大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第181号)

更新日:2010年3月15日

大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第181号)

〔被留置者等の食料の購入に係る歳出証拠書部分公開決定審査請求事案〕

(答申日 平成22年1月8日)

 

 

第一 審査会の結論

  諮問実施機関(大阪府公安委員会)の判断は妥当である。

 

 

第二 審査請求の経過

 

 1 審査請求人は、平成20年12月4日、大阪府警察本部長(以下「実施機関」という。)に対し、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、「平成18年5月16日に大阪地方検察庁内同行室にて被収容者に出された昼食のカロリー栄養その日の昼食に関する一切の資料」と「同日、東警察署留置所にて被収容者に出された朝昼夕の食事に関する一切の資料(カロリー栄養を含む)」についての行政文書公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。

 

2 実施機関は、平成20年12月24日、本件請求に対応する行政文書として、次の(1)の文書(以下「本件行政文書」という。)を特定の上、「公開しないことと決定した部分」(以下「本件非公開部分」という。)及びそれぞれの「公開しない理由」を(2)のとおりとする部分公開決定(以下「本件決定」という。)を行い、審査請求人に通知した。

 (1)一部を公開することと決定した行政文書の名称

    被留置者等食料の購入に係る歳出証拠書及び食料簿

 (2)公開しないことと決定した部分及び公開しない理由

   ア 法人代表者の印影

   イ 債権者の取引金融機関情報

     (公開しない理由)

      本件行政文書(非公開部分)には、法人の代表者の印影及び債権者の取引金融機関情報が記録されており、これらを公にすることにより、取引の安全を害するなど、当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められることから、条例第8条第2項第1号(条例第8条第1項第1号)に該当する。

   ウ 警察電話番号

     (公開しない理由)

      本件行政文書(非公開部分)には、警察電話番号が記録されており、これは警察の連絡調整事務等に関する情報であって、公にすることにより、警察部内の事務連絡に支障を及ぼすおそれがあるため、当該若しくは同種の事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあることから、条例第8条第2項第1号(条例第8条第1項第4号)に該当する。

   エ 警部補(同相当職含む。)以下の警察職員の氏名及び印影

     (公開しない理由)

      本件行政文書(非公開部分)には、警部補(同相当職を含む。)以下の警察職員の氏名及び印影が記録されており、これらを公にすることにより、当該警察職員及びその家族等の生命、身体、財産等の保護に支障を及ぼすおそれがあることから、条例第8条第2項第3号に該当する。

3 審査請求人は、平成21年1月13日、本件決定を不服として、大阪府公安委員会(以下「諮問実施機関」という。)に対し、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第5条の規定により、審査請求を行った。

 

 

第三 審査請求の趣旨

  本件決定を取り消し、全部公開を求める。

 

 

第四 審査請求人の主張

  公開しないことにした部分が多くあるが、いずれも理由に正当性がない。

 

 

第五 諮問実施機関の主張要旨

  諮問実施機関の主張は、概ね次のとおりである。

 

1 実施機関の意見

 (1)被留置者等に対する食事の支給

    「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」(平成17年法律第50号)第186条には、被留置者等に対し食事を支給することが規定されている。

    本法律に基づき、実施機関においては、給食業者と被留置者等の食料の購入に係る契約を締結し、被留置者等に対し朝、昼、夕の3食の食事を支給している。また、被留置者等に食事を支給した際は、食料簿に食数を記載し、支給した食数を管理している。

 (2)本件行政文書

    本件行政文書は、「平成18年5月分の被留置者等食料の購入に係る歳出証拠書及び食料簿」であり、歳出証拠書には、支出命令の根拠となる契約書、請求書等が添付されている。

(3)本件決定の妥当性

   ア 条例第8条第2項第1号の該当性

     条例第8条第2項は、公安委員会と警察本部長が管理する行政文書の適用除外事項について定められたものである。本号は、条例第8条第1項第1号から第4号までの規定に該当する情報について、他の実施機関と同様に、公開しないことができる旨を定めている。

