大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第185号)

更新日:2010年3月30日

大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第185号)

知事メール部分公開決定異議申立事案

(答申日 平成22年3月30日)

 

 第一 審査会の結論

実施機関の決定は妥当である。

 

 第二 異議申立ての経緯

 1 平成20年12月3日、異議申立人は、大阪府知事(以下「実施機関」という。)に対し、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、「橋下知事が各部長宛てに発信されたメール(ただし平成20年10月分)」についての公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。

 

2 同年12月17日、実施機関は、本件請求に対応する行政文書として、「10月3日送信の件名『RE:私学助成の増額分』」ほか29件(以下「本件行政文書」という。)を特定の上、(1)の部分(以下「本件非公開部分」という。)を除いて公開するとの部分公開決定(以下「本件決定」という。)を行い、公開しない理由を(2)のとおり付して異議申立人に通知した。

(1)公開しないことと決定した部分

・ 個人のメールアドレス(ただし、公用アドレスを除く)

・ 「知事の私設秘書」及び「知事が個人的に意見の提供を受けた有識者」の氏名

(2)公開しない理由

条例第9条第1号に該当する。

本件行政文書(非公開部分)には、個人のメールアドレス並びに知事の私設秘書及び知事が個人的に意見の提供を受けた有識者の氏名が記載されており、この情報は、特定の個人のプライバシーに関する情報であって、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる。

 

3 平成21年1月22日、異議申立人は、本件決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に異議申立てを行った。

 

4 同年3月27日、実施機関は公開しないこととした部分のうち、「知事の私設秘書の氏名」については公開する旨の決定を行った。

 

 

第三 異議申立ての趣旨

知事が個人的に意見の提供を受けた有識者の氏名について非公開とした決定の取り消しを求める。

 

 第四 異議申立人の主張要旨

異議申立人の主張は、概ね次のとおりである。

 

1 本件異議申立ての争点について

異議申立てを行った当初は、

ア 知事の私設秘書及び知事が個人的に意見の提供を受けた有識者の氏名について非公開として決定の取り消しを求める。

  イ 1対1メールを対象から除外したこと及び部分公開された30通以外の削除されたメールについての説明、判断及び決定を行うこと。

の2点が異議申立ての趣旨であった。

しかしその後、知事のメール公開に関する積極公開の姿勢や公開基準の設置、廃棄されたとする平成20年9月以前のメールの存在が確認されたこと、公開請求で一旦公開されたメールはファイルで公開され閲覧可能であることなど、異議申立てを行った時点とは状況が大きく変わったことや、知事自ら積極的かつ迅速に公開の方向で対応した結果、本件異議申立ての対象であった私設秘書名もすでに公開されたことなどから、最終的に本件異議申立ての争点は「知事が個人的に意見の提供を受けた有識者の氏名」を非公開としたことのみとする。

 2 知事が個人的に意見の提供を受けた有識者の氏名について

(1)「知事が個人的に意見の提供を受けた有識者の氏名」は、条例第9条第1号で定めている「適用除外」情報に該当しない。知事への提言・意見等の提供は、基本的にオープンにされるべきものであり、提供者の氏名が直ちに「プライバシーに関する情報で一般に他人に知られたくないと望むことが正当である」に該当しない。府政に対する意見の提供は、一般に当該機関で審議されるべき情報であり、意見の提供者名を非公開にする必要はない。「知事への意見提供が、他人に名前を知られたくない」とすること自体、不正や利権への疑惑を招く元となる。提供される論文の公開に時期的制約があるとしても、むしろ第11条に該当する情報として公開されるべきである。知事への意見を提供する有識者の氏名は、一般に他人に知られたくないと望むことが正当なプライバシー情報にはあたらない。

(2)このメールの内容は、「公立病院改革」に関するもので、府民の生活に深く関わることであり、パブリックコメント終了後の審議に入る段階に進んでいることがわかる。非公開とされた有識者の論文をレクチャーの資料に使用し、セカンドオピニオンとして庁内の議論に提供することを知事が明言している。病院改革の議論の経過を経て、まとめや結果に反映され、いずれ府民に説明の義務が課せられ、明らかになることである。有識者の意見提供がどのようにプライバシーにあたるのかの具体的な説明もない。

