大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第193号)

更新日:2010年9月17日

大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第193号)

〔府税事務所歳入歳出証拠書部分公開決定異議申立事案〕

(答申日 平成22年9月17日)

  

第一 審査会の結論

   実施機関は、

本件異議申立ての対象となった部分公開決定において公開しないこととした部分のうち、別表「公開すべき部分」に掲げる部分を公開すべきである。

実施機関のその余の判断は妥当である。

 

 第二 異議申立ての経過

 1 平成20年8月18日、異議申立人は、大阪府知事(以下「実施機関」という。)に対し、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、「大阪府なにわ西府税事務所の所長A(原文実名)ないし大阪府徴税吏員B(原文実名)が関係した歳入証拠書及び歳出証拠書(収入又は支出の事由が平成20年1月1日から5月1日の間に発生したもの)」についての行政文書公開請求(以下「本件請求」)を行った。

 2 同年9月1日、実施機関は、本件請求に対応する行政文書として、下記(1)の文書(以下「本件行政文書」という。)を特定のうえ、下記(2)に示す部分(以下「本件非公開部分」という。)を除いて公開するとの部分公開決定(以下「本件決定」という。)を行い、公開しない理由を下記(3)のとおり付して異議申立人に通知した。

(1)行政文書の名称

 大阪府なにわ西府税事務所に係る下記の文書(平成20年1月1日から5月1日まで)

ア 歳入証拠書関係

(ア)収入決算月計表、月計対照表

(イ)調定通知伺書

(ウ)歳入戻出命令伺書、還付金支出明細書、還付金支出内訳書、還付充当調書

(エ)充当命令伺書、充当明細書、充当内訳書、還付充当調書

(オ)管外隔地払送金小切手支出先変更伺、歳入戻出取消命令伺書、歳入戻出命令伺書

(カ)振替命令伺書、総括内訳書、配当計算書、充当計算書

(キ)不納欠損通知伺書、不納欠損決議書

イ 歳出証拠書関係

(ア)    支出決算月計表、月計対照表

(イ)    支出命令伺書、還付金支出内訳書、還付充当調書

(ウ)    充当命令伺書、充当明細書、充当内訳書、還付充当調書

(2)公開しないことと決定した部分

  ア 納税者等の法人名、個人名、住所

  イ 銀行名、支店名、口座番号

  ウ 通知書番号

  エ 徴収簿番号、登録番号

  オ 納税者番号

  カ 滞納者番号

  キ 滞納事案番号

  ク 財産等の名称及び所在

(3)公開しない理由

  ア 条例第8条第1項第1号に該当する。

    本件行政文書(非公開部分)には、納税者等である法人の名称、住所、口座情報及びこれらを特定し得る事項が記載されており、これらを公にすることにより、当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められる。

  イ 条例第9条第1号に該当する。

    本件行政文書(非公開部分)には、納税者等である個人の氏名、住所、口座情報等及びこれらを特定し得る事項が記載されており、これらは、特定の個人が識別される個人のプライバシーに関する情報であって、特定の個人が識別され得るもののうち一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる。

3 同年10月16日、異議申立人は、本件決定を不服として行政不服審査法第6条の規定により、本件決定の取り消しを求める異議申立てを行った。

 

三 異議申立ての趣旨

 本件決定を取り消し、全部公開を求める。

  

第四 異議申立人の主張要旨

 異議申立人の主張は、次のとおりである。

個人情報やプライバシー権を名目にして、なにわ西府税事務所が部落解放同盟と関わる企業にだけ便宜を図っている事実を非公開にすることは許されない。

  

第五 実施機関の主張要旨

 実施機関の主張は概ね次のとおりである。

1 本件請求について

   本件請求については、事前に「大阪府なにわ西府税事務所のAとBの両名のいずれか1名が関係する府税の歳入、歳出に関する証拠書を平成20年1月1日から5月1日まで全て請求したい」旨の問合せが電話であり、当該職員の関係した証拠書は大量となるため、公開を希望する具体的な文書名について確認したところ、庶務的な文書ではなく、当該職員いずれかが関係する府税に関する証拠書を公開請求したいという申し出であった。

   このため、本件請求に対応する行政文書として、大阪府なにわ西府税事務所において管理している府税に関する歳入・歳出に係るものを抽出したものである。

 

