大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第194号)

更新日:2010年9月22日

大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第194号)

〔教職員評価・育成システム苦情審査会情報不存在非公開決定異議申立事案〕

(答申日 平成22年9月22日)

 

第一 審査会の結論

  実施機関の不存在による非公開決定は妥当である。

 

 

第二 異議申立ての経過

1 異議申立人は、平成21年10月26日、大阪府教育委員会(以下「実施機関」という。)に対し、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、「1、『評価育成』システムでの2008年度評価に対する苦情審査会(以下「苦情審査会」という。)についての情報。開催日時、場所、審議時間、会議参加者氏名、及び議事録、メモなど記録一切。

2、2008年度、2009年度大阪府立○○高等学校校長、教頭(2名)の自己申告票」についての公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。

 

2 同年11月9日、実施機関は、本件公開請求のうち「メモなど」を除く部分に対応する行政文書として、(1)に掲げる文書を特定し、(2)に掲げる「公開しないことと決定した部分」を除き、公開するとの決定(以下「本件決定と同時に行った部分公開決定」という。)を行うとともに、「メモなど」の部分については、(3)のとおり理由を付して、不存在による非公開決定(以下「本件不存在決定」という。)を行い、異議申立人に通知した。

 

(1)本件決定と同時に行った部分公開決定における「一部を公開することと決定した行政文書の内容」

・ 平成21年度苦情審査会議事録

・ 平成20、21年度自己申告票(校長用、教頭用)

(2)本件決定と同時に行った部分公開決定における「公開しないことと決定した部分」

・ 苦情審査会議事録の議事内容【別紙】のうち、苦情申出者の「所属校名」「氏名」の部分、及び平成21年7月28日開催分の1枚目のうち、「(1)委員」のただし書きの部分

・ 平成20年度分 「年齢」、「設定目標」、「進捗状況」、「目標の達成状況」、及び「学校経営の充実に向けた自己の課題」の各欄

・ 平成21年度分 「年齢」、「設定目標」、「進捗状況」及び「学校経営の充実に向け た自己の課題」の各欄

(3)本件不存在決定における「公開請求に係る行政文書を管理していない理由」

担当者が備忘録として作成するメモについては、議事録及び「審査会の意見」が決裁された後は、速やかに廃棄しているため。

 

3 平成21年12月16日、異議申立人は、本件不存在決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に対して、異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を行った。

 

 

第三 異議申立ての趣旨

本件不存在決定の取消し及び当該情報の全部開示を求める。

 

 

第四 異議申立人の主張要旨

異議申立人の主張は、概ね次のとおりである。

 

1 異議申立書における主張

実施機関は、行政文書を管理していない理由として、「担当者が備忘録として作成するメモについては、議事録及び『苦情審査会の意見』が決裁された後は、速やかに廃棄しているため。」としている。

しかしながら公開された苦情審査会議事録には、「4 議事内容」の各号議案の「(2)委員審議」として主な意見が列挙されているが、どの委員が何を言ったかが全くわからないし、意見のやり取りも不明である。議事録の体を成していない。

一方、その議事録作成のためのメモは廃棄されている。このことが認められるなら苦情審査会での発言で教育委員会に都合の悪いことは、議事録に記載されないで記録が一切残らないことになる。いわゆる議事録の二重帳簿状態にある。私が求めるのは苦情審査会で事実がどのように明らかにされたかである。

評価・育成システムの「評価結果に対する苦情の申出及びその取扱いに関する要綱」(以下「要綱」という。)第2条(苦情対応の基本的考え方)には「苦情対応は、評価に対する被評価者と評価者の共通認識の形成に寄与することにより、学校における信頼関係の醸成を図るとともに、評価の公正性・公平性に資するものであり、被評価者、評価者及びすべての関係者は、真摯に対応しなければならない。」とある。また、「苦情対応要領」(以下「要領」という。)第4「事案の審査等」(1)では、「審査会は、申出事案にかかる評価結果が、事実に基づき、評価基準等に照らして評価されているかどうか審査する。」とある。メモが廃棄を理由として公開されないことは、これら要綱、要領に反することは明らかである。

評価・育成システムでの評価は昇給、賞与に反映するので、当該教職員の権利に大きく係わるものである。苦情審査会の透明性、公平性が求められるのは当然であり、備忘録として作成するメモの不存在は納得がいくものではない。

 