   むしろ、「内々に頂戴」し、内々で特別に扱われることこそ公正な行政とは見えず、不透明な印象を与え、府政への不信を招き情報公開制度に反することになると考えられる。そのことは、知事のこれまでの情報公開に対する姿勢にも反することになる。

   よって「10月25日付知事から健康福祉部長笹井康典宛のメール中の非公開部分」について非公開を取り消し、有識者として堂々と府政に対する意見が公開されることこそ条例に適う判断である。

 

 第五 実施機関の主張要旨

実施機関の主張は概ね次のとおりである。

 1 本件係争部分を非公開とした判断が妥当であることについて

(1)条例第9条第1号について

条例第9条第1号においては、

ア 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、

イ 特定の個人が識別され得るもののうち、

ウ 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる

情報が記録されている行政文書を公開してはならないと規定している。

また、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当と認められるもの」とは、社会通念上、他人に知られることを望まないものをいうと解される。

(2)本件係争部分が条例第9条第1号に該当することについて

本件係争部分に記録されている情報は、「知事が個人的に意見の提供を受けた有識者の氏名」であり、特定の個人が特定の意見を知事に提供したことが明らかとなる情報であることから、特定の個人の思想等に関する情報として、(1)ア及びイの要件に該当することは明らかである。

また、本件の有識者は、府と特別な関係を有しない個人であり、専ら知事との個人的な関係に基づいて意見を提供したものである。このように個人的な関係に基づいて意見を提供したという事実については、社会通念上、他人に知られることを望まないものであり、(1)ウの要件にも該当する。

以上のことから、本件係争部分に記録されている情報は、条例第9条第1号に該当し、公開することができないと判断した。

 

2 結論

以上のとおり、本件決定は、条例の規定に基づき適正に行われたものであり、何ら違法又は不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。

  

第六 審査会の判断理由

 1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより、「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第2条第1項に規定する行政文書に記録されている場合には、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならないのである。

 

2 本件決定に係る具体的な判断及びその理由について

 本件非公開部分のうち、「個人のメールアドレス(ただし、公用アドレスを除く)」については本件異議申立ての対象となっておらず、「知事の私設秘書の氏名」については、平成21年3月27日に実施機関が公開する旨の決定を行っている。

そこで、実施機関が条例第9条第1号に該当すると主張しているのに対し、異議申立人は同号には該当しないと主張している「知事が個人的に意見の提供を受けた有識者の氏名」について、以下検討する。

(1)条例第9条第1号について

条例は、その前文で、府の保有する情報は公開を原則としつつ、個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護する旨宣言している。また、第5条において、個人のプライバシーに関する情報をみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなければならない旨規定している。

このような趣旨を受けて、個人のプライバシーに関する情報の公開禁止について定めたのが条例第9条第1号である。

同号は、

 ア 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、

イ 特定の個人が識別され得るもののうち、

 ウ 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる

情報が記録された行政文書については公開してはならないと定めている。

(2)条例第9条第1号該当性について

「知事が個人的に意見の提供を受けた有識者の氏名」は、知事に意見を提供した個人の氏名であり、(1)ア及びイに該当する。

次に、(1)ウの該当性について検討する。

本件行政文書中に記載されている「知事が個人的に意見の提供を受けた有識者」は、大阪府から何らかの委員の委嘱を受けているなど、大阪府と特別な関係を有する者ではない。職務としてではなく、知事との個人的な関係に基づいて意見を提供したものであれば、一般住民からの提言の場合と同様の扱いにすべきである。

通常、知事に提言を行った者の氏名は、あらかじめ公開されることが前提で意見を提供している場合を除いて、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるものである。

したがって、「知事が個人的に意見の提供を受けた有識者の氏名」は(1)ウにも該当し、非公開とするのが妥当である。

 

3 結論

以上のとおりであるから、本件異議申立てには理由がなく、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

 

 

(主に調査審議を行った委員の氏名)

  岡村周一、福井逸治、松田聰子、山口孝司

 

このページの作成所属
府民文化部 府政情報室情報公開課 情報公開グループ

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