 2 府税事務所における歳入証拠書及び歳出証拠書について

   大阪府税における歳入・歳出事務手続きは、地方税法(昭和25年法律第226号)及び地方税法施行令(昭和25年政令第245号)並びに大阪府税条例(昭和25年条例第75号)、大阪府税規則(昭和36年大阪府規則第26号)、大阪府財務規則(昭和55年大阪府規則第48号。以下「財務規則」という。)等の関係法令に基づき行われている。

   そして、財務規則第174条第1項第1号及び第4号において、歳入証拠書は、調定伺書、調定取消伺書、調定減額伺書、戻出命令伺書、収入更正伺書、不納欠損処分をしたときの決裁書とされ、同条第2項第1号、第3号及び第5号において、歳出証拠書は、支出命令伺書、支出命令取消伺書、支出更正伺書、領収書、戻入調定伺書とされている。

   また、同条第3項において、歳入証拠書及び歳出証拠書には、その算定の根拠となる書類その他必要な書類を添付しておかなければならないとされている。

 

3 本件行政文書について

   大阪府なにわ西府税事務所において管理している、異議申立人から請求があった期間及び関与者に係る歳入証拠書及び歳出証拠書は、次のとおりである。

(1)歳入証拠書関係

ア 収入決算月計表、イ 月計対照表、ウ 調定通知伺書、エ 歳入戻出命令伺書、オ 還付金支出明細書、カ 還付金支出内訳書、キ 還付充当調書、ク 充当命令伺書、ケ 充当明細書、コ 充当内訳書、サ 還付充当調書、シ 管外隔地払送金小切手支出先変更伺、ス 歳入戻出取消命令伺書、セ 歳入戻出命令伺書、ソ 振替命令伺書、タ 総括内訳書、チ 配当計算書、ツ 充当計算書、テ 不納欠損通知伺書、ト 不納欠損決議書

(2)歳出証拠書関係

ア 支出決算月計表、イ 月計対照表、ウ 支出命令伺書、エ 還付金支出内訳書、オ 還付充当調書、カ 充当命令伺書、キ 充当明細書、ク 充当内訳書、ケ 還付充当調書

 

4 本件決定の適法性について

(1)条例第8条第1項第1号に該当することについて

   ア 条例第8条第1項第1号について

     条例第8条第1項第1号においては、法人(国、地方公共団体、独立行政法人等、地方独立行政法人、地方住宅供給公社、土地開発公社及び地方道路公社その他の公共団体(以下「国等」という。)を除く)その他の団体(以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等の又は当該個人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの(人の生命、身体若しくは健康に対し危害を及ぼすおそれのある事業活動又は人の生活若しくは財産に対し重大な影響を及ぼす違法な若しくは著しく不当な事業活動に関する情報(以下「例外公開情報」という。)を除く。)に該当する情報が記載されている行政文書を公開しないことができる旨の規定が設けられている。

   イ 条例第8条第1項第1号に該当することについて

 本件行政文書(非公開部分)には、納税者である法人又は事業を営む個人の名称、住所、銀行口座情報及びこれらを特定し得る情報が記載されており、公にすることにより、当該法人等が特定の時期に府税の納付、申告等を行ったこと、若しくは府税の還付を受けたこと、当該法人等の取引先金融機関等、が明らかとなる。このような法人等の事業活動に関する具体的な情報は、通常一般に公開されているものではなく、これらの情報を公開すると、当該法人等の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められることから、条例第8条第1項第1号に該当するものである。

 また、これらの情報を開示することにより、納税意欲にも悪影響を及ぼし、納税者との信頼関係を損ねるなど、円滑な税務事務の遂行に著しい支障を来すこととなる。 

(2)条例第9条第1号に該当することについて

  ア 条例第9条第1号について

     条例第9条第1号においては、

(ア)個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、

(イ)特定の個人が識別され得るもののうち、

(ウ)一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる

という条件に該当する情報が記載されている行政文書を公開してはならないと規定している。

  イ 条例第9条第1号に該当することについて

 本件行政文書(非公開部分)には、納税者である個人の名称、住所、口座情報及びこれらを特定し得る情報が記載されており、公にすることにより、当該個人が特定の時期に府税の申告、納付等を行ったこと、若しくは府税の還付を受けたこと、当該個人の取引先金融機関等、が明らかとなる。