2 反論書における主張

2009年10月26日に、実施機関に対し行った行政文書公開請求に対し、苦情審査会の「メモなど」について不存在による非開示決定(教委職企第1756号)がなされた。理由は、「担当者が備忘録として作成するメモなどについては、議事録及び『苦情審査会の意見』が決裁されたあとは速やかに廃棄しているため」との理由であった。

それに対し、異議申立てをしたところ弁明書が出された。その5ページには「(前略)審査の際には、事務局である教職員企画課の職員はメモをとっているが、このメモは、担当職員が『苦情審査会 議事録』の原案を作成するための記憶の補助すなわち当該職員の備忘録にすぎず、行政文書として組織的に管理されていることや、決裁、回議されることはなく、『苦情審査会 議事録』及び『審査会の意見』が決裁を経て確定した後は、プライバシー保護、情報管理の観点から、速やかに廃棄している。」と記されている。

メモは確かに存在している。そして、そのメモを元に議事録原案を作成しているとされている。議事録は苦情審査会開催時、同時並行に作成されているのではなく、後日、別途作成されていることになる。これでは、苦情審査会で議論されたことで実施機関に都合が悪いことはその段階で修正されることになってしまう。実際、どの委員が何を言っているのかは議事録には記載されていない。発言者が不明である「議事録」というものは一般的に会議の「議事録」とは言えない。実質的な「議事録」は担当者作成の「メモ」であり、それが行政文書でない、組織的に管理されていない、決裁されないなどの理由で廃棄が許されるのであれば「議事録」の二重帳簿状態を認めることになる。

かつて、2006年8月25日には「2005年度の評価育成システムの苦情処理審査会について。開催日時、場所、審議時間及び議事録、メモ等記録一切」の個人情報開示請求を行った。それに対し、実施機関は、「公開請求に係わる行政文書は、作成していないため管理していない」ことを理由に、不存在による非公開決定を行った。その時点では、議事録さえも作成していなかった。

それに対して異議申立てをしたところ、個人情報保護審議会からの答申が出された。同答申(2007年10月31日付け答申第153号(大個審第23号))の10ページには、「(前略)なお、苦情審査会の審議にあたって審議記録の作成が必要であるか否かは、苦情審査会の公平性・客観性・透明性の確保に関わる問題である・・(後略)」と指摘されている。そのような経過を経て初めて形ばかりの議事録が作成されるようになった。

苦情審査会の構成は、会長には教育監、他委員は教育振興室長、教育総務企画課長、教職員室長、教職員人事課長になっている。これはすべて教育委員会事務局であり、第三者機関ではない。裁判に例えれば、検事が判事を兼ねている、あるいはスポーツゲームに例えれば、一方のプレイヤーがジャッジを兼ねていることと同じである。その点からも苦情審査会の公平性・客観性・透明性が求められる。

評価・育成システムの評価結果は、教職員の勤勉手当、昇給に係わり、個人の利益に直接関係するものである。

「メモ」の復元、今後の「メモ」の保存、情報開示を求めるものである。

 

 

第五 実施機関の主張要旨

実施機関の主張は概ね次のとおりである。

 

1 教職員の評価・育成システムについて

(1)実施機関は、平成14年7月、「教職員の資質向上に関する検討委員会」から、「教職員全般の資質向上方策」について最終報告を受けた。この最終報告で、教職員の意欲と資質能力を高め、教育活動をはじめとする学校の様々な活動を充実し、学校を活性化する方策として、「教職員の評価・育成システム」(以下、単に「評価・育成システム」という。)が提言されている。これを踏まえて、実施機関は、試行実施の後、平成16年4月16日に開催された大阪府教育委員会会議で、府立学校に勤務する教職員を対象とした「府立の高等専門学校、高等学校等の職員の評価・育成システムの実施に関する規則」(平成16年大阪府教育委員会規則第12号)(以下、「システム実施規則」という。)を新たに制定し、平成16年度以降は、これら規則に基づいて、評価・育成システムを実施している。

     地方公務員法第40条第1項には「任命権者は、職員の執務について定期的に勤務成績の評定を行い、その評定の結果に応じた措置を講じなければならない。」とあり、実施機関においては、平成16年4月16日付けで旧勤評規則を廃止し、平成16年度以降、評価・育成システムの評価結果をもって地方公務員法第40条第1項に規定する勤務評定として実施している。

     評価結果の給与への反映については、実施機関では、平成19年度から、前年度の評価結果を昇給及び勤勉手当における勤務成績の判定に活用することとし、職員の給与に関する条例、府人事委員会規則の改正や実施機関による「勤務成績に応じた昇給の取扱いに関する要領」等を制定するなど必要な規定整備を行い、各府立学校長に通知し、全ての教職員に周知している。

