及び選考委員の氏名並びに議長理事及び出席理事の印影が記載されている。そのうち、選考委員の氏名並びに議長理事及び出席理事の印影が非公開とされている。

  エ 理事会議事録

  平成19年4月19日に開催された理事会の議事録及び平成21年4月17日に開催された理事会の議事録である。

  両議事録は、理事長及び副理事長選任の議題についての議事経過と結果をまとめた記録である。ここには、役員(議長理事、出席理事)の氏名及び印影が記載されている。そのうち、議長理事及び出席理事の印影が非公開とされている。

 オ 履歴事項全部証明書

  平成19年5月17日提出の届出書に含まれている、平成19年5月15日付けの異議申立人に係る大阪法務局枚方出張所発行の証明書である。

 

4 本件決定に係る具体的な判断及びその理由

  本件係争部分は、本件行政文書中の代表理事以外の役員の氏名及び3(1)に掲げる中小企業等協同組合決算関係書類提出書である。

  異議申立人は、本件係争部分の公開は、「異議申立人の事業活動に支障をきたし、組合役員等の個人情報を保護できないおそれがある」などとして、本件係争部分に記録された情報が条例第8条第1項第1号及び条例第9条第1号に該当すると主張しているので、以下検討する。

 

(1)条例第8条第1項第1号について

  事業を営む者の適正な活動は、社会の維持存続と発展のために尊重、保護されなければならないという見地から、社会通念に照らし、競争上の地位を害すると認められる情報その他事業を営む者の正当な利益を害すると認められる情報は、営業の自由の保障、公正な競争秩序の維持等のため、公開しないことができるとするのが本号の趣旨である。

同号は、

ア 法人・・・その他の団体(以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、

イ 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの(人の生命、身体若しくは健康に対し危害を及ぼすおそれのある事業活動又は人の生活若しくは財産に対し重大な影響を及ぼす違法な若しくは著しく不当な事業活動に関する情報を除く。)

が記録された行政文書は、公開しないことができる旨定めている。

  また、本号の「競争上の地位を害すると認められるもの」とは、生産技術上又は営業上のノウハウや取引上、金融上、経営上の秘密等公開されることにより、公正な競争の原理に反する結果となると認められるものをいい、「その他正当な利益を害すると認められるもの」とは、公開されることにより、事業を営む者に対する名誉侵害や社会的評価の不当な低下となる情報及び団体の自治に対する不当な干渉となる情報等必ずしも競争の概念でとらえられないものをいうと解されるが、これらの具体的な判断に当たっては、当該情報の内容のみでなく、当該事業を営む者の性格や事業活動における当該情報の位置づけ等も考慮して、総合的に判断すべきものである。

 

(2)本件行政文書の条例第8条第1項第1号該当性について

  本件行政文書に記録されている情報は、法に基づき法人として設立された事業協同組合である異議申立人の情報であることから、(1)アの要件に該当することは明らかである。

  次に、本件行政文書に記録されている情報が(1)イの要件に該当するかどうか個別に検討する。

ア 本件行政文書中の「代表理事以外の役員の氏名」について

  事業協同組合には、役員として、3人以上の理事及び1人以上の監事を置く?ととされている(法第35条第1項及び第2項)。事業協同組合における理事及び監事は、株式会社等における取締役及び監査役に相当する重要な役職であり、理事は組合の業務を執行するとともに、理事会を構成して組合の業務執行に係る意思決定を行い、監事は組合の財産の状況及び理事の業務執行の状況を監査することを職務とする。

  このような理事や監事に誰が就任しているかという情報は、当該事業協同組合が経済活動を行う中で、取引を行おうとする第三者がその信用を判断するための重要な要素となるべき情報であって、公にすることにより、社会一般の取引の安全や公正な競争秩序の維持に資することがありこそすれ、公正な競争の原理に反する結果となるとは認められない。

  また、このような情報は、技術上又は営業上のノウハウや金融上、経営上の秘密等にあたらないことは明らかであり、公にすることにより、当該事業協同組合に対する名誉侵害や社会的評価の不当な低下となる情報及び団体の自治に対する不当な干渉となる情報であるとも認められない。