 これらの情報は、当該納税者又は当該債権者である個人の財産等に関するプライバシー情報であり、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められることから、納税者が特定され、又は特定され得る上記の情報は、条例第9条第1号に該当するものである。

 また、これらの情報を開示することより、納税意欲にも悪影響を及ぼし、納税者との信頼関係を損ねるなど、円滑な税務事務の遂行に著しい支障を来すこととなる。

 

 5 結論

   以上のとおり、本件部分公開決定は、条例に基づき適正に行われたものであり、何ら違法、不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。

 

 

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

 行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより、「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

 このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

 このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第2条第1項に規定する行政文書に記録されている場合には、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならないのである。

 

2 府税事務所における府税の歳入・歳出業務について

  府税事務所においては、地方税法(昭和25年法律第226号)及び地方税法施行令(昭和25年政令第245号)並びに大阪府税条例(昭和25年条例第75号)、大阪府税規則(昭和36年大阪府規則第26号)、大阪府財務規則(昭和55年大阪府規則第48号。以下「財務規則」という。)等の関係法令に基づき、府税の歳入・歳出手続きを行っている。

  歳入証拠書は、財務規則第174条第1項第1号及び第4号により、調定伺書、調定取消伺書、調定減額伺書、戻出命令伺書、収入更正伺書、不納欠損処分をしたときの決裁書とされており、それぞれ様式が定められている。歳出証拠書は、同条第2項第1号、第3号及び第5号により、支出命令伺書、支出命令取消伺書、支出更正伺書、領収書、戻入調定伺書とされており、それぞれ様式が定められている。

  さらに、同条第3項において、歳入証拠書及び歳出証拠書には、その算定の根拠となる書類その他必要な書類を添付しておかなければならないとされている。

 

3 本件行政文書について

 本件行政文書は、大阪府なにわ西府税事務所の特定の職員が関係している府税に関する歳入証拠書及び歳出証拠書のうち、収入又は支出の事由が平成20年1月1日から同年5月1日の間に発生したものである。具体的には、下記のとおりである。

(1)歳入証拠書関係

ア 収入決算月計表、月計対照表

イ 調定通知伺書

ウ 歳入戻出命令伺書、還付金支出明細書、還付金支出内訳書、還付充当調書

エ 充当命令伺書、充当明細書、充当内訳書、還付充当調書

オ 管外隔地払送金小切手支出先変更伺、歳入戻出取消命令伺書、歳入戻出命令伺書

カ 振替命令伺書、総括内訳書、配当計算書、充当計算書

キ 不納欠損通知伺書、不納欠損決議書

(2)歳出証拠書関係

ア 支出決算月計表、月計対照表

イ 支出命令伺書、還付金支出内訳書、還付充当調書

ウ 充当命令伺書、充当明細書、充当内訳書、還付充当調書

 

4 本件決定に係る具体的な判断及びその理由

 異議申立人は本件行政文書の全部公開を求めているので、以下検討する。

(1)条例第8条第1項第1号について

事業を営む者の適正な活動は、社会の維持存続と発展のために尊重、保護されなければならないという見地から、社会通念に照らし、競争上の地位を害すると認められる情報その他事業を営む者の正当な利益を害すると認められる情報は、営業の自由の保障、公正な競争秩序の維持等のため、公開しないことができるとするのが本号の趣旨である。

同号は、

ア 法人・・・その他の団体(以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、

イ 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの(人の生命、身体若しくは健康に対し危害を及ぼすおそれのある事業活動又は人の生活若しくは財産に対し重大な影響を及ぼす違法な若しくは著しく不当な事業活動に関する情報を除く。)

が記録された行政文書は、公開しないことができる旨定めている。

また、本号の「競争上の地位を害すると認められるもの」とは、生産技術上又は営業上のノウハウや取引上、金融上、経営上の秘密等公開されることにより、公正な競争の原理に反する結果となると認められるものをいい、「その他正当な利益を害すると認められるもの」とは、公開されることにより、事業を営む者に対する名誉侵害や社会的評価の不当な低下となる情報及び団体の自治に対する不当な干渉となる情報等必ずしも競争の概念でとらえられないものをいうと解されるが、これらの具体的な判断に当たっては、当該情報の内容のみでなく、当該事業を営む者の性格や事業活動における当該情報の位置づけ等も考慮して、総合的に判断すべきものである。