 

  (2)評価・育成システムは、システム実施規則に基づき、自己申告と面談を基本に実施されており、府立学校における教諭の評価者については、1次評価者を教頭、2次評価者を校長としている。

     各教職員は、学校や校内組織の目標達成に向け、各自が年間を通じて取り組む目標を設定し、自己申告票(設定目標等)を作成して育成(評価)者である校長に提出する。教職員の設定目標は、自己申告票をもとに、育成(評価)者との面談によって決定される。

     教職員から提出された自己申告票に対して、育成(評価)者は、児童生徒や保護者、同僚教職員などの意見も参考にしながら評価を行う。

評価では教職員の自己申告を踏まえ、設定された個人目標の達成状況を判断して「業績評価」として評価し、また、職務全般の取組みを対象に、教職員の日常の業務の遂行を通じて発揮された能力を「能力評価」として評価する。その上でこれらの評価をもとに「総合評価」が行われる。

評価は、いずれもA・B・Cの3段階を基本にS・Dを加えた5段階(S・A・B・C・D)の絶対評価でなされ、その結果は年度末に本人に開示され、評価の結果は、教職員の取組みの改善や、次年度の目標設定に生かすこととされている。

評価の基準や方法はあらかじめ明らかにされ、評価の結果に納得できない場合については、教職員は苦情の申出ができることとしている。

 

2 評価結果に対する苦情についての苦情審査会での審査について

(1)苦情審査会による苦情対応について

    評価・育成システムでは、教職員の評価に対する信頼性と納得性を高めるため、評価結果に対する苦情申出制度として苦情審査会を設置しており、その詳細については、次のとおりである。

     地方公務員に係る紛争処理機関としては、既に、地方公務員法第8条に基づき人事委員会が設置されているが、実施機関としては、評価・育成システムの実施者として、評価の適正を図るとともに、評価の客観性・信頼性を確保するため、実施機関内に苦情審査会を設置し、評価結果に対する苦情について迅速に対応することとしている。

本件、府立学校教職員に関する苦情審査については次のとおりである。

苦情審査会の委員は、教育委員会事務局職員が当たるが、審査の適正を期すため、実施機関の幹部職員が対応することとしている。実施機関に係る苦情審査会については、5人の委員から構成され、会長には校長の一次評価者である教育監が当たり、その他の委員には、教育振興室長及び教職員室長、教育総務企画課長及び教職員人事課長が当たっている。

    評価・育成システムにおける苦情対応については、評価結果を開示するための面談において評価結果について説明を受けた本人が、その結果について評価者の見解と相違があり、当事者間で解決が見込まれない場合に申し出ることができることとなっている。

教職員から苦情申出がなされた場合、苦情審査会事務局の調査員が苦情申出者から提出された苦情申出書に基づき、苦情内容を聴取することとなる。

なお、この聴取時に申出者から第三者を同席させたい旨の意思表示があった場合には、職員団体役員その他大阪府職員の1名の同席を認めている。また、この同席した第三者は、書面により意見書を提出することができる。

調査員は、聴取した内容について、評価者である校長から評価理由を確認し、その内容を調書として取りまとめ、当該調書を申出者に送付する。

調書を受けとった申出者は、調書内容を踏まえ、さらに苦情申出書に苦情内容を追加することができることとなっている(以下「苦情追加申出書」という。)。

以上の手続きを経た上で、苦情審査会では、(1)苦情申出書、(2)第三者の意見書(提出された場合に限る。)、(3)調査員が評価者から聴取して作成した調書(以下「調書」という。)、(4)苦情追加申出書(提出された場合に限る。)を基に、評価結果が、事実に基づき、評価基準等に照らして評価されているかどうかを審査する。

その審査結果は、「審査結果通知書」として、申出者及び評価者にそれぞれ通知し、苦情審査を終了することとなる。

この「審査結果通知書」には、苦情案件毎に各審査員から出された意見を「審査会の意見」としてとりまとめ、審査結果に付記することとしている。

さらに、開催日時、開催場所、出席者、議事内容等を記録した「苦情審査会 議事録」を案件毎に作成している。

 

(2)平成21年度の苦情審査会による審査について

    平成20年度の評価結果に対しては、府立学校で15件の苦情の申出が行われ、さらに平成19年度の評価結果に対する苦情のうち、異議申立人に係る1件を加えた16件の苦情に対応するため、実施機関は、要綱第8条第1項に基づき、平成21年6月25日、7月28日、8月25日に苦情審査会を開催した。