  ところで、この点に関し、異議申立人は、「異議申立人の役員であるものは、通常、自ら組合員である法人の役員または個人事業主を兼任しており、広く異議申立人の役員を開示することは、当該組合員の競業他社との関係等において、上記均衡に亀裂をもたらす蓋然性が高い。」とし、「異議申立人には、その役員が誰であるかの秘匿につき、重要な経営上の利益を有しているのであって、それを公開することは、当該組合員を構成員とする異議申立人自身の公正な競争が侵害される蓋然性が高い。」と主張する。

  しかしながら、事業協同組合が、法人として経済活動を行う主体である以上、役員が誰であるかという情報は、上述のとおり、公にされることによってこそ社会一般の取引の安全や公正な競争秩序の維持に資するものであり、営利法人である株式会社(監査役設置会社である場合)の取締役及び監査役の氏名はもとより(会社法第911条第3項第13号・第17号)、非営利法人である一般社団法人(監事設置一般社団法人である場合)及び一般財団法人の理事及び監事の氏名も登記事項とされている(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第301条第2項第5号及び第8号並びに第302条第2項第5号)ことからしても、異議申立人の主張を採用することはできない。

  また、異議申立人は、「事業協同組合の代表理事については、登記簿により公開が予定されているものであるが、その他の役員については、登記することが求められていない」とし、「法律によって開示が義務づけられていない事業協同組合の役員につき、公益法人と同様もともと公示的な性格を持つという理由でもって、開示を認めることになれば、結局、法律の下位規範である条例が、法律を侵害若しくは改廃し、または法創設機能を有することになる。」と主張している。

  しかしながら、法人に係る登記制度は、取引の安全等を図るために当該法人に関する情報を広く一般に知ることができる状態にすることを目的としており、どのような情報を登記簿という形式で公示すべきかは、会社法や中小企業等協同組合法等の各法律が、利害関係者への公示の必要性と登記義務者の負担、あるいは行政庁の監督の有無などを勘案して規定しているに過ぎない。したがって、登記事項とされていない情報について、条例に基づいて公開することを禁止したものではないと解されるから、異議申立人のこの主張もまた、採用することができない。

  以上のことからすると、本項の情報は、公にすることにより、異議申立人の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとは認められず、(1)イの要件に該当しない。

  本件係争部分である「代表理事以外の役員の氏名」は、別紙に掲げる文書中に記録されているが、上述のとおり、これを非公開とすべき理由はない。

イ 「中小企業等協同組合決算関係書類提出書」の公開決定部分(代表理事以外の役員に係る部分を除く)について

(ア)決算報告書について

  決算報告書は、その文書の性質上、公にすることにより、異議申立人の全般的な財務状況を把握することが可能な情報である。本件決算報告書に記録されている数値からは、様々な財務指標を算出することが可能であり、異議申立人の経営規模、資産構成、収支バランス等が把握できることが認められる。

  しかしながら、本件決定においては、財産目録に記録されている異議申立人の取引金融機関の名称及び借入先(短期借入金及び未払金の債権者)の名称は非公開とされており、本件決算報告書のうち公開部分には、他に異議申立人の共同事業や取引行為に関する具体的な情報は記録されていない。審査会において、本件決算報告書を見分したところによっても、異議申立人の営業上、技術上のノウハウや取引上、経営上の秘密が具体的に明らかとなるような情報は含まれていないことが認められた。

  さらに、事業協同組合の決算報告書については、組合員及び組合の債権者は、当該事業協同組合に対して、その業務取扱時間内は、いつでも、これらの閲覧又は謄写を請求できるものとされている(法第40条第12項)。

  この規定について、異議申立人は、「法第40条は、・・・協同組合と法的利害関係を有しない一般市民に公開を義務づけている規定ではない」とし、本項の情報を公開すべきではないと主張している。

  しかしながら、法第40条第12項の規定は、債権者等の利益の保護のため、事業協同組合が自ら行わなければならない決算報告書の開示方法について定めたものであり、実施機関において提出を受けた決算報告書を条例に基づいて公開することを禁じるものではないと解されるから、この点についての異議申立人の主張は採用することができない。