(2)本件非公開部分の条例第8条第1項第1号該当性について

本件非公開部分に記録されている情報のうち、実施機関が本号を適用して公開しないことと決定した情報は、「納税者等の法人名、事業を営む個人名、住所」、「納税者等である法人、事業を営む個人にかかる銀行名、支店名、口座番号」、「通知書番号」、「徴収簿番号」、「登録番号」、「納税者番号」、「滞納者番号」、「滞納事案番号」及び「財産等の名称及び所在」である。

 これらの情報は、法人又は事業を営む個人(以下「事業者」という。)に関する情報であり、(1)アの要件に該当する。

 次に、これらの情報が(1)イの要件に該当するかどうかについて検討する。

ア 納税者等の事業者名、住所

  本項の情報を公にすると、特定の事業者にかかる府税の納付額や滞納額などが明らかとなり、このような情報は、通常、専ら当該事業者の内部において管理され利用されているものであり、本項の情報を公にすることにより、当該事業者の当該年度の経営状況や財務状況の詳細を推測することが可能となり、当該事業者の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められ、(1)イの要件に該当する。

イ 納税者等である事業者にかかる銀行等金融機関名、支店名、口座番号

  本項の情報は、専ら当該事業者の内部において管理され利用されているものであり、これらを公にすることにより、当該事業者の取引上の利益その他正当な利益を害すると認められ、(1)イの要件に該当する。

  ただし、歳入戻出命令伺書、還付金支出内訳書、還付充当調書及び支出命令伺書において、納税者等の事業者名、住所等の情報を公開しないものとするが、非常に過疎な地域でないかぎり事業者を特定することは不可能であるため、銀行等金融機関名を公開(支店名は非公開)したとしても(1)イの要件に該当しない。

ウ 通知書番号

  実施機関の説明によると、本項の情報は、還付充当通知書ごとに割り振られるものであって、通知を受ける事業者のみが知り得る番号であることが認められた。通知を受けた事業者は、府税事務所にこの番号を告げて自己に関する情報を確認することができるため、この情報を公にすることにより、当該事業者の納税に関する情報が、電話等での問合せを通じて漏れるおそれがあり、当該事業者の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められ、(1)イの要件に該当する。

エ 徴収簿番号

  実施機関の説明によると、本項の情報は、自動車税を除く税目で課税税目等ごとに割り振られるものであって、通知を受ける事業者のみが知り得る番号であることが認められた。通知を受けた事業者は、府税事務所にこの番号を告げて自己に関する情報を確認することができるため、この情報を公にすることにより、当該事業者の納税に関する情報が、電話等での問合せを通じて漏れるおそれがあり、当該事業者の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められ、(1)イの要件に該当する。

オ 登録番号

  実施機関の説明によると、本項の情報は、自動車税において、課税対象となる自動車を識別する番号であり、ナンバープレートと同一番号を使用していることが認められた。そのため、この情報を公にすることにより、還付・充当、滞納の事実等が漏れるおそれがあり、当該事業者の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められ、(1)イの要件に該当する。

カ 納税者番号

  実施機関の説明によると、本項の情報は、自動車税を除く税目で事業者ごとに割り振られるものであって、通知を受ける事業者のみが知り得る番号であることが認められた。通知を受けた事業者は、府税事務所にこの番号を告げて自己に関する情報を確認することができるため、この情報を公にすることにより、当該事業者の納税に関する情報が、電話等での問合せを通じて漏れるおそれがあり、当該事業者の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められ、(1)イの要件に該当する。   

キ 滞納者番号

  実施機関の説明によると、本項の情報は、滞納事案における事業者ごとに割り振られるものであって、通知を受ける滞納者のみが知り得る番号であることが認められた。滞納者は、府税事務所にこの番号を告げて自己に関する情報を確認することができるため、この情報を公にすることにより、滞納者に関する情報が、電話等での問合せを通じて漏れるおそれがあり、当該事業者の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められ、(1)イの要件に該当する。