なお、異議申立人は平成19年度の評価結果に対する苦情申出について、申立をする旨、電話連絡してきたが、要領第2(1)で「自らの評価結果に対する苦情を有する職員が苦情の申し出をしようとするときは、・・<中略>・・・苦情申出書の持参日時その他必要な事項について調整しなければならない。」とあるにもかかわらず、日時等の調整を行おうとしなかった。そのため、事務局として、調整督促の文書連絡を16回も行ったが、年度内に日程等の調整の連絡はなかった。今年度になり、ようやく調整連絡があり、やむを得ず平成20年度の評価結果に対する苦情申出とともに、審査したものである。

それぞれの苦情案件については、要領第4(1)及び(2)に基づき、苦情審査会事務局である教職員企画課職員の説明のもと、各審査員が、上記の苦情申出書等と調書を相互に見比べ、校長の行った評価が具体的事実に基づき、評価基準に照らして行われているかを合議した。

ところで、異議申立人は、主な意見ではなく、どの委員が何を言ったのか、意見のやり取り、出された意見がすべて記載されているはずのメモの公開を求めている。たしかに、審査の際には、事務局である教職員企画課の職員はメモをとっているが、このメモは、担当職員が「苦情審査会 議事録」の原案を作成するための記憶の補助すなわち当該職員の備忘録にすぎず、行政文書として組織的に管理されることや、決裁、回議されることはなく、「苦情審査会 議事録」及び「審査会の意見」が決裁を経て確定した後は、プライバシー保護、情報管理の観点から、速やかに廃棄している。

    なお、苦情審査会終了後、「審査結果通知書」により、苦情申出者及び当該苦情申出者に係る評価者に審査結果を通知した。

 

3 本件処分について

以上のとおり、本件請求に係る「メモなど」については教職員企画課職員が備忘録として記録したものを指すものと考えられるところ、当該記録は上記で述べたように存在せず、また、本人に公開したもの以外の議事録は作成していないことから、実施機関はこれを保有していないと判断し、条例第13条第2項の規定に基づき、本件処分を行ったものであり適法なものである。

 

4 結 語

以上のとおり、本件処分は、条例の規定に基づき適正に行われたものであり、何ら違法又は不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。

 

第六 審査会の判断

 

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、一方では公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第2条第1項に規定する行政文書に記録されている場合には、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。

 

2 評価・育成システムにおける評価事務及び苦情の審査事務について

  本件業務については、実施機関の説明から、次のとおり認められる。

 

   実施機関は、地方公務員法第40条第1項に規定する勤務評定として、平成16年度から評価・育成システムを実施し、平成19年度から、その評価結果を給与に反映させている。

評価では、教職員の自己申告を踏まえ、設定された個人目標の達成状況を「業績評価」として評価し、また、職務全般の取組みを対象に、教職員の日常の業務の遂行を通じて発揮された能力を「能力評価」として評価する。その上でこれらの評価をもとに「総合評価」が行われる。

業績評価、能力評価及び総合評価は、いずれも、A・B・Cの3段階を基本にS・Dを加えた5段階(S・A・B・C・D)の絶対評価でなされ、その結果は年度末に本人に開示される。

評価の基準や方法は、あらかじめ明らかにされるとともに、評価の結果に納得できない教職員は、苦情申出制度として設置される苦情審査会に苦情を申立てることができる。

苦情審査会は、実施機関の職員5名から成る委員で構成され、会長は、教育監の職にある者をもって充てることとされている。

苦情審査会の審査は、上記の委員が、苦情申出書、苦情審査会事務局の調査員が評価者から聴取して作成した調書(要領第2号様式)及び苦情申出者の希望により事情聴取に同席した職員団体役員その他府職員1名が苦情申出者の評価結果に関し提出できる第三者の意見書に基づいて(要領第4(2))、申出事案に係る評価結果が、事実に基づき、評価基準等に照らして評価されているかどうかを審査するものであり(要領第4(1))、審査の結果は、苦情申出者及び評価者にそれぞれ文書で通知され(要綱第8条第3項、要領第4(4))、この通知をもって苦情対応が終了する(要綱第9条第1項)。

 

3 本件決定に係る具体的な判断及びその理由について

(1)条例第2条第1項について

行政文書公開請求の対象となる「行政文書」の定義については、条例第2条第1項に「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画、写真及びスライド並びに電磁的記録であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が管理しているもの」をいう旨規定されている。