   (ア)条例第8条第1項第1号の該当性

条例第8条第1項第1号は、「法人、その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの」に該当する情報について規定している。

      本件非公開部分には、

       ○ 法人代表者の印影

       ○ 債権者の取引金融機関情報

     が記録されている。これらの情報を公開することは、取引の安全を害し、又は経営上の秘密が公開されることにより、公正な競争の原理や当該法人の正当な利益を侵害すると認められることから、条例第8条第1項第1号に該当するものである。

   (イ)条例第8条第1項第4号の該当性

      条例第8条第1項第4号は、「府の機関又は国等の機関が行う取締り、監督、立入検査、許可、認可、試験、入札、契約、交渉、渉外、争訟、調査研究、人事管理、企業経営等の事務に関する情報であって、公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるもの」に該当する情報について規定している。

      本件非公開部分には、警察電話番号が記録されている。この情報を公開することは、警察の捜査や事務を妨害しようとするものが、当該電話番号に電話をかけ続けるといった妨害行為に及んだ場合、当該警察の連絡・調整事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあることから、条例第8条第1項第4号に該当するものである。

   イ 条例第8条第2項第3号の該当性

  条例第8条第2項第3号は、「前2号に掲げるもののほか、公にすることにより、個人の生命、身体、財産等の保護に支障を及ぼすおそれがある情報」について規定している。これは、個人の生命、身体及び財産の保護に任じる警察の任務の特殊性(警察法第2条第1項)と保護すべき利益の重要性から、他の適用除外事項では非公開とすることができない情報について、警察独自の適用除外事項として定められたものである。

     警察官は、犯行現場や警察規制の現場で、被疑者や被規制者と対峙して、逮捕や規制という直接かつ強制的な活動を行うことを職務としているため、その相手方から反発、反感を招きやすく、攻撃の対象とされるおそれがある。

本件非公開部分には、警部補(同相当職を含む。)以下の警察職員の氏名及び印影が記録されている。これらの情報を公開することは、警察職員本人や家族に、襲撃等の危害を加えられるおそれがあることから、条例第8条第2項第3号に該当するものである。

 (4)実施機関の結論

以上のとおり、本件決定は条例の趣旨を踏まえて行われたものであり、何ら違法、不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。

 

2 諮問実施機関の意見

   本件非公開部分は、条例第8条に規定する公開しないことができる行政文書に該当するものであり、実施機関が条例第13条第1項の規定に基づいて行った本件決定に違法、不当はないものと考える。

 

 

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を促進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下であっても、一方では、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。

 

2 本件行政文書について

  本件行政文書及び本件非公開部分の明細は別表のとおりであり、審査請求人は、本件非公開部分の全部について、公開を求めている。

  本件非公開部分に記録されている情報を整理すると、以下のとおりである。

 (1)法人代表者の印影

(2)債権者の取引金融機関情報

(3)警察電話番号

(4)警部補(同相当職含む。)以下の警察職員の氏名及び印影

 

3 本件決定に係る具体的な判断及びその理由について

(1)条例8条第2項第1号について

    条例第8条第2項は、公安委員会と警察本部長が管理する行政文書について、公開原則の適用除外事項を定めたものである。このうち、本号は、条例第8条第1項第1号から第4号までの規定に該当する情報について、他の実施機関と同様に、公開しないことができる旨を定めている。

 (2)条例第8条第1項第1号について

    事業を営む者の適正な活動は、社会の維持存続と発展のために尊重、保護されなければならないという見地から、社会通念に照らし、競争上の地位を害すると認められる情報その他事業を営む者の正当な利益を害すると認められる情報は、営業の自由の保障、公正な競争秩序の維持等のため公開しないことができるとするのが本号の趣旨である。

    同号は、

ア 法人(国、地方公共団体、独立行政法人等、地方独立行政法人、地方住宅供給公社、土地開発公社及び地方道路公社その他の公共団体を除く。)その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、