ク 滞納事案番号

  実施機関の説明によると、本項の情報は、滞納事案について、担当する事務所等ごとに割り振られるものであって、通知を受ける滞納者のみが知り得る番号であることが認められた。滞納者は、府税事務所にこの番号を告げて自己に関する情報を確認することができるため、この情報を公にすることにより、滞納者に関する情報が、電話等での問合せを通じて漏れるおそれがあり、当該事業者の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められ、(1)イの要件に該当する。

ケ 財産等の名称及び所在

 実施機関の説明によると、本項の情報は、滞納者から差押えした財産等にかかる情報であり、これらの情報を公にすることにより、当該事業者の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められ、(1)イの要件に該当する。

 ただし、「管外隔地払送金小切手(返戻分)に係る差押通知書の受理に伴う支出先変更について」における伺い文中、「歳入戻出命令伺書」及び「振替命令書」中の配当計算書の「換価財産等の名称、数量及び所在」における、(a)国、府、市町村の機関名と(b)換価財産の一般的な名称(「普通預金」、「宅地」、「電話加入権」等)については、納税者等の事業者名、住所等の情報を公開しないのであるから、事業者を特定することは不可能であるため、(1)イの要件に該当しない。

(3)条例第9条第1号について

  条例は、その前文で、府の保有する情報は公開を原則としつつ、個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護する旨宣言している。また、第5条において、個人のプライバシーに関する情報をみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなければならない旨規定している。

  このような趣旨を受けて、個人のプライバシーに関する情報の公開禁止について定めたのが条例第9条第1号である。

同号は、

ア 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、

イ 特定の個人が識別され得るもののうち、

ウ 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる

情報が記録された行政文書については公開してはならないと定めている。

(4)本件非公開部分の条例第9条第1号該当性について

本件非公開部分に記録されている情報のうち、実施機関が本号を適用して公開しないことと決定した情報は、「納税者等の個人名、住所」、「納税者等である個人にかかる銀行名、支店名、口座番号」、「通知書番号」、「徴収簿番号」、「登録番号」、「納税者番号」、「滞納者番号」、「滞納事案番号」及び「財産等の名称及び所在」である。

 これらの情報は、納税者等である個人(以下「納税者」という。)の財産や所得等に関する情報であり、(3)アの要件に該当する。

 次に、これらの情報が(3)イ及びウの要件に該当するかどうかについて検討する。

ア 納税者等の個人名、住所

  本項の情報は、特定の個人が識別され得る情報であり、(3)イの要件に該当する。本項の情報を公にすると、特定の納税者にかかる府税の納付額や滞納額などが明らかとなり、このような財産に係る情報は、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められ、(3)ウの要件にも該当する。

イ 納税者等である個人にかかる銀行等金融機関名、支店名、口座番号

  本項の情報は、特定の個人が識別され得る情報であり、(3)イの要件に該当する。また、このような個人の財産に係る情報は、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められ、(3)ウの要件にも該当する。

ただし、歳入戻出命令伺書、還付金支出内訳書、還付充当調書及び支出命令伺書において、納税者等の氏名、住所等の情報を公開しないものとするが、非常に過疎な地域でないかぎり納税者等個人を特定することは不可能であるため、銀行等金融機関名を公開(支店名は非公開)としても(3)イの要件に該当しない。

ウ 通知書番号

  実施機関の説明によると、本項の情報は、還付充当通知書ごとに割り振られるものであって、通知を受ける納税者のみが知り得る番号であることが認められた。通知を受けた納税者は、府税事務所にこの番号を告げて自己に関する情報を確認することができる。そのため、本項の情報は特定の個人が識別され得る情報であり、(3)イの要件に該当する。本項の情報を公にすると、特定の納税者にかかる府税の納付額や滞納額などが、電話等での問合せを通じて明らかとなり、このような財産に係る情報は、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められ、(3)ウの要件にも該当する。

エ 徴収簿番号

  実施機関の説明によると、本項の情報は、自動車税を除く税目で課税税目等ごとに割り振られるものであって、通知を受ける納税者のみが知り得る番号であることが認められた。通知を受けた納税者は、府税事務所にこの番号を告げて自己に関する情報を確認することができる。そのため、本項の情報は特定の個人が識別され得る情報であり、(3)イの要件に該当する。本項の情報を公にすると、特定の納税者にかかる府税の納付額や滞納額などが、電話等での問合せを通じて明らかとなり、このような財産に係る情報は、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められ、(3)ウの要件にも該当する。   