「職務上」とは、実施機関の職員が、法令、条例、規則、規程、訓令、通達等により、与えられた任務又は権限を、その範囲内において処理することをいう。

「実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が管理しているもの」とは、作成又は取得に関与した職員個人のものではなく、組織としての共用文書の実質を備えた状態、すなわち、当該実施機関の組織において、業務上必要なものとして利用又は保存されている状態のものを意味する。

したがって、職員が自己の執務の便宜のために保有する複写物や個人的なメモで未だ組織的な検討に付されていないものなど専ら当該職員のみが利用するに過ぎないものはこれに該当しないが、職員が個人の判断で作成したものであっても、所管の組織において、複数の職員による検討に付され、その結果、これらの者が共用するに至ったもの、当該職員が関与した会議又は応接等の事務の記録であって、必要に応じて他の職員が利用することとなるものなど、実施機関の組織において業務上必要なものとして利用又は保存されているものは、「実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が管理しているもの」に該当すると解すべきである。

 

(2)本件決定の妥当性について

  ア 実施機関が「メモなど」に係る部分につき不存在による非公開決定をするに至った事情

    実施機関から聴取した結果により、以下のことが認められる。

実施機関は、実施機関の評価・育成システムに基づく評価結果に対して、平成19年度に申し立てられた継続事案1件と平成20年度に新規に申し立てられた15件をあわせた、合計16件の苦情を審査するため、平成21年6月25日、7月28日及び8月25日の3回にわたり、苦情審査会を開催した。

苦情審査会では、それぞれの苦情案件について、苦情審査会事務局である教職員企画課職員の説明のもと、各委員が、苦情申出書等と調書を相互に見比べ、校長の行った評価が具体的事実に基づき、評価基準に照らして行われているかを合議し、審査会終了後、「審査結果通知書」により、審査結果を苦情申出者及び評価者に通知した。

審査の際には、事務局である教職員企画課の職員がメモをとっていたが、このメモは、担当職員が「苦情審査会 議事録」の原案を作成するための記憶の補助すなわち当該職員の備忘録であり、行政文書として組織的に管理されたり、決裁、回議されることもなく、「苦情審査会 議事録」及び「審査会の意見」が決裁を経て確定した後は、速やかに廃棄された。

以上の経過から、実施機関は、本件請求に係る「メモなど」については、教職員企画課職員が備忘録として記録したものと考えられるところ、当該記録は廃棄したことにより既に存在せず、また、本件決定と同時に行った部分公開決定で異議申立人に公開したもの以外には議事録は作成していないとして、本件不存在決定を行ったものである。

   イ アに記載した文書特定の考え方の妥当性について

実施機関によるア記載の説明について、当審査会として、特段、不自然な点は認められず、ほかに、本件不存在決定に係る情報が記録された行政文書が存在すると考えられる状況も見受けられなかった。

苦情審査会の事務局職員が作成する備忘録としてのメモは、実施機関の職員が組織的に用いるものとして、実施機関により管理されることはなく、審査結果等が決裁された後

  は速やかに廃棄されているのが現状である。本件不存在決定に係るメモもまた、実施機関の組織共用文書として管理された実態はなく、すでに廃棄されているため、開示請求の対象とはなり得ない。

なお、異議申立人は、「議事録」の記載内容について、発言者が不明である「議事録」は一般的には議事録と言えず、また、「議事録」の作成後に職員が作成した「メモ」の廃棄が許されるのであれば、議事録の二重帳簿状態を認めることになり、苦情審査会運営の公平性、客観性、透明性の確保に関わる問題であると主張する。これらの主張については、公開された議事録を検討したところ、簡略に過ぎると思われる記載になっており、実施機関は、条例の趣旨にできるだけかなった文書作成に努めることなど改善の余地があるようにも思われるが、本件不存在決定に係る行政文書が存在するか否かについての判断に影響するものではない。

したがって、実施機関は、本件開示請求の時点においては、本件開示請求のうち本件不存在決定の対象となった部分に対応する行政文書を保有していなかったと認められ、本件不存在決定は、妥当である。

 

4 結 論

以上のとおりであるから、本件異議申立てには理由がなく「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

 

  (主に調査審議を行った委員の氏名)

   鈴木秀美、岩本洋子、大和正史、野呂充

 

このページの作成所属
府民文化部 府政情報室情報公開課 情報公開グループ

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