  事業協同組合は、2で述べたとおり、公益法人等と同様な税制上の優遇措置がとられているほか、中小企業振興施策や公共事業の担い手となることが多いなど一定の公益性が認められている法人である。異議申立人についても、公共性の高い事業の担い手となっていることが認められ、その全般的な財務状況に関する情報は、府民の正当な関心の対象となるべきものである。

  以上のことを総合して判断すると、決算報告書の公開部分の情報は、公にすることにより、異議申立人の競争上の地位その他正当な利益を害するものとは認められず、(1)イの要件には該当しない。

(イ)事業報告書及び総会議事録について

  事業報告書は、異議申立人の活動状況等を報告するもので、総会議事録については、通常総会における事業報告等の各議題についての議事経過と結果をまとめた記録であり、その内容は定型的で、上記2で述べた事業協同組合の性格や公益性等から判断すると、公にすることにより、異議申立人の競争上の地位その他正当な利益を害するものとは認められず、(1)イの要件には該当しない。

  以上のとおりであるから、ア及びイの本件係争部分は、いずれも、条例第8条第1項第1号に該当しない。

(3)条例第9条第1号について

  条例は、その前文で、府の保有する情報は公開を原則としつつ、個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護する旨宣言している。また、第5条において、個人のプライバシーに関する情報をみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなければならない旨規定している。

  このような趣旨を受けて、個人のプライバシーに関する情報の公開禁止について定めたのが条例第9条第1号である。

  同号は、

ア 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、

イ 特定の個人が識別され得るもののうち、

ウ 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる

情報が記録された行政文書については公開してはならないと定めている。

(4)本件行政文書の条例第9条第1号該当性について

  本件係争部分である「代表理事以外の役員の氏名」については、公にすることにより、特定の個人が特定の事業協同組合の役員に就任していたという事実が明らかとなる情報であり、(3)ア及びイの要件に該当すると認められる。

  事業協同組合の役員は、株式会社や一般社団法人、一般財団法人などの役員の氏名が登記事項となっているのとは異なり、代表理事を除いては、法により、その氏名の登記が義務づけられておらず、一般に誰もが閲覧できる情報とはなっていない。

  しかしながら、事業協同組合の役員である理事及び監事は、その権限や責任において、株式会社の取締役及び監査役、一般社団法人及び一般財団法人の理事及び監事と同等の役職であるうえ、その組合員は、本来、当該事業を営む個人あるいは、法人の代表者であることからしても、当該事業協同組合の役員であることを秘匿すべき正当な理由があるとは認められない。

  以上のことからすると、代表理事以外の役員の氏名については、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められないものであり、(3)ウの要件に該当しないから、代表理事以外の役員の氏名の記載箇所は、これを非公開とすべき理由はない。

 

  以上のとおりであるから、本件係争部分を含めた本件行政文書の公開部分に記録されている情報は、いずれも、条例第9条第1号に該当しない。

  

5 結 論

  以上のとおりであるから、本件異議申立てには理由がなく、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

 

(主に調査審議を行った委員の氏名)

 松田聰子、岩本洋子、大和正史、野呂充 

  

 

(別 紙)

<「代表理事以外の役員の氏名」が記載されている書類>

文 書 名

該 当 書 類

中小企業等協同組合決算関係書類提出書

(平成21年7月22日収受)

(1)監査意見書

(2)総会議事録

 

中小企業等協同組合定款変更認可申請書

(平成21年7月8日収受)

(1)総会議事録

 

 

中小企業等協同組合役員変更届書

(平成21年4月28日収受)

(1)新役員名簿

(2)旧役員名簿

(3)総会議事録

(4)理事会議事録

 

中小企業等協同組合役員変更届書

(平成19年5月17日収受)

(1)新役員名簿

(2)旧役員名簿

(3)総会議事録

(4)理事会議事録

 

このページの作成所属
府民文化部 府政情報室情報公開課 情報公開グループ

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