オ 登録番号

  実施機関の説明によると、本項の情報は、自動車税において、課税対象となる自動車を識別する番号であり、ナンバープレートと同一番号を使用していることが認められた。そのため、本項の情報は特定の個人が識別され得る情報であり、(3)イの要件に該当する。本項の情報を公にすることにより、還付・充当、滞納の事実等が漏れるおそれがあり、このような情報は、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められ、(3)ウの要件にも該当する。

カ 納税者番号

  実施機関の説明によると、本項の情報は、自動車税を除く税目で納税者ごとに割り振られるものであって、通知を受ける納税者のみが知り得る番号であることが認められた。通知を受けた納税者は、府税事務所にこの番号を告げて自己に関する情報を確認することができる。そのため、本項の情報は特定の個人が識別され得る情報であり、(3)イの要件に該当する。本項の情報を公にすると、特定の納税者にかかる府税の納付額や滞納額などが、電話等での問合せを通じて明らかとなり、このような財産に係る情報は、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められ、(3)ウの要件にも該当する。

キ 滞納者番号

  実施機関の説明によると、本項の情報は、滞納事案における納税者ごとに割り振られるものであって、通知を受ける滞納者のみが知り得る番号であることが認められた。滞納者は、府税事務所にこの番号を告げて自己に関する情報を確認することができる。そのため、本項の情報は特定の個人が識別され得る情報であり、(3)イの要件に該当する。本項の情報を公にすると、特定の納税者にかかる府税の納付額や滞納額などが、電話等での問合せを通じて明らかとなり、このような財産に係る情報は、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められ、(3)ウの要件にも該当する。

ク 滞納事案番号

  実施機関の説明によると、本項の情報は、滞納事案について、担当する事務所等ごとに割り振られるものであって、通知を受ける滞納者のみが知り得る番号であることが認められた。滞納者は、府税事務所にこの番号を告げて自己に関する情報を、電話等での問合せを通じて確認することができる。そのため、本項の情報は特定の個人が識別され得る情報であり、(3)イの要件に該当する。本項の情報を公にすると、特定の納税者にかかる府税の納付額や滞納額などが明らかとなり、このような財産に係る情報は、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められ、(3)ウの要件にも該当する。

ケ 財産等の名称及び所在

 本項の情報は、特定の個人が識別され得る情報であり、(3)イの要件に該当する。また、特定の滞納者から差押えした財産に係る情報は、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められ、(3)ウの要件にも該当する。

 ただし、「管外隔地払送金小切手(返戻分)に係る差押通知書の受理に伴う支出先変更について」における伺い文中、「歳入戻出命令伺書」及び「振替命令書」中の配当計算書の「換価財産等の名称、数量及び所在」における、(a)国、府、市町村の機関名と(b)換価財産の一般的な名称(「普通預金」、「宅地」、「電話加入権」等)については、納税者等の氏名、住所等の情報を公開しないのであるから、納税者等個人を特定することは不可能であるため、(3)イの要件に該当しない。

 

5 結 論

 以上のとおりであるから、本件異議申立ては、本件決定のうち、下記の別表に係る情報の公開を求める部分については理由があり、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

 

別表 公開すべき部分

文書名

公開すべき部分

歳入戻出命令伺書、還付金支出内訳書、還付充当調書及び支出命令伺書

銀行等金融機関名(ただし、非常に過疎な地域に所在する機関名は除く。また、支店名は非公開。)

(a)「管外隔地払送金小切手(返戻分)に係る差押通知書の受理に伴う支出先変更について」における伺い文及び歳入戻出命令伺書

(b)「振替命令書」の配当計算書(「換価財産等の名称、数量及び所在」欄)

(a)国、府、市町村の機関名

(b)換価財産の一般的な名称(「普通預金」、「宅地」、「電話加入権」等)

 (主に調査審議を行った委員の氏名)

 岡村周一、福井逸治、松田聰子、山口孝司

このページの作成所属
府民文化部 府政情報室情報公開課 情報公開グループ

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