イ 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの(人の生命、身体若しくは健康に対し危害を及ぼすおそれのある事業活動又は人の生活若しくは財産に対し重大な影響を及ぼす違法な若しくは著しく不当な事業活動に関する情報を除く。)

が記録された行政文書は公開しないことができる旨定めている。

本号の「競争上の地位を害すると認められるもの」とは、生産技術上又は営業上のノウハウや取引上、金融上、経営上の秘密等公開されることにより、公正な競争の原理に反する結果となると認められるものをいい、「その他正当な利益を害すると認められるもの」とは、公開されることにより、事業を営む者に対する名誉侵害や社会評価の不当な低下となる情報及び団体の自治に対する不当な干渉となる情報等必ずしも競争の概念でとらえられないものをいうと解されるが、これらの具体的な判断に当たっては、当該情報の内容のみでなく、当該事業を営む者の性格や事業活動における当該情報の位置づけ等も考慮して、総合的に判断すべきものである。

(3)本件非公開部分の条例第8条第1項第1号該当性について

本件非公開部分のうち、条例第8条第1項第1号に該当するため条例第8条第2項第1号の規定により非公開とされた情報は、2(1)及び(2)の情報である。これらは、いずれも法人に関する情報であり、(2)アの要件に該当することが明らかである。

次に、これらの情報が(2)イの要件に該当するかどうかについて検討する。

ア 法人代表者の印影

本項の情報は、通常、法人自らが厳格に管理する情報であり、公にすることにより、印章偽造等の不正使用を誘発し、偽造の契約書等の作成が容易になるなど、当該法人による厳格な管理が意味をなさないものとなり、法人の正当な利益を害すると認められることから、(2)イの要件に該当する。

イ 債権者の取引金融機関情報

本項の情報は、法人及び事業を営む個人の取引金融機関情報であり、警察が、法人及び事業を営む個人から物品購入等を行った際の振込先の金融機関名、支店名、預金種別及び口座番号である。

これらの情報は、法人及び事業を営む個人の具体的な取引に関する情報であり、通常、取引上必要な範囲で取引先等に開示することはあっても、広く一般に公表しているものではなく、公にすることにより、法人及び事業を営む個人の正当な利益を害すると認められることから、(2)イの要件に該当する。

以上のことから、2(1)及び(2)の情報は、条例第8条第1項第1号に該当し、条例第8条第2項第1号の規定により、公開しないことができる。

(4)条例第8条第1項第4号について

行政が行う事務事業に係る情報の中には、当該事務事業の性質、目的等からみて、執行前あるいは執行過程で公開することにより、当該事務事業の実施の目的を失い、又はその公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼし、ひいては、府民全体の利益を損なうおそれがあるものがある。また、反復継続的な事務事業に関する情報の中には、当該事務事業実施後であっても、これを公にすることにより同種の事務事業の目的が達成できなくなり、又は公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるものもある。このような支障を防止するため、これらの情報は公開しないことができるとするのが本号の趣旨である。

同号は

ア 府の機関又は国等の機関が行う取締り、監督、立入検査、許可、認可、試験、入札、契約、交渉、渉外、争訟、調査研究、人事管理、企業経営等の事務に関する情報であって、

イ 公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障をおよぼすおそれのあるもの

は公開しないことができる旨を定めている。

(5)本件非公開部分の条例第8条第1項第4号該当性について

本件非公開部分のうち、条例第8条第1項第4号に該当するため条例第8条第2項第1号の規定により非公開とされた情報は、2(3)の警察電話番号である。

警察電話は警察の連絡・調整事務に使用されていることから、警察電話番号は(4)アの要件に該当する。

次に、警察電話番号が(4)イの要件に該当するかどうかについて検討する。

警察電話番号は、内部連絡用の電話番号であり、警察において、連絡・調整事務に使用しており、一般には公表していない。この情報を公にすることにより、警察の捜査や事務を妨害しようとする者が電話をかけ続ける等の妨害を行うことや、取締り等に対する抗議や苦情等が集中することになるなど、警察の連絡・調整事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあると認められることから、(4)イの要件に該当する。

以上のことから、警察電話番号は、条例第8条第1項第4号に該当し、条例第8条第2項第1号の規定により、公開しないことができる。

(6)条例第8条第2項第3号について

警察が保有する情報の中には、個人の生命、身体及び財産の保護に任じる警察業務の特殊性から、条例第8条第2項第1号及び第2号に該当しない場合であっても、公開すると、個人の生命、身体、財産等の保護に支障を及ぼすおそれのあるものがある。したがって、公安委員会又は警察本部長はこれらの保護に支障を及ぼすおそれのある情報を公開しないことができるとするのが本号の趣旨である。

本号は、条例第8条第2項第1号及び第2号に掲げるもののほか、公にすることにより、個人の生命、身体及び財産等の保護に支障を及ぼすおそれがある情報が記録された行政文書を公開しないことができると規定している。

(7)本件非公開部分の条例第8条第2項第3号該当性について

本件非公開部分のうち、条例第8条第2項第3号に該当するとして非公開とされた情報は、2(4)の警部補(同相当職含む。)以下の警察職員の氏名及び印影である。

一般に、警察職員は、他の公務員とは異なり、犯罪捜査や警察規制に係る取締りに従事することを本分としており、犯罪捜査や取締りの現場において、相手方の反発・反感を招きやすい立場にあることから、その氏名や氏名が特定され得る情報が公になると、当該警察職員が過去に従事した犯罪捜査等の関係者など警察職員を標的とする人物等からの加害行為を容易にし、当該職員だけでなく、その家族に対しても脅迫や嫌がらせ等の危害が及ぶおそれがあると認められる。

とりわけ、警部補以下の警察官である職員については、現に職務質問などの街頭活動や犯罪の捜査に従事している、重要事件等発生時にはこれらの職務に従事することが予想される、以前にこれらの職務に従事していたことがあることなどから、氏名の公開によって個人が特定された場合、本人及び家族の生命、身体又は財産に対して危害が加えられるおそれがあると認められる。

また、警部補相当職以下の一般職員についても、犯罪捜査の業務に直接従事はしないものの、同じ部署内で、これらの業務を支援する業務に従事していることから、同様の危害が加えられるおそれがあると認められる。

以上のことから、警部補(同相当職を含む。)以下の警察職員の氏名及び印影については、条例第8条第2項第3号に該当する。

 

4 結論

  以上のとおりであるから、本件審査請求には理由がなく、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

 

 

(主に調査審議に関与した委員)

 岡村委員、福井委員、松田委員、山口委員

 

 

 

別表 本件行政文書

番号

行政文書の名称

公開しないことと決定した部分

 1

 

被留置者等食料の購入に係る経費の支出伺い

○ 警察電話番号

○ 警部補(同相当職含む)以下の警察職員の氏名及び印影

 2

被留置者等食料の購入に係る契約書(警察本部分)

○ 法人代表者の印影

 

 3

被留置者等食料の購入に係る契約書(東警察署分)

○ 法人代表者の印影

 

 4

支出命令伺(平成18年5月分)

○ 債権者の取引金融機関情報

○ 警部補(同相当職含む)以下の警察職員の氏名及び印影

 5

請求書(警察本部・平成18年5月分)

○ 法人代表者の印影

○ 警部補(同相当職含む)以下の警察職員の氏名及び印影

 6

食料簿(警察本部・平成18年5月分)

なし

 

 7

支払依頼書(東警察署・平成18年5月分)

○ 警部補(同相当職含む)以下の警察職員の印影

 8

請求書(東警察署・平成18年5月分)

○ 法人代表者の印影

○ 警部補(同相当職含む)以下の警察職員の氏名及び印影

 9

食料簿(東警察署・平成18年5月分)

なし

 

このページの作成所属
府民文化部 府政情報室情報公開課 情報公開グループ

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